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文献名1霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳
文献名2第4篇 神戦妖敗よみ(新仮名遣い)しんせんようはい
文献名3第21章 怪体島〔1977〕よみ(新仮名遣い)けたいしま
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ朝香比女神一行は、葦原比女神一行に送られ、常磐浜辺で名残を惜しみつつ、万里海へとふたたび船出をした。朝香比女神一行が舟を南へと進ませていくと、鷹巣頂から黒煙がもうもうと噴出して天に立ち上り、海を指して迫ってきた。黒雲は、グロス・ゴロス竜蛇心形を現して進んできた。朝香比女神、初頭比古神がこ様子に警戒歌を歌うおりしも、海上に旋風が起こり、一行乗った磐楠舟は荒波に翻弄され、一進一退どうしようもない羽目に陥った。しかし、朝香比女神は平然として微笑しながらこ光景を静かに見つつ、心中に深い成算があるかようであった。一行神々は、お少しも恐れずに勇気と祓い歌を歌い、しばらく望見し落ち着きはらっていた。すすと、百雷が一時にとどろくようなウーウーウー唸り声が響き渡り、たちまちに波風は和らいで、あたりを包んでいた魔神黒雲は薄らいで飛び散り、平静な天地と変わってしまった。朝香比女神は、ひそかに祈った言霊によって、鋭敏鳴出神が現れ、そ神力によって曲津神たちを追い払ってしまったことを歌った。従者神たちも、こ出来事に述懐歌をそれぞれ歌った。しばらくして舟は、海路に横たわる巨大な巌島に近づいた。よくよく見れば、赤・黒さまざま大蛇が何匹も巌から首を差し出し、大口から火焔下を吐いて舟を襲おうとするごとくであった。朝香比女神はこありさまに、心穏やかに微笑みながら、こ巌島を火島とするよう、言霊歌を歌った。すると、高く切り立った周囲約三里巌島は、たちまち一面が火焔に包まれ、海水は熱湯ように煮えたぎり、大蛇は焼かれ傷つき、あるいは雲を起こして鷹巣山に逃げ去った。従者神たちは、こ様子を見て驚き感激し、朝香比女言霊働きを称える歌を歌った。そして、舟は東南に向けて進んでいった。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月25日(旧11月9日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者森良仁 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年5月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 131頁 修補版 校定版387頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7821
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本文  朝香比女神は、葦原比女神一行に常磐浜辺まで送られ、互に名残りを惜しみつつ、朝日照らふ万里海原を順風に乗じ、南へ南へと舟を進ませ給ふ折しもあれ、晴れ渡りたる大空彼方に屹立したる鷹巣頂より、黒煙濛々と噴火如くに噴き出して天に冲し、次第々々に膨れ拡ごり、万里海原さして押し寄せ来る状、も凄きばかりなりける。黒雲はグロス、ゴロス竜蛇神形を現はし、真つ先に海原さして進み来る如く見えにける。
 朝香比女神は此光景を打仰ぎながら、

『鷹巣山尾根に黒雲涌き立ちて
  大空高く拡ごれるがに見ゆ

 鷹巣山に立つ黒雲は醜神
  吾に仇せむ下心かも

 澄みきらふ御空蒼を醜神
  醜黒雲ぬりつぶさむとす

 よしやよし万里海原包むとも
  吾言霊に伊吹き払はむ

 曲神は棲処焼かれて鷹巣山に
  忍びて雲となりて荒ぶも

 吾舟は魔神黒雲に包まれて
  行手も見えずなりにけらしな

 主御水火に生れし吾にして
  如何でひるまむ曲津荒びに

 曲津神荒べば荒べ千万
  災来るも吾はひるまじ』

 初頭比古神は此光景を見て御歌詠ませ給ふ。

『グロスもゴロスも力ありたけを
  尽して御舟にさやらむとすも

 大空蒼海原をぬりつぶし
  万里海まで雲に包める

 よしやよし黒雲如何に包むとも
  海原分けていや進み行かむ

 曲神水火にや海風は
  吹き乱れつつ御舟ゆするも』

 斯く歌ひ給ふ折しも、海上俄に旋風起り、雲は大なる輪を描きて前後左右に舞ひ狂ひ、磐楠舟は荒浪に翻弄され、一進一退如何ともすべからざる羽目に陥りぬ。朝香比女神は平然として微笑しながら此光景を静に見給ひつつ、心中に深き成算あるも如くに在し坐しける。
 起立比古神は咫尺弁ぜぬ暴風海原を眺めながら、儼然として御歌詠ませ給ふ。

『曲神はあらむ限り暴力を
  ふるひて御舟を顛覆さむとす

 風も吹け浪も立て立て雲も起きよ
  如何で恐れむ神なる吾は

 面白く風海原に御舟は
  浮きつ沈みつ上りつ下りつ

 荒浪は鬣振ひ御舟
  舷きびしく噛みつき来るも

 主神と朝香比女に任せたる
  吾身は天に任すみなる

 グロスやゴロスも力種つきて
  やがて亡ばむ思へば悲しも

 葦原国土永遠に治むべく
  此曲津見を罰めで止まむや』

 立世比女神は御歌詠ませ給ふ。

『奴婆玉海原に荒浪
  立ちたつ今日旅は勇まし

 曲津見荒ぶ限りを荒ばせて
  吾面白く眺めむと思ふ

 荒風響も高き浪音も
  何か恐れむ神なる吾は

 グロスもゴロスもここを玉
  命かぎりに荒ぶと見えたり

 荒ぶだけ荒ばせ狂はせ疲らせて
  さて其後に言霊宣らむか』

 天晴比女神は御歌詠ませ給ふ。

『久方天を晴らし吾なれば
  御空黒雲直に払はむ

 一二三四五六七八九十
 百千万八千万
 神よ集まりましまして
 今日御舟にさやりたる
 醜黒雲払はせ給へ
 ああ惟神々々
 吾等となふる言霊に
 命あれかし光あれかし』
 朝香比女神は再び御歌詠ませ給ふ。

『面白き醜猛びを見るも
  万里海原過ぎ行く度に

 曲神もやがて疲れむ斯く
  黒雲吐けば力尽きなむ

 黒雲を起し荒風吹かせつつ
  吾旅立を脅かさむとするも

 斯く如き醜災何かあらむ
  暫く待ちて吾は罰めむ』

 斯く神々は各自御歌詠ませつつ、闇暴風怒濤に舟を翻弄されながら、神色自若として少しも恐れず、暫しを望見し落着き居給ひける。
 斯かる処へ百雷一時に轟く如きウーウーウー唸り声響き渡り、忽ちにして荒風は鉾先を緩め、浪和らぎ渡り、四辺を包みし魔神黒雲は次第々々に薄らぎつつ四辺に飛び散り、遂には跡形も止めず、浪平かに天津日は晃々と輝き給ふ平静なる天地と変りけるぞ不思議なれ。
 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『ひそやかにわが祈りたる言霊に
  鋭敏鳴出神は現れましにけり

 鋭敏鳴出言霊に破られて
  曲津見奸計は消え失せにけり

 荒風を起し荒浪振はせし
  曲津は亡びむ憐れなるかも

 主厚き守りと鋭敏鳴出
  神功に曲津は逃げたり

 黒雲は次第々々に薄らぎて
  其影さへも見えずなりけり

 千重浪照らして御空ゆ日神は
  わが行く舟を守らせ給ふ

 曲神は勢強く見ぬれども
  真言神には脆きもかな

 葦原比女神神言は曲津見に
  襲はれ給はむ思へば愛しき

 さりながら鋭敏鳴出神わが魂
  いつかひあれば国土安からむ

 海原は春陽気漂よひて
  水面に跳る魚鱗は光れり』

 初頭比古神は莞爾として御歌詠ませ給ふ。

『神々稜威守りに曲津見は
  見るも哀れに亡び失せける

 葦原鷹巣谷深く
  潜める曲悪戯可笑しも

 黒雲形はさながらグロスと
  ゴロス走る姿なりける

 斯如御空は晴れて浪凪ぎて
  公御舟安さ嬉しさ

 目路遠く水面に浮ぶ島影は
  しかと見えねど巌山なるらし

 主神と鋭敏鳴出神わが公
  御稜威に安き磐楠舟かも』

 起立比古神は御歌詠ませ給ふ。

『面白き曲津芝居一幕を
  今日浪路旅に見しかな

 一時は如何ならむかと村肝
  吾は心を悩ませにける

 強き言言ひつつありしが村肝
  心奥は慄ひ居たりき

 鋭敏鳴出言霊なかりせば
  未だ黒雲はさやり居にけむ

 上下に公召します御舟を
  翻弄したる曲浪凪ぎしよ

 斯くならば最早安けし西方
  曲津国土にひたに進まむ』

 立世比女神は御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神は驚きましまさず
  微笑みいませし雄々しさ健気さ

 海原を闇に包みて御舟を
  浪に弄りし曲津見悪戯よ

 如何ならむ曲津災重ぬとも
  神御稜威にひたに進まむ

 鷹巣山に忍びてグロス、ゴロス曲津は
  黒雲となりて御舟艱めぬ』

 天晴比女神は御歌詠ませ給ふ。

『久方天晴れ渡り月も日も
  水面に浮びて湯気立つ海なり

 御舟は吹く春風にすくすくと
  進みましけり万里海原を

 朝香比女神に仕へて種々
  曲津悪戯面白く見し

 闇海に荒風も浪も駿馬は
  恐れず静かに嘶きて居し

 吾は今無心幸はひを
  つくづく覚りぬ荒浪海に

 幾度も御舟あやふき浪上を
  無心駒は嘶き歓ぎつ

 海路走るそ苦しさに引替へて
  駒は御舟を喜びけるにや

 漸くに島影近くなりにけり
  魔神よ永遠に潜めるらしも』

 舟は漸くにして海路に横はる巨大なる巌島に近づきぬ。よくよく見れば、赤黒さまざま大蛇幾筋となく巌より首をさし出で、長大なる身体をうねらせながら、大口を開き火焔舌を吐き、御舟に向つて襲はむとする勢を全力を尽し見せ居たりければ、朝香比女神はこ状を御覧して、心穏ひに微笑みつつ御歌詠ませ給ふ。

『此処も亦魔神巣ぐふ巌島
  醜大蛇はさやらむとすも

 醜神は如何にさやぐも猛ぶとも
  神なる吾は恐るべきやも

 曲神を言向けまたは罰めつつ
  神まにまに進む吾なり

 千丈上より長々と
  大口開けて大蛇は火を吹けり

 千百大蛇が一度に吐き出す
  炎は青く真火にはあらず

 吾伊行く道にさやらむ曲津見は
  生言霊に放りて行かむ

 草木一つ無き巌山に真火を避けて
  ここを先途と曲津見潜める

 さりながら生言霊御功に
  こ巌山を火島とせむ。

 いろはにほへとちりぬるを
 わかよたれそつねならむ
 うゐおくやまけふこえて
 あさきゆめみしゑひもせす
 きやう浪路旅立ちに
 さやらむ曲津は悉く
 生言霊御功に
 伊吹き払ひて追ひそけつ
 神依さし神業に
 仕へ奉らむ惟神
 神御前に生言霊を
 捧げて祈り奉る
 もしも曲神吾言霊に
 従はずしてさやりなば
 こ巌島は悉く
 真火を起して灼熱
 炎に残らず焼き尽し
 曲津在処を絶すべし
 カコクケキ
 カ言霊に真火出でて
 さしもに堅き巌山も
 火海とならむ惟神
 曲津見心を改めて
 弥永久に此島
 守り神となれよかし
 ああ惟神々々
 生言霊に光あれ
 吾言霊に命あれよ。

 海中に聳り立ちたる巌島に
  潜む大蛇を焼きて進まむ

 巌島はカ言霊輝きに
  残らず火となれ炎となれよ』

 斯く歌ひ給ふや、千尋海底より御空に高く屹立したる周囲約三里巌島も、忽ち一面に火焔に包まれ、海水は熱湯如く煮えくり返り、湯気と煙は四辺を包みて其壮観譬ふるに物なく、大蛇は或は焼かれ或は傷き或は命からがら雲を吐き出し、辛うじて是に乗じ、鷹巣空を指して逃げ行きにける。巌島は瞬く間に根底より焼き尽され、海水は熱湯如く沸騰し湯気立ち昇りぬ。此光景を見て初頭比古神は感激に堪へず、御歌詠ませ給ふ。

『今更に吾驚きぬ御樋代神
  生言霊に島は滅びぬ

 八千尋巌根も火となりて
  焼滅しにけり公御稜威に

 いつまでもグロス、ゴロス執拗さ
  思へば吾は憐れを催す

 永遠に動かぬ巌根も吾公
  生言霊にかなはざりしよ

 巌ケ根は残らず火となり湯気となり
  煙となりし時見事さ

 面白き公神業伏し拝み
  こ天地不思議を悟りぬ

 吾公功績見れば初頭比古
  吾は小さき神にぞありける

 曲津見は巌山と変じつつ
  公海路旅にさやりし

 心地よく曲化身巌島は
  生言霊に滅びぬるかな

 カコクケキ生言霊幸はひに
  堅磐常磐巌も焼けたり』

 起立比古神は御歌詠ませ給ふ。

『尊さに吾は言葉も口籠り
  あきれ慄くばかりなりけり

 今更に生言霊尊さを
  思ひけるかな海路旅に

 炎々と巌島焼ゆる状見つつ
  今更如驚き止まずも

 巌上に千万大蛇垂れかかり
  大口開けて炎を吐きける

 斯如き曲津猛びも平然と
  公は微笑み御覧しける

 曲津見は四度破れて同輩を
  数多失ひ逃げ去りにける

 いや広に神御稜威幸はひて
  こ天地は拓け行くらむ』

 立世比女神は御歌詠ませ給ふ。

『今更に朝香比女吾公
  いみじき功を驚きにけり

 斯如光と功吾公に
  仕へて進まむ思へば嬉しき

 心弱き女神吾も魂太り
  いみじき力を賜はりにける』

 天晴比女神は御歌詠ませ給ふ。

『跡形もなく滅びたる曲津見
  化身跡に湯気立つ

 曲津見は万里海原に浪を立て
  雲を起して雄猛びにける

 曲津見雄猛び煙となりにけり
  御樋代神生言霊に

 浪路はるけき万里海原安々と
  公に仕へて渡らふ楽しさ

 カコクケキ生言霊御光は
  千引巌ケ根さへも焼きたり

 巌島燃ゆる火影はあかあかと
  海底までも輝きしはや』

 斯く各自御歌詠ませつつ、順風に乗り舟舳を東南に向け進ませ給ふ。
(昭和八・一二・二五 旧一一・九 於大阪分院蒼雲閣 森良仁謹録)
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