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文献名1霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳
文献名2第4篇 神戦妖敗よみ(新仮名遣い)しんせんようはい
文献名3第22章 歎声仄聞〔1978〕よみ(新仮名遣い)たんせいそくぶん
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ朝香比女神一行は、グロス・ゴロス化身であった巌島邪神を、言霊光によって島もろとも焼き尽くし、万里海原を東南に向けて進んでいった。一行は歌を歌いつつ進んで行ったが、東北方面に浮かんでいる島から、怪しき声が聞こえてくるに気づいた。朝香比女神は、そ悲しい声は国津神たち叫び声かもしれないで、一刻も早く島に向かおう、と歌った。すると、舟は東北方面に自然に舳先を向けて進んでいった。すると、浮島方面から、多角多頭大悪竜が、幾千丈とも限りなく、波しぶきをたててこちらに進んできた。朝香比女神は、これこそまさに八岐大蛇であると見取り、舟よ広くなれ大きくなれ、八岐大蛇数百倍となれ、と歌った。歌い終わると、磐楠舟は膨れ広がってたちまち山ようになってしまった。多角多頭大蛇は舟近くまで進んできたが、舟あまり大きさに驚いたか、無念そうに水中に姿を隠してしまった。朝香比女神は、臍下丹田に魂を鎮め、天に向かって合掌し天津祝詞を奏上し、生言霊を述べた。たちまち海水は熱湯ように煮え返り、八岐大蛇は熱湯に焼かれて全身ただれ、もがき苦しみ、ついに死体となって水面に浮かび出た。朝香比女神が、歎き島に急ぎ進め、と歌うと、舟は千里を駆ける勢いで、黄昏海原を進んでいった。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月25日(旧11月9日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年5月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 138頁 修補版 校定版412頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  朝香比女一行はグロス、ゴロス化身なりし巌島邪神を生言霊光に島もろとも焼き尽し給ひ、春風そよろに渡る万里海原を、舳を東南に向け悠々進ませ給ひける。
 初頭比古神は御歌詠ませ給ふ。

『くさぐさ艱みを放りつつ
  御舟やうやく安くなりける

 晃々と浪を照らして天津日は
  春海原ぞきたまへり

 目路限り万里海原に霞立ちて
  風暖かき浪路楽しも

 黒雲に海原包み浪立てて
  グロス、ゴロスは猛びたるかも

 グロスもゴロスも公功績に
  逃げ失せたるぞ勇ましかりけり

 海底に遊べる小魚姿さへも
  透き通り見ゆ清しき今日なり

 わが公御供は楽し言霊
  水火光を居ながら拝しつ

 万里島と葦原国土を拓きまして
  公が渡らす万里海原

 月も星も白く輝く海原に
  立つ白浪は陽に耀へる

 月と日と星光に守られて
  吾行く舟は恙あらじな』

 起立比古神は御歌詠ませ給ふ。

『楽しさ限りなるかも吾公
  御舟に曲たはむれ見る今日

 生島ゆ島に渡らふ水鳥
  翼は白く浪にうつれり

 水底を飛びたつごとく思はれぬ
  澄みきらひたる水鳥影は

 仰ぎ見る鷹巣山は紫
  雲漂ひて日影は高し

 曲津見は戦ふたびに破れつつ
  西方空に消え失せにけり』

 立世比女神は御歌詠ませ給ふ。

『白馬ケ岳は雲に霞みて空奥に
  もやもや燃ゆる白雲どけし

 白雲は天津日下をよぎりつつ
  こ海原に影を落せり

 遠海は青く見えつつ目路近き
  浪は白々輝けるかも

 鷹巣山は白馬ケ岳に比ぶれば
  澄み渡りつつ高さ及ばず

 吾伊行く浪路遥けく守りませ
  主大御神鋭敏鳴出

 公が旅を安く守りて鋭敏鳴出
  神は折々唸らせたまふも

 御光出でます海原に
  遮らむ雲は忽ち消ゆるも

 海中岩に浪秀突き当り
  白き飛沫は高ぼりつつ

 白浪は飛沫となりて高ぼり
  再び水に落つるさやけさ

 次ぎ次ぎに飛沫立ちつつ又消えつ
  今日浪路風静かなり』

 天晴比女神は御歌詠ませ給ふ。

『天も地も隈なく晴れし海原
  旅行く今日穏かなるも

 帆を揚げず艫櫂用ゐぬ磐楠舟
  進むは神功なりけり

 何事も神心に任せたる
  公御舟は安く進むも

 海鳥啼く音か国津神等
  叫びか仄かに響き渡らふ

 東北浪に浮べる島ケ根ゆ
  怪しき声は響き来らしも』

 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『浪秀を渡り聞ゆる声は悲し
  国津神等叫びなるらむ

 兎にもあれ角にもあれや声すなる
  島に向ひて吾は進まむ』

 かく歌はせ給ふや、御舟は心あるも如く、思ふ舳を東北に変じ、波上に霞める島影さして進み行くこそ不思議なる。
 初頭比古神は御歌詠ませ給ふ。

『天地心か吾舟は
  神言まにまに方向をかへたる

 風方向変りて公が御舟は
  東北島をさして流るる

 彼方此方と水面に峙つ巌ケ根は
  草木も生ひず赫々映ゆるも

 荒風に立ち騒ぎたる浪頭
  島を洗ひしあとにやあらむ

 島影も次第々々に近く見えて
  歎かひ声高まりにける

 片時も疾く速やけく御舟
  御行待つらむ歎かひ声は』

 起立比古神は御歌詠ませ給ふ。

『仄見ゆる島は広しも曲津見に
  歎かふ神声にやあらむ

 曲津見は島より島に渡らひて
  荒び狂ふかこれ神世に』

 立世比女神は御歌詠ませ給ふ。

『歎かひ声は次ぎ次ぎ高まりぬ
  進めよ進め御舟よ速く

 海原を右や左ととび交ひて
  御舟を守る水鳥

 水鳥は空を真白に染めながら
  歎き島ゆ飛び立てる見ゆ

 グロスやゴロス曲津片割
  国津神等を艱ますなるべし

 西南風は力を増しにつつ
  公が御舟進みは速し』

 天晴比女神は御歌詠ませ給ふ。

『歎かひ声は水鳥ならずして
  神御声と吾も思へり

 束間も早く御舟よ進みませ
  歎き島を救はむがために』

 朝香比女神は島影近づきしを打ち眺めながら、

『曲神に艱まされたる国津神
  最後叫びなるらし

 主御稜威畏み片時も
  疾く進まなむ島岸辺に

 ただならぬ百神等歎き声
  いやますますも高まりにつつ』

 かかる折しも、浮島方面より荒浪を押しわけながら多角多頭大悪竜、幾千丈とも限りなく、浪飛沫を立て、此方に向つて数万噸級走るが如き凄じき勢にて進み来るあり。
 朝香比女神はこ光景を打ち見やり給ひつつ、

『グロスにあらずゴロスにあらずして
  正しく八岐大蛇なりける

 吾舟を只一口に葬らむと
  勢強く進み来るなり

 舟よ舟よ広くなれなれ大きくなれよ
  八岐大蛇数百倍となれ』

 かく歌はせ給ふや、磐楠舟は次第々々に上下前後左右に膨れ拡ごり、堅き事岩如く、忽ち其形山如くなりければ、初頭比古神は余り不思議さに驚き給ひて御歌うたはせ給ふ。

『今更に公御稜威畏さを
  思ひて吾は心戦く

 八岐大蛇来向ふ影に驚きつ
  更に御稜威に畏みしはや

 天界は意志想念世界とは
  かねて知りつつ今更驚きぬ

 かくならば八岐大蛇も何かあらむ
  御舟舳に截り放るみ』

 起立比古神は御歌詠ませ給ふ。

『進み来る大蛇勢強くとも
  公御舟に対ひ得べしや

 山ごと弥拡ごれる御舟に
  乗れる吾身も大きくなりぬ

 吾身体次第々々に太りつつ
  無限力備はりしはや』

 かく歌ひ給ふ折しも、多角多頭大蛇は御舟間近く進み来り余り大船に驚きにけむ、大口を開き鎌首を立てたまま、さも無念さうな面持にて、ざんぶとばかり水中に怪しき姿をかくしける。茲に朝香比女神は、臍下丹田に魂を鎮め、天に向つて合掌し、天津祝詞を奏上し、生言霊を宣らせ給へば、海水は忽ち熱湯如く煮え返り、八岐大蛇は潜むに由なく且熱湯に焼かれて全身糜爛れ藻掻き苦しみ、海上をたうち廻り、遂には死体となりて赤き腹部を現はし、水面に浮び出でたり。立世比女神はこ状を見て、

『あはれあはれ公言霊幸はひて
  大蛇は脆くも亡びけるかな

 潮水は沸き返りつつ湯気立ちて
  大蛇は遂に滅びけるかも

 百旬に余る大蛇遺骸は
  浪上赤く浮べる凄さよ

 物凄き形相なして迫り来し
  大蛇はあへなく身亡せけるかも

 大蛇神よ今日より御魂を立て直し
  再び神と蘇り来よ』

 天晴比女神は御歌詠ませ給ふ。

『奇びなる朝香比女神言に
  磐楠舟は拡ごりにけり

 膨れ膨れ太り太りて極みなく
  公御舟は巌となりける

 常巌堅き御舟もかろがろと
  進みゆくかも歎き島に』

 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『曲津見大蛇は亡びたり
  歎き島は蘇るべし

 黄昏に近づきければ吾舟は
  歎き島に急ぎ進めよ』

 かく宣らせ給ふや、御舟は一潟千里勢をもつて黄昏近き海原を進み行く。
(昭和八・一二・二五 旧一一・九 於大阪分院蒼雲閣 加藤明子謹録)
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