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文献名1霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午
文献名2第3篇 伊吹山颪よみ(新仮名遣い)いぶきやまおろし
文献名3第18章 言霊幸〔1999〕よみ(新仮名遣い)ことたまさち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ島根は、艶男が姿を消してより、大竜身彦命と弟姫神は奥殿深く姿を隠し、また七乙女半分以上も姿を消してしまったため、火消えたようなさびしい有様となってしまった。七乙女うち、取り残された撫子、桜木、藤袴をはじめ、島姫神たちは、嘆きあまり伊吹山鏡湖汀に集まり、天を仰いで日夜慟哭しながらお述懐歌を述べていた。すると、鏡湖水を左右に分けて昇ってきた女神は、海津見姫神であった。竜神族女神たちははっとひれ伏して敬意を表した。海津見姫神は、天数歌を授け、人姿になるために、人身となるまで言霊を宣り上げるようにと諭した。これより、島根竜神たちは、昼夜絶えることなく天数歌を宣りあげると、一年後には完全な人身と生まれ変わった。竜島は、宝島、美人島、生命島と称えられるにいたった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年07月19日(旧06月8日) 口述場所関東別院南風閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年10月25日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 254頁 修補版 校定版341頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7918
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本文の文字数2096
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本文  ゆくりなくも竜花と称へし艶男、一夜うちに姿消え失せしより、大竜身彦命を始め、弟姫神は歎かひ余り、奥殿深く御戸を閉して入り給ひ、七日七夜を経るも表に出でさせ給はず、流石華やかなりし黄金花咲く竜島も、火消えし如き寂寥神苑となりける。それに加へて白菊、白萩、女郎花、燕子花七乙女は、半ば以上こ島より影をかくしたれば、寂寥ますます加はり、烏羽玉幕は深く閉しける。
 七乙女中に取り残されし撫子、桜木、藤袴を始め、数限りなき島ケ根姫神たちは、歎き余り伊吹山南面中腹に展開せる鏡湖汀に集り来り、天を仰ぎ、地に俯して、日夜慟哭しながら、各自に述懐を述べ居たりける。
 撫子は歌ふ。
『物思ふ心は一入深みたり
  恋ふしき君姿なければ

 橘あかぬ匂ひに染りたる
  嬉しき夢も覚め果てにけり

 撫子と覚でさせ給ひしそ君は
  今はいづら里にいますや

 移りゆく花香りと思へども
  果敢なきもは吾身なりけり

 なかなかに手折りかねたるはつはな
  惜しくも風に散りゆきしはや

 別れ路を惜しむ心は湖
  鏡に見えて小波うつも

 春雨は夜間に降りてあはれあはれ
  桜君は散り果てにけり

 一度は散るべき花と思ひつつ
  なほ惜しまるる春宵かな

 幾日幾夜竜乙女憧れし
  島山桜はあとかたもなし

 山風に誘はれて散りし初花
  行方も波空に消えしか』

 桜木は歌ふ。
『散らさじと思ひ初めにし桜木
  花恥かしき色はうつれり

 心なき花姿に憧れて
  綻び初めしわれなりにけり

 やがて散る花にも蝶とまり来て
  惜しむを知らぬ山桜かな

 わが身には仇花なりと知りながら
  散りたるあと惜しまるるかな

 朝夕に心を尽して珍しみし
  島山桜あはれ影なし

 常春島に匂ひし初花
  露香りは失せにけらしな

 山に野に花は匂へど艶男
  君に勝れる顔はなし

 かく如歎き花と知らざりき
  嵐も吹かで散りゆく君を

 汀辺に伊寄り集ひて歎けども
  何時帰りますてだてだになし

 桜咲くこ島ケ根に残されて
  空に知られぬ雨にくるるも

 さまざま望み抱きて今日までも
  あり経しもを如何にとやせむ

 橘花にも似たる吾故に
  恋ふしさ一入深かりにけり

 千早振る遠き神代昔より
  かくうるはしき君はなかりし

 竜宮花と仰ぎてし
  花橘香は失せにけり

 雲霧となりてかくれし艶男
  花姿惜しまるるかな』

 藤袴は歌ふ。
『現身世は悲しけれこ島に
  果敢なくわれは朽ちむとするか

 玉生命綱と頼みてし
  力君は今やいまさず

 藤袴花はもろくも夜雨に
  打ちたたかれて涙しにけり

 夜もすがら地に伏しつつ歎けども
  生くべき生命と思はざりけり

 池辺に紫匂ふ燕子花
  花姿も見えずなりけり

 白萩花は夜間に散り失せて
  神苑寂しくなりにけらしな

 いづ方に散り果てたるか白菊
  花香りは早や島になし

 伊吹山処狭きまで匂ひたる
  女郎花今かげだにもなし

 百花匂ふも知らで逃げさりし
  人心をうらめしみおもふ』

 雛罌粟は歌ふ。
『雛罌粟花は萎れてかげ寂し
  君光りかくれましてゆ

 朝夕をかこち歎けど口なし
  花恥かしも君は見えなく

 こ島は歎き島か雛罌粟
  露は恵みに捨てられにける

 かく如歎かひ日にあはむとは
  思はざりしよ朝な夕なを

 百年も千年も君にまみえむと
  願ひし事は夢なりしかな

 夜な夜なを夢にまみえて楽しみし
  花姿は見る由もなき

 風吹かばそ君思ひ雨降らば
  又しばるる花なりにけり

 汀辺に打ち寄す波も淋しげに
  聞え来るなり花なき島根は

 百千花咲き匂へども橘
  君よそほひ仰ぐ術なし

 月も日も輝き給ふこ島に
  住みて小暗きわが思ひかな』

 島女神たちは、各自別れを惜しみ、歎き歌をうたひつつ、悄然たる折もあれ、鏡湖水を左右に別ちて、悠々と昇り来る女神は、海津見姫神に坐しまし、以前如く二柱侍女神を伴ひ給へり。数多姫神たちは、はつと一度に汀にひれ伏し敬意を表しつつありけるが、海津見神は汀辺にスツクと立たせ給ひ、儼然として宣り給ふやう、
『竜神歎きおもひてわれは今
  宮大門を開き来つるよ

 艶男逃げ去りたるも竜神
  姿に怖ぢさせ給へばなりけむ

 今日よりは各自に言霊を
  宣れよ歌へよ人となるまで

 竜神木草も土も悉く
  生きて栄えて言霊を宣れ

 言霊光しあれば竜神
  あやしき姿も世に輝かむ

 太刀膚見苦しき姿改めて
  玉肌持つ人子となれ

 言霊助くる国に生れながら
  怠りしはやこ島人は

 わが宣らむ生言霊に神ならひ
  時じく宣らへ貴言霊

 一二三四五六七八九十百千万』
と宣り終へ、再び波を左右に引き分け、海津見宮を指して帰らせ給ひける。
 これより島根竜神は、昼夜間断なく、覚束なき声を放ちて、天数歌を宣りければ、約一ケ年後には、全き人身と生れ替り、世にも目出度き宝島、美人島、生命島と称へらるるに至りけり。
 ああ尊きかも言霊妙用。
(昭和九・七・一九 旧六・八 於関東別院南風閣 林弥生謹録)
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