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文献名1霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申
文献名2第2篇 イドムよみ(新仮名遣い)いどむあらし
文献名3第9章 維新叫び〔2036〕よみ(新仮名遣い)いしんさけび
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ真珠湖攻め大敗により、女王・左守ら首脳をはじめ、精鋭騎士たちをすっかり失ってしまったサール軍には動揺が広がっていた。力によってイドム国王を追い払い、国を奪って暴政を敷いた天罰は、やはり恐ろしいもであった。残された重臣軍師エーマンは、女王やチクターら遺体を篤く葬り、十日間喪に服しつつ述懐歌を歌っていた。驕り高ぶりを悔い、サール国に追いやった右守ナーリス言に従っていたら、と後悔歌を歌っていた。エーマンはただ一人で、イドム国に駐屯するサール軍統制をはからざるを得ないことになってしまったである。一方、サール軍暴政に苦しんでいたイドム国民中には、あちこちに愛国志士が奮起し、こ機に乗じて城を奪い返し、イドム王を再び迎え入れて国を再興しようと活動が活発になってきた。中でも愛国派大頭目、マークとラートは国至るところに立ち現れ、馬上から国津神たちに奮起を呼びかけた。群集はほら貝を吹き、鳴子を打ち鳴らし、あちこちに示威運動が起こってきた。マークとラートはついにイドム城外広場に群集を集結し、馬上から維新歌を高々に歌い始めた。そして、今こそ城に攻め寄せイドム国を再興せよ、と呼びかけた。群集はいっせいにイドム城に攻め寄せると、軍師エーマンはこ様を見て慌てふためき、水乃川に身を投げて自ら命を絶ってしまった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年08月05日(旧06月25日) 口述場所伊豆別院 筆録者内崎照代 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年12月30日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 472頁 修補版 校定版186頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm8109
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本文  伊佐子北半を  暴力もちて治めたる
 サール国王は  大栄山をり越えて
 数多兵士引率し  地上楽土と聞えたる
 イドム城に攻め寄せて  国王其他を追ひ散らし
 鳥なき里蝙蝠と  羽振りをきかし居たりしが
 天は何時まで暴虐  エールス王を許すべき
 忽ちわが身膝下より  火焔炎は湧き立ちて
 流れも清き水乃川  岸辺に壁立つ巌
 心許せしそ妻に  きびしき酒を進められ
 歩みもならぬたまゆらを  妻命に背を押され
 ザンブとばかり水中  泡と消えたるあさましさ
 ここに王妃サツクスは  左守チクターと
 人目をさけて忍び会ひ  恋勝利を誇りしが
 なほあき足らず真珠湖  人魚をとらむと思ひ立ち
 数百ナイトを引き具して  真珠湖に押し寄せつ
 旗鼓堂々と迫りしが  人魚酋長計略に
 かかりて脆くも失せにける  サツクス姫を始めとし
 左守チクター言ふも更  幾百ナイトは悉く
 真珠魚族  餌食となりしぞあさましき
 ここにイドム王城は  肝心要司をば
 失ひ忽ち常闇  さまを詳にあらはせり
 百司は驚きて  周章てふためき右左
 騒ぎまはれど何とせむ  国柱を失ひし
 イドム騒擾は  目も当てられぬばかりなり
 ここに軍師エーマンは  数多ナイトを引率し
 イドム城に陣取りて  国騒ぎを鎮めむと
 計画をさをさ怠らず  朝夕に肝向ふ
 心を痛めゐたりける  ああ惟神々々
 神天罰恐ろしき。
 エーマンは、サツクス姫及びチクター等死体を篤く葬り、十日間喪に服しつつ述懐を歌ふ。
『さびしさ限りなるかもわが国は
  国柱を失ひにけり

 天地怒りに触れにけむ
  かかる歎きは世にためしなき

 イドム城アヅミ、ムラジを退けし
  罪酬いと思へば恐ろし

 常世ゆく闇につつまるイドム城は
  何処にゆくか心もとなや

 われは今軍司となりながら
  治むる由も白浪月よ

 大空に無心月は輝きつ
  われ等が歎きを笑ふがに見ゆ

 水乃川流るる月もかすみたり
  わが目涙雨と降れれば

 如何にしてイドム城は保たむと
  月に祈れど月は答へず

 山川も色あせにけりわが胸
  闇帳は晴れやらずして

 国民を苦しめ奢り驕りし
  王行末おもへばおそろし

 サツクス女王行ひ日に月に
  いや荒みつつ亡び給へり

 チクター卑しき心にさそはれて
  あはれ女王は身罷り給へり

 エールス最後いぶかしさ
  わが魂雲はまだはれず

 武力もて人国をば奪ひたる
  報いなるらむ今日歎きは

 山も川も草木も一度に声あげて
  傾く国をなげくがに見ゆ

 見るもも聞くももみな涙なり
  われ如何にしてこ世を活かさむ

 力ともたみし右守ナーリスは
  遠くサールにかへされて居り

 せめて今ナーリス右守あるなれば
  かほど心を砕かざるべし

 語らはむ友さへもなき今日日を
  われは淋しく泣くばかりなり

 三千兵士あれど王なき
  イドム国は統制とれずも

 彼方此方に軍人等集まりて
  よからぬ事を企図めりと聞く

 軍人一つになりて攻め来なば
  イドム城は忽ち滅びむ

 如何にしてこ乱れを断たむかと
  思へば心は闇につつまる

 今となりてアヅミ、ムラジを退けし
  エールス王仕業を惜しむ

 勢強きにまかせエールス王は
  イドム城を奪ひとりける

 われもまたエールス王に従ひて
  軍進めし罪人なるよ

 こ城に朝夕仕ふる司等
  心は千々に乱れゐるらし

 何処までも御国ためにつくさむと
  思ふ真人なきは淋しき

 かりごも乱れたる世を治めむと
  思ふも詮なし力なき吾に

 三千軍人等はまちまちに
  事計りつつ従ひ来らず

 今間にイドム城を遁れ出で
  元津御国にかへらまほしけれ』

 イドム城内は、エールス王始めサツクス姫並びにチクターそ他重臣等一時に帰幽せしより、恰も火消えたる如く寂然として声なく、軍師エーマン一人生き残りて国再興を計らむと昼夜心魂を砕きゐたりける。
 話変りて国津神諸々は、エールス王暴政に苦しみ、怨嗟声は国内に充ち満ちたりけるが、王以下帰幽を知るや、町々村々より愛国志士奮起し、到る処に維新声潮寄する如く湧き立ちにける。中にも愛国派大頭目マークとラート両雄は、時こそ到れりと、都鄙到る処に立ち現はれ、馬上より国津神奮起を大声叱呼しつつ促しにける。
 群衆は法螺貝を吹き、磬盤を打ち、太鼓を鳴らし、到る処に示威運動起り、山岳も為に崩るるばかり騒がしき光景を現出したりける。マークはイドム城外広場に群衆を集めて、馬上に突立ちながら、声高々と維新歌をうたふ。
『イドム国人よ
 奮ひ立つべき秋は来ぬ
 天地は暗く日月
 光は地中に没したり
 アヅミ、ムラジ王をば
 奪はれながら敵王に
 従ひ来りし天罰は
 報い来りてわれわれは
 塗炭苦しみ味はへり
 斯くなる上は吾々は
 飢ゑて死する外はなし
 わが国民よ兄弟よ
 イドム国は汝等が
 祖先神より受け継ぎし
 生命を助くる楽土ぞや
 こ美しきよき国を
 サールエールスに
 奪はれ吾等は日に夜に
 妻子を奪はれ家倉を
 焼かれて苦しみ居たりけり
 奮ひ起て起て今や秋
 祖国を守り永遠
 国平和を計れかし
 われ等はこれより王城に
 轡並べて進むべし
 汝等ためらふことなかれ
 イドム国を永遠に
 守るは汝等がためなるぞ
 進めよ進めよいざ進め
 国平和来るまで
 悪魔あと絶ゆるまで』
 ラートは歌ふ。
『ああ国人よ国人よ
 われ等が起たむ秋は来ぬ
 汝が生命を永遠に
 託して楽しむわが国は
 サール国に奪はれて
 悲しき憂目をみたりけり
 天は必ず暴虐に
 くみし給はず無道なる
 エールス王生命とり
 つづいてサツクス、チクターや
 そ曲津を滅ぼして
 禊を始め給ひけり
 汝等国民諸々よ
 日頃恨み晴らすべき
 秋は来れり国民
 生命を守り永遠
 平和を来す秋は今
 勇めよ勇めよ奮ひ立て
 われは神子神
 進む勇気あるならば
 決して戦に負けはせじ
 軍師エーマン只一人
 イドム城に頑張りて
 われ等国民を
 苦しめ悩めむ謀
 企図み居るを知らざるか
 今こ秋ぞこ秋ぞ
 エーマン軍師を滅ぼして
 国光を輝かし
 元天国に
 かへすは汝等が責任ぞ
 ああ惟神々々
 正義に刃向ふ刃なし
 われ等は神守りあり
 汝等も神子神
 決してためらふことなかれ
 進めよ進めよいざ進め
 国平和を来すまで
 維新大望遂ぐるまで
 悪魔エーマン亡ぶまで
 こ大敵亡ぶまで
 ひるまずたゆまず進めかし
 マーク、ラートは先頭に
 立ちてすくすく進むべし
 従ひ来れ国民よ
 汝等が生命を守るべく
 汝等が仇を酬ゆべく
 イドム城に攻め寄せよ』
 斯くて群衆は大挙して、イドム城に一斉に攻め寄せければ、軍師エーマンは、こ光景を見るより驚きあわてふためきて、高殿より身を躍らせ、水乃川激流に飛び込み、あと白浪と消えにける。
 国民を虐げ驕りしエールス
  一族ことごと鬼となりけり

 チクターは女王に悪事を勧めつつ
  神怒りに滅ぼされける

 アヅミ王を追ひ退けし後釜に
  据りしエールス夢なりにけり

 エールス栄華もわづか一年
  夢なりにけり浅まし世や

 国民はここぞとばかり奮ひ立ち
  イドム城に攻め寄せにけり。

(昭和九・八・五 旧六・二五 於伊豆別院 内崎照代謹録)
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