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文献名1霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申
文献名2第3篇 木田山城よみ(新仮名遣い)きたやまじょう
文献名3第15章 厚顔無恥〔2042〕よみ(新仮名遣い)こうがんむち
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ乳母アララギは、結婚式荘厳さににわかに嫉みに襲われ、自分娘・センリウが姫とそっくりなを幸い、姫をだまして入れ替えさせ、また罠に陥れて遠島に流してしまったである。エームス太子は替え玉に気づかず、センリウをチンリウ姫と思い込み、寵愛していた。アララギは、自分娘センリウ(=実は替え玉チンリウ姫)家宝破壊罪に対し、身内だからといって手心を加えることなく裁きを下した、とサール国人々から思われていた。そして、そ公平無私な処置が木田山城内賞賛を集めた。こ件でエームス太子からも厚く信頼されることになり、城内一切事務を取り仕切るようになったで、そ権力と声望はとみに増していった。婚礼後、祝賀宴が開かれることになった。そこでもアララギは、自分罪に対して公平な裁きを下したことで、皆から賞賛された。朝月、夕月は、アララギを気遣ってセンリウ(=実はチンリウ姫)恩赦を申し出るが、アララギは、身内だからといって刑を軽くしてはならない、と頑なに否定した。また王妃(=実はアララギ娘センリウ)もまた、サール国掟を勝手に変えてはならぬ、と断固反対をした。アララギは城内人々から一層、公平無私人という評判を取り付けることになった。しかし朝月は、センリウ重さを不憫に思い、またどうも今太子妃が本当チンリウ姫ではないような気がする、と懸念を表明した。疑われた王妃(=センリウ)は怒り、太子に朝月処罰を要求した。エームス太子は朝月に対して激しく怒り、たちまちこれも遠島刑に処してしまった。朝月が縛られて島流しに送られる姿を見て、エームス太子、太子妃(=センリウ)、アララギは愉快げに微笑みながら、大罪人が正しく処罰されたことを喜ぶ歌を歌っていた。アララギが木田山城権力を握ってからは、邪な輩を重用し、正義士はことごとく罪を着せて刑に処した。サール国には悪人がはびこり、国内各所には暴動が起こり、民恨み声は山野に満ち溢れることになってしまった。センリウと入れ替えられて島流しにされたチンリウ姫行く先は、「かくれ島」に送られることになった。こ島は夕方になると全島が波間に水没してしまうという魔島であった。アララギは自分計略が発覚することを恐れて、姫を亡き者にしようと、あえてこ島に姫を送らせたであった。また、島流しにされた朝月は「荒島」という岩石孤島に打ち捨てられ、嘆きうちに魚介を食料として月日を送ることとなった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年08月14日(旧07月5日) 口述場所水明閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年12月30日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 509頁 修補版 校定版326頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  大奥に於けるエームス王とチンリウ姫結婚式余り荘厳なるに、乳母アララギは俄にねたましく野心むらむらと起り、如何にもしてチンリウ姫センリウに酷似せるを幸ひ、悪計を捻り出し、うまうま姫を罠に陥れ、これを遠島刑に処せしめしは、憎みても余りある奸佞邪智曲者なりける。エームス王は姫替玉とは知らず、贋物をつかまされ、チンリウ姫と深く思ひ込み、昼夜心を用ひて寵愛してゐる。アララギは、しすましたりと王妃となりしわが娘と、窃かに顔を見合はせ、舌を吐き出し微笑んでゐる。いよいよ結婚式は済み、十日を経たる月明夜、殿内に於て重臣を集め、祝賀会を開かるる事となりぬ。
 エームス王始め数多重臣は、アララギ公平なる処置に感激し、各口を極めて讃辞を呈し、エームス王も亦、アララギ公平なる処置に感嘆余り、一切万事を委託して殿内総て事務を処理せしめたれば、アララギ声望は旭日昇天如く、彼が意に少しにても逆らふ者あらば、悉く手打ちにされ、投獄され、或は遠島刑に処せらるるおそれありければ、何れも恐れを為してアララギ事を口にする者なかりける。
 祝賀宴は開かれた。エームス王は立つて歌ふ。
『公心を持ちて私を
  捨てしアララギいそしかりける

 最愛吾子罪を包まずに
  島に流せと宣りし素直さ

 アララギ事を思ひ出で
  われは憐れを催しにけり』

 アララギは立つて歌ふ。
『吾王御言葉畏しさりながら
  国掟を乱し給ふな

 吾子とはいへど天地罪人よ
  依怙なき王は許し給ふな

 吾娘国宝を打ち破り
  如何で其罪逃るべしやは

 吾王はよし許すとも国津神は
  こ過ちを許すべきかは

 わが娘許さるる事あるならば
  われは代りて罪に服せむ』

 王妃は歌ふ。
『二十年をわれに仕へしアララギ
  公心を神は知るらむ

 二十年長き月日を育みし
  吾子罪をさばく雄々しさ

 センリウ罪重ければ何時までも
  かくれ島に閉ぢこめ置かむ

 万死にも値するなる大罪を
  許さむ掟我国に無し

 われは今聖君に伊添ひつつ
  サール闇を照らさむと思ふ

 アララギよ汝が清けき心もて
  わが政治補けまつれよ

 男子にも勝りて雄々しきアララギは
  サール力なるかも』

 アララギは歌ふ。
『ありがたしチンリウ姫御宣言
  たしに守りて違はざるべし

 今日よりは百上に立ち
  王政治を補ひまつらむ

 吾王よ罪を造りしセンリウに
  必ず心配らせ給ふな

 血を別けし吾子なりとて許しなば
  サール掟は乱れむ

 王思ひ御国を思ふ誠心に
  歎き涙われはしぼらじ』

 朝月は歌ふ。
『けなげなるアララギ君ましまして
  王御心照らし給へり

 チンリウ姫堅き心を和めつつ
  今日歓び招きし君はも

 チンリウ姫崇高き御姿朝夕に
  拝みまつりて国秀をおもふ

 若王はいと健かにおはしまして
  御機嫌よきが嬉しかりけり

 さりながらかくれ島にやらはれし
  センリウ姫は悲しかりけり

 大君清き心に宣り直し
  許させ給へセンリウ姫を』

 アララギは、むつくと立つて歌ふ。
『わが王よ必ず許し給ふまじ
  国掟は厳かなりせば

 朝月言葉聞くにつけ
  われは御国為に悲しむ』

 夕月は歌ふ。
『過ちて国宝をこはしたる
  センリウ姫は悲しき人かも

 国掟厳かなりとはいひなながら
  無心過ち許すべきかは

 知らず知らず過ちし罪をきためなば
  かへりて国は治まらざるべし

 夕月は生命をかけて吾王に
  センリウ姫許しを願ふ』

 王妃は歌ふ。
『朝月や夕月二人葉は
  宜よと思へど永久に許さじ

 畏れ多くも国宝を壊したる
  罪に勝れる罪はなからむ

 いや古きサール魂を
  打ち砕きたる罪は重けれ

 祖々世より伝はる水晶
  花瓶を割りし憎き罪人

 手に触るるさへも畏き御宝
  打ち砕きたるセンリウ憎しも

 吾生命あらむ限りは許すまじ
  国宝を砕きたる罪』

 アララギは歌ふ。
『姫君実にも明るき御宣言
  サール闇を照らさむ

 夜鶴焼野雉わが御子を
  思はぬもは世にあらじかし

 さりながら如何に吾子といひつれど
  こ罪ばかりは許す術なし』

 滝津瀬は歌ふ。
『アララギ雄々しき志
  聞くにつけても涙こぼるる

 かく如公平無私アララギ
  たたす御国は安けかるべし

 たをやめ女ながらも鬼まさり
  雄々しき君は国光りよ

 若王朝な夕な政治
  補けて君は永久にましませ

 常闇サール国も今日よりは
  天津日如輝き渡らむ

 姫君はイドム愛娘
  さかしく雄々しく世に臨みますも

 やがて今イドム、サール両国は
  至治太平御代と栄えむ

 木田川広き流れも今日よりは
  澄みきり渡らむ姫光りに

 大栄上ゆ吹き下す
  風暖かくなりにけらしな

 虎熊や獅子狼やからまで
  王恵みに伊寄り集ふも

 有難き御代となりけりアララギ
  司いますサール国原

 時鳥雨になきたる国原も
  今は隈なく晴れて清しき

 大栄山樹海を渡る山風は
  これ館に涼しく渡れり』

 山風は歌ふ。
『昔より例も知らぬこ
  栄を見たるわれぞ嬉しき

 野も山も緑衣着飾りて
  サール国を寿ぎ渡らふ

 さ緑樹海を渡る山風
  涼しき心王は持たせり』

 朝月は再び歌ふ。
『波奥かくれ島に送りてし
  姫心を思へば悲し

 畏れながら誠姫に非ずやと
  わが魂はささやきて居り』

 チンリウ姫は目に角を立てながら、言葉せはしく歌ふ。
『朝月ゐやなき言葉聞くにつけ
  わが魂は打ちふるふなり

 朝月ゐやなき言葉をきためませよ
  吾王われを愛しと思さば

 似たりとはいへどもわれとセンリウは
  貴賤尊卑別あるもを』

 エームス王は歌ふ。
『チンリウ姫言葉は宜よ朝月
  ゐやなき言葉われはとがめむ

 朝月かげは真白に薄れつつ
  やがて消えなむわが言葉に

 朝月重き罪をば負はせつつ
  人なき島に遠く流せよ』

 ここに王命もだし難く、朝月は王と王妃怒りにふれ、忽ち宴会席上より全身を荒縄に縛られながら、大罪人として遠島刑に処せられしこそ是非なけれ。
 あはれ、朝月はチンリウ姫を疑ひし廉により即座に重き刑に処せられ、衆人環視中を引立てられ、城外におびき出され、遂には島流し憂目を見るに到れり。
 エームス王、チンリウ、アララギはそ後姿を打ち見やりながら、愉快げに微笑みつつアララギは歌ふ。
『明らけき王さばきに朝月は
  返す言葉もなかりけるかな

 姫君を陥れむと朝月は
  言葉かまへて乱さむとせし

 天地きためは眼あたり
  朝月今はかげだにもなし

 我国掟厳しくなさざれば
  やがて乱れむ上と下とに

 吾王正しき判決見るにつけ
  末頼もしく思はるるかな』

 チンリウ姫は、
『心地よき事を見るかなゐやなくも
  われをなみせし罪酬い来て

 わが前に疑ひあれば何事も
  言挙げせよや直に判決かむ』

 エームス王は歌ふ。
『木田山城内外を乱し破らむと
  謀みし曲は看破られたり

 朝月は表面に誠を装ひつ
  爪をかくせし虎なりにけり

 曲神はわが館より追ひ出され
  荒浪上にただよふなるらむ

 チンリウ姫上につき疑ひ
  言葉出さば追ひやらふべし

 かく如正しき姫を贋物と
  疑ふやから心は曇れる』

 滝津瀬は歌ふ。
『われは今正しき判決を目あたり
  眺めて心戦きしはや

 日月は空に照れども中空に
  黒雲起りて地上にとどかず

 黒雲を払ひ給ひしわが王
  清き判決は尊かりけり

 御姿崇高くいます姫君を
  疑ふ司心あやしも』

 山風は歌ふ。
『かく如明るき姫に疑を
  かくる心は曲津なりけり

 わが王と姫命に服従ひて
  身も魂も千代に仕へむ

 アララギ明るき魂を
  われは力と謹み仕へむ』

 これより木田山城内はアララギが権威を振ひ、奸佞邪智輩を重用し、正義士は悉く難癖をつけ、或は殺し、或は流し、或は牢獄に投じければ、悪人益々跋扈して、サール国内各所に暴動勃発し、怨嗟声は山野に満ち、国家危き情勢を馴致したるぞ是非なけれ。
 ここにチンリウ姫は、乳母アララギ奸計にかかり、吾子センリウと強ひられ、且つ国宝破壊罪を負はされ、かくれ島に流されけるが、こ島は夕さり来れば荒浪為に全島没し、これにある人畜は溺死するといふ魔島なりけり。アララギは奸計発覚をおそれ、特にこ島に主人チンリウ姫を送らせたるにぞありける。又朝月は王怒りにふれて、かくれ島より約五十哩ばかり沖にある荒島といふ岩石みにて固まりし一孤島に捨てられ、歎き月日を送りつつ魚介を餌食として、天時を待ちゐたりける。
 アララギ悪しき謀計に乗せられて
  チンリウ姫は流されにけり

 朝月も亦アララギ計略に
  荒島さして流されにけり

 悪神は一度は花咲き栄ゆとも
  時到ればもろく亡びむ。

(昭和九・八・一四 旧七・五 於水明閣 林弥生謹録)
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