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文献名1霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申
文献名2第4篇 猛獣思想よみ(新仮名遣い)もうじゅうしそう
文献名3第20章 悔悟花〔2047〕よみ(新仮名遣い)かいごはな
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2016-11-03 04:14:48
あらすじ引退を宣言して身を隠していたナーリスは、部下ナイトを数百従えて反乱軍群集前に整然と現れ、声高らかに悪人たち滅亡を告げた。そして、政局混乱は自分が収めて善政を敷くことを約束し、民衆に武器を収めて元営みに立ち返るよう説得した。反乱軍群集側からは夕月が現れ、ナーリスを中心として新しい国政を立て直すことを宣言した。ナーリスと夕月は混乱収拾を祝しつつ、述懐歌を歌った。ナーリスと夕月は部下を従えて城内に入り、万事後片付けをすると、重臣たちを集めて国乱を鎮定した祝賀席を設けた。一同は述懐歌を歌いあい、悪女・アララギがイドム国からやってきたことが国難始めであったと回顧した。ナーリスは、王言葉に従って早くサール国に帰還したために、すんでところでサール国自滅を防ぐことができたことを述懐した。かくする折りしも、数千騎士たちがイドム国から逃げ帰ってきた。サール軍副将チンリンは、エールス王・王妃・左守チクター・軍師エーマンら首脳陣はすべて命を落とし、アヅミ王反攻勢い強く、サール軍はイドム国を追われてしまったことを報告した。ナーリス、夕月ら一同はこ報告に顔色を変え、茫然として言葉を失ってしまった。そして、チンリンから王落命について聞くと、一同は、他国を戦によって奪おうとした欲罪により、王一族血筋が絶えることになってしまったことに思い至った。ナーリスは、残された重臣一同、誠一つに心を合わせて国再建を行う決意を表した。そして、エールス王が残した戒めを忘れず、今後は天地神を畏れ謹んで誠道を進んで行くことを、改めて重臣一同に示した。ナーリスはサール国内に王一族不幸を告示し、盛大な葬儀を執り行った。そして、木田山城内に荘厳な主御舎を造営し、朝夕、正しい政治が行われるようにと祈願を怠らなかった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年08月15日(旧07月6日) 口述場所水明閣 筆録者森良仁 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年12月30日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 537頁 修補版 校定版425頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm8120
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本文の文字数3397
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本文  贋エームス王や、贋チンリウ姫を始め、乳母アララギに捨台詞を残し城内を立ち出でたる左守司ナーリスは、群衆犇き立てる大混乱巷に数百騎士を従へ、隊伍整然として現はれ来り、十字路に立ちて、声高らかに歌ふ。
『サール国津神
 木田山城人々よ
 鎮まり給へ吾こそは
 イドム国に攻め寄せて
 勝鬨あげしナーリスよ
 今は左守神となり
 木田山城に帰りしが
 エームス王は悪神に
 生命奪はれ怪しかる
 贋エームス君臨し
 悪逆無道アララギが
 娘が妃となりすまし
 暴威を振るひ居たりしが
 愛国志士団体に
 攻め立てられし悪魔等は
 忽ち煙と消えにけり
 かくなる上は人々よ
 最早騒ぐに及ぶまじ
 サール国を永久に
 平安無事に守りつつ
 各業に安んじて
 其生活を楽しめよ
 吾は之より城内に
 騎士を率ゐて立帰り
 乱れ果てたる秩序をば
 全く元に立て直し
 善政を布かむ覚悟なり
 国津神等国人よ
 心を安んじ給ふべし
 鎮まり給へ諸人よ
 其他百国津神
 一先づ鉾を納めませ
 エールス王は遥々と
 イドム国を言向けて
 時めき給ふ功績を
 汝等国人恐れずや
 エールス王が軍隊を
 数多引連れ此国に
 再び帰りますならば
 汝が生活は弥益も
 安く楽しくありぬべし
 一時に鎮まれ疾く早く
 吾は左守ナーリスよ
 真悪魔は亡びたり
 平地に波を起すべき
 理由は無からむ速かに
 元如くに鎮まれよ
 後は吾々汝等が
 望みを詳細に聞え上げ
 其目的を達すべし』
 斯く歌ふ折しも、向ふ方より群衆に押されながら、馬上ゆたかに進み来る勇士は、音に名高き夕月なりけり。
 夕月は歌ふ。
『悪魔昼夜にはびこりし
 木田山城は鎮まりぬ
 吾等率ゆる大丈夫
 御国を思ふ真心は
 天と地とに通じけむ
 暴逆無道アララギも
 奸佞邪智なるセンリウも
 蠑螈精と聞えたる
 贋エームス王までも
 今は全く亡びたり
 もう此上は吾々は
 左守神を力とし
 乱れ果てたる国原を
 清め澄まして元
 至治太平世となさむ
 ああ惟神々々
 天地御恵みに
 国に仇なす曲神は
 全く影を隠しけり
 汝等心を安んぜよ
 サール国は生れたり
 亡び行くなる国原は
 汝等群衆真心に
 蘇りたる嬉しさよ
 いざ是よりは国人よ
 ナーリス左守を信頼し
 一切万事を委ねつつ
 心平穏に引けよかし
 ああ惟神々々
 神御稜威御前に
 感謝を捧げ奉る』
 斯くて左守と夕月は十字街頭に大衆を率ゐたるままで邂逅し、互に暴動無事治まりしを祝し合ひつつ、夕月は先づ歌ふ。
『常暗雲は晴れにつ久方
  月日は清く輝き渡れり

 汝こそは左守神よ乱れたる
  此縺れを解かせ給へり

 曲神は残らず亡び失せにけり
  いざ是よりは君に頼らむ』

 ナーリスは歌ふ。
『遥々とイドム国より帰り来し
  間もあらなくに此騒ぎみし

 夕月真心力とし
  吾は仕へむ木田山城に』

 これより左守ナーリスは、愛国団体隊長夕月と共に騎士に守られ、城内深く浸入し、一切万事後片附をなし、重臣等を一間に集めて国乱鎮定祝賀会を催しける。重なる参会者はナーリスを初め夕月、滝津瀬、山風、青山、紫、玉山等数十人重臣なりける。
 青山は歌ふ。
『天地御稜威と左守司
  夕月司に治まりしはや

 刈菰乱れ果てたる国原も
  君力に治まりにけり

 国津神国人等は悪政に
  苦しめられて喘ぎ居しはや

 かくならば思ふことなしサール国は
  いや益々に栄え行くらむ』

 紫は歌ふ。
『長き日を鄙に潜みて国状態
  吾は細々調査べ来にけり

 只ならぬ大事起ると常々に
  忠告せしも聞かれざりけり

 城内に数多曲津潜み居て
  益々国は乱れ果てけり

 怪しかる女アララギ覇をとなへ
  木田山城は闇となりける

 紫雲は御空に靡けども
  中空雲黒々覆ひし

 行先は如何ならむとわづらひし
  心遣ひも夢となりしか

 エールス戦に出でしより
  一入サール国は乱れし』

 玉山は歌ふ。
『イドムより怪しき女入り来り
  サール国は乱されにけり

 捕虜として捕へ帰りし魔女に
  木田山城は傾きしはや

 今日となりて吾等心安まりぬ
  亡びむとする国ちを

 如何にして亡びむ国を生かさむと
  朝夕心を砕きけるかな』

 山風は歌ふ。
『エームス吾若王御心を
  蕩かせ奉りし魔女かな

 エームス若王魔性に謀られ
  生命果敢なくならせ給ひぬ

 城内菖蒲主といふ
  蠑螈は王を失ひしはや

 これよりは蠑螈精を言向けて
  国災清く払はせよ』

 滝津瀬は歌ふ。
『木田川流れはいたく濁りたり
  魔性女を捕へ来しより

 斯く如安く治まりし有様を
  イドム王に知らせたきかな

 吾王はイドム城を亡ぼして
  功を永久に立てさせ給へり

 治まりし国姿をイドムなる
  王に見せなば喜び給はむ』

 夕月は歌ふ。
『木田城に吾は久しく仕へつつ
  乱れ行く世を歎かひて居し

 アララギ木田山城に入りしより
  人心は騒ぎ初めたり

 アララギを斬つて捨てむと幾度か
  思へど詮なく忍び居たりき

 天時漸く到り群衆を
  率ゐて吾は曲津を討ちたり

 神々恵みに吾は守られて
  日頃望み遂げし嬉しさ

 折も折左守司帰りますと
  聞きてゆ吾は勇み立ちたり

 人和を得たる軍は何処までも
  亡ぶ事なく勝ち終せたり

 城内を騒がせ奉りし吾罪を
  身に引き受けて鄙に下らむ』

 左守司ナーリスは歌ふ。
『国人清き心集まりに
  曲は影なく亡び失せたり

 刈菰乱れ漸く鎮まりて
  神御前に祝言宣るも

 エールス言葉に従ひて
  急ぎ帰れば国乱れ居り

 今暫し帰国後るる事あらば
  サール国は自滅し居るらむ』

 斯く歌へる折もあれ、数千騎士を率ゐて逃げ帰りたる副将チンリンは奥殿深く進み来り、左守ナーリスに向ひ、挙手礼を捧げながら歌ふ。
『エールス王悲しくも帰幽れましぬ
  サツクス姫も身失せ給ひぬ

 チクター左守を始めエーマン
  軍師も共に滅び失せたり

 アヅミ王勢強く盛り返し
  吾等が味方は脆くも破れぬ

 かくならばイドム国に用なしと
  騎士を率ゐて急ぎ帰りし』

 此報告に左守を始め夕月其面々は、顔色をサツと変へ、茫然として暫し無言幕を続け居たりける。
 ナーリスは愕然として歌ふ。
『思ひきや武勇聞え高かりし
  吾等王は帰幽れ給ふか

 サツクス君も身うせしと
  聞くにつけても悲しさに堪へず

 左守まで軍師君まで身罷りしは
  如何なる事か聞かまほしけれ

 漸くにサール治まりを
  喜ぶ間もなく此便り聞くも』

 チンリンは歌ふ。
『何故か訳は知らねど吾王は
  神譴責にあひ給ひけむ

 人々語るを聞けば主
  皆いましめと定めゐるらし

 兎に角に人国をば奪ひたる
  報いなりせば詮術なけむ』

 左守は歌ふ。
『恐ろしき事を聞くかな他国を
  奪はむとする戦有様

 エールス血統は亡びたり
  サール国を如何に守らむ』

 夕月は憮然として歌ふ。
『兎にもあれ角にもあれや人はただ
  誠道をあゆむべきなり

 日月威勢輝く吾王も
  亡ぶる時ある世なるかな

 今日よりは誠一つを力とし
  サール国を安く治めむ』

 滝津瀬は歌ふ。
『欲といふ醜曲津に誘はれ
  王は御国を失ひ給ひし

 此広きサール国にましまさば
  斯かる歎きはあらざらましを

 吾力頼み過ぎたる報いにて
  王は生命を失ひ給ひぬ

 全滅憂目にあひしエールス
  王行末淋しかりけり

 愛善誠なければ人身は
  身も魂も終に亡びむ』

 山風は歌ふ。
『嶮しかる大栄山を乗り越えて
  生命を捨てし王を悲しむ

 吾王はイドム城に攻め寄せて
  尊き生命を捨てさせ給へり

 歎きても及ばじもと思へども
  なほ歎かるる今宵なりけり

 何事も誠一つに進みなば
  世に過ちはあらじと思ふ』

 左守は歌ふ。
『かくならば最早是非なし吾々は
  誠道を進むみなる

 エールス王は吾等にいましめを
  永遠に残して去りましにけり

 天地神を恐れみ謹みて
  誠道に進み行くべし』

 斯く歌ひ終り左守ナーリスは、城内一般にエールス王一族不幸を発表し、国民代表者を集めて盛大なる葬式を執り行ひ、木田山城内に荘厳なる主御舎を造営し、朝な夕なに正しき政治を行はせ給へと祈願怠りなかりける。
(昭和九・八・一五 旧七・六 於水明閣 森良仁謹録)
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