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文献名1霊界物語 入蒙記 山河草木 特別篇
文献名2第1篇 日本より奉天までよみ(新仮名遣い)にっぽんよりほうてんまで
文献名3第5章 心よみ(新仮名遣い)こころおく
著者出口王仁三郎
概要
備考2023/12/29出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-12-29 15:23:35
あらすじ話を聞いて、無抵抗主義、万有愛を標榜する教団教主が馬賊と提携することに躊躇していた日出雄であった。しかし、政治行き届かない蒙古荒野では馬賊も立派な政治的機関であり、徳をもってなづければ虎でも狼でも信服するもだ、と考えを改めた。そして、神前に拍手して祝詞を上げるみが宗教家芸でもあるまい、心境を一変し、宗教的に世界統一を図り地上に天国を建設する準備として、新王国を作ってみようと思い立った。蒙古は言語学上からも、古事記本文からも、東亜根源地・経綸地である。宗教的、平和的に蒙古を統一し、東亜連盟実現基礎を立ててみたい、と思い立った。現在は事件中身だが、裁判終わるを待っていたら二年、三年はかかってしまうという。ひとつこれは乗るか反るかで、元より身命を神に捧げた自分である、と大覚悟を決めたであった。
主な人物【セ】-【場】-【名】源日出雄、唐国別、張作霖、張宗昌、盧占魁、亀山上皇、キリスト 舞台 口述日1925(大正14)年08月15日(旧06月26日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年2月14日 愛善世界社版40頁 八幡書店版第14輯 562頁 修補版 校定版40頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rmnm05
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本文  日出雄は唐国別談を聞いて暫く俯いて考へ込んだ。日出雄心天に忽ち大光明が輝いた。満州や蒙古に活動して居る馬賊といつても、決して一般人考へて居るやうな兇悪乱暴者計りでもあるまい。中古我国元亀天正群雄が割拠して居たやうなもで、規律整然たるもであらう。決して人財宝を掠奪したり、殺人強姦などを行ふもではあるまい。兎に角徳を以て馴づけたなら虎でも狼でも心底より帰順するもだ。殊に蒙古馬賊に至つては、弱者を助け狂暴なる者を誡め、社会弱き人民を保護する任に当ると聞いて居る。政治行届かない蒙古広野では馬賊も一つ政治的機関だ。今日満州王をもつて自任して居る東三省保安総司令である張作霖だつて、張宗昌だつて、其他名ある督軍達は皆馬賊から出て居るだ。これを考へても馬賊は決して日本山賊や泥棒やうなもではあるまい。一層こと盧占魁と提携して蒙古に新彊に王国を建設し、日本魂本領を世界に輝かすも男子として面白い事業だ。併し馬賊といつても種々種類があつて掠奪みを以て事とする小トル団体もある。善悪正邪混淆して居る世中だ、天下大事と思へば小さいことに齷齪して居る訳には行かぬ。盧占魁如き天下に驍名を馳せた馬賊頭目は、決して人民を苦しめるやうなことはせないだらう。彼と宗教家とが提携したつて別に不都合はあるまい。大神業御経綸に奉仕する一歩としては止むを得ない今日場合だ。広大なる地域を有する蒙古に一大王国を建設すると云ふ計画は、事成否は別として、日本男子としては実に壮快極まる試みだ、宗教家だと云つて神前に拍手し祝詞みを上げて居るが芸でもあるまい。万有愛主義から是非決行して見よう。心境を一変し、宗教的に世界統一を図り地上に天国を建設する準備として先づ新王国を作り、東亜聯盟を計るが順序だらう。あゝ思へば実に壮快だ。腕が鳴り血が踊るやうだ。言語学上から見ても、古事記本文から見ても、蒙古は東亜根元地であり、経綸地である。日本人は昔から、義勇民が開国以来未だ一寸地も外敵に侵されないと云つて自慢して居るもがあるが、併し吾々祖先は蒙古軍為めに拭ふべからざる大国辱を受けて居るだ。元寇役はどうだつた。国内上下挙つて蒙古襲来声に震駭し、恐怖し、其度を失ひ、畏多くも亀山上皇は身を以て国難に当らむことを岩清水八幡に祈願し給ふた結果、全国各大社には奇瑞続出して遂に伊勢神風となり、蒙古は十万軍を西海浪に沈めた事は元明史略其他史実にも明記され、生命を全ふして帰り得たるも僅に三人といふことだ。併し乍ら我国は是をもつて日本男子武勇を誇る事は出来まい。日本を守りたまふ神明加護と畏多くも亀山上皇宸襟を悩まされたそ結果である。日本は神国、神守りたまふ国で、決して外敵窺ふこと出来ない磯輪垣秀津間国、細矛千足国と誇つて居るが、今日日本現状は外敵に対しさう楽観して居られるだらうか、軍器改良された今日では、少々神風位で敵艦を覆すと云ふ事は到底不可能であらう。又そんな神頼み計りやつて居て実行せないならば、到底国を保つ事は出来ないだらう。扨て吾々祖先が蒙古十万大軍に脅かされた末代大国辱を回復し、建国精神と国威をどうしても一度中外に発揚して我歴史汚点を拭はねばなるまい。宗教的、平和的に蒙古を統一し東亜聯盟実現基礎を立て見たいもだ。自分は今日黒雲かかつた、世人から疑を受けて居る身上である。此際グヅグヅせず思ひ切つて驚天動地大活動をやつて見たいもだ。盧占魁に会つたらば屹度自分意志を受け入れるであらう。自分は今裁判事件中だが弁護士話によると、本問題は神霊問題だから二年や三年中には到底解決がつくまいとことだ。これ解決を待つて居ようもなら、我民族は日に月に窮地に陥るばかりだ。世界到る所排日問題は勃起し外交は殆ど孤立して居る。今中に我同胞為に新植民地でも造つておかねば我同胞は遂に亡ぶより外はない。併し乍ら大本信徒にこんな事を云はふもならそれこそ大騒動だ。併し面白い、ひとつやつて見よう乗るか反るかぢや、元より身命を神に捧げた自分だと大覚悟を究めたである。

 大本は野火燃え立つ如くなり風吹く度に拡がりてゆく
 こ深き経綸は惟神只一息人心なし
 神審判に今や逢坂人は知らずに日を送りつつ
 いつ迄も醜曲神荒びなば危ふからまし葦原
 世移らふ状をながめては起つべき時来るを悟る
 排他的既成宗教はあとにして開き行かなむ海外まで
 吹かば吹け醜木枯強くともわれには春備へこそあれ
 白妙袖をしぼりつつ世を歎くかな隠れたる身も
 思ひきや御国為に尽す身をあしさまに云ふ醜たぶれら
 身も魂も囚へられたる吾なれど心は広し天国
 機緯織る身魂こそ苦しけれ一つ通せば一つ打たれつ
 神業をなすが原玉草は踏まれ蹂られ乍ら花咲く
 天地神に仕へて日御子に赤き心を尽し奉らむ
 身はよしや虎伏す野辺に果つるとも御国為に命惜まず
 故郷にこせし母を思ふ間もなくなく尽す神国
 月は今地平線下に潜みつつ世黎明を待つぞ床しき
 惟神真定めてし人出でずば国は危ふし
 花見むと出でしにあらず野桜吾衣手に香をな送りそ
 言霊助け天照る日本はすべて国を知らす神国
 天津日も只一つなり地上も一つ王で治まりて行く
 皆人眠りにつける真夜中にさめよと来鳴く山郭公
 郭公声は御空に鳴きかれて月みあとにふるへる
 国ため尽す谷間真人を雲井に告げよ山郭公
 心み誠道にかなふとも行ひせずば神は守らじ
 言挙げ条は数々ありながら暗夜をおしわれぞ甲斐なき
 君為御国為に真心を尽して後は津見に問はれぬ
 吾を知る人こそ数多ありぬれど我魂を知る人は世になし
 西東南も北も天地も荷なうて立てる神御柱
 世為に尽す心数々を誰も白波立ちさわぐなり
 現し世に生るも神御心ぞまかるも神恵とぞ知れ
 そよと吹く風にも声あるもを神御声聞えざらめや
 夜な夜なに詣うでてあつき涙しぬ神座山荒されし跡に
 わが涙こりては霖雨雪となり泉となりて御代を清めむ
 神御名を世界に広く現はして永久に生きなむ律に死すとも
 古エスキリストも甞めまじきそ苦しみを我に見る哉
 足乳根老います母を偲びつつ出で行く吾は涙こぼるる
 濡衣ひる由もなき悲しさに霧島山火こそ恋しき
 月一つ御空にふるひ地に一人友なくふるふ我ぞわびしき
 退きも進みもならぬ今世は神み独り力なりけり

(大正一四、八、一五、加藤明子筆録)
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