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文献名1霊界物語 入蒙記 山河草木 特別篇
文献名2第2篇 奉天より洮南へよみ(新仮名遣い)ほうてんよりとうなんへ
文献名3第8章 聖雄と英雄よみ(新仮名遣い)せいゆうとえいゆう
著者出口王仁三郎
概要
備考2024/1/5出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ データ凡例 データ最終更新日2024-10-21 15:42:43
あらすじ水也商会佐々木が通訳となって、盧占魁と日出雄会見が始まった。盧占魁は目もと凛とした英雄的人物で、日出雄、真澄別は相提携するに可と判断した。盧占魁はかつてから日出雄名を聞いていたと言い、ぜひ日出雄下で使ってください、と挨拶した。日出雄は共に東亜存立ために尽くしましょう、と返した。ただこれだけで、両者会談は済んだであった。二月十六日、盧占魁公館で内外蒙古救援軍組織について、会合があった。会議大略は、張作霖了解を得ること、武器を購入すること、大本ラマ教を創立し、日出雄がダライラマ、真澄別がパンチェンラマとなり、盧占魁を従えて蒙古に進入すること、とであった。元来、蒙古で日本人が蒙古人に布教することは禁じられているが、日出雄は五大教宣伝使でもあるで、容易に宣教を行うことができるであった。一同が準備を行ううちに、二月十八日、張作霖から盧占魁に対して、内外蒙古出征命が下ってきた。十個旅団が組織され、日地月星を染め抜いた大本更始会徽章が旗印となった。また、日出雄は大本ラマ教経文を、盧占魁公館内にて神示によりしたためた。
主な人物【セ】源日出雄、佐々木弥市、真澄別、盧占魁【場】岡崎鉄首、唐国別、大倉伍一、揚萃廷、守高、名田彦、王元祺【名】孫逸仙(孫文号)、井上兼吉、揚成業、張作霖、基督、神素盞嗚尊、大八洲彦命、釈迦如来、坤金神、豊国主命、観世音菩薩、木花姫命、伊都能売御魂、弥勒最勝妙如来、木花咲耶姫、阿難尊者 舞台 口述日1925(大正14)年08月 口述場所 筆録者 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年2月14日 愛善世界社版69頁 八幡書店版第14輯 573頁 修補版 校定版69頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rmnm08
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本文  寒月冴渡り、烈風吹荒ぶ奉天日本租界を離れて二台自動車はまつしぐらに東三省陸軍中将盧占魁が公館に着いた。一方は大本前教主輔大怪物と仇名をとつた源日出雄、一方は陸軍中将で蒙古英雄、馬賊大巨頭盧占魁と会見である。真澄別、岡崎鉄首、唐国別、佐々木弥市、大倉伍一、揚萃廷、守高、名田彦面々は盧氏公館にストーブを中に置き、円形座を作つて椅子に腰打掛け、蒙古進出英雄的協議に耽つた。佐々木は支那語を能くするで、彼が日出雄と盧と通弁を勤めた。
 佐々木は盧占魁を指さし、
『先生、此方が盧占魁さんです』
日出雄『成程、一見しても目元凛とした英雄的人物だ。此男ならば何も云ふに及ばぬ、一切万事を委任せやう。真澄別さん、あなた何う考へますか』
と真澄別を顧みた。真澄別は微笑し乍ら『宜しからう』と答へた。盧は日出雄に向つて云ふ。
『私は十年前に七万精兵を引率して、大庫倫市を占領しました。其時は二十九歳でした。それから新彊を取り雲南迄活動しました。それから奉直戦争にも参加した事もあります。私が上海にゐる時孫逸仙に会ひ、先生御高名を承はり、機会があらば御面会を願ひたいと、常に憧憬して居りましたが、機縁が熟したと見えて、今日拙宅に於て先生に面会する事を得たは、私に取つては光栄至りです。どうか私をあなた下に使つて下さい。屹度貴方目的に叶ふべく活動をしてお目に掛けるでせう』
日出雄『相互に協心戮力、東亜存立と開発為に尽しませう』
 二人応答は之にて済んだである。宗教界英雄と馬賊界英雄とが肝胆相照して空前絶後大業を企図したは、実に小説的趣味を帯びて居るやうだ。
 日出雄と守高、通訳王元祺は盧氏公館に宿泊する事となり、其他人々は水也商会其他を指して帰つて行く。正月十一日月光は西空に傾いてゐる。
 二月十六日盧公館に於て内外蒙古救援軍組織に付き、志士会合があつた。午後八時頃唐国別、真澄別其他志士は会議大略を報じて来た。其会議結果は、先づ張作霖諒解を得る事、武器を購入する事及び大本喇嘛教を創立し、日地月星教旗を飜へして日出雄は達頼喇嘛となり、真澄別は班善喇嘛となり盧占魁を従へて蒙古に進入する事であつた。
 元来蒙古は支那属邦である。そして一百六名蒙古王は北京に参勤交代を行つてゐる。日本人が支那領地に日本宗教を開く事は条約上許されてゐない。併しながら彼は支那新宗教五大教高級宣伝使である。それ故彼が蒙古に宗教を宣布するは公然権利であつた。日本は仏教家や神道家が支那に渡つて布教宣伝をやつて居る者も沢山あるが、それは在留日本人に限られてゐる。支那人に宗教を宣伝する事は許されてゐない。そして日本在留民一部に宗教を吹込んでゐる位が関山である。彼日出雄は五大教宣伝使たるを以て容易く宗教宣布をなす事を得る地位にあつたは、今回企に対して最も好都合であつた。協議結果盧占魁命に依つて、揚萃廷は喇嘛服や附属品を調製すべく、急遽北京に赴いた。日本人井上兼吉は盧占魁等命に依つて、哥老会残党揚成業其他大頭株に対し盧氏が挙兵入蒙報告を兼ね応援を求むべく、綏遠ならびに帰化城方面へと出て行つた。揚成業は哥老会大頭株であつて、一万七八千部下を有し、盧今回壮挙に対し極力後援せむ事を誓つたである。
 有志は蒙古進出準備為東奔西走し、北京に走る者、蒙古に使する者、日本に帰る者など大活気が湧いて来た。越えて二月廿八日民国十三年正月廿四日愈々東三省保安総司令張作霖より、盧占魁将軍に対し、内外蒙古出征命が下つて来た。同志面々は欣喜雀躍して今更如く早速諸般準備に着手せんと揚々として四方に飛んだ。軍隊を十個旅団となし、日地月星を染抜いたる大本更始会徽章を旗印となし、それに第一旅団より第十旅団迄刺繍を施したる軍旗や司令旗を誂へる事となつた。そして大本喇嘛教旗として日地月星を染抜いた文字無し神旗も共に調製する事と定めたである。何れも意気天を衝き已に満蒙天地を併呑して了つた様な慨があつた。彼源日出雄が盧公館に滞在中、試に作つた詩がある。此詩は彼計画一部を現はして居る如うだから左に摘載しておかう。

    ○
 天時地利得人和  今丈夫救民立覇
 是宇宙神聖之命  義軍嚮処若竹破
    ○
 王仁有一万精兵  樹仁義旗進故洲
 嗚盛哉神軍陣形  山河草木靡威風
    ○
 防寒旅装漸調了  奥蒙荒原将跋渉
 神兵猛虎破竹勢  旗鼓堂々進庫府
    ○
 内外蒙古惟神洲  正義軍旅有天佑
 勿躊躇蒙古丈夫  勝利都城在庫府
    ○
 山河千里奉天空  日月星辰同蜻洲
 神雄連馬為出陣  蒙古荒原靡英風
    ○
 神が表に現はれて  善悪正邪を立別ける
 高天原より降り来て  寒風荒ぶ荒野原
 神馬に鞭ち進み行く  仁義軍に敵は無し
 進めよ進めいざ進め  神は汝と倶に在り
 神に叶ひし汝等  勇気は天地に充満し
 山河草木ことごとく  靡き伏すなり神軍に。
    ○
 仁義旗を押立てて  進む吾等は神軍ぞ
 来れよ来れ皆来れ  故国に仇なす曲神を
 千里外に追散らし  祖先造りし神洲を
 神稜威に回復し  都を中央に奠めつつ
 上は活仏諸王より  下蒼生に至る迄
 救はむ為め此軍  神は吾等と倶にあり
 人は神子神宮  神に従ひ進む身は
 如何なる曲も障らむや  進めよ進めいざ進め
 仁義軍に敵はなし。
    ○
 路は三千六百里  奉天城を後にして
 王仁率ゐる義勇軍  獅子奮迅勢で
 悍馬に鞭ち進み行く。
    ○
 我は神軍王天竜  皇天皇土勅を受け
 獅子奮迅勢で  仁義軍を守りつつ
 神まにまに進み行く。
    ○
 道は九千八百里  奉天城をあとにして
 一万有余神卒は  轡を並べて進み行く
 寒風烈しき外蒙地  如何なる敵来る共
 我には神守護あり  進めよ進め快男児
 勇めよ勇め神軍士。
 日出雄は大本喇嘛教経文を、盧公館内に於て神示に依り認めた。
    ○
弥勒如来精霊下生印度霊鷲山成長顕現東瀛天教山将以五拾弐歳対衆生説明苦集滅道開示道法礼節再臨而顕現仏縁深蒙古為達頼喇嘛済度普一切衆生年将五拾四歳。
    ○
 ヒマラヤ山より降り霊本に育ちて今や蒙古に現はる
    ○
 三柱御子を引連れ降りたる達頼は弥勒下生なりけり
    ○
 興安嶺山秀生み出す瑞御霊蒙古に再び現はれにけり
    ○
 観世音最勝妙智大如来救世為に達頼と化現す
    ○
 掌中に五大天紋皆流紋固く握りて降る救世主
    ○
 基督聖痕迄も手に印し天降りたる救世活仏
    ○
 神素盞嗚尊聖霊、万有愛護為め大八洲彦命と顕現し、更に化生して釈迦如来と成り、印度に降臨し、再び昇天して其聖霊蒙古興安嶺に降り、瑞霊化生肉体に宿り、地教山に於て仏果を修了し、蜻洲出生肉体を藉りて、高熊山に現はれ、衆生を救ふ。時に年歯将に二十有八歳なり。二十九歳秋九月八日更に聖地桶伏山に坤金神豊国主命と現はれ、天教山に修して観世音菩薩木花姫命と現じ、五拾弐歳を以て伊都能売御魂(弥勒最勝妙如来)となり、普く衆生済度為め更に蒙古に降り、活仏として、万有愛護誓願を成就し、五六七神世を建設す。
 南無弥勒最勝妙如来謹請再拝
    ○
瑞霊弐拾八歳にして成道し、日洲霊鷲山に顕現し、三拾歳にして弥仙山に再臨し、三十三相木花咲耶姫と現じ、天教山秀霊と現じ最勝妙如来として、五拾弐歳円山にて苦集滅道を説き道法礼節を開示す。教章将に三千三百三十三章也。五拾四歳仏縁最も深き蒙古に顕現し、現代仏法邪曲を正し、真正仏教を樹立し、普く一切衆生をして天国浄土に安住せしむ、阿難尊者其他仏弟子精霊随従す。将に五六七祥代完成万民和楽大本なり。
 惟神霊幸倍坐世
 南無最勝妙如来

 斯かる大活劇脚色最中に日出雄は優美なる詩句に筆を動かす余裕を綽々として有つて居た。

   静かなる夜
 静かな夜なり  メリメリと
 氷解くる音に  暖い春が流れる
 あゝ何といふ  嬉しい音だらう
 花笑ひ  蝶舞ふ
 天国浄土  出現も
 やがて近いだらう。
    ○
 渤海湾氷  日々に解けて
 海神奏づる  神秘
 浪中から  長閑に聞える
 あゝ嬉しい  勇ましい
 春曲  陽炎が静に燃える。
   私昨今
 私脳裡  暗黒から明るみへ
 勇ましく雄々しく  煙様な
 期待が流れて  ぐるぐる廻る
 走馬燈やうに  聖地母上妻子
 弟妹愛児  数多信徒
 あゝそれは  私過去断片だ
 半世俤だ  現世縮図だ
 さて今日から  張り替へる
 走馬燈は  随分世界
 見物だらう。
(大正一四、八、筆録)
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