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文献名1霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
文献名2第1篇 花鳥山月よみ(新仮名遣い)かちょうさんげつ
文献名3第1章 信人権〔1768〕よみ(新仮名遣い)しんじんけん
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ物語の背景バラモン教の根源地たるインドは、七千余国を一団となす地であり、浄行(僧侶階級?)、刹帝利(クシャトリア=武士)、首陀(シュードラ=隷属民)、毘舎(ヴァイシャ=商人)、その他の階級が設けられていた。一方、ウラル教がデカタン高原の一角に勢力を築き、バラモン教の本拠ハルナの都に向かって教線を拡大しつつあった。この状況に、バラモン教の大黒主は「宣伝将軍」を各地に遣わし、とくに大足別将軍に数千の兵を与え、討伐を主目的として出発せしめていた。舞台となるトルマン国は、デカタン高原の最も土地の肥えた所にあり、国土は広くはないが、かなりの人口を持っている。そして、地理上、代々ウラル教を報じていた。大黒主は、トルマン国にもバラモンの勢力を広めるため、寵臣キューバーに命じて、スコブツエン宗という、名前は違うが内容は同じ一派を立てさせ、トルマン国にて布教させた。しかし、王家・有力者の人々はスコブツエン宗に入信することはなかった。キューバーは、大黒主の寵臣として、また密命を受けた身として、特殊の権利と地位を与えられていた。バラモン軍の将軍たちでさえも、キューバーに従わざるを得なかった。キューバーのスコブツエン宗は、バラモン教に輪をかけて難行・苦行を重んじる残酷な宗旨である。ある小さな山里の古ぼけた祠の前で、二人の三五教徒の首陀、レールとマークが、バラモンの批判をしている。その現世的なやり方、差別をあげつらい、首陀向上運動の進展、信仰の独立を目指している。そこへ、スコブツエン宗のキューバーが現れた。首陀たちはにわかに話題を転じ、さっさと逃げてしまう。キューバーは、耳さとく大黒主への反逆を聞き取って姿をあらわしたが、レールとマークもいち早く山林に姿を隠してしまった。レール、マークは再びキューバーの悪口に花を咲かせるが、またもやキューバーが追ってくるのを認めて、山林の奥へ逃げてしまった。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年02月13日(旧01月21日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版7頁 八幡書店版第12輯 391頁 修補版 校定版7頁 普及版2頁 初版 ページ備考
OBC rm7001
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本文  往古文化の中心、仏祖の出現地なる七千余ケ国をかためて一団となしたる印度は浄行、刹帝利、首陀、毘舎其他各種の階級が設けられて居た。殊に印度はバラモン教の根元地とも云ふべき国である。さうしてウラル教はデカタン高原の一角に、相当に勢力を保ち、バラモン教の本城ハルナの都に向つて、ややもすれば教線を拡張し、大黒主の根底を覆へさむとするの慨があつた。茲に大黒主は宣伝将軍を四方に遣し、殊にこの方面は大足別将軍に数千の兵を与へて討伐のみを主たる目的にて出発せしめたのである。扨てデカタン高原内の最も土地肥たるトルマン国は余り大なる区域ではないが、相当に沢山な人が住んで居る。さうして地理上の関係からウラル教を奉じて居た。トルマン国の王の名はガーデンと云ふ。ガーデンはウラル教を信ずるでもなく、又排斥するでもなく、祖先伝来の宗教として、弔ひの儀式にのみ用ふる位の観念を持つて居た。然るに国民の過半数はウラル教を奉じ、一部分はバラモン教に入り、二三分通りはスコブツエン宗に新に入信する事となり、其勢ひは燎原を焼く火の如くであつた。ハルナの都の大黒主はバラモン教の宣伝使を遣はして、トルマン国を全部バラモンの勢力範囲になさむものと、いろいろ苦心の結果、到底バラモンの名にてはこの国の人心に投じない事を悟り、狡猾にして万事抜目のない大黒主は、日頃手慣けおいた、寵臣のキユーバーに命じ、バラモン教の名を避けて、スコブツエン宗と云ふ、変名同主義の宗教を築かせ、先づ第一にトルマン王を帰順せしめむと百方尽力して居たのである。トルマン王のガーデンには千草姫と云ふ王妃があり、太子はチウイン、王女はチンレイと云つた。左守の司をフーランと云ひ、妻モクレンとの中にテイラと云ふ一人娘があつた。右守の司はスマンヂーと云ひ妻は已に此世を去り、ハリスと云ふ一人の娘をもつて居た。然るに王を初め、左守右守はバラモン教はもとより、スコブツエン宗には何程勧められても入信せず、体的方面の政治のみに没頭して居たのである。茲にバラモン軍の大足別が、俄にトルマン城の攻撃を開始した経緯について、其大略を述べて見ようと思ふ。
 トルマン城を去る十数里を隔てた、或小さき山里の古ぼけた祠の前で、二人の首陀が何事か頻に囁き合つて居た。春の初とは云へど、未だ風は寒く青草の芽は去年の記念物たる長い枯草の間から細長く空を覗いて居る。
レール『信仰的に自覚した吾々の擡頭を見て、バラモン階級の鬼畜どもは周章狼狽し、尠からず戦慄し恐怖を感じたものと見える。彼奴等は自分等の占有せる支配の地位たる宗教上、経済上より顛覆しつつある己れ自身を解し、哀れ至極にも泣き面をかわき、勃興せる三五運動の大征伐に向つて今や死物狂ひになつて居る。溺れむとするものは毒蛇の尻尾でも生命限りに掴まむとするものである、諺通りの彼奴等の狂態は、噴飯の価値以外には全くゼロだ』
マーク『さうだねー、浪速節語の屁放爺……………に奏任待遇を与へたり、若衆に僧服を纒はせたり、老衆に民風作興を卸売りしたり、糞造機の似而非宗教家に思想善導の元売捌きを許したのを見ても、愈彼奴等が境遇を暴露せるもので、思へば実に哀れな次第ではないか。是を見ても今迄に虐げられた吾々三五教徒に取つては溜飲が下がる様だ、痛快千万だアハヽヽヽ。併し乍ら今日の場合吾々は毫も油断は出来ない。尚ほ層一層この運動に大努力を要する天下別目の時期だ。バラモン教徒の滅亡は自業自得の結果として拱手傍観すべきでは無い。自業自得の必然性を認むればこそ、且つ鼬の最期屁の害毒の甚大なるを悟ればこそ、吾々は最善の戦法を選んで一刻も早く宗教戦の勝利を得るやうに、奮闘努力せなければならぬ。彼奴等のこの自業自得の収獲こそ人類上、最大罪悪の裁判の結果で、一点の恕すべき所はないのだ。只吾々は彼奴らの滅亡を一日も早く断行し、促進することが寧ろ彼奴等に対してせめてもの優遇だ、弔ひだ、ハナケともなるべき慈善だ。アハヽヽヽ』
レ『俺等仲間の第一癪に障る事は暴利の権化とも云ふべきブル的宗教家の今日のやり方だ。好景気時代に、己れ先づシコタマ信徒の油を搾り懐中をふくらせやがつて、最後にお義理的に申訳的に、渋々吾々三五教信者へホンの鼻糞ほどのお守り札を呉れよつて、恩情主義だの何のと臆面もなく誤託を吐き、俺等の汗や油を搾つて妾宅を造り、栄華の夢に酔ひ潰れ、一朝不景気風が吹き初めると、何は扨て置きイの一番にお札の値下げだの、お払ひ箱だのと大鉈を振り上げ、人間の生命を制し、ミイラを製造しておき乍ら、己れは依然として甘い汁をシコタマ吸収し、そして吐すことを聞けば………宗教界に不景気風が吹き荒み、真価は日を追ふて暴落として来た。こんな悪現象を招来した原因は信仰律低下と、教義の余りに高尚に過ぐるからだ………と吐きやがるのだ。そして洒々として澄まし込んで居やがる。ブル宗教家連中も矢張り吾々同様に白い米を喰つて黄色い糞を垂れる人間の片割れだ。こんな奴が覇張つて居る宗教界は何時になつても駄目だないか』
マ『そりや其の通りだ、俺も同感だ。併し今日の僧侶共は実に怪しからぬ代物ではないか。俺等の仲間に対して吐すことには、「お前等の如うな悪信仰の没分暁漢連が八釜敷云つて飛び廻るものだから、宗教は日に月に悪化し混乱状態に陥るのだ」と吐きやがる。こんな僧侶の盲目共は、梵鐘を鳴らしたから火事が起つたと吐かす没分暁漢だ。更に又「人間社会に貧乏と云ふ怪物が現はれるのは、食物の生産力に比して人口の加増率が一層多き為だから、是を救済する唯一の良法は貧乏人等が節制して、余り沢山な子を産まない様にするのが、社会救治策の最善なる方法手段だ」と主張する馬鹿な学者も現はれて来た。さて何れも理窟は抜きにして、斯の如き坊主が社会に公然として生存し得るのも、畢竟宗教家第一主義の社会なればこそだ、思へば涙の溢れる程有難きお目出度き次第だ。
 バラモン主義の現代の社会に於て横綱たる、ブル宗教家力士の土俵入りに従ふ雑僧の太刀持や、露払ひを勤むる御用学者の出場なぞは、実に見物人の吾々に取つては立派で見事である。此土俵入りを拝見する為には、随分種々の美はしい名目で、過重な見料を否応なしに徴集されるのだから、吾々の貧弱な骨と皮との痩肉には錦上更に花を飾ると云ふお目出度い状態だ。アヽ吾々信徒はこのお目出度に対して祝福の言を述べねばならぬ。一層声を大きくして、横綱力士の今に土俵の外に転げ出て、手足を挫き吠面を曝らす幕切りを見たいものだ、アハヽヽヽ』
レ『一日も早くその土俵入りの盛観と幕切りを拝見したいものだ。腕を撫し固唾を呑み拳骨でも固めて………』
マ『それはさうとして、僕の友人なる首陀のバリー君に大喇嘛が「貴様は首陀の分際であり乍ら、浄行の言語を使用し、頭髪を長くしやがつて怪しからぬ奴だ」と云ふ罵詈雑言の末、如意棒をブラ下げた髯のある立派な番僧に散々つぱら毒付かれたのだ、「首陀のくせに浄行の語を使ひくさる」とは、首陀と浄行とは別国人だ。印度人では無いと云ふ以上に軽蔑の意味が充分に含まれて居るのだ。此番僧が大喇嘛から「浄行語を使ふ首陀は用捨なく蹴り倒せ、擲り付けよ」との命令を受けて居たか否かは別問題として、首陀向上運動の煽動者であることだけは君も知つて居るだらう。故に吾々は不逞首陀団と目されて居る憐れな運動者よりも、先づ所謂番僧連を、信徒安定の上から見て厳粛に取締らねば成るまいと思ふのだ。実に思ふても馬鹿々々しい問題だが、番僧連は片手で浄首融和会と云ふ魔酔薬を突出し、片手では「浄行語をエラソウに使ひくさるから」とて拳骨を突出して居るのだ。併し首陀向上団の連中から聞いて見ると、幸か不幸か魔酔薬も拳骨も余り好感を以て迎へられて居ないさうだ』
レ『僕はそれだから、近頃途上では成るべく浄行の番僧には会はない様にと注意してゐるのだ。「貴様は首陀階級の癖に俺の顔を見るとは生意気千万な奴だ」と直ぐに擲られるのが嫌だからだ。ホントに馬鹿々々しいぢや無いか』
マ『馬鹿らしい事と云つたら、一夕俺の亡妻の追悼会を催した事があつたが、数日の後に婆羅門総本山から、番僧が御出張遊ばされて「お宅の追悼会を少しも知らなかつた所、今日本山から散々に小言を云はれ、大に目玉の飛び出る程叱られた。それでお宅様の追悼会には誰々が集まつたか、どんな弔辞があつたか聞かして呉れろ」との仰せだ。僕は葬婚の礼儀さへ弁へ知らぬ番僧連にはホトホト呆れ返つて、開いた口が早速に閉まらなかつた。そこで余り業腹が立つので「幾ら番僧だつて葬式や婚儀にまで干渉する権利はありますまい。宗権を蹂躙するものだから、そんな事は答弁の限りでは御座らぬ」とキツパリ温順に云つて退けてやつた。さうすると斯の頓馬番僧、其翌朝から毎日六ケ敷御面相を遊ばして宅の表に如意棒をブラ下げ乍ら頑張つて御座るが、何れの目的がお在り遊ばすのか俺には合点が行かない。又その番僧の非常識なやり方を遊ばすのは、何の理由だか知る由もないが、大喇嘛から叱られた時は尚ほ「一層酷しく首陀向上会をヤツつけろ」と云ふ約束が番僧間の金科玉条とされて居るのか、兎にも角にも不都合な話だ。実に吾々には迷惑の至りだ。ウラナイバラニズの好い見本だ。キヽヽヽだ』
レ『兎も角一日も早く吾々の向上運動を進めて、根本的に大運動、否荒料理のメスを振はなくては駄目だ。吾々首陀信徒は自滅するより外に進むべき道は無いのだ。何と云つても黴菌を怖れ、難病を避ける医学博士、毒蛇や毒草を避けて通る博物学者、テンデ貧乏人には接近しない活仏や、弱い者を虐める牧師の公々然として頭を擡げる暗黒世界だもの、況んや俗の俗たる婆羅門僧侶に於てをやだ。吾々は飽くまでも婆羅門どもの根城を根本の土台から転覆させん事には、信仰独立権を保持することさへ六ケしからうよ』
 二人の三五信者なる首陀が盛に森蔭に腰を下ろして談じて居る所へ、錫杖をガチヤつかせて悠然と現はれたのは、婆羅門教の宣伝使キユーバーであつた。二人は宣伝使の姿を見るより又もやバラスパイが来よつたなーと、俄に話頭を転じて、
レール『この間死んだ俺の倅から幽冥通信があつたが、その音信に「地獄界は僧侶や牧師ばかりで満員だ。普通の人間では殺人、放火ぐらいなもので、余り罪が軽すぎて滅多に地獄に入れては呉れない。併し坊主や牧師なら其名称だけでも幾人でも割り込む事が出来る」とのことだつたよ』
キユーバー『君たちは今何を話して居ましたか、穏かならぬ事を喋つて居た様だなア。お前の姓名は何と云ふか、聞かして貰ひたいものだ』
レール『俺の名は俺だ、友人の名は友人だ。坊主は何処までも坊主だ。オイ兄弟、サア行かう』
と尻に帆かけて一目散に逃げ出した。キユーバー(急場)に迫つた時は三十六計の奥の手だと、頭を抱へてトントントンと畔路を倒けつ転びつ走り行く。
 彼れ婆羅門教の宣伝使はスコブツエンと云ふ一派の宗旨を開いた新婆羅門の教祖であつて、婆羅門の大棟梁大黒主が意を承け、私に第二の準備に取りかかつたのである。大黒主は万々一婆羅門教が、ウラル教又は三五教に潰された時は、スコブツエン教に身を托すべく、彼れキユーバーに数多の機密費を与へ、且つ特殊の権利と地位を与へて、隠密の役目を申付けて居たのである。故に彼れキユーバーは何の不自由も感ぜず、傲然として高く止まり、官民を睥睨しつつ天下を横行濶歩して居たのである。大足別将軍も、彼れが特殊の地位に居ることと、絶大なる権威を大黒主に授与されて居る事を知つて居るので、抜目の無き大足別はキユーバーに対しては色々と媚びを呈し、且つ彼の前に出でては、殆ど従僕の如き態度を以て望み、維れ命維れ従ふのみであつた。
 扨てキユーバーが東地の都の大黒主の内命を受けて開いて居る婆羅門教の別派、スコブツエン宗は由来難行苦行を以て神に奉仕の誠を捧ぐるものと為し、聞くだに恐ろしき苦行の教団である。百千の苦行を信徒に向つて強る点は、婆羅門教と少しも異りはないが、殊に甚だしき苦行は婦人がヱマスキユレート即ち男性化の修業で、変性男子の願を立てて女性たることを脱せむとする事が、最も重要とされて居る。其方法には卵巣除去法と乳房除却法とがあつて、卵巣除去法の修業になると、百人の中九十九人迄生命を殞すに至る、実に惨酷なる修業であり、乳房除却法に至つては、白熱せる火箸を以て婦人の乳房を焼き切るのである。斯くした者に対して教主及び重役人が婆羅門大神へ奉仕を標章するため焼印を押す。之を熱火の洗礼と称へて居る。斯くして切り落された乳房は聖壇に供へられ、之を捧げたる犠牲者は聖座に安置されて、神の如くに崇敬されるのである。そして聖晩餐の食物中には、乳房の断片が混ぜられ、会衆一同之を喫し終るや、犠牲者の周囲に熱狂せる舞踏が演ぜられるのである。その光景は実に凄惨極まるもので、正しき神々の所為でないことは之を見ても判るのである。抑も乳房は女性のシンボルであり、美のシンボルであり、又婦人生殖器の一部とさへ考へられて居た。畢竟、婦人を代表さるものは乳房だと云ふ観念の下に立てられた邪教なのである。印度に興つた宗教の説は概して、自我の世界は纒綿の世界であるとか、出纒の行と述ひ、無我と道ひ、空と謂ひ、解脱と曰ひ、涅槃と説つて所謂転迷開悟に専らなる諸々の宗教が発生するだけあつて、土地と気温の関係の然らしむる為か、印度と曰ふ国は恐ろしく美しい、且つ物凄く壮大な自然に包まれた、何百種かの人間が幾百種の階級を作り、幾百種の言語を使つて居る国だけあつて、樹上に三年、石の上に十年も立つたり坐つたりして居たり、穴の中の逆立を三ケ月間も続けて修行するとか、水ばかり呑んで生きるだけ生きるとか、木乃伊となるために氷雪の裡、岩角の上に飲食物を絶つて坐つて修行すると云ふやうな迷信、妄信、愚信、悪邪信の醗酵地であり、持戒、精進、禅定、忍辱などと八釜敷く叫び乍らも、淫靡、不浄、惰弱で始末に了へない国民性である。それ故に自然の結果としてスコブツエン宗の如きものが発生し得たのである。
 彼れ教祖のキユーバーは凄い眼をギヨロつかしながら、レール、マークの二人の談話を耳敏くも聴き取つて、大黒主の国家を覆へすものと憂慮し、二人の逃げ行く姿を追跡せむと金剛杖を力に、一生懸命に焦慮出したのである。然るに彼の二人は逸早くも山林に姿を隠し、谷川の水を掬つて咽喉を潤しながら、
レール『オイ、マーク大変な奴に出会したものだないか。彼奴は大黒主の邸内に数年前まで出入して、大黒主の御覚え目出度かつたと云ふスコブツエン宗の親玉ぢやないか、下手に魔誤付いて居たら大黒主より重罰に処せられる危ない処だつた。彼んな坊主が何故あれほど威張り散らしよるのだらう。何故あんな不完全極まる宗教が亡びないのだらうか』
マーク『印度七千余国には幾百の小さい宗教があるが、何れの宗教も完全なものは一つも無いにきまつて居るよ。殊に彼の宗教は殊更不完全極まる未成品宗だから、命脈を保つて居るのだ。凡て不完全なものには将来発達すべき余地があり、未来があるのだ。完全は行詰りを意味し、結局滅亡の代名詞に外ならないのだ、アハヽヽヽ』
レ『さうすると吾々の運動も成功せない未完成の間が、花もあり、香もあり、実もあり、世人からも注目されるのだな。アハヽヽヽ』
マ『ナアニ俺達はブルジョア宗教やラマ階級に圧迫され苦しめられ、明敏な頭脳が滅茶苦茶になつたので、チツト許り小理窟を覚えて居るのを利用して、実は滅茶苦茶な革正運動をやるやうに成つたのだ。然し斯う曰ふ頭悩でなければ、創意創見は生れて来ないのだ。復古を叫ぶ人間は必ず覚明家だ。石火坊子団は即ち石下坊主団だ。日露協約の結果は白雪までも赤化したぢやないか、アハヽヽヽ。それだから吾々は天の表示を確信して驀地に進まむとするのだ。アヽ一日も早く吾々の目的を達成せなくては、到底吾々三五信者兼首陀向上会員は身の置き所がなくなつて了ふわ。「白雪も日露協約で赤く化し」』
 かくて両人は又もやキユーバーの悪口に花を咲かせ、不平の焔を燃やす折しも、執念深いキユーバーの窺ひ寄る姿が木の間を透かしてチラチラと見え出したのに肝を潰し、尻はし折つて山林深く逃げ出して了つた。
(大正一四・二・一三 旧一・二一 加藤明子録)
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