文献名1座談会
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3出口王仁三郎聖師と出口日出麿師を囲む座談会 第一夜 第一回 恋愛問題よみ(新仮名遣い)
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データ最終更新日2016-12-02 16:49:10
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本文
【時】 昭和6年4月27日夜
【所】 天恩郷 明光殿
【出席者】
出口王仁三郎聖師
出口日出麿師
本誌側……井上荘三郎 中井勤 岡村祥三 高見範雄 林英春 杉田淑子
速記者……西村保男 小山安暉
この座談会について
聖師様、日出麿様と円座になっての座談会。
この素晴らしい催しを両師の御快諾を得て、惜春の夜、明光殿において、常に尖端を切る吾が昭和青年会の手によってキャッチする事が出来た。両師と一座、完全に溶合し、朗談、痛話、互いに交流して、以下号を追うて諸氏に展開する断然破天荒の文字である。(英)
【日出麿師】 『外苑にナンジャモンジャって木があるネ』
【林】 『一本ありますね、日本に何本とかしかないので、ありゃめずらしい木だそうです』
【中井】 『壱岐にもあるそうですね、アンニャモンニャというのが──。聖師様の俚謡にありました』
【日出麿師】 『どっかにもあるって聞いていたが、どこやっけ、そんな木がネ』
× ×
【林】 『さあ座談会の本題に入ろうか、淑子さん、君から一つ出してくれないか』
【杉田】 『問題として「恋愛問題」ですが…』
【日出麿師】 『恋愛問題とは考えたのう』(笑声)
【杉田】 『今の恋愛問題は不真面目なのが多いですね。本当の真の恋愛であるならいいんですが……』
【林】 『しかし、真の恋愛問題っていう定義は、どこから持って来る?』
【杉田】 『つまり純だわね、マア純というよりほか言い方がないわね』
【高見】 『難しいね。どこまでが嘘の恋愛で、どこからが本当の恋愛かっていう事は』
【中井】 『本当の恋愛は人間では出来ない。本当に恋愛の出来る者があれば、それは神様だよ』
【高見】 『恋愛をするには自己という者を忘れねば出来ないね。本当の社会に恋愛をやり純で行こうと思えば自己完成を先ずやらねばだめだね』
【杉田】 『だけど人間は大いにやっているわ』
【高見】 『それはありふれた恋愛なんだよ』
【林】 『しかし真疑はさてとして恋をしてる間は、その恋が必ず一つの、つまり悪い横道に入らない良き楯になるね。俺の持論だけど』
【高見】 『あんたは、よく経験がありますからね』(笑声)
【日出麿師】 『ああいうものは惟神でな』
【高見】 『恋愛は周囲のものと大いに関係があるね、そして時所位により、すべて変わって来ると思うね』
【中井】 『恋愛は知らず知らずにやっているようだが、恋するということもやっぱり因縁というものがあるね』
【林】 『確かにそれは因縁に違いない。俺が家内を貰った。あのおばあさんが家へ来て遊んで居って死んだ。あのおばあさんは林の霊統だから、俺の家でないと死ねぬのだと聖師様は言われた。だから俺が結婚したのも因縁でさせられたのだと思うね』
【日出麿師】 『暑いのう』(笑声)
【高見】 『夏向きやね』(笑声)
【日出麿師】 『ああいう事も、ある何か霊的なものがさすのだね』
【高見】 『信仰に入ってからの恋愛は自然違うね』
【林】 『そりゃ違うわけだね。俺は思うよ。物語から考えると、地位も名も親も兄弟、義理、人情等すべて捨ててしまっての恋にのみ生きるが本当の恋だと書いてあるようだが、あれはちょっと人間には真似が出来んなア』
【中井】 『俺はやったことがないからわからんが、出来んね』
【林】 『人間でも出来ることは出来ると思うが──でもちょっと出来んなア』
【杉田】 『本当の純な恋愛というものは、第三者から見ても、美しい純なものでなければいけないわね』
【林】 『恋愛は性欲の一分科なりということならば、きれいとか、汚いとかいう事を超越しなければ出来ないね。そんな事は問題外だね』
【日出麿師】 『恋愛が原で性欲を発するんで、性欲が原で恋愛を発するのじゃない』
【中井】 『本当の恋愛が出来るとすれば神様だね』
【林】 『また神様論か』
【杉田】 『では普通の人間では出来ないんですね』
【高見】 『それは人生を慰めるためにやるのだね。一種のスポーツだよ』
【杉田】 『じゃ遊戯になるじゃないの……私は性欲なんて汚いものだと思うわ』
【日出麿師】 『性欲を清いとか、汚いとか言うが、性欲でも清ければ清い、汚ければ汚い。性欲だから必ずしも汚いということは無い。だけど、その、ああゆうものでも年頃であるから終いには性欲に行くだけで……年のウンと違う者でも一種の恋愛はある。性欲がそこに伴うから、霊肉一致ということになるんだ。
霊肉一致それは男女間ではそれが本意なんであるが、うっかりそんな事を言うと、ちょっと現界では困る事があると思う。
夫婦になったらワシは恋愛を夫婦で固めて行く。どんどん深めて行けるものだと思うね。
愛というものは両方共の問題で初めから嫌いなものは仕方がないが、お互いに少しでも好きなところがあったら、好きな度が深まって行く。だんだんそれを耕して行く、耕して行くから、つまり面積も広くなる。広さと深さを二人で拡め深めて行く。それは出来ると思う。それは恋愛である。しかし一つは一種の因縁で、前世の因縁で、パッと一目見ただけでも、一種のどうにもならんようになる事がある。つまり衝動というのかその恋愛を感ずるのやね。それをみな間違えるのやね。浅く性欲を元にして行くから間違ってしまう。ちょっと別嬪を見ると直ぐ恋する。それで間違うからいかんね。
前世で多少とも因縁があったらその因縁のある人間を見ると性欲は別として非常に好きな感じ、親しみの感じが湧く。そんな人は沢山ある。特にその中で一番感じの強い人が本当の夫婦になるのやね。そういう風にうまくやって行くのは一つは神様のおかげやね』
【林】 『メーテルリンクの「青い鳥」の船出のところに、そういう意味の事が書いてあるよ、「世界中で一番あなたの心を打った女がわたしなんだからそれを妻にしてくれ」とか何とか書いてあったが、メーテルリンクは一種の霊感か霊眼によってあれを書いたのだろうなア』
【西村】 『コロンタイのなんか、どうなんだろう』
【林】 『お前はだまっていろよ、速記者じゃないか』(笑声)
【日出麿師】 『そういうな、手ばかりでなく口もある、ハヽヽヽ』(笑声)
【中井】 『ある人の恋愛観を見たが、大乗云々と言って、妻があるのに女をつくってもいいなんて、ありゃ無茶だ』
【日出麿師】 『そりゃいかんね、罪だ。その女房と別れてから新しい恋愛をつくるならいいが、女房を現に持ちながら、そんな事をやるなんて、そりゃいかんね』
【林】 『結婚等でスラスラ行くのと、ゴタゴタするのとあるが、やっぱりスラスラ行く方が御神意にかなっているんでしょうね』
【日出麿師】 『それも、いろいろあるね。させられるのもあるし、めぐりのもあるし一概には言えないね』
【中井】 『親たちや仲人が簡単な考えで結婚さすのは、ありゃ罪悪だね』
【日出麿師】 『そりゃ言えん事や』
この時『座談会はもうすんだか』と、待ち兼ねていた聖師様が来られて、一座の中央に座られる。
【聖師】 『これだけか』
【林】 『ハア』
【杉田】 『聖師様、今「恋愛」という問題で話していたんですが、一つ聖師様の恋愛観を……』
【聖師】 『ワシのはウソや、作るだけや。もうこの年になってから恋愛もクソもあるかい。もう過ぎている、酸いも甘いも味を知りつくしているでのう』
【杉田】 『どうぞ言って……』
【聖師】 『お前たちにそんな事を言ったら毒になるワイ。しょうもない事を教えろなんて言うんやの……フフン……』(笑声)
【林】 『さあ次へ移りましょう』
【高見】 『次は青年の使命です』
(以下次号)