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文献名1霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻
文献名2第2篇 松浦の岩窟よみ(新仮名遣い)まつうらのがんくつ
文献名3第9章 濃霧の途〔997〕よみ(新仮名遣い)のうむのみち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-10-07 14:45:07
あらすじサガレン王とエームス、テーリスの主従三人連れは、霧の立ち込める谷道を逃げていく。一行はセムの里を抜け、松浦の小糸の館に身を隠そうと進んで行く。エームスとテーリスは述懐の歌を歌いながら、道中の無事をバラモン教の神に祈りつつ進んで行く。この谷川は常に濃霧が立ち、危険な生き物が棲息し山賊も出没する地帯であったが、一行は竜雲の追っ手を避けるために、心ならずもこの道筋を行かざるを得なかった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年09月22日(旧08月2日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年12月30日 愛善世界社版83頁 八幡書店版第6輯 612頁 修補版 校定版85頁 普及版36頁 初版 ページ備考
OBC rm3609
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本文  常世の国の自在天  大国別の珍の子と
 生れ出でたるサガレン王は  顕恩郷を後にして
 ペルシヤの国を横断し  印度の国を遠近と
 さまよひ廻り漸くに  シロの島へと安着し
 バラモン教の御教を  朝な夕なに宣り伝へ
 漸く茲に時を得て  神地の都のバンガロー
 青垣山を三方に  清くめぐらす絶頂の
 地点に館を立て並べ  シロ一国の主権者と
 仰がれここにケールス姫を  娶りて御代を治めしが
 漸次に悪魔のつけ狙ふ  其有様は味のよき
 木の実に虫のわく如く  八岐大蛇の醜霊
 いろいろさまざま身を変じ  妖術使ふ竜雲と
 現はれ来りてバンガロー  神地の館に侵入し
 あらゆる手段をめぐらして  ケールス姫の側近く
 進み寄りたる凄じさ  蟻穴は遂に堤防を
 崩すの比喩に漏れずして  さしもに固き神館
 サガレン王の居城をば  苦もなく茲に占領し
 暴威を揮ふ憎らしさ  忠臣義士に助けられ
 やうやく危難を免れて  九五の位に立ち乍ら
 其身を以て逃れたる  サガレン王は大野原
 吹き来る風にも心魂を  痛めながらも河森の
 河辺を伝ひてスタスタと  テーリス、エームス両人と
 セムの里へと忍び来る  深き谷間に霧こめて
 水音ばかり淙々と  響き渡れる川の辺に
 進み来れる折もあれ  心汚き竜雲が
 差まはしたる目附役  数人許りの若者は
 一方口の谷路に  霧に紛れて身を隠し
 手具脛ひいて待ちゐたり  かかる企みのあることは
 夢にも知らぬ主従が  声も静かに宣伝歌
 歌ひながらにシトシトと  下り行くこそ危ふけれ
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ。
 テーリスは路々歌ふ。
『天津御空の雲分けて  あもりましたる世の元の
 神の御祖と現れませる  常世の国の自在天
 大国彦の其御裔  国別彦の神司
 サガレン王の吾君は  神地の都、バンガロー
 珍の館に現れまして  天の下なる人草を
 恵み守らせ玉ひつつ  仁慈無限の政事
 開かせ玉ふ折柄に  此世を紊す曲津神
 醜の大蛇の現はれて  ケールス姫を誑惑し
 遂に進んで王位をば  占領せむと村肝の
 心を砕き朝夕に  名利にはやる曲人を
 説きつ諭しつ知らぬ間に  同気求むる悪党の
 団結強くつき固め  忠誠の士を悉く
 無辜の罪名負はせつつ  一人も残らず牢獄に
 投込みおきて竜雲は  おのれが非望を達せむと
 企み居たりし恐ろしさ  吾は始めて竜雲が
 神地の都に来りしゆ  怪しき者と推量し
 彼が心を探らむと  心にもなき阿諛を
 会ふ度毎に並べ立て  漸く彼に見出され
 すべての計画一々に  それとはなしにあちこちと
 探り得たりし嬉しさよ  さはさり乍ら徒に
 あばき立てなば悪神の  仕組の罠に陥らむ
 心は千々に逸れども  ヂツと胸をば抑へつつ
 尚も進みて竜雲が  腹を叩けば案の定
 レール、キングス、ベツトする  其謀計はありありと
 手に取る如く見えにける  あゝ惟神々々
 大国彦大御神  何卒彼が計略を
 根本的に覆やし  心の底より曲神を
 改めしめてバラモンの  誠の道に降服し
 サガレン王の御前に  清き正しき真心を
 捧げまつりて誠忠の  臣となさしめ玉へよと
 祈りし事も水の泡  悪心益々増長し
 ケールス姫を踏台に  種々の画策日に月に
 進みて茲にクーデターの  大惨劇を演じけり
 さはさり乍ら天地に  正しき神のます限り
 善を助けて悪神を  こらさせ玉ふは目のあたり
 只今日の身は是非もなし  暫く姿を山奥に
 隠して時を松風の  尾の上を吹きて竜雲を
 打ち払ふべき神策を  心静かにめぐらせつ
 捲土重来バンガロー  再び王の都とし
 吾等二人が忠誠を  現はし君の御心を
 慰めまつらむ今暫し  忍ばせ玉へサガレン王
 テーリス、エームス両人が  心の限り身のきはみ
 千変万化の大秘術  尽して御身を始めとし
 之の御国を泰山の  安きに救ひまつるべし
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
と霧込むる河森川の谷道を伝ひ伝ひて、セムの里を越え、松浦の里の小糸の館を指して、忍び行かむと道を急ぎぬ。
 エームスは又歌ふ。
『渺茫千里の海原に  浮びて清きシロの島
 神の司や国の君  二つを兼ねて治しめす
 国別彦のサガレン王  其仁徳は天ケ下
 四方の草木に至るまで  恵の露を垂れ玉ひ
 君のほまれは大空を  輝きわたる天津日か
 夜の守りとあれませる  月の如くに輝きて
 きらめき渡る星の如  まつろひ来る神人も
 数ある中に黒雲は  忽ち中空に巻き起り
 雲入道と現はれし  曲の変化の竜雲が
 月日を隠し諸星の  光を包みて此国は
 暫しは常夜の闇となり  天の岩戸は閉ざされて
 八岐大蛇や醜狐  曲鬼探女醜女等は
 五月蠅の如く湧きみちて  黒白も分かぬ世となりぬ
 曲に組する悪神の  ケリヤ、ハルマを始めとし
 ベールやール、ヨール迄  名利の欲に晦まされ
 大恩深き吾君を  見棄つるのみか危害まで
 加へて一味の欲望を  立てむとしたる愚さよ
 御空は雲に包まれて  星さへ見えぬ世ありとも
 神の伊吹の神風は  何時迄吹かであるべきぞ
 天地は元より活物と  神の教を聞くからは
 又もや吹かむ時津風  満天墨を流す如
 包みし醜の黒雲も  拭ふが如く晴れわたり
 光輝赫々万物を  伊照らし玉ふ日月の
 光を見むは目のあたり  神の司よ大君よ
 必ず心を悩まして  身をば弱らせ玉ふまじ
 テーリス、エームス始めとし  サール、ウインチ、シルレング
 ユーズ、アナンやゼム、エール  セールの司の真心は
 必ず天に貫徹し  誠の花の咲き出でて
 再び君の御治世の  実りを結ぶは惟神
 神の心にましまさむ  吾等は之より大君を
 松浦の里のバラモンの  小糸の館に導きて
 茲に神示を奉戴し  時節を待つて竜雲が
 醜の望みを根底より  顛覆させむ待て暫し
 神の御水火に現れませる  科戸の風の空高く
 吹きすさぶまで日月の  再び此世に現はれて
 悪魔の頭をてらすまで  あゝ惟神々々
 神のまにまに村肝の  心を洗ひ身を清め
 サガレン王の御為に  仮令生命はすつるとも
 忠義に固き武夫の  誠を徹さでおくべきや
 赤き心のいつ迄も  輝きわたらでおくべきか
 あゝ惟神々々  大国彦大神の
 御前に慎み願ぎまつる  御前に畏み願ぎまつる』
と声も静かに祈りつつ、轟々たる激流の音を便りに川辺伝ひに霧の中を進み行く。
 此谷川には常に濃霧立ちこめ、数多の大蛇、猛獣などの好適の棲息所と自然になつてゐた。山賊などの白昼出没するも、大部分此道筋である。王の一行は竜雲の捕手の追及を恐れて、心ならずも此難路を選まれたのである。
(大正一一・九・二二 旧八・二 松村真澄録)
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