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文献名1霊界物語 第60巻 真善美愛 亥の巻
文献名2第2篇 東山霊地よみ(新仮名遣い)あづもすれいち
文献名3第10章 玉国〔1535〕よみ(新仮名遣い)たまくに
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ地上に戻ると、玉国別は伊太彦の功績をねぎらった。そしてタクシャカ竜王に向かい、歌で持って呼びかけ、竜王の改心と赦免を祝った。竜王は答えて改めて改心と感謝の情を表した。一同がそれぞれ述懐の歌を交わしていると、大地はにわかに震動し、湖の波が立ち狂いパッと二つに開いた。湖中から恐ろしいサーガラ竜王が、七八才の乙女を背に乗せてスマの浜辺に浮かび出た。竜王はたちまち老媼の姿となり、幼児をかかえて中空を翔け、タクシャカ竜王の前に現れた。サーガラ竜王は夫であるタクシャカ竜王の赦免を喜ぶ歌を歌った。そしてこの乙女は、自分の身魂から生まれた如意宝珠の化身であると明かした。玉国別はこれより夫婦で世を守るようにと二人に命じた。サーガラ竜王が乙女に息を吹きかけると如意宝珠の玉と変じた。サーガラ竜王は玉を玉国別に奉じた。宣伝使たちはおのおの述懐の歌を交わした。これよりタクシャカ竜王とサーガラ竜王はそれぞれ猩々翁、猩々媼となり、珍しい果物の酒を作って朝夕神前に献じて神慮をなぐさめ、罪を謝することとなった。バーチル夫婦は二つの宮の宮司として仕え、子孫繁栄し神の柱と世に敬われた。元バラモン軍キャプテンのチルテルはスマの里の里庄となって村民を愛撫し、部下はいずれも里人の列に加えて美しく新しい村を造り余生を楽しく送り、その霊は天国に至って天人の列に加わり、アヅモス山の聖地を守ることとなった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年04月07日(旧02月22日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年8月12日 愛善世界社版119頁 八幡書店版第10輯 637頁 修補版 校定版126頁 普及版60頁 初版 ページ備考
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本文  伊太彦司に導かれ  三千年の幽閉を
 ヤツと免れて千仭の  地底の闇より登り来る
 タクシャカ竜王は人体と  変化の術を使ひつつ
 満面笑を相湛へ  アヅモス山の霊場の
 神の祭りし其前に  岩戸の階段登りつつ
 天にも昇る心地して  現はれ出でし尊さよ
 玉国別の一行は  伊太彦司の功績を
 口を極めて讃め乍ら  タクシャカ竜王に打向ひ
 言葉優く宣らす様。
玉国別『国常立の大御神  豊国姫の大神の
 開かせ玉ふ三五の  教の道の宣伝使
 玉国別の神司  神の御言を蒙りて
 ハルナの都に出でてゆく  其途すがら皇神の
 仕組の糸に操られ  心も身をもスマの里
 アヅモス山に来て見れば  三千年の其昔
 月照彦の大神が  此世を安く治めむと
 秘めおかれたる汝が霊  救ひ助けむ時は来ぬ
 吾れも汝が勇ましく  深き罪をば赦されて
 ここに姿を現はせる  其光景を打ながめ
 歓喜の涙にたへかねつ  思はず知らず袖絞る
 あゝ惟神々々  タクシャカ竜王聞し召せ
 此世の泥をすすがむと  現はれ玉ひし埴安の
 彦命や埴安姫は  厳と瑞との神柱
 経と緯との経綸を  始め玉ひし上からは
 水も洩らさぬ神の国  汝も今より御心を
 清く正しく持ち玉へ  元つ御祖の大神の
 大神業に仕へませ  三千年の其間
 地底に潜み玉ひたる  苦心を察し奉る』
 タクシャカ竜王は久し振にて地上の光明に浴し、又珍らしき人の顔や四辺の樹木の青々として茂り栄ゆる光景を眺め歓喜に堪へず、歌を以て玉国別に答へたり。
『吾れは八大竜王の  司と聞えしタクシャカの
 九頭両舌の悪神ぞ  一度眼を光らせば
 万木万草皆萎み  一度声を発すれば
 山野河海も動揺し  さすが貴き大神も
 いとど悩ませ玉ひつつ  神力無双のエンゼルと
 現はれ玉ひし月照彦の  神の命が天降り
 有無を言はせず言霊の  伊吹に吾を霊縛し
 アヅモス山の地の底に  今迄封じ玉ひけり
 かくなる上は吾とても  いかでか悪を好まむや
 仁慈無限の大神の  大御心を心とし
 蒼生や草や木の  片葉の露に至る迄
 心を尽し身を尽し  いと懇に守るべし
 吾の宝と秘めおきし  夜光の玉は伊太彦が
 懐深く納めまし  今や此場に現れましぬ
 タクシャカ竜王が改心の  至誠を顕す其為に
 風水火災を自由にせし  此宝玉を献る
 何卒受けさせ玉へかし  旭は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は破るとも
 一旦神に誓ひたる  吾言霊は動かまじ
 諾ひ玉へ惟神  玉国別の御前に
 謹み敬ひ願ぎまつる』

玉国別『世を紊す八岐大蛇の祖神と
  聞きたる竜神は汝なりしか。

 面白し心の底より改めて
  玉を還せし汝は神なり。

 つゆ雫偽り持たぬ言の葉に
  吾も嬉しく玉を受けなむ。

 伊太彦の教司は大神の
  神業に清く仕へ了へぬる』

伊太彦『吾身魂弱く甲斐なく力なく
  神のまにまに勤め了せし』

ワックス『伊太彦の司の後に従ひて
  さも怖ろしき夢を見し哉。

 さり乍ら今の喜び見るにつけ
  思はず知らず心勇みぬ』

エル『思はざる醜の魔神にさへられて
  肝潰したる事の愚さ。

 さり乍ら伊太彦司と諸共に
  無事に帰りし事ぞ嬉しき』

真純彦『伊太彦は心おちゐぬ人とのみ
  思ひし事の恥しき哉』

三千彦『鉋屑も間に合ふ時のあるものと
  聞きし言葉の思ひ出されぬ。

 言霊の濁る男とさげすむな
  吾も幾度揶揄れたる身よ』

伊太彦『惟神とは言ひ乍ら妹を連れ
  進み行く身を羨ましく思へば』

デビス姫『伊太彦の教司の功績は
  岩戸開きの業に優れる』

バーチル『昔より魔の隠れしと伝へたる
  此神山の岩戸開きぬ』

サーベル姫『斯く迄も霊の清き神ますと
  吾は夢にも思はざりけり。

 猩々の姫の命に教へられ
  汝を迎へし今日の嬉しさ』

タクシャカ『今よりは猩々翁と名をかへて
  これの神山に永く仕へむ』

玉国別『千代八千代万代までも此宮に
  いと安らけく仕へ玉はれ』

チルテル『訝かしや猩々の彦や猩々姫
  猩々翁の現はれむとは。

 九頭竜の醜の魔神と聞きぬれど
  汝の姿は神にましけり』

 斯く歌ふ所へ、大地俄に震動して、キヨの湖の波立狂ひ、湖はパツと二つに開いて、中より、さも怖ろしきサーガラ竜王、七八才の乙女を背に乗せ乍ら、スマの浜辺に浮み出で、忽ち老媼の姿となり、愛らしき幼児を抱へ、霧に包まれ乍ら、中空を翔つて、タクシャカ竜王が前に現はれ来り、

サーガラ『三千年の悩み忍びて目出度くも
  吾背の君は世に出でにけり。

 此御子は吾身魂より生れ出でし
  如意の宝珠の化身なりけり』

タクシャカ『恋慕ふ汝が命に廻り会ひ
  嬉しさ胸に三千年の今日。

 玉国の神の司や諸人に
  救はれ神の許しうけけり』

サーガラ『汝が命世に出でませば吾も亦
  人の姿となりて仕へむ。

 玉国の別の司よ諸人よ
  憐れみ玉へこれの夫婦を』

玉国別『昔より縁の深き夫婦づれ
  いや永久に世を守りませ』

 サーガラ竜王は、脇に抱へし七八才許りの乙女を地に下し、夫婦が互ひに水火を吹きかけた。忽ち乙女は如意宝珠の玉と変じた。サーガラ竜王は押戴き、

サーガラ『此玉は朝な夕なに抱きてし
  如意の宝珠よ君に捧げむ』

玉国別『玉国別神の命と名を負ひし
  吾は二つの玉を得にけり。

 此宝二つ揃うて手に入らば
  いかで恐れむ大黒主を』

真純彦『師の君の御名は今こそ知られけり
  玉守別と宣り直しませ』

三千彦『玉守別ならで玉取別神と
  宣り直しませ吾師の君よ』

玉国別『国魂を右と左に受けし身は
  玉国別と名乗るこそよき』

伊太彦『肝腎の玉は吾師の物となり
  指かみ切つて伊太彦の吾』

デビス姫『汝はなぜ玉取別と名乗らざる
  伊太彦司の名こそ悪しけれ』

伊太彦『今となり名を宣直す術もなし
  神の依さしの称へなりせば』

真純彦『因縁の霊々の御用をば
  させると神の教なりけり。

 言霊の真純の彦の名を負ふも
  魂の濁らばいかにとやせむ。

 吾も亦心の魂を研き上げ
  吾師の君にあやかりて見む』

 これよりタクシャカ竜王は、人体に変化し、猩々翁となり、サーガラ竜王は猩々媼となり、珍しき果物の酒を作り、朝夕神前に献じて、神慮を慰め、自分の罪を謝する事となつた。バーチル夫婦は二つの宮の宮司として、永久に仕へ、子孫繁栄し、神の柱と世に敬はれた。又バラモンのチルテル夫婦はバーチルの館の一隅に居を構へ、スマの里の里庄となり厚く神に仕へて、村民を愛撫し、部下はカンナ、ヘールを家僕とし、其他は何れも里人の列に加へ、美はしく新しき村を造つて、余生を楽しく送り、其霊は天国に至つて、天人の列に加はり、アヅモス山の聖地を守る事となつた。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
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