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文献名1霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
文献名2第1篇 清風涼雨よみ(新仮名遣い)せいふうりょうう
文献名3第3章 喬育〔1748〕よみ(新仮名遣い)きょういく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ天才教育 データ凡例 データ最終更新日2018-05-28 20:32:49
あらすじ国依別は珍の国の国司になって以来、政治は松若彦に一任し、自分は朝夕皇大神の前に礼拝する以外は、花鳥風月を楽しみ、宣伝使時代の気楽さを懐かしんでいました。国依別は球の玉の神徳によって世の中を達観していたので、時が至るまでは実際の政治を松若彦一派に委任していたのでした。国依別は歌を詠んでいます。すべて、今の世の暗さ、しかし夜明けが近いこと、また夜明けの前には大きな「地震」があること、を歌っています。そこへ妻の末子姫がやってきて、息子と娘の暴言に松若彦が憤慨していると諫言に来ます。国依別は逆に、時代遅れの親爺連に引退を迫ったのはさすが自分の子、あっぱれと言って、自分の子供たちが立派に育ったのは神様のおかげ、と拝礼を始めます。さすがに末子姫はあきれてしまいます。
主な人物 舞台高砂城 口述日1924(大正13)年01月22日(旧12月17日) 口述場所伊予 山口氏邸 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1927(昭和2)年10月26日 愛善世界社版59頁 八幡書店版第12輯 293頁 修補版 校定版61頁 普及版66頁 初版 ページ備考
OBC rm6903
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本文  国依別は元来磊落豪放にして、小事に齷齪せず、何事に対しても無頓着なる性質とて、珍の国の国司に封ぜられてより、一切の政務を重臣の松若彦に一任し、自分は只事実上虚器を擁してゐたに過ぎなかつた。それ故珍の国の大小の政治は、松若彦其他の閥族の手裡に握られてゐた。国依別は只朝夕皇大神の前に拝礼をするのみにて、花鳥風月を楽み、昔の宣伝使時分の気楽さを思ひ出しては、時々吐息をもらし、末子姫に酌をさせ、城中に伶人を招いて歌舞音楽に悶々の情を慰めてゐた。そして実子の国照別、春乃姫に対しても家庭教育などの七むつかしいことは強ひず、自然の成熟に任してゐた。故に親子の関係は兄弟の如く円満にして少しの差別もなく、和気藹々として春風の如き家庭を造つてゐた。国依別は球の玉の神徳に仍つて、凡ての世の中の成行を達観してゐた。それ故ワザとに時の来る迄は政治に干与せず、なまじひに小刀細工を施す共、時至らざれば殆んど徒労に帰することを知つてゐたからである。それ故当座の鼻塞ぎとして、実際の政治を永年間松若彦一派に委任してゐたのである。
 奥の間の丸窓を開いて夏風を室内に入れ乍ら、脇息にもたれ、作歌に耽つてゐた。そこへ静々と襖を押開け入来たるは末子姫であつた。国依別は作歌に心を取られて末子姫の入来りしことに気がつかなかつた。末子姫は両手をついて、言葉もしとやかに、
『吾君様、御機嫌は如何で厶いますか……』
と四五回繰返した。国依別は色紙に目を注ぎ乍ら、
『黎明に向はむとして天地は
  朝な夕なに震ひをののく。

 大空に月は照れ共村雲の
  深く包みて地上に見えず。

 甲子の春をば待ちて開かむと
  雪に堪へつつ匂ふ梅ケ香。

 時は今天地暗し刈菰の
  みだれに紊る黎明の前に。

 天地の神の恵の深ければ
  世を守らむと地震至る』

と口吟んでゐる。末子姫は一層声を高めて、
『吾君様、御機嫌は如何で厶います』
と繰返した。国依別はハツと気がつき、
『あゝ末子姫か、何ぞ用かね』
末子『ハイ、至急御相談が厶いまして、御勉強の最中を御驚かせ致しました』
国依『ナアニ、勉強でも何でもない。三十一文字の腰折をひねくつてゐたのだ』
末子『立派なお歌が詠めたでせう。妾にも一度聞かして下さいませぬか』
国依『ナアニ、聞かせるやうな名歌ぢやない。余り気がムシヤクシヤしてゐるので、歌迄がムシヤついてゐる。今日は何時にない出来が悪いよ』
末子『貴方の歌は後になる程、良くなりますからね。お詠みになつた時は、失礼乍らこんな歌と思つてゐましても、後日になつて拝読しますと、お歌が皆予言録となつて現はれて居りますの。松若彦も吾君のお歌はウツカリ見逃すことは出来ぬ、残らず予言だと言つて居りましたよ』
国依『予言か五言か妖言か知らぬが、大したことはないよ。兎も角自身の為によんだ歌だからな、ハヽヽ』
末子『エ、何と仰有います。又謎を言つてゐらつしやるのでせう。近い内に地震があると仰有るのですか』
国依『ウン、地震、雷、火事、親爺、現代はモ一つ加へ物が出来た、それは所謂お媽だ、ハツハヽヽヽ』
末子『吾君様、上流の家庭に於て、お媽なんて、そんな下卑た言葉をお使ひなさいますな。悴や娘が聞きましては、又見習つて困りますからね』
国依『ナアニ奥様と云つても、後室と云つても、御令室と云つても、山の神と云つても、お媽と云つても、ヤツパリ女房だ。人間の附した名称位に拘泥する必要はないぢやないか』
末子『今貴方は地震、雷、火事、親爺……と仰有いましたが、それもキツト深遠な謎で厶いませう。どうも貴方のお言葉は滑稽洒脱の中に恐ろしい意味が含んでゐるのですから、容易に聞流しは出来ませぬワ』
国依『ハツハヽヽヽ、地震雷といふことは、国依別自身が神也といふ事だ。お前は自信力が神様のやうに強いから、ヤツパリお前も自信神也だ』
末子『ホツホヽヽヽ、能くしらばくれ遊ばすこと、そんな意味では厶いますまい。火事親爺といふことは何ういふ意味で厶いますか、それを聞かして下さいな』
国依『今警鐘乱打の声が聞えてゐただらう。松若彦、伊佐彦の親爺連が、薬鑵頭を陳列して、国政とか何とかの評議の最中へ火事がいつたものだから、親爺が驚いて高欄から転落し、腰を打つて、吾部屋へかつぎこまれ、媽アの世話になつたと云ふ謎だよ、ハツハヽヽヽ』
末子『あれマア、松若彦が高欄から転落したことを誰にお聞きになりましたか』
国依『そんなことは霊眼でチヤンと分つてるのだ。それだから国依別自身は神也と云つたのだ。火事に驚いて親爺が転落したから火事親爺だ』
末子『其松若彦で思い出したが、今お伺ひに参りましたのも松若彦に関しての事で厶います。幸ひ捨子姫が参勤してゐたので、直に自分の居間へ担ぎ込まれ、捨子姫の介抱を受けて居ります。妾も余り可哀相なので病床を見舞つてやりましたが、松若彦は大変に憤慨を致して居りますよ』
国依『それは廁え相に糞外してゐるのだらう。俺だつて日に一遍位は高野参りをして糞外するのだからな、ハツハヽヽヽ』
末子『冗談仰有るも時と場合に仍ります。一遍彼の言ふことも聞いてやつて頂かねばなりませぬ』
国依『そりや聞いてやらぬことはない。悴や娘に揶揄はれて、薬鑵から湯気を立て、火事に二度吃驚して負傷したと云ふのだらう。マア可いワイ、松若彦もモウ可い加減に引込んでも可い時分だからのう』
末子『何卒、今日は真剣で厶いますから、真面目に聞いて下さいませ。何時も瓢箪で鯰を抑へるやうに、ヌルリ ヌルリと言霊の切先をお外し遊ばす貴方のズルサ加減、いつも風を縄で縛るやうな掴まへ所のない、困つた吾君様だと、松若彦がこぼしてゐましたよ。無頓着も宜しいが、貴方は何の為に珍の国の国司にお成りなさつたのですか』
国依『何の為でもない、大神様や言依別様がお前の夫になつてやつて呉れと仰有つたものだから、厭で叶はぬ事のないお前の夫になつた許りだ。其時にお前も知つてるだらうが、大神様や言依別様にダを押して置いたぢやないか。……私は若い時から家潰しの後家倒し、女たらしの野良苦良者、こんなガラクタ人間を末子姫様の婿になさつた所で駄目ですから……と云つて、お断り申上げたら、それが気に入つたと大神様が仰有つたぢやないか。之でも俺は十分に窮屈な目を忍んで、勃々たる勇気を抑へ神命を守つてゐるのだ。此上俺に追及するのは殺生だ。政治なんかは俗物のやることだ。老子経に云ふてあるぢやないか、太上下知在之……と云つて、国民が此国に国王が有ると云ふこと丈知つて居ればそれで可いのだ。なまじひに、チヨツカイを出し、拙劣な政治でもやつて見よ、国依別の名は忽ち失墜し、引いて大神様の御名迄汚すぢやないか』
末子『お説は御尤もで厶いますが、太上とは大昔のこと、人智未開の古なれば、国に王あることさへ知れば、それで民心は治まりましたが、今日の世態はさう云ふ訳には行きますまい』
国依『老子経には太上下知在之、次褒之、次畏之、次譏之、次侮之、……と出てゐるぢやないか。世の中が段々進むに連れ、徳がおちて来ると慈善だとか、救済だとか云つて、万衆の機嫌を取らねばならぬやうになつて来る。そこで万衆に施しをするから仁者だ、尭舜の御世だと云つて頭主をほめるのだ、次に之を畏るといふことはつまり斯うだ、余り頭主の仁慈に狎て、衆生が気儘になり、慢心した結果不正義をたくらんだり、強盗殺人放火等所在悪事を敢行し、世の中の秩序を紊す様になつて来る。そこで頭主は厳しい法規を設けて、善を賞し、悪を罰する様になつて来る。丁度八衢の白赤の守衛を勤める様なものだ。それならまだしも可いが、世が段々進むと、其次には之を侮ると云ふ事になつて来る。遂に衆生心汚濁して頭主大老豈種あらむやなど称ふる馬鹿者が出来て来る。要するに頭主たる名は神の代表者として、国の中心に立つてゐれば可いのだ。色々な小刀細工をする様なことでは最早駄目だ。だから此国依別は珍の国の衆生からは国司と仰がれてゐるが、自分としては国司でも何でもないヤハリ一個の国依別、元の宗彦だ。誰が……馬鹿らしい、大きな面をして表へ出られるものか……アーア』
と大欠伸をし、両手の握り拳を固めて頭上高く差上げた。
末子『モウ仕方がありませぬ。何時も貴方はそれだから愚昧な妾の言ふことは一口に茶化されて了ひますからね。併し乍ら吾君様、余り貴方は天然教育とか自然教育とか仰有つて、二人の子供を気儘に放任して置かれたものだから、松若彦、伊佐彦の老臣に向ひ、傍若無人の暴言を吐き、……お前のやうな骨董品は一時も早く引退した方が国家の利益だとか衆生の幸福だらう……とか言つたさうですよ。何程放任教育がよいと云つても、チツとは教誡を与へて下さらぬと困るぢやありませぬか』
国依『子供の教育は母にあるのだ。お前は世の所謂良妻賢母だから困るのだ。賢妻良母でなくては本当の教育は出来ないよ。国依別は教育家でもなければ子守でもなし、家庭教師でもないから、そんなことア畑違ひだよ。併しあの時代遅れの親爺連に、悴も娘も引退を迫つたといふのか、流石は俺の子だ、あゝ感心々々。此父にして此子あり、国依別知己を得たりと云ふべしだ、アツハヽヽヽ』
末子『あゝ困つたことになつたものだなア。丸で吾君様に向つては如何なる箴言も豆腐に鎹、糠に釘だワ。此儘にして放任して置かうものなら、悴も娘も新しがつて乗馬生活を捨て、両親を捨て、どこへ逐電するか分らないと気が揉めてならないのですワ。松若彦もそれが心配でならないと云つてゐましたよ』
国依『悴も娘も乗馬生活を嫌つて何れは出るだらう。何と云つても、俺の血を受けてる子供だからな。今こそ斯うして珍の国の国司の仮名に捉はれ、鍍金的権威を保つてすまし込んでゐるものの、元を糾せば、お勝と巡礼をして居つた宗彦の成れの果だ、其悴だもの当然だよ。親に似ぬ子は鬼子と云ふから、俺もヤツパリ誠の子を持つたと見えるワイ、アツハヽヽヽ。オイ末子姫、人間は教育が肝心だよ。教育の行方によつて、人物が大きくもなり小さくもなるのだからな』
末子『ホヽヽヽヽ、教育が聞いて呆れますワ。貴方の教育の教は獣扁に王の狂でせう』
国依『無論獣でも王になれば結構だが、併し俺の云ふ教育の教はそんなのではない。森林の中に雲を凌いで聳え立つ喬木の喬だ。現代の如うな教育の行方では、床の間に飾る盆栽は作れても、柱になる良材は出来ない。野生の杉檜松などは、少しも人工を加へず、惟神の儘に成育してゐるから、立派な柱となるのだ。今日の如うに児童の性能や天才を無視して、圧迫教育や詰込教育を施し、折角大木にならうとする若木に針金を巻いたり、心を摘んだり、つつぱりをかうたりして、小さい鉢に入れて了ふものだから、碌な人間は一つも出来やしない。惟神に任して、思ふままに子供を発達させ、智能を伸長させるのが真の教育だ。大魚は小池に棲まず、悴も余程人格を練り上げたと見えて、此狭い高砂城が窮屈になつたとみえる。それでこそ世界的人物だ、否崇敬すべき人格者だ、てもさても神様の御恵み有難う感謝致します』
と拍手し乍ら神殿に向つて拝礼する。末子姫は余りのことに呆れ果て、返す言葉も知らなかつた。
(大正一三・一・二二 旧一二・一二・一七 於伊予 山口氏邸、松村真澄録)
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