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文献名1霊界物語 第20巻 如意宝珠 未の巻
文献名2第1篇 宇都山郷よみ(新仮名遣い)うづやまごう
文献名3第4章 六六六〔666〕よみ(新仮名遣い)みろく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-04-18 03:30:20
あらすじ田吾作も鍬を杖につきながら留公の傍らに来て、友彦征服の宣伝歌を歌い始めた。次いで天の真浦が宣伝歌を歌った。三五教の神の由来から、自分の出自、そしてこの宇都山村の里にやってくるまでの経緯を歌いこみ、留公・田吾作との邂逅を述べ、お互いに元は天地の分霊であり、神はひとつである、と友彦に改心を呼びかけた。友彦は宣伝歌の言霊に驚いて一目散に逃げてしまった。これより、天の真浦は里人に歓迎され、松鷹彦の茅屋に逗留することになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月12日(旧04月16日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年3月15日 愛善世界社版78頁 八幡書店版第4輯 177頁 修補版 校定版81頁 普及版34頁 初版 ページ備考
OBC rm2004
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本文  鬼も十八、番茶も出花、蛇も廿なる巻物語、六六六の節に当つて少しく季節は早けれど、蚊蜻蛉然たる細長き、加藤如来に筆執らせ、横に臥しつつ瑞月が、古今を混同したる夢物語、ハートに浪もウツ山の、里に割拠せし、バラモン教の宣伝使、言霊濁るども彦が、天の真浦の言霊に、当りて逃出す一条、天井の棧を読みながら、布団を尻に敷島の煙と共に雲煙朦朧、捉まへ所のなき泣き述ぶるドモ彦物語、嗚呼惟神々々、辷る言霊口車、いやいやながら乗つて行く。
 田吾作は鍬を杖につき、煮染めたやうな垢ついた手拭で頬被りをし乍ら、留公の側にツと寄り添ひ、石原を石油の空缶でも引ずり廻したやうなガラガラ声を振り上げて、お交際的に支離滅裂なる友彦征服歌を謡ひ始めたり。
『朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 宇都山村の里人は  朝な夕なに鍬担げ
 婆も娘も野良仕事  いそしみ励む其中へ
 どこから降つて出て来たか  規律を乱すバラモンの
 偽善一途の神柱  おん友彦がやつて来て
 イの一番に留公を  言向け和し次ぎにお春の若後家が
 現を抜かした其日より  二十余軒の里人は
 野良の仕事も打忘れ  朝から晩までバラモンの
 訳も分らぬ経を読み  随喜の涙流しつつ
 今年で恰度満三年  田畑は毎年荒れて行く
 こんな事ではどうなろと  道に迷うた里人に
 ド偏屈よと笑はれつ  麦を蒔つけ豆を植ゑ
 芋の赤子を朝夕に  肥料を与へて育みつ
 其成人を楽みに  朝から晩まで汗をかき
 作る畑へ留公が  三五教の守彦の
 生言霊に怖ぢ恐れ  野路を外して我畑に
 踏み込み赤子を無残にも  躙り殺してしもた故
 俺もチツとは腹が立ち  留公が宅へやつて来て
 強談判と出て見れば  留公の奴の言ひ草が
 どしても俺の腑に落ちぬ  女国有の説もある
 此世の中に芋にせよ  赤子を踏まれて堪らうか
 旧の通りにしてかやせ  バラモン教の御教は
 天の恵を無残にも  損ひ破つて良いものか
 返答聞かむと詰め寄れば  此留公は面をあげ
 頻りに冷笑浮かべつつ  サンガー夫人がやつて来て
 産児の制限までもする  八釜し説を吐く時に
 芋の赤子の二十三十  潰してやるのは国の為
 世人の為ぢやと逆理屈  流石の俺も堪り兼ね
 携へ持つた鍬の先  留公の頭を的として
 骨も砕けと打下ろす  忽ち留公身をかはし
 逃げる機みに三五の  神の教の宣伝使
 守彦さまが足の指  思ひがけなく切り落し
 ビツクリ仰天地に這うて  無礼を謝すれば守彦の
 仁慈無限の真人は  顔に笑をば湛へつつ
 罪を赦して下さつた  あゝ有難し有難し
 バラモン教の友彦が  指であつたら何とせう
 摺つた揉んだと苛められ  忽ち衣を剥ぎ取られ
 鳥もとまらぬ茨畔  剣の橋や火渡りや
 水底潜り荒行を  五日十日と強ひられて
 生命の程も計られぬ  之を思へば三五の
 神の教の尊さが  心の底に浸み込んで
 喜び勇んで入信の  手続き終へた田吾作は
 最早バラモン教でない  サア友彦よ友彦よ
 最早汝が運の尽き  一日も早く改心の
 実を示すかさもなくば  大江の山の鬼雲彦が
 館を指して帰り行け  お前の様な悪神が
 鳥なき里の蝙蝠と  羽振りを利かしたシーズンは
 昔の夢となつたぞよ  田吾作ぢやとて馬鹿にすな
 俺も天地の分霊  仮令養子の身なりとて
 家を嗣いだら主人ぢやぞ  貴様は口に蜜含み
 尻に剣持つ土蜂の  女房子供に至るまで
 うまく騙してくれた故  村中の内輪ゴテゴテと
 宗旨争ひ絶間なく  イカイ迷惑かけよつた
 さはさり乍ら今となり  理屈を言ふは野暮なれど
 腹の虫奴がをさまらぬ  一日も早く兜脱ぎ
 鉾逆様に旗捲いて  降参するなら田吾作が
 日頃の恨み解けようが  何時まで渋とう威張るなら
 堪忍袋の緒を切つて  蛙飛ばしの蚯蚓切り
 どん百姓と云はれたる  此田吾作が承知せぬ
 返答聞かせ早聞かせ  此世を造りし神直日
 心も広き大直日  唯何事も人の世は
 直日に見直せ聞き直せ  宣り直せよと皇神の
 尊き教は聞きつれど  何うしてこれが忘られよか
 俺等一人の難儀でない  宇都山村は云ふも更
 ひいて世界の大難儀  今の間に悪神の
 根を断ち切つて葉を枯らし  昔の元の秘密郷
 宇都山村を立直し  武志の宮の御前に
 お礼参りをせにやならぬ  さあ友彦よ友彦よ
 早く改心致さぬか  朝な夕なに清新の
 同じ空気を吸うた俺  お前の難儀を目のあたり
 見逃す訳にも行きませぬ  三五教の宣伝使
 天の真浦が言霊を  発射なさらぬ其間に
 早く去就を決せよや  お前の行末案じての
 我忠告を馬鹿にして  聞いてくれねば止むを得ず
 神の御心に任すより  もはや仕方がない程に
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましまして
 道に迷ひし友彦が  心を照らさせ給へかし
 御魂を研かせ給へかし  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』
と揺ひ終つて、頬被をはづし、顔の汗を拭ひ鍬を担げて表へ飛び出した。友彦は閻魔大王が年末の会計検査をするやうな面構へで、口をへの字に結び、ビリビリと地震の神の神憑りをやつて居る。
真浦『天地を造り固めたる  国治立の大神の
 大御神命を畏みて  豊国姫の分霊
 ミロクの御代に大八洲彦  神の命や大足彦の
 教を開く宣伝使  開くる御代も弘子彦の
 神の命の生御霊  宇宙万有統べ守る
 七十五声の神の教  言霊別の伊都能売の
 神は尊き神界の  大経綸を果さむと
 天教山に現れませる  木花姫や烏羽玉の
 闇世を晴らす日の神の  霊より現れし日の出神
 神素盞嗚大神の  瑞の御霊と諸共に
 珍の聖地のヱルサレム  コーカス山やウブスナの
 御山続きの斎苑の山  エデンの園を始めとし
 自転倒島の中心地  桶伏山の山麓に
 大宮柱太しりて  仕へ奉りし神の宮
 伊都の仕組も三千歳の  花咲く春に相生の
 玉照彦や玉照姫の  珍の命と現はれて
 埴安彦の開きたる  三五教を立直し
 瑞の御霊に反抗ひし  ウラナイ教の神司
 高姫黒姫松姫が  心の底より悔悟して
 神の御伴に馳参じ  教を四方に伝へ行く
 言霊天地に鳴り渡り  太平洋を控へたる
 大台ケ原の山麓に  産声揚げし守彦が
 霊夢に感じて杣人の  業務棄てて照妙の
 綾の高天に馳登り  百日百夜の行を終へ
 言依別の大神に  差許されし宣伝使
 雪踏み分けて人の尾の  山の麓に来て見れば
 忽ち雪の槍ぶすま  進みもならず退くも
 心に任せぬ雪の宵  忽ち聞ゆる足音に
 何物ならむと佇めば  限り知られぬ黒影は
 人か獣か曲神か  但しは敵の襲来かと
 雪に埋もり窺へば  幽かに瞬く火の光
 力の綱と近寄れば  半ば破れし門の戸を
 サツと開いて出来る  雲突く許りの荒男
 お這入りなされと親切に  顔に似気なき御挨拶
 薄き氷を踏む心地  進退ここに谷まりて
 神のまにまに入り見れば  又もや一人の荒男
 囲炉裏の側に安坐かき  厭らし眼付で睨めまはす
 あゝ山賊の棲み家かと  怪しむ折しも向ふより
 名乗り出でたる三五の  神の教の宣伝使
 秋彦駒彦両人と  判つた時の嬉しさは
 常世の春に会ふ心地  明くるを待ちて三人は
 人の尾峠の雪をふみ  こけつ転びつ浮木の里
 武志の宮の御前に  到りて祝詞を奏上し
 暫し休らふ時もあれ  杖を力に登り来る
 白髪異様の老人は  武志の宮の神司
 松鷹彦の神参詣  翁の後に従ひて
 五尺有余も積りたる  雪に半身没しつつ
 見上ぐる許りの断崖に  かかる折しも秋彦や
 心のはやる駒彦が  油断を見すまし我体
 力限りに突きつれば  空中滑走の離れ業
 雪積む崖下に着陸し  神の試錬と喜びて
 感謝祈願をこらす折  秋彦駒彦両人は
 口を揃へて語るやう  人の尾峠の山麓で
 六十五点与へたり  又もや此処に我々が
 検定委員と現はれて  汝が身魂試験せり
 いよいよ立派な宣伝使  三十五点を与ふれば
 天下晴れての神使  御祝ひ申すと言ひ乍ら
 姿は消えて白雪の  足音さへもかくれ行く
 鵞毛と降り来る白雪を  冒して川辺の一つ家に
 辿りて見ればこは如何に  松鷹彦の老夫婦
 囲炉裏の前に端坐して  渋茶を啜る真最中
 居ること此処に三四日  翁は川に網を持ち
 小魚を掬ひ守彦に  饗応せむと出でて行く
 忽ちバサンと水煙り  驚き駆け付け救はむと
 到りて見れば老人は  川辺の柳に取り付いて
 ニコニコ笑ひ上り来る  我れは忽ち駆せ帰り
 不言実行の着替へ持ち  再び川辺に駆せ付けて
 翁に渡し濡れ衣  絞りて伏屋に立帰る
 老人夫婦は喜びて  朝な夕なに神の教
 問ひつ問はれつ語り合ひ  雪積む春を明けの春
 梅さへ散りて麦の穂の  筆を含みし弥生空
 バラモン教の友彦が  使と称して入り来る
 留公始め五人連れ  門の戸口に顔を出し
 爺さん婆さんに打ち向ひ  何かヒソビソ語り合ふ
 様子怪しと戸の破れ  垣間見れば五人連
 形勢不穏と見えしより  始めて開く言霊の
 車を押せば忽ちに  踵を返して逃げて行く
 あゝ惟神々々  御霊の幸を目のあたり
 眺めて神の大御稜威  うまらに委曲に讃へつつ
 そつと此家を脱け出でて  豆麦茂る田圃路
 進み来れる折柄に  先に来りし留公が
 一人の男と何事か  芋の畑にいがみ合ふ
 おつとり鍬を振あげて  芋の畑の赤ん坊を
 踏んだ踏まぬと心まで  捩鉢巻の大喧嘩
 仲裁せむと立ち寄りて  折を伺ふ一刹那
 力限りに田吾作が  打下したる鍬の尖
 留公ヒラリと身をかはし  勢余つて吾足に
 力限りにかぶりつき  小指を一本喰ひちぎる
 周章ふためき手を延ばし  親と頼みし小指をば
 ついで直せば裏表  それより忽ち田吾作は
 留公さんと手を握り  平和談判締結し
 目出度く進み来て見れば  神の教の友彦が
 悠々然と構へつつ  天地に響く宣伝歌
 耳をすまして聞くからに  どことはなしに善悪の
 差別も分かぬ言霊戦  善悪正邪の判断に
 苦み佇む時もあれ  留公さんが進み出で
 俺の腕には骨がある  早返答と詰めかくる
 其スタイルの可笑しさに  済まぬ事とは知り乍ら
 思はず知らず噴き出だす  続いて進む田吾作が
 心をこめた宣伝歌  何れ劣らぬ花紅葉
 実りはせねど紅葉の  上に閃くプロペラの
 右と左に別れたる  支離滅裂の大虚空
 空翔つ様な宣り言に  バラモン教の宣伝使
 神の教の友彦が  不意を喰つた怪訝顔
 館をめぐる陥穽  これぞ金城鉄壁と
 頼みし甲斐も荒男の子  二人の男と友彦の
 仲には深い陥穽の  近寄り難い深溝が
 忽ち茲に穿たれた  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましまして  皇大神の御恵みの
 深き尊き事の由  友彦司の胸の奥
 早く照らさせ玉へかし  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  天の真浦が真心は
 救ひまつらにや置くべきか  元は天地の分霊
 三五教もバラモンも  仕ふる人は神の御子
 一日も早く御心を  直させ玉へ神司
 天の真浦が真心を  茲に披陳し奉る
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
と歌ひ終るや友彦は此声に驚いてか、忽ち裏門より韋駄天走りに駆出し、川にザンブと飛び込み、対岸指して流れ渡りに打渡り老木の茂みに姿を没したり。桜を散らす山嵐、川の面を撫でて、魚鱗の波を描いて居る。茲に真浦は留公、田吾作を始め、数多の里人に歓迎され、武志の宮に寄り集ひて、一同感謝祈願を奏上し、次いで暫く松鷹彦が茅屋に足を留むる事となりける。
    ○
 四方の山辺は新緑の  衣着飾る初夏の風
 釈迦の生れた卯の月の  空晴れ渡る後の夜の
 寒さに震ふ月の下  窓引あけて眺むれば
 新井すました如衣宝珠  頂き照らす山の上 新井如衣
 郁太の山の高し郎に  光も強く照り渡る 山上郁太郎
 和知の流れは淙々と  波音高く自から
 天津祝詞を奏上し  山川草木一時に
 天地自然のダンスをば  春の名残と舞ひ暮す
 山と山との谷村に  真の友の寄り合ひて 谷村真友
 二十の巻の物語  六六六の節までやうやうに
 述べつ記して北村の  筆の剣も隆光る 北村隆光
 出口の王仁が口車  横に押すのを松村氏 出口王仁三郎
 心も真澄の大御空  外山の頂き晴れ渡る 松村真澄
 豊かな春二教子が  六六夜も寝ねもせで 外山豊二
 六六六の物語  加藤結んだ松の心 加藤明子
 一度に開く梅が香の  香りゆかしく説き明かす
 時しもあれや汽車の音  本宮山の麓をば
 矢を射る如く辷り行く  一潟千里の勢に
 火車の車は走れども  余り日永に草臥れて
 辷りあぐみし口車  いよいよここに留めおく
 あゝ惟神々々  御霊幸はひ玉へかし。
(大正一一・五・一二 旧四・一六 加藤明子録)
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