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文献名1霊界物語 第44巻 舎身活躍 未の巻
文献名2第2篇 月明清楓よみ(新仮名遣い)げつめいせいふう
文献名3第13章 山口の別〔1182〕よみ(新仮名遣い)やまぐちのわかれ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-02-13 16:20:51
あらすじ治国別は、玉国別への使いに出した親子四人を送り、互いに別れの挨拶として宣伝歌を交わした。晴公は述懐を歌い、治国別は師としての戒めを与えた。珍彦、静子、楓は感謝の歌を歌い、宣伝使のお伴たちはそれぞれ晴公への別れの思いと、親子の無事を祈る歌を歌った。互いに餞別の歌を交わし、一行は互いに別の道を行くことになった。
主な人物 舞台河鹿峠の山口 口述日1922(大正11)年12月08日(旧10月20日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年8月18日 愛善世界社版172頁 八幡書店版第8輯 200頁 修補版 校定版180頁 普及版76頁 初版 ページ備考
OBC rm4413
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本文  治国別一行は珍彦親子四人を河鹿峠の上り口迄送り届け、茲に一行は路傍の巌に腰うちかけ、別れの挨拶に代へて歌ふ。晴公の歌、
『コーカス山に現はれし  大気津姫の部下となり
 八王神の列に入り  時めき給ひし吾父も
 コーカス山を退はれて  落ち行く先はアーメニヤ
 ウラルの彦やウラル姫  開き給ひしウラル教
 塩長彦の大神を  盤古神王と称へつつ
 教を四方に伝へ行く  数多の司を従へて
 時めき渡り居たりしが  バラモン教の大棟梁
 鬼雲彦の部下共に  打ち亡ぼされ神司
 信徒共に四方八方に  雲を霞と逃げ散りぬ
 其時吾は辛うじて  夜陰に紛れ逃げ出し
 彼方此方とさまよひつ  吾両親や妹の
 在所求むる時もあれ  三五教の神司
 亀彦司に助けられ  斎苑の館に導かれ
 尊き神の御教を  朝な夕なに教へられ
 御伴となりて河鹿山  烈しき風を浴び乍ら
 漸く越えて山口の  森の木蔭に来て見れば
 虫が知らすか何とやら  寝られぬままに只一人
 吾師の君の宣らせたる  生言霊を思ひ出し
 考へすます折もあれ  かすかに見ゆる火の光
 嬉しや嬉しや言霊の  吾神力の現はれて
 暗に包みし此森を  隅なく照らすか有難や
 吾言霊の神力も  愈現はれ来りしと
 笑壺に入りし時もあれ  おひおひ近寄る火の光
 よくよく見れば此は如何に  形相実にも凄じき
 肌に粟を生ずべき  鬼女の姿に驚いて
 何と言葉も行きつまり  慄ひ戦く時もあれ
 吾師の君の御諭しに  怪しの女は妹と
 分りし時の嬉しさよ  歓喜のあまり気は勇み
 寝られぬままに妹の  手を曳き乍ら森の外
 小径を伝ひスタスタと  三丁ばかり進む折
 足を早めて馳来る  三葉葵の紋所
 記した提灯ぶら下げて  此方をさして出来る
 こは一大事と兄妹は  大木の蔭に身を寄せて
 様子覗ひ居る中に  バラモン教の斥候兵
 アク、タク、テクの三人は  臆病風にさそはれて
 下らぬ事を喋り出し  終には父母の所在迄
 知らず知らずに喋り出す  アツと驚く間もあらず
 後より来る山駕籠は  まさしく吾の父母と
 覚りし時の驚きは  何に譬へむ物もなし
 三五教の大神の  深き恵みと師の君の
 生言霊の力にて  親子兄妹巡り合ひ
 互に昔を語り合ひ  嬉し涙にくれにける
 あゝ惟神々々  神の恵みの浅からず
 日頃慕ひし父母や  吾妹に目のあたり
 無事なる顔を合せつつ  親子兄妹勇み立ち
 ウブスナ山に礼詣り  吾師の君に許されて
 祠の森に籠もります  玉国別や五十子姫
 司の前に進み行く  吾身の上こそ楽しけれ
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 星は空より落つるとも  山裂け海はあするとも
 皇大神の御恵みは  夢に現に忘れむや
 吾師の君よいざさらば  神の恵みを蒙りて
 一時も早くハルナ城  大黒主を言向て
 太しき功績を立て給へ  皇大神の御前に
 花々しくも復り言  申させ給ふ吉日を
 指折り数へ大神の  御前に祈りて待ち奉る
 あゝ惟神々々  御霊幸ましませよ。

 三五の神の恵みに送られて
  河鹿峠もやすく越えなむ。

 玉国別神の司のあれませる
  祠の宮に疾くも進まむ。

 皇神の瑞の御舎建て終せ
  神の御稜威を四方に照らさむ』

治国別『千早振る神に習ひて親と子は
  世人を守れ千代に八千代に。

 河鹿山峠は如何に険しとも
  神の恵にやすく渡らむ。

 玉国別神の命に会ひませば
  治国別はよしと伝へよ。

 松彦や万公、五三公も恙なく
  道に尽すと伝へ給はれ』

晴公『有難し吾師の君の言の葉は
  胸にたたみて忘れざらまし。

 足乳根の親の命を助けまし
  妹に会せし神ぞ尊き。

 これよりは親子兄妹睦み合ひ
  神の大道に仕へまつらむ』

珍彦『千早振る神代の春の巡り来て
  親子は千代の春に会ふかな。

 三五の神の恵を今ぞ知る
  治国別の口を通して。

 河鹿山登りて行かむ吾身をば
  守らせ給へ天地の神。

 海山の恵を受けし師の君を
  朝な夕なに神と斎かむ』

静子『千万の嘆きを受けし吾身にも
  今日は嬉しき旅をなすかな。

 親と子を救ひ給ひし神と師の
  恵は死すとも忘れざるべし。

 よしやよし、此まま君に会はずとも
  吾魂は君に添ふべし。

 師の君の面影見ればなつかしき
  思ひに沈む初冬の空。

 凩の吹き荒びたる山道も
  神を思へば苦しくもなし』

楓『なつかしき父と母とに巡り合ひ
  兄の君にも会ひし嬉しさ。

 皇神と吾師の君は何時迄も
  吾等親子を恵ませ給へ。

 ゆくりなく暗の木蔭に巡り合ひ
  神の恵みに浸りけるかな。

 俊彦の兄の命の帰りまさば
  吾師の君の気遣はれける。

 さり乍ら吾師の君は活神よ
  罪に穢れし人の子ならねば。

 師の君の行手を祈り奉り
  朝な夕なに神に仕へむ』

治国別『楓姫、心安けく思召せ
  吾には神の守りありせば。

 皇神の道伝へゆく神司
  さやる魔神の如何であるべき』

万公『俊彦よ二人の親を大切に
  又妹も慈みませ。

 親となり子と生るるも神の代の
  つきぬ縁と聞くぞ目出度き。

 人々に百の行ひありとても
  孝より外によき道はなし。

 朝夕に神を敬ひ足乳根の
  親に仕へて世を送りませ。

 年若き汝が妹を憐れみて
  誠の道に育て給はれ』

晴公『あり難し万公さまの思召
  胸にたたみて忘れざるべし。

 友垣の情誼を今ぞ悟りけり
  汝の心の赤さ親しさ』

五三公『晴公よ親を大切に妹を
  慈しみつつ神を敬へ。

 俺は今吾師の君に従ひて
  進みて行かむ神の大道を。

 暇あらば五三公の事を思ひ出し
  神の御前に祈つて呉れよ。

 さり乍ら親兄弟を後にして
  俺を祈れと云ふのではない』

晴公『五三公さまいそいそとして居ておくれ
  お前の事は忘れないから。

 嚔が出た時や俺を五三公が
  誹つて居ると思ひ喜ぶ』

五三公『嚔の一つ出るのは褒められて
  居ると思うて腹を立てなよ。

 嚔の二つ出るのは誹られて
  居るのぢやけれど俺はそしらぬ。

 嚔の三つ出るのは笑はれて
  居るのだけれど俺は笑はぬ。

 嚔の四つ出るのは風を引く
  之を思うて自愛なされよ。

 五三公は蔭口言ふ様な男では
  無いと云ふ事知つて居るだろ』

晴公『そらさうだ、お前に限りそンな事
  云ふとは更に俺は思はぬ』

竜公『神様の御縁で心安くなり
  もう別れるが情ないぞや。

 晴公さま二人の親を大切に
  たまには俺の事も思へよ。

 その代り俺は朝夕晴公の
  身の幸ひを祈り居るぞや』

晴公『竜公さま何卒宜しう頼みます
  何時かはお目にかかる時まで』

松彦『河鹿山峠険しく風荒く
  猿棲み居れば気をつけて行け。

 玉国別神の司ぢやなけれども
  お猿の奴に祟られなゆめ。

 逸早く祠の森に行きまして
  瑞の御舎仕へまつれよ。

 道公や伊太公、純公の友垣に
  宜しう云うたと伝へて呉れよ』

晴公『松彦がそンな事をば云はずとも
  俺が宜いよに云うておくぞや。

 治国別神の命の神司に
  山より高き恵みを感謝す。

 いざさらば之より親子四人づれ
  険しき坂を登り行かなむ。

 治国別其他三人の司達
  神の恵みに安く進めよ』

楓『いざさらば命の親の師の君に
  名残惜くも立別れなむ』

治国別『親と子と三人四人睦び合ひ
  神の大道を登り行きませ』

 斯く互に餞別の歌を歌ひ交し南と北に袂を分ちける。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一一・一二・八 旧一〇・二〇 北村隆光録)
(昭和九・一二・二九 王仁校正)
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