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文献名1霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻
文献名2第3篇 千里万行よみ(新仮名遣い)せんりばんこう
文献名3第14章 樹下の宿〔880〕よみ(新仮名遣い)じゅかのやど
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-04-07 18:03:59
あらすじ国依別はキジに安彦という名を与え、マチには宗介という名を与えた。道々二人に教えを伝えながら、ブラジル峠を越えて大平原に出た。国依別と安彦は旅の疲れに寝てしまったが、宗介は何となく寝つけず、聞こえてくる猛獣の声に震えていた。明け方、猛獣の声が聞こえなくなったが、大木の切り株に二人の男が腰を掛けてひそびそ話にふけっているのが耳に入ってきた。宗介が耳を澄ませて聞き入ると、それは秋山別とモリスだった。秋山別とモリスは国依別が紅井姫とエリナを連れていると思って、執念深く追ってきていたのであった。二人はこの先の丸木橋に仕掛けをして、国依別を落として亡き者にしようと企んでいた。宗介はこれを聞いて、国依別に先に知らせるよりも、丸木橋のところで自分が天眼通で彼らの企みを見破ったように見せかければ、国依別も自分を見直すだろう、と我知らず独り言が大きくなった。安彦は宗介の独り言を聞いてしまい、宗介をからかう。しかし国依別は最初からすべて聞いていた。国依別は、宗介の頼みを聞いて、名を宗彦と改めた。国依別は、秋山別とモリスの企みを逆手に取って、女の声色を使ってまんまと丸木橋をわたって出し抜いてやろうという。一行は再び眠りについて、夜が明けてから進んで行くことになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月19日(旧06月27日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年9月15日 愛善世界社版165頁 八幡書店版第6輯 103頁 修補版 校定版169頁 普及版78頁 初版 ページ備考
OBC rm3114
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本文  波に浮べる高砂の  ヒルとハルとの国依別が
 険しき山をよぢ登り  安彦、宗介両人を
 従ひ登るブラジルの  細き谷間を打渡り
 夜を日についではるばると  ハルの原野を打渉り
 アマゾン河の森林に  思はず知らず迷ひ込み
 鷹依姫の一行や  高姫一行に巡り会ひ
 モールバンドの怪獣を  言向け和し万民の
 さも恐ろしき災禍を  除き清めし物語
 いよいよ茲に述べ立つる。
 国依別はキジに安彦といふ名を与へ、マチに宗介と云ふ名を与へ、道々三五の教を説き諭し乍ら、其昔淤縢山津見司が、木の花咲耶姫の化身なる蚊々虎と通過したる、ブラジル峠の山頂に息を休め、それより大原野に出づる事となつた。
 国依別一行はブラジル峠の山麓にて日を暮らし、大木の根元に夜露を凌ぎ一夜を明かす事となりぬ。
 国依別、安彦は他愛もなく旅の疲れに、よく眠つて居る。宗介は何となく、胸騒ぎがして、マンジリとも得せず、二人の間に挟まつて、横たはつて居た。忽ち聞ゆる猛獣の声、心飛び魂消ゆる計り、其厭らしさに宗介は、戦慄堪へ切れず、安彦の体にしつかり喰ひ付き、夜の明くるを一刻も早かれと祈つて居た。
 夜明に間近くなつたと見え、猛獣の叫び声は何時とはなしに消えて了つた。折柄二人の男、大木の株に腰をかけ、ヒソビソ話に耽つてゐる。同じ一本の大木と雖も、五十丈許りも周つた幹、一方の方には三人が他愛なく横たはつて居るのも、一方に腰打かけてる二人の目には止まらうやうもなかつた。
 どこともなくヒソビソ話が耳に這入つて来るので宗介は、ソツと空をすかし乍ら、声する方に近寄つて耳を立てて、一言も洩らさじと聞いて居る。
『オイ秋……ここまで捜しに来たのだが、モウ駄目だぞ。日暮シ山では、ハル、ナイルの両人に追ひまくられ、様子を聞けば国依別は今朝程立つたと言ひよつたので、何人連れかと聞いて見れば、指を三本出して居やがつた。的切り、ク印とエ印を連れてノホホンで、宣伝をだしに天下を漫遊すると云ふ考へだ。俺も男の意地で、仮令命がなくなつても、彼奴の後をつけ狙ひ、国依別の隙を窺ひ、谷底へでも突き落し、二人のナイスを此方のものにせぬことには、阿呆らしうて、世間へ顔出しも出来ぬぢやないか。最早行方が分らぬと云つて此儘泣き寝入る訳にも行かず、何とか工夫はあるまいかなア、秋さま』
『モリ公、お前も中々執着心が深いねい。こんな所迄スタスタと尻を付けて来るのだから、こンな連中に狙はれた女こそ、蛇に魅入られた蟇のやうなものだよ。本当に思へば思ふ程、二人の女が可哀相になつて来た。俺もここまで心猿意馬の狂ひに引かされて、来るは来たものの、何時の間にか、心の猿も思ひの馬も、どつかへ、愛想をつかして、絶望を叫び、帰つて了つたやうな気分になつて来た。モウ仕方がない、是から後へ引返さうぢやないか』
『勝手にせい、俺は何処迄もやり遂げるのだ。男がのめのめとどの面さげて、国許へ帰る事が出来ようかい』
『併し何程二人の女に懸想して居つても、国依別の居る以上は駄目ぢやないか。彼奴を如何かして……』
と云ひ乍ら小声で何か耳のはたで稍暫し囁いて居る。宗介は何うしても其声が余り低いので聞えなかつた。
『……此処を一里計り先へ行くと、丸木橋がある。相当に深い谷で、そこへ落ちようものなら、どんな太い男でも五体がメチヤメチヤになつて了ふと云ふ事だから、今の中に先へ廻つて、其橋のつつぱりを取り、国依別が一足跨げるや否や、バサツと落ちる様に工夫をせうぢやないか。藤蔓か何かで、橋の一方を括つておき、国依別が跨げるや否や、谷底へ隠れて居つて、其綱を引くのだ。さうすると、ズヽヽヽズドン、ウン、キヤア……とそれつきり、憐れなりける次第なりけりだ。さうせうぢやないか』
『それ程骨を折つたつて、国依別の通つた後だつたら、骨折損の草臥儲けになつて了うぢやないか』
『ナアニ、大丈夫だよ。半日位先に出たと云つても、向うは足弱女を連れてるんだし、此方は健脚家計りのお揃だから、キツと俺の方が先へ勝つにきまつてる。彼奴はまだ二三里位後に女と意茶ついて居よるに違ひない。サア早く行かぬと、追ひつかれると大変だぞ。作業が済まぬ中に来よつたら何にもならぬからなア。もしも女が渡りよつたら、黙つて渡してやるのだ。国依別が足を二歩三歩かけよつたが最後一イ二ウ三ツで引張るのだ。何と秋さま、妙案だらう』
『一人の女が先に立ち、国依別が中に立ち、又一人の女が後にあり、一時に単縦陣を作つて渡りよつたら、何うするのだ。それこそ虻蜂取らずの草臥もうけになつて了うぢやないか』
『そこは又其時の風が吹くぢやないか。仮令落込ンだ所で、チツと位怪我をしても、三人が三人乍ら死ぬ気づかひはないワ。そこで国依別は目をまかす、そ知らぬ顔して放つとけばそれで仕舞だ。二人の女には水を呑ませ、介抱し……コレコレ旅の御女中……とか何とか云つて助けてやる。さうすれば紅井姫が、俺達に命の親様と云つて、秋波を送つてクレナイ事もあるまいぞ。現に国依別がラバーされたのも大地震の時に助けてやつたのが原因ぢやからのウ』
『それもさうだなア。サア早く往つて準備に取りかからうかい。グヅグヅして居ると六菖十菊、後の祭りで、何にもならないワ。オ一、二、三!』
と、細き谷路を、怪しげにすかし乍ら、進ンで行く。
 宗介は二人の往つた後で、
『何だか俺は今夜に限つて寝られないと思へば、秋山別、モリスの両人、あンな悪い事を企ンでゐやがるのだなア。それも天罰に俺達に聞えるやうにすつかり喋つて行きよつた。神様が彼等両人がこンな計画をして居るからと、俺に霊をかけ、ねかさなかつたのだナ。何と神様の恵はどこからどこ迄も行届いたものだ。誰も知るまいと思つて、悪い事を企むと、何事も此通りだ。天知る地知る吾れも知る、宗介迄が知ると云ふのだから、怖いものだなア。ドレドレ此秘密を聞き取つて手柄話を国依別様に報告せうかなア……イヤイヤ待て待てさう早く云ふと値打がない。橋の詰まで行つた所で、国依別さまが足をかけようとなさつたら……モシ御待ちなさい、私の天眼通で見れば、此橋は浮橋ですから険呑です。秋、モリの二人が綱を引張つて居りますから……と抱止めるのだ。さうすると国依別さまも喜びて、宗介と替へて下さつた名を又、昔の名の宗彦さまと替へて下さるかも知れぬ。おゝさうだ言はぬが花だ』
と調子に乗つて、何時の間にやら、高い声で囀つて居る。安彦は目をさまして、
『オイ宗介、貴様は甘い事を考へて居よるなア』
 宗介小声になつて、
『オイ、お前聞いたのか。大将に内証だから其積りで居つて呉れよ』
 安彦殊更大きな声で、
『一本橋をどうしたと云ふのだい』
『喧しう言はずに休まぬか。秋、モリの両人が、今頃にや丸木橋をおとす作業中だ。面白いぢやないか』
『宣伝使様、あなた御存じですか』
『初からスツカリ聞いて居る。宗彦と云ふ名に替へてやらうか』
『イヤもう有難う御座います。どうぞ宜しうお頼み申します』
『そんなら、一段位を上げて、只今から宗彦と名を与へる』
『アヽ何とも御礼の申様が御座いませぬ……オイ安彦どうだい、只今から、お前も俺も同役だ。余り偉相に弟扱ひには出来ないぞ』
『俺は彦を貰つてから三日になる。貴様は今貰つた所ぢやないか。双児が生れても兄弟の区別がつくのだ。現に三日も違ひがあるのだから、ヤツパリ弟だよ』
『エヽ仕方がないなア。ぢやドツと譲歩して表面だけ弟になつておかうかい。其代り兄は兄丈の甲斐性がなくてはならず、弟を可愛がつて大切にせねばならぬ責任がある。弟が弱つて居れば、手を引いてやつて労はり又負うてやらなきや、兄貴の値打がないからなア』
『コラコラ喧しう云はずに休まぬか。まだ夜明にチツと間もある。ゆつくり茲で休ンで、夜が明けてからボツボツ行くのだ。何れ彼奴ら両人は谷底の木の茂みに隠れて居るに違ひないから、お前等両人は女の声色を使つて行くのだよ。さうして三人共甘く、渡つて了うのだよ』
『二人の女に三人が声色とは、チツと変ぢや御座りませぬか』
『そこは二人になるのだ。国依別が紅井姫の声色を使ひ、安彦は弟の宗彦を背中に負ひ、さうしてエリナの声色になつて、渡りさへすれば大丈夫だ。渡つて了つてから、各自に男の声で大笑ひをし、ビツクリさしてやるのだ』
『国依別さま、あなたは真面目な宣伝使に似ず、随分悪戯が御好ですなア。こんな男を、私だつて背中に負うて一本橋が渡られませうかなア』
『あの様な悪い事を企む奴には、此方も一つからかつてやる位は良いぢやないか。まさか違へば生命を取られる所ぢやから……そしてお前は宗彦を背中へ括りつけ、もしも誤つて落ちた所で、国依別に於ては、痛い事もなければ痒い事もないのだ、アハヽヽヽヽ』
 安彦首を傾け、国依別の顔を見詰め乍ら、
『ヘーン、何とマア水臭い御方ですなア』
『何れ、谷を渡り谷水の中へおちるのだもの。ちつたア、水臭からうかい。谷底には水の御霊が待つて居つて、はまつた所で、手を受けて助けて下さるから大丈夫だよ。そんな取越苦労はするものぢやないよ。あゝ待ち遠しい事だ。宣伝使様モウそろそろ出かけたら如何でせう』
『今二人が行つたばかしぢやないか。あの深い谷の橋杭を取つたり、蔓をつけて引つ張る用意するのは、一時や二時の猶予で出来るものぢやない。茲でゆつくりしてアフンとさしてやる方が面白いぢやないか。別に半日位遅れたつて、遅刻の罰金を取られるのでもなし、マア先を楽ンで、ゆつくり休ンで行かう』
と言ひ乍ら、大木の根を枕に寝て了つた。
『何と宣伝使と云ふものは大胆な者ぢやないか、ナア宗彦。現在敵が落橋準備をやつてゐるのに、平気であの通り、横になるが早いか高鼾をかいて寝て了はれた。俺達はまだ執着心が離れぬので、命が惜しくて、敵が前に殺人準備をやつて居ると思へば、どこともなしに心気興奮して寝られないがなア』
『国依別さまと安物の安彦と比べやうとするから、そンな疑問が起るのだよ。活神さまと製糞器とは同じ様にはいかぬワイ』
『俺が製糞器なら、お前も製糞器ぢやないか』
『お前は製糞器だよ、この宗彦は糞造器だ。同じ意味の様だが、そこに一寸違う訳があるのだ。アハヽヽヽ』
と笑ひ乍ら、大木の周囲をクルクルと繞りつつ夜明を待つ事にした。漸くにして、東は白み出し、百鳥の声、あたりの森林より、かしましく聞え来たる。青葉を渡る旦の風は、得も言はれぬ涼味を惜しげもなく、三人に向つて吹きつける。いよいよ一行三人は足仕度をなし、谷の細路を伝ひ、丸木橋に向ひ進み行く事とはなりにける。
(大正一一・八・一九 旧六・二七 松村真澄録)
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