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文献名1霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻
文献名2第1篇 誠心誠意よみ(新仮名遣い)せいしんせいい
文献名3第3章 言霊停止〔918〕よみ(新仮名遣い)ことたまていし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-07-08 17:50:09
あらすじ言依別命は、激しい喧嘩の後を見て取って、これはどうしたことかと高姫に尋ねるが、高姫はこれも全部、言依別命のせいだと悪態をつく。また春彦と言い合いになるが、やにわに高姫は泡を吹いてその場に倒れてしまった。春彦はいい気味だと嘲るが、言依別命とカールに諭され促され、三人は禊をして高姫に鎮魂を施した。高姫は目をさまし、三人は高姫に話しかけるが、高姫は一時的に言霊の使用を神様より許されておらず、身振り手振りで不満と反対をあらわしている。言依別命は高姫が言霊を再び使用できるようにと神様に祈願したが、なにゆえか言霊の発射がうまくできなかった。しかたなく春彦に高姫の介抱を願いおき、自分の館をさして帰って行った。
主な人物 舞台ウヅの館 口述日1922(大正11)年08月26日(旧07月4日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年11月10日 愛善世界社版30頁 八幡書店版第6輯 267頁 修補版 校定版31頁 普及版13頁 初版 ページ備考
OBC rm3303
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本文  言依別命は此灰まぶれ騒動を一目見て、顔をしかめ乍ら、
『モシ高姫さま、言依別で御座います。コリヤまあ如何なさいました。カールに春彦、お前さまも灰まぶれぢやないか』
カール『ハイ、さつぱり灰猫婆に灰を吹かれまして、イヤもう此通り、ハイ北ハイ陣の為体で御座います。ハイもうさつぱり、さハイが付きませぬワイ。どうぞ御ハイ慮下さいませぬ様に、ハイ願致します』
春彦『紅塵万丈……でなくて、薩張ハイ塵万丈な目にあひました。ハイ神楽の舞を一つ舞うて見ましたが、何分爺になる役がハイカラですものだから、薩張采ハイをふり損つて、灰猫婆アさまに咬みつかれました』
言依別『何だか知らぬが、大変な喧嘩をしたと見えますな。………高姫さま、コリヤ一体如何して斯んな事が突発したのですか、何か深い事情があるでせう。お差支なくば其理由を拝聴したいものですな』
高姫『あのマア言さまの白々しい事ワイの。甘く両人に言ひ含ませ、此婆アをこんな目にあはしておいて、ヘン、そんな計略は最早駄目ですよ。良い加減にお前も改心をなさいませ。ドハイカラ奴が……』
言依別『コレハ コレハ、思ひがけなき高姫様のお言葉……』
高姫『思ひがけないでせう、それだけ死際の悪い高姫とは、いかなお前でも思ひがけなかつたでせう、ホツホヽヽヽ。憎まれ子世に覇張る……とか申しましてな、折角国依別が甘くドハイカラの言さまに取込み、今晩は男蝶女蝶の花の盃酌かはす段取まで、やうやう漕ぎつけた所、諸行無常の世の中、月に叢雲、花に嵐の高姫婆風が、情なくも吹きすさみ、半開の莟を散らさうとする。其防禦網を……否網所か、妨害を根絶せむと甘く企んだお前達のお手際、実に見上げたもので御座いますワイ。オツホヽヽヽ。何程琉の玉や球の玉を手に入れたと云つて、琉球相にして居つても、肝腎の身魂が曇り切り、灰泥の様になつて居つては、玉の効用はサツパリ玉無しですよ』
春彦『コラ灰猫婆ア! 貴様は比喩方のない悪垂婆アだ。改心をしたり、慢心をしたり、モウ是から先は何をするのだ。疑心暗鬼の張本人奴が』
高姫『改心慢心の後は感心だよ。お前達のどこ迄も執念深い計略には此高姫も実に感心……否寒心せざるを得ませぬワイ。オツホヽヽヽ』
と云つた限り『ウーン』と反り返り、癲癇の様に口から泡を吹き、手足をピリピリと震はせて、其場にふん伸びて了つた。
春彦『余り逆理屈ばかりを云ふものだから、神様の神罰が当つて、此通りふん伸びて了つたのだ。……なあカール、善と悪とを立別ける神は、此世に確に居られますねえ』
言依別『オイお前達、そんな事言つてゐる時ぢやない。早く灰を掃除して、顔を洗ひ、手を清め、高姫さまの御恢復を祈らなならないぢやないか』
春彦『言依別様、こんな婆アは懲戒の為に、斯うやつて冷たくなる所まで放つといてやつたら如何でせう。実に怪しからぬ奴ですから、又呼び生かしてやらうものなら、それこそ反対に団子理屈を捏ね、殺人未遂犯で告訴するの何のと、命助けて貰うた恩人に向つて、仇を返すのですから、幸ひ、自分が勝手に死んだのですから、こんな厄介者はモウ放つといたらどうでせうなア。カールに対しても、実に私としては助けてやつて呉れとは申されませぬワイ』
カール『そんな御気遣ひは要りませぬ。サア早く御病気全快の御祈念を致しませう』
と門先を流れる小に飛込み、身をきよめ、一生懸命に病気恢復の祈願をこめ始めた。
 言依別命は天の数歌を歌ひ上げ、反魂の神術を修して居る。春彦も止むを得ず、身を清め一生懸命に祈願をこめた。漸くにして高姫は息吹き返し、目をキヨロつかせ乍ら、三人の姿をマンジリともせずに打眺めてゐる。
言依別『高姫様、お気がつきましたか、大変に心配を致しましたよ』
 高姫は耳は聞えるが、まだ言霊の応用を許されてゐなかつた。蚕の蛹か芋虫のやうに面をふくらし、プリンと体を振つて、背中を向けて、……甘い事を言うて呉れな。そんな上手追従は喰ひませぬぞ……といふ意思を表示して居る。春彦は又もや高姫の前にまはり、
春彦『高姫さま、御気分は如何ですかな』
と尋ぬれば、又もプリンと背中を向ける。カールも亦前に寄つて、
カール『高姫さま、良い加減に疑を晴らし、御機嫌を直されては如何ですか、余り執拗過ぎるぢやありませぬか』
と顔を覗けば、又もやプリンと背中を向ける。三人の挨拶を一人々々、弓張はぢきでもする様に彼方へ向き此方へ向き、恰度、操り人形の様に同じ所に尻を卸した儘、右に左に回転して居る。
 言依別命は言霊の使用を神様より止められて居る事を悟り、又もや天の数歌を歌つて、言語の自由に発し得る様と祈願をこめた。されど何故か容易に言霊を発射することが出来なかつた。言依別はカールを従へ、目礼し乍ら、春彦に介抱を命じ置き館を指して帰り行く。
(大正一一・八・二六 旧七・四 松村真澄録)
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