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文献名1霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
文献名2第3篇 理想新政よみ(新仮名遣い)りそうしんせい
文献名3第22章 優秀美〔1789〕よみ(新仮名遣い)ゆうしゅうび
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ教務総監ジャンクは、千草姫の行動や、太子、王女らが行方不明であることに心を悩めていた。そして、いつのまにかうつらうつらと眠りについてしまった。すると、夢うつつの中、言霊別のエンゼルが現れて託宣を下す。太子らは、ある場所に神の守護によりかくまわれており、いよいよ教政改革断行の時期がせまったので、すぐに会うことができる。新しい左守・右守はすでに定めれており、ジャンクは教務総監として新体制を補佐するべし。また、王女の夫はすでに定められており、王女夫婦はハリマの森の神主として奉仕させるべし。ガーデン王は八岐大蛇の悪霊の片割れに表意されているが、静かな地で静養すればよくなるであろう。また、千草姫は実はすでにこの世を去っており、その遺骸に高姫の霊が憑依して、今の醜態・乱暴を立ち働いている。これは、金毛九尾の悪孤の霊の仕業であり、よくよく注意すべし。そして、言霊別は去っていった。ジャンクはこの託宣に勇気をつけられ、神恩を感謝する歌を歌っている。そこへ、太子が改革派一行を引き連れて戻ってくる。太子とジャンクは新しい時代の到来を互いに喜び合う。そして、照国別の案により、妖僧キューバーを解放し、また千草姫の審神をすべく、一同は姫の居間に向かう。そこでは、今しも千草姫がテイラの母モクレンを、スコブツエン宗の残酷な掟にしたがって、神のいけにえにしようとしているところであった。照国別は、外から力の限りドアを打ち破り、千草姫をウーンと一声、睨みつければ、金毛九尾の狐は慌てて天窓を伝い、どこともなく姿を隠してしまった。ここにチウイン太子は新教王となり、トルマン国も小天国を現出するにいたった。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年08月25日(旧07月6日) 口述場所丹後由良 秋田別荘 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版276頁 八幡書店版第12輯 492頁 修補版 校定版284頁 普及版140頁 初版 ページ備考
OBC rm7022
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本文  教務総監のジヤンクは一室に立籠り、千草姫の行動の常ならぬのに心を悩め、且チウイン太子、王女、テイラ、ハリスの行方不明となりしことも亦ジヤンクが心配の種となつた。いつとはなく、うつらうつらと眠につく。時しもあれ、容色端麗なる異様の神人、何処ともなく現はれ来り、
『ジヤンク ジヤンク』
と肩をゆすり玉ふ。ジヤンクはハツと驚き目をさませば、夢にみしと同様の神人が厳然として、吾目の前の椅子に腰うちかけ、ニコニコし乍ら、
神人『我は第一霊国の天人言霊別のエンゼルであるぞよ。汝はトルマン国の現状を憂慮し、心胆を悩ませ居る段、実に感服の至りだ。汝の至誠天に通じ、今やエンゼルとして汝の神業を輔くべく降り来れり、ゆめゆめ疑ふな』
ジヤンク『ハイ、何事も愚鈍の私、進退維谷まつて、憂愁に沈み居ります際、尊き神様の御降臨、実に有難う存じます。何卒々々御守護あらむ事を偏に希ひ上げ奉ります』
エンゼル『汝が心配致して居るチウイン太子を始め、王女チンレイ、テイラ、ハリスの面々は神の守護に仍り、少時或所に囲まひおきしが、いよいよ教政改革断行の時期到来したれば、今に会はしてやらう。汝は飽く迄もトルマン国の教務総監となり、チウイン太子を輔けて、正しき教化を行へ。又左守、右守はチウイン太子、既に定め居れば、太子の意見に従ふべし。王女チンレイは照国別の弟子春公なる者を夫となし、ハリマの森の神殿に三五の大神とウラルの神と併せ祭り、春公を神主となし、チンレイと共に永遠に奉仕せしめよ』
ジヤ『ハイ、何から何迄、御指導下さいまして有難う存じます。神様……エンゼル様に恐れ乍ら御伺ひ致しまするが、ガーデン教王様は精神に御異状ありとみえ、言行頓に一変し、此老臣も実に困難致して居りまするが、教王様は元の正気に御返り遊ばすで御座りませうか』
エンゼル『彼は八岐大蛇の片割の悪霊に憑依され、精神惑乱しをれば、暫く閑地に静養せしめよ。又千草姫はすでにすでに此世を去り、其遺骸に高姫の霊憑依し、日の出神の生宮と称し、所在醜態を演じ、乱暴を働き居るは、全く金毛九尾の悪狐の霊の致す所、随分注意すべし』
ジヤ『ハイ、心得まして御座います。千草姫様でないとすれば、此老臣も大に考ふる所が御座います。何卒々々過ちなきやう、御守護願ひ奉ります』
エン『彼れ高姫の再来たる千草姫は常に特に気を付けよ。さらば』
といふより早く、忽ち其神姿を消させ玉ふた。ジヤンクは神恩を感謝し、讃美歌を歌ふ。
『日はくれはてて道もなし  雪は野山に堆く
 積りて歩まむ由もなし  行手に悩む旅人の
 頭上を照し日の神は  暗をば晴らし積む雪を
 解かせ玉ひて己が行く  大道を開かせ玉ひけり
 あゝ有難や有難や  御国に尽す赤心を
 神は諾なひ玉ひけむ  困り切つたる今日の宵
 吾枕辺におごそかに  現はれ玉ひ宣り玉ふ
 其御言葉は夢ならず  誠の神の御出現
 仰ぐも高し須弥の山  守らせ玉ふ木の花の
 姫命にましますか  但しは言霊別神か
 何れにますかは知らね共  姿雄々しき瑞御霊
 乾ききつたる吾霊を  うるほし玉ひ清鮮の
 血汐を吾身に漲らし  救はせ玉ひし嬉しさよ
 あゝ惟神々々  主の大神の御前に
 謹しみ感謝し奉る  喜び感謝し奉る』
 斯く歌ひ居る時しも、チウイン太子は照国別、照公、レール、マーク、テイラ、ハリス、及び王女チンレイ、テルマン、春公の面々を引伴れ、意気揚々と帰り来る。ジヤンクは太子を見るより抱きつき、涙の声を絞り乍ら、
『あゝ太子様、能くマア御帰り下さいました』
といつたきり、後は余りの感激に打たれて、一言も出し得なかつた。太子も此老臣が只一人、悪魔の中に孤城を守つてゐたかと思へば、そぞろ涙を催し、嬉し涙にむせ返り、ハンカチにて両眼を拭ひ乍ら、少時言葉も得出さず俯むいて了つた。
照国別『ジヤンク様お喜びなさりませ。太子様は此通り御壮健で居らせられます。そして教政大改革の準備として、既に棟梁の臣をお定めになり、御帰りになつたので御座いますから、どうか貴方様は、太子様を新教王と仰ぎ、教王様に退隠を願ひ、千草姫の悪霊を追ひ出し、教政に御尽瘁あらむ事を希望致します』
ジヤンク『ハイ、何から何迄有難う御座います。只今も尊きエンゼルが吾枕辺に出現遊ばし、いろいろさまざまと教化の大本につき、御諭しを頂きました。何分宜しく御願ひ申します』
照国『此度、大英断を以て仁恵令を発布されましたのは、人心を新にする上から見ても、誠に結構な事と存じます。就ては荒井ケ嶽の岩窟に、チウイン教王様が押込めおかれたる妖僧キユーバーを、速に解放されむ事を希望します』
ジヤ『成程、実の所はキユーバーの所在が分りませぬので、何の処置も取つて居りませぬが、所在が分りました以上は、速に解放致しませう』
照国『チウイン教王様の御継職に就て、目出度くこれで、国内の風塵は掃浄められました。サア之から千草姫の審神を致しませう。ジヤンク殿、御一同、拙者と共に千草姫の居間迄御越しを願ひませう』
 一同は頷き乍ら照国別の後より、足音を忍ばせ、千草姫の居間にと進み寄つた。室内には女の声、
『王妃様、どうか、之許りは御助け下さいませ』
千草姫『何と云つても、其方は絶対服従を誓ふたではないか。お前の乳房を此焼金で切り取り、大神様に御供へ致し、キユーバーの所在を知らして頂かねばならぬのだ。モクレンともあらう者が、今はの際に卑怯未練な命が惜しいか、テモ偖も悲し相な面わいの。何程逃げても、走つても、此一室に閉ぢ込めた上は助かりは致さぬぞや。サ、観念の眼を閉ぢなさい。神の贄になるのだつたら、其方も光栄だらう』
モク『如何なる御用も承はりまするが、どうか娘のテイラに一目会はして下さいませ。其上にて如何なる御用も勤めまする』
千草『ホヽヽヽそんな事を云つて、此場を逃出し、千草姫の悪口をふれ歩き、吾神徳をおとそうと致す考へだらう。さやうな計略に乗る千草姫では御座らぬぞや』
と優しい面に殺気を帯び、金火箸を白くなる所迄焼き、キヤアキヤアと泣叫ぶモクレンの乳房に今やあてがはむとする時しも、照国別は力限り、外よりドアを打破り、『ウーン』と一声、睨みつくれば、千草姫は慌てふためき、尻のあたりより狐の尻尾の八岐になつたのをブリンブリンと振り乍ら、天窓を伝ひ、何処ともなく姿をかくしける。
 因にテルマンは新教王の見出しに仍つて、番僧頭に任ぜられ、新教王の神政を国民は謳歌し、今迄乱れ切つたるトルマン国も、小天国を現出するに至つた。あゝ惟神霊幸倍坐。
(大正一四・八・二五 旧七・六 於丹後由良秋田別荘 松村真澄録)
(昭和一〇・六・二四 王仁校正)
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