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文献名1霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻
文献名2第4篇 地異天変よみ(新仮名遣い)ちいてんぺん
文献名3第16章 玉照彦〔661〕よみ(新仮名遣い)たまてるひこ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-04-04 18:43:03
あらすじ来勿止神はは四人が謝罪しに来ることも知っていた。招き入れられた四人は、土間に平伏して、来勿止神と松姫に自分たちの罪を懺悔した。来勿止神は玉照彦の送迎を、松姫一人で行うようにと命じた。松姫が高熊山を登っていくと、山を守っている神国守と国依姫夫婦に迎えられた。夫婦は松姫を岩窟の入口の四十八宝座へ案内した。四十八宝座に拝礼した松姫は、岩窟の中に入っていった。神国守夫婦に導かれて、岩窟内の館の前にやってきた。すると熊彦の霊体がそこに居て、松姫が谷丸らに殴られたとき、代わって痛みを受けたのだ、と告げると消えてしまった。松姫は熊彦の忠心に涙ぐんでいると、館の扉が開いて言照姫命が姿を現した。言照姫命は、自分の本当の名前はまだ明かせない、と告げると、玉照彦は遠い未来でミロク神政成就の神業に参加する、尊い伊都能売之御魂であると明かした。そして、玉照彦を、世継王山の麓に居る国武彦に渡すようにと命じた。松姫は玉照彦をうやうやしく奉じ、来勿止神に復命した。そして世継王山の麓に玉照彦を送るため、神国守夫婦とともに関所の門を出た。そこには三五教を始め、ウラナイ教の宣伝使たちが霊体ともに居並んで奉迎していた。松姫らは無事に世継王山麓の悦子姫の庵に玉照彦を送り届けた。玉照彦、玉照姫の神人は合い並んで神徳を表し、ウラナイ教の高姫、黒姫らも嬉々として集まり来たった。ここにミロク神政の基礎を固めることとなった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月09日(旧04月13日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年2月28日 愛善世界社版272頁 八幡書店版第4輯 131頁 修補版 校定版276頁 普及版126頁 初版 ページ備考
OBC rm1916
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本文の文字数3162
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本文  来勿止神は、松姫、竹其他四人の男と共に機嫌よく湯を啜つて居る。
 此処へ門番頭の勝は入り来り、
『モシモシ神様、此間の奴が二人も新顔を連れ、都合四人やつて参りました』
来勿止神『アヽさうだらう、改心して謝罪つて居るだらうなア、大方谷丸、鬼丸、テルヂー、コロンボと云ふ人間だらう、早く此方へ案内をするが宜敷い』
勝公『承知致しました、併し松姫様にお詫がしたいと云うて居ます』
来勿止神『アヽさうかさうか、それなら尚更結構だ』
 間もなく勝の案内に連れ、四人の男此場に現はれ怖さうに閾を跨たげて土間に平太り込み、頭を地につけて謝罪つて居る。
来勿止神『オヽお前は谷丸以下三人の男だなア、何うだ、神様の御神力には屈服したかな』
 谷丸漸く首を上げ、
谷丸『イヤもう、重々御無礼を致しまして申訳も御座いませぬ、そちらに御座るは松姫様、何うで御座います、お体は痛みませぬか、つい心の中の悪魔に操られ、御無礼計り致しました。今日は四人連れ打ち揃ひ貴女のお跡を尋ね、お詫に参りました。重々の罪お赦し下さいませ』
と四人は一度に首を下げる。
松姫『イヽエ、何の何の、私こそ貴方等にお詫をせなくてはならないのです。貴方等のお蔭で結構な御神徳を頂きました』
来勿止神『皆様、其処は土間ぢや、冷えますから破屋なれど座敷へ上つて下さい』
谷丸『イエイエ何う致しまして畏多い、斯様な罪人が貴方様と同席が何うして出来ませう』
来勿止神『貴方はもはや罪より救はれたのだ、尊い神様の珍の御子だから、さう遠慮なさるに及ばぬ。遠慮は却つて神様に御無礼の基だから、私の云ふ通り素直にお上り下さい』
テルヂー『サア皆さま、折角のお志、上らせて頂きませう』
と一足跨げて先に上る。三人は、
『御免下さいませ』
と怖る怖る、座敷に上つた。竹は湯を汲んで四人に勧める。
谷丸『松姫様、貴女は是から玉照彦様をお迎ひにお出なさるのでせう』
松姫『エヽ』
谷丸『お隠しなさいますな、もはや吾々共は改心を致しました以上は、玉照彦様を奉迎したいなどと、左様な不都合な考へは持ちませぬ、ナア、一同さま』
テルヂー『左様で御座います、吾々も神様のお蔭に依つて左様な執着心は念頭からさらりと去りました。併し松姫様にお詫のため、高熊山の巌窟迄お伴致し、いろいろと能う限りの御用をさして頂き度う御座います』
来勿止神『皆々の赤心は良く分りましたが、此事は御助力を受けたとあつては松姫様のお手柄になりませぬ、松姫さまだけ御一人お出なさるが宜しからう、皆の人は此処に待つて居てお上げなさい、其間に種々と神様の結構なお話を交換致しませう』
 一同は言葉を返す勇気もなく、承知の旨を答へ、松姫の無事の帰途を待つ事とした。松姫は心いそいそ勇み立ち、脚も何となく軽げに枯草蔽へる谷道を上り往く。前方より二人の男女、にこにこしながら出で来り、丁寧に会釈し、
『私は当山を守護致す、神国守、妾は国依姫で御座います。貴女は松姫さまぢや御座いませぬか』
松姫『仰せの通り、不束者で御座います、何分宜敷うお願ひ致します。玉照彦の神様は御機嫌麗しう在らせられますか、言照姫様は何うしておゐでなさいます』
神国守『ハイハイお二方共、御機嫌殊の外麗しく、今朝よりは特別の御機嫌で貴女のお出を大変に待つて居られるやうです。サア、私夫婦が御案内致しませう、随分茂つた嶮岨い山道で御座いますから、私がお手を把つて上げませう』
松姫『イエイエ何卒構うて下さいますな、神様に対して畏れ多い事で御座います。人様のお出遊ばす所へ私が往けない筈は御座いませぬ』
国依姫『左様なれば妾が先導を致しませう』
と夫婦は松姫を中にして静々と岩窟さして登り行く。
神国守『サア、此処が岩窟の入口で御座います、四十八の宝座の御前で御座います、一度礼拝致しまして、奥へ御案内する事にしませう』
 松姫は嬉しさうにニタリと笑ひ、四十八の宝座を一々礼拝し、神国守夫婦に案内されて岩窟の奥深く忍び入る。
国依姫『此岩窟は上り下りが、所々に御座いますから、御用心なさいませ、十七八丁奥へ進みますと立派な岩窟のお館が築かれて御座います、此処が玉照彦様のお館』
松姫『有難う』
と簡単に礼を返し窟内の隧道を右に折れ左に曲り、上りつ下りつ漸く館の前に辿り着いた。館の前に一人の男が立ち現はれ松姫の到着を待つて居た。
松姫『ヤア、お前は熊公ぢやないか、何うして斯んな処へ来たのだい』
熊彦『ハイ、私は貴方が過日の夕間暮、お館を捨てて、御出奔なされたので、お跡を尋ね、お願ひ申して再び高城山の館へお帰りを願ひ度いと、取るものも取敢ず走り出でむとすれば、お節さまや竜若に無理に引き留られ、残念ながら肉体は館に残し、霊魂のみ貴方の行衛を尋ね、此処迄御案内を申して来たのです、堺峠に於て四人の奴に貴方がエライ目に遭はされなさつた時、私はどれだけ苦しんだか知れませぬ。貴女のお体に付纏ひ、私が代つて撲られました、御覧なさいませ、此通りまだ創傷が十分に癒つて居りませぬ』
松姫『アヽさうするとお前は肉の宮を館に残して置いて来たのだなア、跡は何うしなさつた』
熊彦『ハイ、肉の宮は千代彦と云ふ本守護神が守つて居ます』
松姫『アヽ、さうかな、それは御苦労だつた、早く帰つて下さい、もう大丈夫だから』
熊彦『もう暫くお伴さして下さい』
神国守『ヤア、さう聞くと貴方が或人の幽霊だな』
松姫『これは私の家に居りまする熊公と云ふ大変師匠思ひの男で、門番や受付をして居るので御座います、一心の誠が通つて霊魂が幽体を現じ、此処迄私を守つて来て呉れたのです』
国依姫『何と誠の強い、師匠思ひの方ですなア』
 松姫は早くも何故か涙ぐんで居る。熊公の姿は煙の如く消えて仕舞つた。
 忽然として館の戸は開かれ、中より言照姫の威厳に満ちた姿が現はれた。
言照姫『ヤア其方は松姫であつたか、妾は言照姫の命、様子あつて本名は今暫く名乗りませぬ、奥に寝ませらるる玉照彦様は遠き未来に於てミロク神政成就の神業に参加遊ばす尊き伊都能売之御霊、其方は大切に奉侍し、世継王山の麓に在す国武彦の命にお届けあれ、然らば其方は云ふに及ばず高姫、黒姫一派の、今迄瑞の御霊の大神に射向かひまつりし重大の罪を赦され、神界の御用に参加し、偉勲を建つる事を得む。神国守、国依姫は松姫と共に玉照彦の命を保護し奉り、綾の聖地に送らるべし』
と言葉終るや否や、言照姫の姿は忽然として消えて仕舞つた。松姫は畏み慎み、天の数歌を謡ひあげ、終つて言葉静かに、
松姫『妾は松姫と申すもの、唯今言照姫様の御命令を拝し、尊様をお迎へ申して綾の聖地に向ひます。何卒妾にこの尊き御用をお許し下さいませ』
と一心に祈願し終るや、玉照彦の命は立ち上り、小さき身体を揺りながら、松姫の膝に嬉しげに上らせられた。松姫は恭しく懐中に抱き奉り、神国守夫婦に守られ、漸く岩窟を立ち出て、再び宝座を伏し拝み、来勿止神の庵に漸く帰りついた。
 来勿止神を始め、勝、竹、六、初、其他の門番及び谷丸、鬼丸、テルヂー、コロンボは門の内面に整列して奉迎しつつあつた。松姫は神国守夫婦を伴ひ、静々と目礼しながら門を出づれば豈図らむや、数多の白衣を着せる神人幾百人ともなく、道の左右に整列し、英子姫、悦子姫、亀彦、常彦、若彦、紫姫、其他三五教、ウラナイ教の宣伝使の肉体及び幽体相交はり、恭しく奉迎して居る。何処ともなく微妙の音楽四方に起り松姫は思はず足も進み出で、何時の間にか、世継王山麓の悦子姫の庵に着き居たり。茲に玉照彦、玉照姫の神人は二柱相並び給ひ、日に夜に神徳現はれ、昼夜の区別なく瑞雲棚引き渡り、ウラナイ教の高姫、黒姫其他も嬉々として集まり来たり、ミロク神政の基礎を固むる事となりにける。
(大正一一・五・九 旧四・一三 加藤明子録)
(昭和一〇・六・四 於透明殿 王仁校正)
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