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文献名1霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
文献名2第1篇 花鳥山月よみ(新仮名遣い)かちょうさんげつ
文献名3第5章 花鳥山〔1772〕よみ(新仮名遣い)かちょうざん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-11-28 15:53:46
あらすじ五色の雲がたなびき、鳳凰、孔雀ほか何百種もの鳥が舞い、地は一面の緑、空には色とりどり、紫・浅黄・白・黄色のめでたい雲がたなびいている。紅の花が咲きにおい、胡蝶は花に遊び、天国浄土の光景を眺めつつ、地上三、四尺の空中を進んでゆく。前方には黄金の甍が日に照り輝く、荘厳な世界がある。左手には青い海原、舟、五色の鳥。涼しい風が常に吹いて、なんとも言えぬ芳香を送っている。旅人は槍を片手につきながら、青草茂る山の中腹に、今きた道を眺めながら、タバコをくゆらし休憩している。そこへ、おーい、おーいと声をあげながら、登ってくる貴婦人がある。よくみればその貴婦人は千草姫であった。千草姫は旅人のそばに来て、満面の笑みにて話し掛ける。千草姫:右守のスマンヂー様、あなたはどうしてこのようなところにいらっしゃったのですか。スマンヂー:てっきり、軍議の最中ガーデン王の手にかかって死んだと思ったのだが、あれは夢だったのだろうか。しかし合点のいかないのは自分の身の様子、名も知らない清い聖地にいるのはなぜだろう。また、あなたがどうして私の後を追ってこんなところへおいでになったのだろうか。千草姫:ここは天界の第三段の浄土です。私は寿命が尽きて、主の神様により、浄土住まいを命じられました。また、伊吹戸主の神様にお伺いしたところ、あなたも天界に住まうべき身の上であるとのことです。千草姫:こうなった上は、神のお引き合わせ、私とガーデン王は意思想念を異にし、霊界では添えない定めです。あなたとここで夫婦となって、天国浄土の御用をいたしましょう。スマンヂー:ああ、有難いことだ、実を言えば、私は現界であなたを恋しておりました。しかしながら、現実界のしがらみにより、思いを伝えることさえできませんでした。こうやって神様から定められた縁であれば、そのようにいたしましょう。現実界にて善行を尽くした報酬が今ここに実り、二人は喜びの苑にあって、時間空間を越えて永遠に、嬉しく楽しく暮らしましょう。ああ惟神惟神、御霊の恩頼をほぎまつります。このように、お互いに歌い交わしているところへ、ダイヤモンドのごとく白金光のごとく天空を輝かし、二人の前に火の弾となって落下してきたのは、エンゼル・言霊別命であった。言霊別は二人を第二霊国の花鳥山に案内する。スマンヂーは、なぜ俗人の自分が、宣伝使の楽園である霊国に招かれるのか言霊別に尋ねる。言霊別:霊国は、宣伝使、国民指導者の善良なる霊の永久の住処である。今日の現実界の宣伝使・僧侶・牧師などは地獄に籍を置いている。一方スマンヂーは生前宣伝使ではなかったけれども、現実界の最善を尽くし、正守護神が霊国に相応していた。宇宙はすべて相応の理によってなりたっており、この花鳥山も、スマンヂーの精霊が、現界にありながら、作り上げていたものである。言霊別は去り、二人はここに祝いの歌を歌い、霊国に夫婦となって永久に暮らすこととなった。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年08月23日(旧07月4日) 口述場所丹後由良 秋田別荘 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版59頁 八幡書店版第12輯 411頁 修補版 校定版59頁 普及版32頁 初版 ページ備考
OBC rm7005
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本文  天津御空はいと清く  五色の雲が棚引いて
 鳳凰孔雀百鳥は  低空飛行をやつてゐる
 地は一面の青畳  紫浅黄白黄色
 紅の花咲き匂ひ  胡蝶の姿翩飜と
 天国浄土の光景を  いとも楽しく眺めつつ
 風に吹かるる心地して  地上を距ること三四尺
 空中易々進み行く  遥前方を眺むれば
 黄金の甍キラキラと  天津日影に照り映えて
 荘厳世界を現出し  左手の方を眺むれば
 青海原は波しづか  彼方此方にチラチラと
 胡蝶の空中に舞ふ如く  白く輝く真帆片帆
 五色の鳥は右左  波の上走る面白さ
 涼しき風は永遠に吹き  何とも云へぬ芳香を
 道行く人の身辺に  送り来るぞ床しけれ。
 茲に一人の旅人は  鎗を片手につき乍ら
 青草しげる丸山の  其中腹に身をおいて
 吾身の歩み来りたる  あとを眺めてニコニコと
 煙草をくゆらし憩ひゐる  かかる所へ山下より
 オーイ オーイと声をかけ  登り来れる婦人あり
 よくよく見ればこはいかに  思ひもよらぬ千草姫
 涼しき清き白妙の  衣を風に飜し
 旅人のそばに近よりて  満面笑を湛へつつ
 『貴方は右守のスマンヂー  コラまあ何うして此様な
 平和の山に御到来  訝かしさよ』と尋ぬれば
 一人の旅人はうなづいて  『貴女は尊きお姫様
 何うして此処へお出ましか  私は合点が行きませぬ
 トルマン城の奥の間で  ガーデン王や左守司
 大足別の攻軍に  抵抗せむといろいろに
 軍議を運しゐたりしが  協議叶はぬ私は
 尊き主の御為に  お手にかかつて身失せしと
 思ひしことは夢なるか  合点のゆかぬ此体
 ここは何といふ所か  名さへも知らない清浄
 百花千花咲ほこる  浄土の如うな聖地です
 貴女は何うして吾々の  後を尋ねてお出ましか
 不思議不思議が重なつて  どうして可いやら分らない』
 語れば千草はうなづいて  『ここは所謂天界の
 第三段の浄土です  私は天寿が尽きまして
 主の神様の命令で  浄土の住居を命ぜられ
 喜び勇んでスタスタと  花咲く野辺を参りました
 貴方も何うやら天界に  お住居遊ばすお身の上
 伊吹戸主の神様に  確に聞いておきました
 現界などに心をば  残させ玉はず速に
 神の依さしの天界へ  私と共に昇りませう
 あゝ惟神々々  尊き神の引合せ
 貴方は永らく独身者  私は夫はおはせ共
 現幽所を異にした  今日の吾身は独身者
 意思想念の相異より  ガーデン王と永久に
 霊界までは添へませぬ  貴方の智性は吾智性
 私の意思は全然と  貴方の意思に通ひます
 神の開きし天界の  此楽園に二柱
 夫婦となつて永久に  天国浄土の御用をば
 力限りに致しませう  如何で御座る右守さま』
 いへば右守は頷いて  『あゝ有難し有難し
 私は現世に居る中ゆ  貴女を恋して居りました
 とは云ふものの現界の  下らぬ階級が邪魔をして
 心の丈を一言も  申し上げたることはない
 貴女の心も其通り  私を愛してゐらるると
 早くも承知はしてゐたが  現実界の義理人情
 法則などを省みて  こらへ忍んで居りました
 もう此上は神様の  定め玉ひし縁ぢやもの
 誰に遠慮はいりませぬ  現実界におきまして
 あらむ限の善行を  尽した二人の報酬は
 今や稔つて此通り  歓喜の苑に身をおいて
 千代も八千代も万代も  時間空間超越し
 嬉しく楽しく暮しませう  あゝ惟神々々
 御霊の恩頼をほぎまつる』
 かく互に歌つてゐる所へ、天空を輝かし、ゴウゴウと音を立て、両人の前に火弾となつて落下した。其光明はダイヤモンドの如く、白金光の如くであつた。両人はハツと驚き、両手で目を押へ其場に蹲踞んでゐる。火光は忽ち麗しき神人と化し、声も静に、
エンゼル『スマンヂー様、千草姫様、私は第一霊国より貴方をお迎へに来たエンゼルで御座います。どうかお目をあけて下さい』
 両人は『ハイ』と言葉を返し乍ら、徐かに両眼を開けば、白妙の衣を纒ひたる、威厳備はる神人が七八尺前にニコニコし乍ら立つてゐる。
エンゼル『私は言霊別命であります。スマンヂーさま、千草姫さま、貴方等は現界に於て、トルマン国の為、多数民衆の為、現界に於ける最善を尽しておいでになりました。そして貴方等両人は、意思想念の合致した真正の御夫婦であり乍ら、所在苦痛を堪へ忍び、恋てふ魔に打勝つて、よくも一生の間忍ばれました。神界に於ては、特に貴女の善行が記されて御座いますよ。サア、之から第二霊国を御案内申しませう』
スマンヂー『ハイ有難う御座います。思はぬ所で神様に御目にかかり、何といふ有難いことで御座いませうか。御礼は言葉に尽されませぬ』
言霊別『貴方の培かふた畑に稔つた果実で御座いますよ。決して私に御礼を申されては困ります。今日の喜びは貴方が培ひ養つてゐた所の喜びの実で御座います。千草姫様も其通り、必ず必ず礼なんか言つてはなりませぬ。サア私についてお出なさいませ』
と言霊別命は一足先に立ち、両人は互に労り乍ら、雲の如き、波の如き青々とした丘陵をふみこえふみこえ、東へ東へと進んで行く。
 何時とはなしに嚠喨たる音楽の響き、四辺より聞えるとみれば、二人は早くも方形の岩を以て畳んだ様な丘陵の上に着てゐた。
言霊別『此処は第二霊国に於て有名なる花鳥山で御座います。御覧なさい、緑の羽を拡げ、紅の冠を頂き、美しい鳥が四方八方に翺翔し、美妙の声を放ち、又此通り地上の世界にないやうな麗しき花が咲き乱れ香気を放つてをります。ここは貴方等の千代の住家で御座いますよ。食たい物は何でも望み次第、此麗しき樹木の枝に臨時に熟しますから、それを採つておあがりなさい』
スマンヂー『一寸エンゼル様にお尋ね致します。今霊国と承はりましたが霊国は宣伝使の集まる楽園では御座いませぬか。私はトルマン国の小臣、平素ウラル教を奉じ乍ら、深い信仰も致しませず、又千草姫様だとて其通り、トルマン国の王妃として、国民の母として最善をお尽し遊ばしたもの、宣伝使牧師ならばいざ知らず、吾々如き俗界に心をひたして居りましたものが、何うして又霊国へ来られたもので御座いませうか、どうも此理由が分りませぬ』
言霊『お尋ねの通り、霊国は凡て宣伝使や、国民指導者の善良なる霊の来るべき永久の住所で御座います。今日の現実界に於て、宣伝使や僧侶や神官牧師などは一人として霊国へ昇り来る資格を有つてをりませぬ。又天国へは猶更昇る者なく、何れも地獄に籍をおき、地獄界に於て昏迷と矛盾と、射利と脱線と暗黒との実を結んで、互に肉を削り合ひ、血を啜り合ひ、妄動を続けて居りまする。貴方は生前に於て宣伝使ではなかつたが、現実界の人間としての最善を尽されました。之は要するに表面的神を信仰せなくても、貴方の正守護神はすでに天界の霊国に相応し、神籍をおいてゐられたのです。凡て宇宙は相応の理に仍つて成立つてゐるものです。此第二霊国の花鳥山は貴方の物です。貴方の精霊が現界に於て、已に此麗しき霊山を造つておかれたのです。誰に遠慮は要りませぬ。永久に富栄えて夫婦仲よく神界の御用をお勤めなさい。左様ならば』
と立去らむとするを、千草姫は慌てて白い手を上げ乍ら、
『もしもし、エンゼル様、妾は今フツと考へましたが、スコブツエン宗のキユーバーと申す者と手を握り合ひ、双方共に一時に気絶した様に記憶が浮かんで参ります。あのキユーバーはどうなりましたか、一寸お尋ね致します』
言霊『彼は未だ現界に生命が残つて居りますから、今や八衢に彷徨て居ります。併し乍ら愛善の徳うすく、智慧証覚の光鈍き彼が如き人物のことを思い出してはなりませぬよ。貴女の智慧証覚が鈍りますから、今後は決して現界のことを思ひ起してはなりませぬ。最早現界の貴女の用はすんでをります。スマンヂーさまも御同様に決して決して現界のことを思はないで居て下さい』
 両人はハツと頭を下げ有難涙にくれてゐる。言霊別命は五色の雲に包まれ、一大火光となつて、東天を指して空中を轟かせ乍ら帰つて行く。後に二人は顔見合せ、
スマンヂー『姫様、不思議な事ぢや御座いませぬか。吾々は夢でもみて居る様ですなア』
千草『本当に不思議でたまりませぬ。確に貴方も私も死んだに間違ひは御座いませぬ。それにも拘はらず、益々意識が明瞭になり、斯様な麗しき山の頂きに、恋しき貴方と二人許されて夫婦となると云ふやうなことが、どうして現実と思はれませう。どうも不思議でたまりませぬ』
スマ『私は現界に於て貴方の臣下で御座います。そして貴女はトルマン国に於ける王様に次いでの尊き御方、如何に神様のお許しとは云ひ乍ら、貴女を女房と呼ぶことは実に恐れ多くてなりませぬワ』
千草『スマンヂー様、現幽所を異にした今日、何もかも凡て洗替ぢや御座いませぬか、かかる尊き霊国に来り乍ら、未だ左様な虚礼虚式的な辞令をお使ひ遊ばすのは、自らの想念を詐るようなもので御座いますよ』
スマ『成程左様で御座いますな。そんなら改めて、貴女を妻と呼びませう。私を夫と呼んで下さい。一人の娘が残して御座いますけれど、此事も思ひ切りませう』
千草『どうかさうして下さいませ。サア之から二人で此喜びを歌ひませう』
 茲に両人は手をつなぎ、胡蝶の如く花鳥山の頂きにて爽かな声を張上げ、歌ひつつ舞ひ始めた。
『天津御空を眺むれば  百のエンゼル星の如
 輝き玉ひ吾身をば  或は遠く或は近く
 守らせ玉ふ有難さ  脚下を伏して眺むれば
 堅磐常磐の巌もて  造り固めし神の山
 見なれぬ鳥は麗しき  翼拡げて天界の
 瑞祥うたひ百花は  艶を競ふて咲匂ひ
 吾等二人の眼をば  心ゆく迄慰むる
 あゝ惟神々々  人の命は現世の
 百年許りに限らない  幾億年の末までも
 吾精霊は生通し  生て栄えて花咲かし
 誠の稔を楽しまむ  誠の稔を楽しまむ
 神は吾等と共にあり  吾等も神と共にあり
 神と神とがむつび合ひ  神の御国をいや広に
 広めてゆかむ夫婦仲  弥永久に春なれや
 いや永久に栄えませ  いや永久に夏来れ
 いや永久に楽しまむ  天は益す高くして
 空気の色はいや清く  地は益す広くして
 百草千草皆光る  光明世界の真中で
 汝と吾とは世を送る  夢か現か幻か
 否々決して夢でない  夢の浮世を立ちいでて
 真の神のあれませる  真の国へまゐ昇り
 真の花を手折りつつ  真の暮しをいとなまむ
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましませよ』
と歌ひ乍ら、二人は永久の霊国に住民となつた。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一四・八・二三 旧七・四 於丹後由良秋田別荘 松村真澄録)
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