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文献名1霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
文献名2第3篇 東雲神国よみ(新仮名遣い)しののめしんこく
文献名3第26章 主神の降臨〔1857〕よみ(新仮名遣い)すのこうりん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ照山の中津滝の大蛇は言向け和されたが、依然として妖邪の気は谷々を覆い、害が激しくなり始めた。顕津男の神は、高日の宮に神々を集めて、国土平安の祈願を込めた。顕津男の神が祝詞を唱え終わると、たちまち高照山の峰より香ばしい風が起こって妖邪の気は払われた。紫雲がたなびき、月の光が晧々と照りだし、四辺に微妙の音楽が鳴り渡った。そして、八十の神々にかしづかれつつ、主の大神が天降りました。高日の宮の神々は庭にひざまづいて主神を謹み敬い迎えた。顕津男の神は恭しく主神を高日の宮の至聖殿にお招きした。顕津男の神は謹みのあまり声を震わせて、主神にご降臨を感謝する歌を詠んだ。主神は厳然としてお立ちになり、左手に玉、右手に幣を左右左に打ち振りながら、天界の曇り、乱れ、曲神たちの出現はすべて、言霊の濁りより生じていることを諭すお歌を詠い、そのままお姿をお隠しになった。顕津男の神は、朝夕の言霊に濁りがあったことを悔いた。国生み神生みの神業でありながら、如衣比女への私的な恋心を起こして心が濁っていたこと、そして今後は自分の名誉を捨ててただ神命に応えていくことを宣言した。諸神はそれを聞いておのおの、神業を妨害したことを悔いた。ここに、「国生み神生み」が主神の神業であることが明らかとなり、またそれを臆せずに遂行していくことを、顕津男の神が宣言した。つまり、天界経綸発祥の基礎となったのである。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年10月17日(旧08月28日) 口述場所水明閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1933(昭和8)年11月22日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 105頁 修補版 校定版271頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7326
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本文  高照河の上流に、高くかかれる万丈の瀑布中津滝の淵に潜める大蛇は、大御母の神、真澄の神たちの天津真言の言霊によりて雲を起し雨を降らせつつ、大空高く逃げ去りたれども、妖邪の気は山の谷々を包みて、さしもに清き聖山も黒雲常に覆ひて時に暴風を起し、樹木を倒し宮居を破り、豪雨を降らして諸神を苦しめ、田畑を破り其害日に月に烈しくなりければ、高日の宮の神司は諸神を集めて、天地の害を除かむと大御前に厳めしく祭壇を新に造り、山の物、野の物、河海の種々の美味物を八足の机代に置き足はし、御酒御饌御水堅塩を奉りて国土平安の祈願を籠め給ふ。
 顕津男の神は、邸内より滾々として湧き出づる玉の御池に身を滌ぎ、声も清しく大前に天津祝詞を奏上し祈り給ふ。其宣言、
『掛巻も綾に恐き、天津高宮に大宮柱太しき立てて鎮まり坐す主の大御神、天の峯火夫の大神の大御前を謹み敬ひ、遥に遥に拝みまつる。抑々これの紫微の天界は、大御神の大御言もて天津真言の言霊に生り出で給ひ、山野の草木は日に夜に栄え、百神達は美しき神代を楽しみ、朝夕の風も和やかに、降り来る雨もほどほどに、総ての物を浸しつつ、神の依さしの神国は全く茲に現れぬ。彼百神達は大御神の大神業を称へまつり、喜びまつりて麻柱の誠を尽し、紫微天界は日に月に弥広々く、弥開けに開け弥栄えに栄えける折しもあれ、高照山の峰高く、落ち来る滝の其中津滝に醜の大蛇の潜み棲みて、万の神々を害ひまつり、天に成るもの地に生ふるもの悉く其の禍を蒙らざるものなし。故ここをもて、百の神々をこれの斎場に神集ひ、天津真言の祝詞もて大御神の御心を和め奉り、四方の雲霧吹き払ひ神代の昔にかへし奉らむと、謹み敬ひ願ぎ申す。此有様を平らけく安らけく聞召し相諾ひ給ひて、我等が麻柱の誠を𪫧怜に委曲に聞し召し、これの神国は曲もなく汚れなく荒ぶる神は影ひそめ、真言の道に立ち帰り、共々に神国のため神業に仕ふべく、守らせ給へと高日の宮の神司、顕津男の神謹み祈り奉る』
と声も爽やかに太祝詞言宣り給へば、高照山の峰より、香しき風吹き起りて、妖邪の気は忽ち吹き払はれ、尾上を包みし黒雲は跡なく消えて紫の雲棚曳きわたり、天津日の光、月の光は皓々として地上に光を投げ給ふぞ畏けれ。忽ち四辺に微妙の音楽響き、紅白青紫黄色の旗を手に手に翳しつつ、八十の神達は主の大神の御尾前に仕へつ、高日の宮の清庭に悠然として天降ります尊さに、顕津男の神、大御母の神、大物主の神其他の諸神は宮の清庭に拝跪し、荘厳の神気に打たれ乍ら、謹み敬ひ迎へまつる。顕津男の神は恭々しく主の大神を三拝し、自ら御尾前に仕へまつり、高日の宮の至聖殿上に招ぎまつりける。
 顕津男の神は主の大御神の降臨を拝しまつりて恐懼に堪へず、謹みの余り御声までも慄はせ給ひて恐る恐る御歌詠ませ給ひける。

『かけまくも綾に畏き主の神の
  天降りますこそ尊かりける

 高地秀の山を下りて我は今
  神を生まむとここに来つるも

 大神の生言霊に生り出でし
  紫微天界はうまし神国よ

 久方の高日の宮に天降りましし
  主の大神の厳々しきかも

 願はくはわれに力を賜へかし
  この神国を永久に守るべく

 日を重ね月を閲してやうやくに
  妖邪の空気は湧き出でにけり

 いかにして此の邪気をば払はむかと
  主の大神の神言請ひける』

 ここに主の大神は儼然として立たせ給ひ、左手に玉をかかへ右手に幣を左右左と打ち振りながら、厳かに宣り給ふ。

『言霊の天照る国よ言霊の
  真言濁れば国は乱れむ

 朝夕に生言霊の響なくば
  この天界は曇り乱れむ

 言霊は総てのものの力なり
  心清めて朝夕宣れよ

 澄みきらふスの言霊の御水火より
  正しき尊き神はうまれむ

 濁りたる神の言霊世に凝りて
  曲神達は生れ出づるなり

 高照山醜の大蛇も神々の
  言霊濁れる酬いとこそ知れ』

 斯く大神宣を宣り終りて、主の大神は至聖殿上に消ゆるが如く神姿をかくし給ひぬ。茲に顕津男の神は朝な夕なに生言霊を宣りまつれども、わが霊魂のいづくにか曇り濁りのある事を悟りて大に悔い給ひ、百神達に向つて、心の丈をのべ伝ふべく御歌詠ませ給ふ。

『おほけなくも高日の宮の神司
  百神達の御前に申さむ

 久方の天より降りし主の神の
  生言霊にわれ打たれける

 朝夕を禊に霊魂清めつつ
  未だ濁れるわが魂うたてき

 如衣比女神去りしよりわが心
  曇りしものか神代は曇りつ

 主の神の教畏み今日よりは
  わが魂を洗はむと思ふ

 主の神のわれにたまひし八十比女も
  ただ国生みのためなりにけり

 恋すてふ心起りていたづらに
  迷ひぬるかな比女神の前に

 神を愛し神を恋ふるも誠心の
  ために非ずば世は乱るべし

 八十比女を愛と恋とに泣かせつつ
  われつつしみの違へるを思ふ

 凡神のそしりを恐れ身を安く
  守らせむとせし事のうたてさ

 百神よ心したまへ今日よりは
  われ主の神の神言に仕へむ

 百神はいかに賢しくはかゆとも
  神の依さしに我は違はじ』

と謡ひ給ひて顕津男の神は、主の大御神の大神宣のまにまに、国生み神生みの神業に仕へまつり得ざりし事を、わが心の汚きより出でしものと大に悔い給ひ、今後は凡神達如何に言はかり譏り合ふとも、自己の名誉を捨てて只管に神命に応へむと宣言し給ひしなり。茲に居列ぶ神々は主の大御神の神言を謹聴し、又宮司の宣言を諾ひ、己が小さき心の曇りより神業を妨害し居たる事を今更の如く悔い給ひて、先づ大御母の神よりお詫の言霊を宣り給ふ。

『主の神の依さしに生れし宮司の
  神業知らざりし吾を悲しむ

 如何ならむ神の妨げありとても
  神業の為めには雄々しくませよ

 百神の小さき心を押しはかり
  主の神言に背きたまひし

 吾も亦主の神言を悟らずて
  凡神のごと思ひけらしな

 岐美こそは天の依さしの神司
  われ等に比すべき神におはさず

 今日よりは心の駒を立て直し
  岐美に仕へむ大御母の神は』

 大物主の神は御歌詠まし給ふ。

『天渡る月の御霊の宮司
  百神達のはかゆべしやは

 主の胤を彼方此方にまくばらす
  岐美の神業を知らざりにけり

 日の神は日の神月は月の神
  おのもおのもに神業ありける

 凡神の誠をもちて大神を
  議ゆる心の愚しさを思ふ

 凡神の誠は月の大神の
  真言に比して差別ありける

 大神のよしと宣らする神業も
  凡神の目に悪しと見ゆるも

 凡神のよしと思ひし神業は
  大神業の妨げとなりぬ

 神々はそれ相当の職務あり
  小さき神の議ゆべきかは』

 茲に顕津男の神は、二神のわが神業をやや諒解したる事を喜び給ひて、御歌よまし給ふ。

『大御母大物主の言霊に
  我は心もなごみ初めたり

 今日よりは醜の囁き耳とせず
  我おほらかに神前に仕へむ

 如衣比女の姿に心暗まされ
  わが言霊は濁りたるらし

 わが神業諾ひたまふ神あれば
  心の魂は曇らざるべし

 わが心曇れば忽ち言霊も
  濁りて神代は乱れむとすも

 恐るべきものは心よ言霊よ
  朝な夕なに洗ひ清めむ』

 斯くおほらかに宣示し給ひて、主の大神の賜ひしわが神業を明かにし、怯めず臆せず遂行せむ事を言挙げし給ひたるぞ、天界経綸発祥の基礎とこそ知られける。
(昭和八・一〇・一七 旧八・二八 於水明閣 加藤明子謹録)
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