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文献名1霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻
文献名2第1篇 天岩戸開(一)よみ(新仮名遣い)あまのいわとびらき(一)
文献名3第5章 初貫徹〔501〕よみ(新仮名遣い)はつかんてつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-11 23:19:17
あらすじ一行はイホの都の酋長・夏山彦の館にやってきた。初公は門番に到着を知らせた。早朝でなかなか門を開けようとしない門番と滑稽なやり取りをしている。初公は門をやたらに拳で打ち始めた。もう一人の門番も起きだしてきた。初公は門を越えてひらりと中に飛びこんできた。門番は仕方なく門を開けると、そこには蚊取別ら宣伝使たちが居た。門番は、主人の許可がなければ中へ入れられない、と言って、宣伝使たちをその場に待たせた。夏山彦は門番に伴われて門前にやってくると、蚊取別の姿を認めて、一同を丁寧に中へ迎え入れた。門番が一同を見送ると、さっと風が吹いて雷鳴が激しく鳴り渡った。二人の門番はその場にしりもちをついて震えている。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月06日(旧02月08日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年9月30日 愛善世界社版39頁 八幡書店版第2輯 640頁 修補版 校定版40頁 普及版16頁 初版 ページ備考
OBC rm1205
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本文  天地の神の稜威も高光彦の  神の命や神直日
 玉光彦の宣伝使  大海原の国光彦の
 神の命や蚊取別  初めて三人、四人の
 教伝ふる神司  初公一人を伴なひて
 イホの都と聞えたる  十握の剣、エジプトの
 夏山彦の酋長が  館を指して出でて行く
 春とは言へど天津日の  光無ければ庭前の
 花も開かず木の緑  色も褪せたる寂しさに
 不安の雲は内外を  包むが如く見えにけり。
 一行五人は宣伝歌を歌ひ乍ら門前に進み来たり。
初公『オイ、夏山彦の門番、宣伝使の御出でだ。早く此門を開いて呉れ』
 この声に門番は中より、
『朝早うから、碌に夜も明けて居らぬのに、門を開けとは何処の奴だい。規則を知らぬか。この門は明け八つにならぬと、明けぬのだぞ』
初公『コラ、寝呆け奴め、明け八つと言ふ事があるか、明け六つだ。貴様は何時も八つ時までグウグウ寝て居るのだらう。そンな事で門番が勤まるか』
門番『矢釜しう言ふない。俺の目は未だ引き明けにならぬのだい』
初公『夜が明けて居るのに、グウグウ八兵衛と寝る奴があるかい』
門番『眠たいから目を明け六つかしいのだよ』
初公『六つかしい理窟を言はずに早く開けぬかい』
門番『お日さまもお上りなさらぬのに、門を開けると言ふ事があるか。百日ばかりお日様は拝めた事が無い。日輪様でも雲の布団を被つて悠乎寝んで御座るのに、人間がバタバタとしたつて何になるか。天地を以て教となし、日月を以て経とするのだ。お日さまの寝むで御座る間は寝むが当然だ』
初公『エー矢釜しい、開けぬか。初さまを知らぬか』
門番『誰かと思へば権太郎の初公だな。そんなら仕方が無い、初門を開いてやらうかい』
初公『初物喰ふと七十五日長生するのだ。貴様も果報門だ、仕合せ門だ、偉い門だ、怠けた門だ、困つた門だ、仕方の無い門だ、土倒し門だ。厄介門だ』
門番『コラ初公、そンな事を言ひよると、開ける事はやめたぞ』
初公『すつた、もんだと小理窟を吐かさずに開けれや良し、開けな開けぬでも良いワイ、俺が叩き割つて這入つてやるわ』
高光彦『コレコレ初さま、詔り直しだ』
初公『エー、ヘー詔り直す処か、グズグズ言つて開けないなら、此門を向ふへ乗り越えて、門番の背中に馬乗りとなつて、ハイハイドウドウだ。馬の合うた者同士、旅をするのは同道だが、馬の合はぬ奴を馬にして、尻を叩いて堂々と館の中へ進入するのですワ』
蚊取別『アハヽヽヽハア、此奴、初公、掘出しもんだ。中々面白い事を言ひよる』
初公『ほり出しもんとは非道いぢやないか。俺だけ門から放り出すと言ふのか。之から初さまが初門を開いてほり入り大根ぢや、風呂吹き門だ』
と言ひ乍ら握り拳を堅めて門扉を無性矢鱈に打ち殴る。中より又もや一人の門番現はれて、
『オイ、貫公、貴様は夜も明けぬのに、何をカンカンと吐いてけつかる』
貫公『誰かと思へば鉄か、貴様もよう寝る奴だナア。然し初公の奴めが何だか、四五人の宣伝使を連れて来よつて此門を開けと、俺の名ぢやないが、疳声を出しよつて、門をカンカン叩いて居よるのだ。俺は何と言つたつて此門は開かん開かんと頑張つて居る処だ。貴様は堅い名だから、一つ初公が門を叩き破りよつた時には鉄槌を下すか、鉄拳を喰はすのだよ。貫と鉄と寄つて、彼奴等の目的を貫徹ささぬ様にするのだぞ』
 斯く言ふ間、傍の塀を乗り越えて飛鳥の如く初公は飛び込むで来た。
初公『オイオイ、貴様等はよほど意地の悪い奴だナ、何故開けないのか』
貫公『ハイハイ、開けます開けます、勘弁して下さい』
鉄公『てつ頭てつ尾誠に以て悪う御座いました』
初公『早く開けぬかい』
 二人はブツブツ小声に呟き乍ら閂を取り外し、門扉を左右に開き、
貫公『ヤ、誰方か知りませぬが、門は開けましたが這入つて貰ふ事は出来ませぬ。一寸御主人に伺つて来るまで、此処に待つて居て下さい』
蚊取別『何と念の入つた門番だナ。ア、仕方がない、早く問うて来てくれ。三五教の宣伝使、而も色の白い立派な蚊取別と言ふ宣伝使が特に目立つて御立派だ、面会がしたいと仰有るから如何致しませうと伺うて来るのだぞ』
貫公『ヨシ、分つた』
と言ひ乍ら尻を振りつつ奥へ進み入る。
貫公『モシモシ御主人様、ただいま門前に宣伝使が現はれました。案内教だとか、新内教だとか、金ない教だとか、穴無い教だとか、何でもないの付く宣伝使が、しかも四人ですよ』
夏山彦『困るな、死人の亡者を俺んとこの門前に持つて来られては、朝つぱらから縁起が悪い』
貫公『亡者とか行者とか言ふ奴が門口に立つて居て、大きな眼を剥いた色の白い墓取別がやつて来ました』
夏山彦『ますますもつて怪しからぬ。箒でも持つてよく後を清め、箱に入れて、墓へ厚く葬つてやれ』
貫公『それでもなかなか強相な奴で、私らの梃子には合ひませぬ。高張りぢやとか、火の玉ぢやとか、国光ぢやとか、難かしい名のついた亡者ですぜ。夏山彦に面会がしたいと、ゆふ、ゆふ、ゆふ礼儀知らずです』
夏山彦『幽霊にしては余程しつかりした奴だな』
貫公『イーエ、幽霊どころか、大変強い奴です。三五教の宣伝使だとか言つて門の外に御主人様のお許しを待つて居るのです、箒を持つて掃き出しませうか』
夏山彦『お前の言ふ事は、何が何だか、チツトも分らぬ。鉄公を呼んで来てくれ』
貫公『鉄を呼んで来れば二人で意味が良く貫てつ致しますだらう』
夏山彦『馬鹿』
貫公『何だか手強い奴だから、御主人様一寸来て下さらぬか』
『アヽ弱い門番だ。仕方が無い、行つて見よう』
と言ひながら衣紋を整へ悠々として門前に現はれ来り、宣伝使を見るより両手をついて、
『ヤア、貴方は昨夜御目に懸つた宣伝使様、よう訪ねて来て下さいました。貴方のお蔭で危い処を助かりました。サアどうぞ奥へお這入り下さいませ』
 四人の宣伝使は、叮嚀に答礼をしながら夏山彦の案内につれ、奥深く姿を隠しける。
貫公『今のは何だい。内の大将奴がペコペコと恐相に高い頭を下げて安売をしやがつて「サア御案内を申しませう」なんて、一体全体貫ちやんも勘考がつかなくなつて来たワイ』
鉄公『つかんもあるものか、三五教の宣伝使に定つて居るわ。貴様は此処の主人を何と思つて居る、立派な三五教の信者ぢやぞ』
貫公『馬鹿言へ、ウラル教だよ』
鉄公『それだから貴様いつまでも門番をさされるのだよ』
貫公『門番々々て偉相に言ふな。貴様も門番ぢやないか』
初公『アハヽヽヽヽ、三五教の新宣伝使、初彦さまとは俺の事だぞ。ぐづぐづ言うとウーンぢやぞ、ウーンと気張つてやらうか』
貫公『ウーンと気張るなンて、汚い事を言ふな。貴様はな、一つ奮発せいと言へば雪隠穴を跨げて尻を捲るといふ代物だし、ちつと世間を見て来いと言へば、屋根に梯子をさして棟まで上つてキリキリ舞をして、其処等を口と目とを一緒に開けて一廉世間を見た様な面をする連中だから、碌な事ア言やしない。貴様がウンならば俺はプンぢやぞ』
と片足あげてプンとやる。
鉄公『アハヽヽヽハア、「炬燵から猫も呆れて飛んで出る」といふ奴だナ。鼬の親方奴が。オイ、サアサア、するならジツとしとれ』
貫公『出もの、腫れもの、処嫌はずだ。平和文武の神、アー臭大明神、御神体は風の神ぢや。有難く頂戴せい』
初公『ヤア、貴様の屁放り虫にかかりあつて居たので、肝腎の宣伝使に後れて仕舞つた。サア大変だ』
と尻ひつからげ奥をさして走り行く。
二人の門番『アヽ、怪体な空ぢやないか。そして今日はまた怪体な日だ。日だと言つてもお日様の姿も拝めないとすれば、やつぱり夜だ。怪体な夜だ』
 サツと一陣の暴風吹き来るよと見る間に、電光天に閃き、雷鳴はげしく轟き渡り、二人はたちまち臍を押へて其場にドツと尻餅をつき、ブルブル震え居る。
(大正一一・三・六 旧二・八 北村隆光録)
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