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文献名1霊界物語 第47巻 舎身活躍 戌の巻
文献名2第3篇 天国巡覧よみ(新仮名遣い)てんごくじゅんらん
文献名3第19章 化相神〔1252〕よみ(新仮名遣い)けそうしん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-05-01 18:33:56
あらすじ祭典を行うことは、天国団体の天人の重要な務めの一つとなっている。天国の天人は愛の善に居るため、大神を愛し同僚を愛し、天地惟神の法則にしたがって宇宙の創造主たる神を厳粛に祀り、種々の供物を献じて神の愛に浴することを唯一の歓喜、神業としている。しかし天国人は決してエンゼルになったり宣伝使にはならない。それは霊国天人の任務である。祭典が済むと、霊国からエンゼルまたは宣伝使が出張し来たって愛善を説き、真信を諭し、天人の智慧と証覚をますます円満たらしめるよう務める。治国別と竜公は、珍彦に伴われて神の家と称する、天人が祭典を行い霊国宣伝使が説教を行う木造の殿堂に導かれた。この宮は想念によって建てられているから、決して腐朽したり古くなったりすることはない。天国の祭典は実に荘厳といおうか、優美といおうか、華麗といおうか、たとえ方のない情態である。団体中で証覚のすぐれたものが祭典に関する役目を務める。珍彦は団体長として斎主を務めている。すべて天国は清潔主義、統一主義、進取主義、楽観主義であるから、何とも言えぬ良い気分に充たされるものである。祭典によって神人は和合の極度に達し、歓喜悦楽に酔うのである。天国の祭典は神に報恩謝徳の道を尽くし、またその団体の円満を祈り、天人各自の歓喜悦楽に酔うためにする。したがって現界の祭典のごとく四角張らず、小笠原流式もなく、円滑に自由自在に愛善より来る想念のままに情動するから、何ともいえない完全な祭典が行われる。しかし現界のごとく天津祝詞や神言を奏上して神慮を慰め、天人各自の心を喜ばせて一切の罪汚れを払しょくする神業である。天国においても憂いや悲しみや驚きに遭遇することは絶無ではないので、天人は日を定めて荘厳な祭典式を行い、福利を得ようと祈るのである。朝は日の天国の愛善に相応し、夕べは月の霊国の真信に相応する。ゆえに天国の祭典は午前中に行われ、午後に至って、霊国から出張した宣伝使が説教を始めるのが例となっている。直会の宴も無事に終了し午後の情態になったとき、霊国の宣伝使が嚠喨たる音楽に送られて、二人の侍者を伴い神の家に進んできた。霊国の宣伝使が珍彦の案内で演壇上に就くと、諸天人は半月形に席を取り、その教示を嬉しそうに聴聞している。治国別と竜公はまだ天国の言葉を解することができないので、特別席に黙然として耳を傾け、宣伝使の抑揚や身振りから何事を語りたるかをおぼろげに窺い知るのみであった。一時ばかり経ったと思うころ、宣伝使は説教の終結を告げ、各天人は拍手讃嘆しながら各自の住所に帰って行った。珍彦は霊国宣伝使一行を自宅に招いた。治国別と竜公も共に珍彦館に帰りゆく。珍彦と珍姫夫婦は珍しい果物を並べ葡萄酒をついで宣伝使一行を歓待した。治国別と竜公は宣伝使の光明に眼がくらみ、あわてて被面布をかぶった。そして宣伝使の顔をよく見れば、野中の森で別れた五三公であった。治国別は霊国宣伝使が五三公の顔であることに驚いて逡巡していたが、竜公は構わず、五三公にそっくりだと治国別に話しかけ、霊国宣伝使に五三公として話しかけた。宣伝使は言霊別命と名乗り、月の大神の命で地上に降って五三公の精霊を充たし、神国成就のために活動しているのだと明かした。そして地上天国を建設するために化相して活動しているため、地上では徒弟の五三公として接するようにと願い出た。治国別は驚いていたが、言霊別命は竜公と親しく語りだし、ぱっと上衣を脱いだ。たちまち現界の五三公と風体まで変わらないようになり、言葉もなれなれしくなってきた。そして治国別と竜公に天国の案内しようと申し出た。治国別一行は、珍彦と珍姫に厚く礼を述べ、五三公の案内で宣伝歌を歌いながら南方指して進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月10日(旧11月24日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年10月6日 愛善世界社版262頁 八幡書店版第8輯 570頁 修補版 校定版275頁 普及版129頁 初版 ページ備考
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本文  天国人の祭典を行ふのは、天国団体の重要なる務めの一となつてゐる。天国の天人は愛の善に居るが故に、大神を愛し且同僚を愛し、天地惟神の法則に従つて宇宙の創造主たる神を厳粛に斎り、種々の珍らしき供物を献じ、而して後神の愛に浴するを以て唯一の歓喜となし、唯一の神業としてゐるのである。而して天国人は決してエンゼルになつたり、或は宣伝使にはならないのである。エンゼルや宣伝使になる天人は、すべて霊国天人の任務である。何とならば霊国は信の真に充ちたる者多く、天国は愛の善にみちたる者多き国土なるが故である。祭典がすむと、霊国よりエンゼル又は宣伝使出張し来つて愛善を説き、信真を諭し、円満なる天人の智慧と証覚をして益々円満ならしめむと務めるのである。又天人は其説教を聞いて自分の人格を円満ならしめ、処世上の福利を計らむとするものである。そして天国の団体は大なるものに至つては十万も集まつて居り、少いのは五六十人の団体もある。之は愛と信より来る想念の情動如何に依つて相似相応の理により団体を形成するからである。
 治国別、竜公は珍彦に伴はれ、神の家と称する、天人が祭典を行ひ霊国宣伝使が説教を行ふ木造の殿堂に導かれた。いつまでも木の香新しく薫り、幾年経ても新築した時の想念に依つて建てられてあるから、決して腐朽したり或は古くなつたりするものではない。
 珍彦夫婦は光沢にみちた赤の装束をつけ、神の家に悠々と進み入つた。団体の天人は赤子に至る迄此処に集まり、祭典に与らむと、えも言はれぬ歓喜に充ちた面貌を表はして控へてゐる。この天人も智慧証覚の如何に仍りて、幾分か差等はあれども、大抵は相似の面貌をしてゐる。現界の形式的祭典に比ぶれば、実に荘厳と云はうか、優美と言はうか、華麗と言はうか、譬方のない情態である。此団体中にて、最も証覚の秀れたる者が、祓戸や神饌係や祭典に関するいろいろの役目をつとめ、珍彦は団体長として斎主の役に当ることとなつた。凡て天国は清潔主義、統一主義、進取主義、楽観主義であるから、何とも云へぬ良い気分に充たされるものである。此祭典に依つて、神人は和合の極度に達し、歓喜悦楽に酔ふのである。而して天国の祭典は神に報恩謝徳の道を尽すは言ふも更なれど、又一方には其団体の円満を祈り、天人各自の歓喜を味はひ、悦楽に酔ふ為である。故に現界の祭典の如く四角張らず、小笠原流式もなく、実に円滑に自由自在に、愛善より来る想念の儘に情動するのであるから、何とも云へぬ完全な祭典が行はれる。法なくして法あり、式なくして式あり、到底現界にて夢想だもなし能はざる光景である。而して祝詞はやはり現界の如く天津祝詞や神言を奏上して、神慮を慰め、且天人各自の心を喜ばせ、一切の罪汚れ過失を払拭する神業である。天国に於ても時に或は少々の憂ひにみたされ、悲みや驚きに遭遇することは絶無とは言へない、故に天人は日を定めて、荘厳なる祭典式を行ひ、其生涯に対して福利を得むことを祈るのである。
 祭典の式も漸く済み、八尋殿に於て直会の宴が開かれた。大抵此祭典は午前中に行はるるものである。併し天国に於ては時間空間など云ふものはなく、従つて午前午後昼夜などの区別はない。併しながら情動の変異に依つて、朝たり夕べたるの感覚が起るものである。而して朝は太陽の愛に相応し、天国の愛善に和合するものである。又夕べは信真に相応し、月に相応するものである。故に天国人の祭典は午前中に行はれ、霊国即ち月の国から出張し来る宣伝使は午後に至つて説教を初むるのが例となつてゐる。現代に於ける各宗教の儀式も祭事に関することは凡て午前に行ひ、説教などは午後に行はるるのは、知らず知らずに天国の情態が地上に映つてゐるのである。
 各天人は思ひ思ひの歌を歌ひ、舞を舞ひ、音楽を奏し、祭典後一切を忘れて面白可笑しく茶番狂言なども交へて、時の移るのも知らず、遊び狂ふのである。
 天人の歌や演舞の状況は茲には省略して、後日又時を得て述ぶることとする。さて直会の宴も無事終了し、各天人の情動は初めて午後に相応する感覚になつた時、霊国の宣伝使が何処ともなく嚠喨たる音楽に送られて、四辺を輝かしながら、二人の侍者と共に神の家に向つて進んで来た。諸天人は此宣伝使を『ウオーウオー』と、愛の声を注ぎながら迎へ入れる。宣伝使は莞爾としてさも嬉しげに、諸天人に目礼を施し、団体長なる珍彦の案内に連れて、半円形に組立てられた演壇上に悠々と座を占めた。而して其左右には証覚の光明稍劣つた者が控へてゐる。これは宣伝使の侍者である。諸天人は半月形に演壇の前に席を取り、宣伝使の視線を外さない様にして、其教示を嬉し気に聴聞してゐる。宣伝使の天国に於ける説教は大神の御神格を徹底的に理解すべく、且愛善と信真の何たるかを、極めて微細に説きさとし、天人が処世上の利便を計らしむるべく努むるより外にはないのである。
 治国別、竜公は天国の言葉を解し得ず、特別の席に黙然として耳を傾け、其教示を一言なりとも会得せむと努めてゐる。されど此等の両人は未だ第二天国の天人の言葉さへ聞分くる丈の智慧証覚も備はつてゐないのだから、此等の天人を説き諭す幽遠美妙なる説教などは到底聴取れる筈はない。従つて感得することは出来ない。デクの棒然として、其美妙なる声調や言語の抑揚頓挫曲折などの巧妙ぶりや、顔面筋肉の動き振り、形容身振などを考へて、略其何事を語り居るかを、おぼろげに窺知し得るのみであつた。殆ど一時ばかり経つたと思ふ時、宣伝使は説教の終結を告げた。各天人は頻りに拍手し、讃嘆しながら、ウオーウオーと叫びつつ神の家を立つて各自の住所に帰り行く。珍彦夫婦は宣伝使の先頭に立ち、己が館を指して迎へ帰る。治国別、竜公も後に従ひ、珍彦の館に入る。
 宣伝使は奥の間に進み、冠を取り、法服を着替へ、くつろいで主客対坐し、茲に少時雑談に耽るのが例となつてゐる、珍彦夫婦は珍らしき果物を並べ、葡萄酒を注いで宣伝使に勧めた。宣伝使は栄えにみちた面貌を珍彦に向けながら、一口グツと呑み珍彦にさした。珍彦は恭敬礼拝しつつ押戴いてグツと呑み、其残りを珍姫にさした。珍姫も同じく押いただいて之を呑み終り、宣伝使に返し、宣伝使は二人の侍者に盃を与へ、手づから葡萄酒をつぐ。二人の侍者は何事か解し難き歌を歌ひ出した。治国別、竜公は宣伝使の面貌の高尚優美にして光明に充てるに眼くらみ、容易に面を向くることが出来なかつた。之は智慧と証覚の度に非常の相違があるが故である。あわてて被面布を取出し、治国別、竜公は之をかぶつた。そして宣伝使の顔をよくよくみれば、豈計らむや野中の森で別れた治国別の徒弟五三公であつた。宣伝使の五三公は、治国別、竜公のここに来り居ることを一目見て看破してゐたけれど、二人が自然に吾を認めるまでワザと名乗らなかつたのである。治国別は心の中に、
『あゝ似たりや似たり、よく似たり、吾徒弟の五三公にソツクリだ。只どこともなく、肌の色合が透き通つてみえるばかりで、どこに一所違つた所がない。名乗つて見ようか、イヤイヤ五三公如き者が何うして霊国の宣伝使になり得るものか、なまじひに質問をして無礼になつてはすまない』
と心にとつおいつ、煩悶をつづけて居る。竜公も亦被面布の中から宣伝使の姿をためつすかしつ、首を切りにかたげ、或は右に左にふりながら、
『ハテナ、よく似てゐる、妙だなア、ヤツパリ違ふかなア、イヤイヤ違ひはしようまい。何は兎もあれ不思議千万なことだ。何うしても合点の虫が承知せぬ。何程天国には相似の面貌があると云つても、これ丈似た顔は二度とあるまい』
などと四辺かまはず、無垢の心より、遠慮会釈もなく喋つてゐる。宣伝使は輝きの面貌を両人に向け、ニコニコと笑つてゐる。竜公は構はず、
『モシ先生、あの宣伝使の顔を御覧なさい。三日月眉毛に頬のゑくぼ、目のつき方から、鼻の格好、口のチヨンモリした所、五三公にそつくりぢやありませぬか』
 治国別は始めて口を開き、
『よく似てゐられるなア』
『先生、似るも似ぬもありますか。本真者の五三公ですよ。オイ五三公、何だ偉相に、俺だ俺だ、俺は被面布を被つてるから分らぬだらうが、竜公さまだ。そして一人はお前の大切な先生治国別さまだ。座を下つて挨拶をせないか、エヽーン、いつの間に夫れ程出世したのだ』
 宣伝使はますますニコニコと笑つてゐる。
『これはこれは木花姫命様、よくもマア私如き者の徒弟となり、化相の術を以て今迄此愚鈍な治国別をよくもお導き下さいました。有難く感謝致します』
 宣伝使は始めて口を開き、
『治国別様、竜公様、失礼を致しました。併し私は月の大神の御側に仕へまつる言霊別命で厶います。此度大神の命に依り、地上に降り、五三公の精霊を充たし神国成就の為に、貴方と共に活動をしてゐた者で厶います。夫れ故私と五三公とは全く別個の人間です。併しながら私の神格の全部が、五三公の精霊をみたしたる為、面貌までが能く似てゐるのでせう。今後に於ても時々五三公の精霊に下り、地上に天国を建設する為、化相を以て活動を致しますれば、五三公はヤハリ貴方の徒弟としてお使ひを願ひます』
 治国別は此物語に打驚き、
『ハイ』
と言つたきり、神の恵の広大無辺なるに感謝の涙をこぼしてゐる。
竜公『モシ宣伝使様……否言霊別命様、私が現界へ帰りました時は、五三公さまに対し、今迄の通りの交際振をやつて居ればいいのですか、之を伺つておかねば、今後の都合が厶いますからなア』
『化相を以て現はるれば、ヤハリ五三公です。従前の通り交際を願ひます』
『ヤ、五三公、承知した。お前がこんな偉い者になることを思へば、俺だつてヤツパリ友達だ。何程智慧証覚があるといつても、現界へ出れば、俺とチーと偉いか、少し劣つた位なものだ。俺が一升でお前が九合か、お前が一升で俺が九合か位なものだ。なア五三公、さうだらう』
 言霊別はパツと上衣を脱いだ。忽ち現界で見た五三公と、風体まで変らないやうになり、言葉もなれなれしくなつて来た。
『天国の法衣をぬいで、暫く気楽に又お前と天国の旅行をしようぢやないか。治国別の先生、これから五三公が第二天国は云ふも更也、第一天国まで御案内を致しませう』
『何卒宜しく御願致します』
『コレ先生、融通の利かぬ人だな。ヨシ五三公、お供を許すと何故仰有らぬのだ。なア五三公、さうぢやないか』
『ウン、化の皮をぬいだら、ヤツパリ元の五三公だ。ヤア珍彦様、珍姫様、有難う厶いました。之から天国の巡覧を致しますから、之でお別れ致しませう』
 珍彦夫婦は意外の此問答に呆れ果て、黙然として三人の顔を見つめてゐる。二人の宣伝使の侍者はどこへ行つたか、影も形も見えなくなつて居た。
 茲に治国別は五三公、竜公を伴ひ珍彦、珍姫に厚く礼を述べ、宣伝歌を歌ひながら、五三公の案内につれて、南方さして進み行く。
(大正一二・一・一〇 旧一一・一一・二四 松村真澄録)
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