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文献名1霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻
文献名2第4篇 四鳥の別よみ(新仮名遣い)しちょうのわかれ
文献名3第16章 諒解〔1623〕よみ(新仮名遣い)りょうかい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-10-15 20:08:44
あらすじ玉国別は船から上がると一行とともに初稚姫の前に来て一礼し、感謝の歌を述べた。デビス姫とブラヷーダは、船中の伊太彦と玉国別のやり取りから、宣伝使として夫婦が別の道を行くべきではないかと初稚姫に相談した。初稚姫は、大神の任によって進む身は人を力としてはいけない、ただ一人道を伝えて行くのが務めだと答えた。初稚姫は、玉国別が一人真純彦を供とすることは許した。伊太彦は、自分は神界の御用を務める役目があるからと、ブラヷーダに離縁を申し出た。初稚姫は歌に示して、二人がいったん別々の道を進み、神業成就の上で改めて夫婦の契りを結ぶのがよいと歌った。ブラヷーダは一人で行く覚悟を示した。玉国別は、ブラヷーダが一人でエルサレムに参拝し、それからフサの国を通ってハルナの都に進むよう道を示した。伊太彦は別路、夜光の玉をエルサレムに納めてから、フサの国を横断してハルナの都に進むよう諭した。そして三千彦とデビス姫にも各々一人で進むように示した。一同は承諾した。デビス姫はさっそく別れの歌を歌うと、一同に黙礼して早くもエルの街の中に姿を隠してしまった。アスマガルダは家に戻り、ブラヷーダとデビス姫はそれぞれエルサレムに進んだ。伊太彦と三千彦もそれぞれ玉を奉持して、一人でエルサレムを目指した。初稚姫はスマートとともにどこともなく姿を隠した。治道居士はバット、ベル、カークス、ベースをしたがえ、比丘となってエルサレムに詣でることになった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年05月25日(旧04月10日) 口述場所天声社 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年2月3日 愛善世界社版223頁 八幡書店版第11輯 343頁 修補版 校定版231頁 普及版64頁 初版 ページ備考
OBC rm6316
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本文  初稚姫は、早くもエルの港につきたまひ、アスマガルダ、ブラヷーダ、カークス、ベース、スマートと共に阜頭に立つて玉国別の船の進み来るを待ちつつあつた。船は漸くにしてエルの港についた。玉国別は嬉しげに船より一行と共に上り来り、初稚姫の前に立つて一礼を終り、

玉国別『スーラヤの清き湖漸くに
  神の恵に渡り来にけり。

 初稚姫珍の命は逸早く
  着きたまひたる事の尊さ』

初稚姫『湖の面を眺めて幾度か
  待ちあぐみけり君の御船を』

真純彦『金銀の波漂ひし此湖も
  初稚姫の輝きにしかず。

 浪の上ゆエルの港を眺むれば
  輝り灼きぬ珍の御姿』

三千彦『月は盈ち潮みち船に人も満ち
  心みちつつ浪路渡り来ぬ。

 恙なく神の恵に渡り来し
  此湖に別れむとぞする。

 別れ路のつらさは浪路にあるものを
  伴ひたまへ初稚姫の君』

初稚姫『皇神の御言畏み進む身は
  神としあれば伴は頼まじ』

デビス姫『惟神道往く人は唯一人
  進む掟を知らずありけり。

 如何にせば神の御心に叶ふらむ
  吾背の君と共にある身は』

ブラヷーダ『妾とて神としあれば草枕
  一人の旅も如何で恐れむ。

 さりながら神の許せし背の君に
  別れて如何で進み得ざらめ』

初稚姫『大神のまけのまにまに進む身は
  如何でか人を力とやせむ。

 三五の神の御規は唯一人
  道つたへ行くぞ務めなりけり』

治道『あら尊初稚姫の御言葉
  吾魂の闇を晴らしぬ』

玉国別『大神の御言畏み進む吾に
  一人はゆるせ初稚の君』

初稚姫『汝こそは神の依さしの神司
  やすくましませ真純彦と共に』

伊太彦『これはしたり三千彦さまの真似をして
  思はず知らず暗に迷ひぬ』

 伊太彦は埠頭の石に腰打ちかけ、双手を拱んで何事か思案に暮れて居る。其両眼には涙さへ滴り、さも懺悔の情に堪へざるものの如くであつた。ブラヷーダは心も心ならず伊太彦の前に躙り寄り、
『もし吾背の君様、貴方は俄に勝れさせられぬ御心持、何か心配な事が出来て参りましたか、お差支無くば私に仰有つて下さいませ。夫婦となれば何処迄も苦楽を共にするのが天地の道で厶います』
 伊太彦は首を左右に振り、声までかすめて、
『ブラヷーダ、どうか今迄の縁ぢやと諦めて、此伊太彦を許して呉れ。一生の御願ひだ』
ブラヷーダ『何がお気に障つたか知りませぬが、つい初稚姫様の御言葉に従つて貴郎の御船を離れお先に参つたのが御意に障つたので厶いませう。誠に済まない事を致しました。此後はきつと貴方の身辺を御保護を致しますからお許し下さいませ』
と涙ぐむ。
伊太『いやいや決してそんな事を彼是思ふのではない。お前は初稚姫様のお伴をして大変結構であつた。天晴ハルナの都に参つて神命を果し其上神様のお許しを得てお前と夫婦になれるものならなりませう。此伊太彦はお前と別れたならば一生独身生活をして神界に仕へる積りだ。お前は是から私に離れて家に帰り、両親に孝行を尽し、適当の夫を選んで安楽に暮してくれ。併し一たん別れても縁さへあれば又添ふ事も出来るだらう。初稚姫様のお言葉と云ひ、ウバナンダ竜王の言葉と云ひ、もはや此伊太彦は立つても居てもおられなくなつて仕舞つたのだ』
ブラヷーダ『若し玉国別様、初稚姫様如何致しませうか。何卒吾々夫婦に対してお指揮を下さいませ』
 玉国別は、アヽと云つたきり涙を拭ひ乍ら黙然として俯き深き吐息をついて居る。

初稚姫『別れてはまた遇ふ海の末広く
  男浪女浪に浮ぶ月影』

玉国別『初稚姫様の今のお歌によれば、伊太彦、可愛さうだがお前は此所からブラヷーダ姫と袂を分ち天晴神業成就の上、改めて夫婦の契を結んだがよからう。ブラヷーダ姫も御承知で厶いませうな』
ブラヷーダ『如何にもお情の籠もつたお言葉、左様ならば大切なる夫の御神業を妨げてはなりませぬから、此処で潔う別れませう。併し乍ら此まま家に帰る訳には参りませぬから、妾もどうぞハルナの都の御用に立てて下さいませ。伊太彦様左様ならばこれでお別れ致します。どうぞ御無事で天晴御神業を果し、皇大神の御前に復命遊ばすやうお祈り致します』
 玉国別は莞爾として左も愉快気に、
玉国別『ブラヷーダ姫さま。貴女のお覚悟は実に天晴なもので厶います。しからば此上は貴女は唯お一人でエルサレムに参拝し、夫れよりエデンの河を渡り、フサの国に出でハルナの都にお進みなさい。きつと神様がお助け下さいますから。あゝ私も互に助け助けられて此処迄出て参りました弟子達に別れるのは残念ですが、どうも神様の掟を破る訳にも参りませぬ。併し、素盞嗚の大神様から、真純彦、三千彦、伊太彦の三人を伴ひ行く事を許されましたが、今となつて考へて見れば大神様はさぞ「玉国別は腑甲斐ない奴だ」とお心の中でお蔑みなさつたらうと今更懺愧に堪へませぬ。併し乍ら初稚姫様のお許しで真純彦一人を連れて参る事に致します。伊太彦は独り是からエルサレムに玉を納め、フサの国を横断してハルナの都に進んだがよからう。三千彦お前も一人でお出なさい』
 伊太彦、三千彦、ブラヷーダ、一度に頭を下げ涙を滴らしながら承諾の意を示して居る。
玉国『アヽそれで玉国別も安心致しました。初稚姫様の神懸してのお言葉によりまして、吾々も迷ひの夢が醒めました。有難う厶います』
と合掌涕泣してゐる。

デビス姫『いざさらば神の教の三千彦よ
  別れて遇はむハルナの都で。

 初稚姫玉国別の神司
  やすくましませ妾はこれにて暇をつげむ』

と云ふより早く一同に目礼し、早くもエルの町の中に姿を隠して仕舞つた。これより初稚姫命により、アスマガルダは吾家に帰り、ブラヷーダ、デビス姫は思ひ思ひに人跡なき山を越へ谷を渡り、エルサレムに進む事となつた。伊太彦、三千彦も亦玉を捧持し一人旅となつてエルサレムに進み往く。初稚姫はスマートと共に何処ともなく姿を隠したまうた。治道居士は自分の幕下なりし、バット、ベル並にウラル教より帰順したる、カークス、ベースの四人を従へ各自比丘の姿となつて、エルの港にて法螺貝を購ひ、金剛杖をつき大道を進んでエルサレムに詣づる事となつた。今後に於ける各宣伝使の行動は果して如何に開展するであらうか。
(大正一二・五・二五 旧四・一〇 於天声社楼上 加藤明子録)
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