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文献名1霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻
文献名2第2篇 天岩戸開(二)よみ(新仮名遣い)あまのいわとびらき(二)
文献名3第13章 秋月滝〔509〕よみ(新仮名遣い)あきづきのたき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-12 00:39:08
あらすじ一行は、ウラル彦の手先の曲津神によって、汚れを撒き散らしている滝の側まで、シナイ山の山中を分け入ってやってきた。ここには、秋月の滝、深雪の滝、橘の滝、高光の滝、玉光の滝、国光の滝という六つの大滝があるという。一行はまずは秋月の滝へと進んで来た。すると、滝の上の大岩石が音を立てて崩れ落ちてくる。初公は慌てるが、蚊取別はこれは曲津神の幻術だと見破る。初公は一生懸命神言を唱えていると、滝の中から火の玉が現れ、滝を昇っていく。そしてすっと消えると、辺りは真っ暗闇になってしまった。初公は必死になって宣伝歌を歌うと、辺りは明るく晴れ、空にはほのかに日の光が射し始めた。初公は嬉しくなって、蚊取別を呼んだが、辺りには誰もいなくなっていた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月09日(旧02月11日) 口述場所 筆録者谷村真友 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年9月30日 愛善世界社版110頁 八幡書店版第2輯 666頁 修補版 校定版116頁 普及版47頁 初版 ページ備考
OBC rm1213
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本文  常夜往く暗を晴らして世の中を、清めむよしもナイル河、ウラルの彦の御教に、心も身をも蕩かされ、正しき業もシナイ山、木々の繁みに隠ろいて、この世を乱す曲津神、汚れを流す恐しさ、空照り渡る秋月の、滝さへ濁る泥の雨、降り来るものは泥と灰、地に堆高く重なりて、足踏みなずむ谷の路、灰降る後の夏の日に、冷たき雪の降り積り、夏にも非ず冬ならず、春日か秋かあや四季の、順序乱れて常夜行く、神の恵みもいやちこに、御空晴らして高光彦や国光彦、曲津の身玉光彦や、初花開く祝姫、蚊取の別の六人連れ、谷間を指して進み行く。
初公『ヨー、そつくりだ、夢に見た通りの森林もあり、滝もある。然し昼とは云ひ乍ら、ほの暗い世の中に滝ばかり白く光つて居る。彼奴が一つの曲者だよ。サアこれからあの滝に向つて言霊でウンとやつて見よか』
蚊取別『ソー惶てるものぢやない、気を落ち着けて緩くりとかかる事にしよう。祝姫さまは早や此滝に経験があるのだから、言はば今度は弔ひ戦だ、シツカリ遣るのだぜ』
初公『大分に暗くなつて来たワイ。何処か此処らに麻の縄が落ちて居らぬかいな』
蚊取別『麻の縄が落ちて居れば夢が実現するのだから、それこそ又もや大蛇の背中だ。ヤア皆の方々、此処には秋月の滝、深雪の滝、橘の滝、高光の滝、玉光の滝、国光の滝と六つの大滝がある。それを各々手分けして、一つづつ言向和す事にしたらどうでせうなア』
初公『モシモシ、初の滝、蚊取別の滝はありませぬかいな』
蚊取別『沢山にある、然しそんな些細な滝は数に入つて居らぬのだよ。余り大きくて数に入らぬのが蚊取別の滝、あまり小さくて数に入らぬのが初の滝と云ふのだよ』
初公『酷いなア、然し六人一度に力を集めて秋月の滝へ突撃を試むる事にしませうかい』
 斯く云ふ間滝の音はドードーと刻々に激しく聞えて来る。飛沫は四方に飛散り、折からの風に連れて六人の佇む前に驟雨の如く落ち来る。
初公『サア大変だ。滝の奴、祝姫に秋波でなくて激波、激沫を飛ばして、チヨイチヨイとお顔を舐ると云ふ洒落だナア』
蚊取別『滝が来たのぢやない、此方より進むだぢやないか、ソラ、ここは滝の前だよ』
初公『ヤア此奴は不思議、歩きもせぬのに七八町もある処をどうして此処まで来たのだらうか』
蚊取別『極つた事よ、大蛇の背中に乗せられて来たのだもの。貴様一寸前を見よ、鎌首を立てて居るぢやないか』
初公『ヤア愈怪しいぞ、迷宮に入つた。どうやら蚊取別もかうなつて来ると怪しいものだ。神蚊悪魔蚊、本当蚊嘘蚊、お化蚊本物蚊、蚊々々烏蚊鳶蚊、天狗蚊大蛇蚊、取別訳が分らぬぢやない蚊い』
 斯く言ふ間谷間に立てる見上ぐる許りの大岩石はガラガラと音して、六人の頭上に落ちかからうとする。
初公『サア蚊取別さま、宣伝歌だ宣伝歌だ、愚図々々して居ると岩に押し潰されてしまうワ』
蚊取別『あれは岩ではない、滝の水烟だ。早や曲津神に瞞されて居るな』
 滝の音は刻々に高く轟いて来る。初公は一生懸命汗を滝と流しながら神言を奏上し、薄暗き滝の畔は忽ち紅くなつて来た。見れば滝の中より巨大なる火の玉が、スウスウと滝を目蒐けて昇り行く。
初公『ヤア出やがつた赤玉奴が。初さまの御鎮魂にウンと火の玉を消して遣らうか。ヤア待て待て彼奴が居るとそこらが明くて丁度灯の代りになるから放つといてやらうかナア』
 巨大な火の玉は、ブスリと消えた。四辺は真暗闇である。
初公『ヤア蚊取別さま、祝姫さま、真闇になつた、宣伝歌を歌つて下さい』
 滝の音は益々高く聞える。
初公『サヽ蚊取別さま、宣伝歌を力一杯一生懸命歌ひませう。何んだ返事をせぬのか、ハハア、余り滝の音が高くて聞えぬのだらう』
と云ひながら両手を組み、一生懸命に滝壺に向つて宣伝歌を歌つた。
初公『朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 たとへ天地は暗くとも  白瀬の川の滝に住む
 此の曲津見を言霊の  貴の剣を抜き持ちて
 切り屠らずに置く可き蚊  取別神の御化身
 瑞の御魂の御光に  岩戸こめたる雲霧を
 伊吹きに払ふ祝姫  赤い火の玉飛び出して
 高光彦か玉光か  広国光らす宣伝使
 睦び合うたる神柱  厳の雄健び踏み健び
 厳のころびを振り起こし  曲を悉言向けて
 四方に塞がる村雲を  晴らして日の出の世となさむ
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 直日に見直し宣り直す  行平別の言霊に
 敵する神はあらざらむ  天の岩戸も秋月の
 滝の音さへ鎮まりて  枝も鳴らさぬ神の御代
 ナイルの河も純世姫  心を尽しの島ケ根に
 太き稜威を阿弗利加や  広き原野に蟠まる
 曲言向けて初国を  開く行平別の神
 アヽ曲神よ、曲神よ  神の御言にまつろひて
 ナイルの河の滝水に  心を洗へよ清めよや』
と歌ひ終れば、不思議や今まで暗黒なりし谷間は夜の明けたる如く、天津御空には、雲を分けてほのかに日の光り現はれ来りければ、初公は欣喜雀躍の余り、後振り返り、
『モシ蚊取別様』
と言ひつつ傍を見れば宣伝使の影は一柱も見えずなりにける。
初公『ハテ不思議だ、何の事だか訳が分らぬ。然し乍ら久し振で天の岩戸が開けたと見えて、かすかながらも日輪様のお顔を拝むだ。アヽ有難いありがたい天津祝詞を上げませう』
(大正一一・三・九 旧二・一一 谷村真友録)
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