文献名1出口王仁三郎全集 第2巻 宗教・教育編
文献名2【宗教編】第2篇 新興宗教よみ(新仮名遣い)
文献名3第1章 新宗教を待つよみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考2023/10/02校正。
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データ最終更新日2023-10-02 14:48:19
ページ55
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いつの世にも政治上、経済上、社会上、各人種の間に闘争と焦慮と苦悶とが地上到る処に行はれてゐる。殊に宗教の間には特に甚だしき闘争が継続されて来た様である。宗教の世界連合も、人類の宗教的同盟も、其名のみは立派に存立するけれども、其実際の活動に至つては容易に行はれてゐない。往昔宗教と云へば大変な勢で国家の一切を挙げて其所説を実践せんとしたものだが、近代の宗教は何れも形骸斗りが徒らに存するのみで何んの役にも立たないのみか、却つて社会に害毒を流す傾向が沢山にあるやうだ。現今既成宗教の力と云ふものは、数千年の惰力によつて虫の息で動いて居る外、何等の新らしき生命の萌芽も見出すことは出来ない。そして其惰力は人心を邪悪の方面に導くのみで、天国的信仰の萌芽の発達を妨害する有害物となつてゐる。仏教、基督教其他の宗教も皆同一状態に在る如く感ぜらるるのだ。故に斯かる既成宗教は一日も早く改善するか、さもなくば残らず崩壊せしめ、宗教本来の生命を輝かし平和の為、安心立命の為、既成宗教の殻を脱いだ新宗教を樹立せなければ、到底今日の乱れきつた人心を救ふことは出来ないと思ふ。各宗教家が時代の推移に眼を醒し、基教は仏教の意義と相通じ、仏教は基教の教義と一致する点に気が付き、衆生済度の精神が互に相映写し、真信と愛善の本義を覚り、世界同胞の真意義が了解されなくては、最早宗教は駄目である。この真諦が宗教家に真に理解されたならば、爰に始めて形相の上にも闘争や苦悶や、嫉視が止んで、互に其精神の実現に力むる事になつて来る。是さへ出来れば今日の経済上、政治上、人種上の争闘も畢竟無意義のものだと云ふ事が分明になる。どうしても此処まで漕ぎつけねば社会の真実の霊的、智的進歩は期せられない。社会一切の争闘はすべて真の宗教に由つてのみ解決せらるるものである。
(瑞祥新聞 大正一四、一〇、一号)