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文献名1霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻
文献名2第5篇 五月五日祝よみ(新仮名遣い)ごがついつかのいわい
文献名3第15章 遠来の客〔643〕よみ(新仮名遣い)えんらいのきゃく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-03-25 17:11:08
あらすじ高姫がフサの国から、天の磐船に乗って魔窟ケ原にやってきた。黒姫が出迎え、玉照姫を奪う計画の進捗を報告する。高姫は、玉照姫が手に入るやいなや、フサの国に連れて帰る心積もりであった。紫姫は高姫に挨拶をした。直会の宴が開かれ、高姫、黒姫は上機嫌で宣伝歌を歌う。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月28日(旧04月02日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年2月10日 愛善世界社版249頁 八幡書店版第3輯 730頁 修補版 校定版257頁 普及版114頁 初版 ページ備考
OBC rm1815
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本文の文字数5184
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本文  米価の騰貴る糠雨が、赤い蛇腹を空に見せて居る。八岐大蛇に憑依されしウラナイ教の頭株、鼻高々と高姫が、天空高く天の磐船轟かしつつフサの国をば後にして、大海原を乗越えて、由良の港に着陸し、二人の伴を引き連れて、大江の山の程近き、魔窟ケ原に黒姫が、教の射場を立てて居る、要心堅固の岩窟に勢込んでかけ来る。
 梅公は目敏く高姫の姿を見て、叮嚀に会釈しながら、
『ヤア、これはこれは高姫様、お達者でしたか、遠方の所ようこそ御飛来下さいました。黒姫様がお喜びで御座いませう、サアずつと奥へお通り下さいませ』
 高姫は四辺きよろきよろ見廻しながら、
高姫『嗚呼大変に其辺あたりが変りましたね、これと云うのもお前さま達の日頃の丹精が現はれて、何処も彼もよく掃除が行届き、清潔な事』
梅公『エヽ、滅相な、さう褒めて頂いては実に汗顔の至りで御座います、サア奥へ御案内致しませう』
高姫『黒姫さまは在宅ですかな』
梅公『ハイ高山さまも、御両人とも朝から晩迄それはそれは羨ましい程お睦まじうお暮しで御座います』
 斯る処へ黒姫はヌツと現はれ、
『マア高姫様、ようこそお出下さいました。何卒悠くりお休み下さいませ』
高姫『黒姫さま、久し振りでしたねえ、高山彦さまも御機嫌宜敷いさうでお目出度う御座います』
黒姫『ハイ、有難う御座います、頑固なお方で困つて居ります』
高姫『ヤア、人間は頑固でなければいけませぬ、兎角正直者は頑固なものですよ、変性男子式の身霊でなくては到底神業は成就致しませぬからな。時に黒姫さま、貴女は日々この自転倒島の大江山の近くに、紫の雲が立ち昇り、神聖なる偉人の出現して居る事は御存じでせうね』
黒姫『ハイハイ委細承知して居ります』
高姫『承知はして居ても又抜かりなく、其玉照姫とやらをウラナイ教に引き入れる手筈は調うて居ますか』
黒姫『仰しやる迄もなく、一切万事羽織の紐で、黒姫の胸にチヤンと置いて御座います。オホヽヽヽ』
高姫『ヤアそれで安心しました、愚図々々して居ると、また素盞嗚尊の方へ取られ仕舞つては耐りませぬからなア、私は夫れ許りが気にかかつて、忙しい中を飛行機を飛ばして態々やつて来ました。そうして肝腎の目的物はもう手に入りましたか』
黒姫『イヤ、今着々と歩を進めて居る最中なんです。それについては斯様斯様こうこうの手段で』
と耳に口寄せて、綾彦夫婦の人質に使用する事も打ち明けて、得意の顔を輝かす。
高姫『善は急げだ。如才はあるまいが一日も早くやらねばなりませぬぞえ、私もそれが成功する迄は気が気ぢやありませぬ、私も此処で待つて居ませう、玉照姫が手に入るや否や、飛行機に乗せてフサの国に帰りませう』
黒姫『高姫さま、お喜び下さいませ、一旦三五教に堕落して居た青彦が、神様の御神力に往生して帰つて来ました』
高姫『何と仰有る、あの青彦が帰りましたか、それはマアマアよい事をなさいました。遉は千軍万馬の功を経た貴女、いやもうお骨が折れたでせう、貴女の敏腕家には日の出神も感服致しました。時に夏彦、常彦は何うなりましたか、なんだか居ないやうですな』
黒姫『ヘイ、彼奴はたうとう三五教に眈溺して仕舞ひました。併し乍ら之も時間の問題です、きつと呼び帰して見せます。何か神界のお仕組でせう、ああして三五教に這入り、帰りには青彦のやうに沢山の従者を連れて帰るかも知れませぬ』
高姫『さう楽観も出来ますまいが、艮の金神様は何から何迄抜け目のない神様だから屹度深い深いお仕組があるのでせう』
黒姫『貴女にお目にかけ度い方が一人あります、それはそれは行儀と云ひ、器量と云ひ、知識と云ひ、言葉遣ひと云ひ、何から何まで穴のない三十三相揃うた観自在天のやうな淑女が信者になられまして、今は宣伝使の仕込み中で御座います、何うか立派な宣伝使に仕立てあげて、貴女様に喜んで頂かうと思つて日々骨を折つて居ります、まア一遍会うて見て下さい、幸ひ其方も青彦も、青彦の連れて来た鹿公も、馬公と云ふそれはそれは実に男らしい人物も来て居ります、真実に掘出しものです、きつとウラナイ教の柱石になる人物ですなア』
高姫『それは何より結構です』
と話す折しも高山彦は、羽織袴の扮装、此場に現はれて、
『ヤア高姫さま、久し振りで御座いました、ようマア遥々と御入来、御疲労で御座いませう、サアどうぞ悠くりして下さいませ』
高姫『ヤア高山彦さま、貴方は幾歳でしたいなア、大変にお若く見えますよ、奥さまの待遇が好いので自然にお若くなられますなア、私は此通り年が寄り、歯が抜けてもうしやつちもない婆アですが、貴方とした事わいなア、フサの国に居らした時よりも余程お元気な、お顔の色が若々として、私でも知らず識らずに電波を送るやうになりましたワ。オホヽヽヽ』
高山彦『高姫さま、何うぞ冷やかさずに置いて下さい、若い者ぢやあるまいし、いやもう斯う見えても年と云ふものは嘘を吐かぬ者で、気許り達者で体が何となしに無精になります』
高姫『余り奥さまの御待遇が好いので、いつも家に許り居らつしやるものだから、自然に体が重くなるのでせう、私も貴方のやうな気楽な身になつて見度う御座いますワ、オホヽヽヽ』
黒姫『今日は遠方からの高姫さまのお越し、それについては青彦、紫姫、其他一同の者を集めて貴女の歓迎会やら祝を兼ねて、お神酒一盃頂く事にしませうか』
高姫『何うぞお構ひ下さいますな、併し私の参つた印に皆さまにお神酒を上げて貰へば尚更結構です』
 黒姫はツト立つて「梅梅」と呼んだ。
 此声に梅公は慌ただしく走り来り、
『何御用で御座いますか』
黒姫『今日は高姫様の久し振のお越しですから、皆々お神酒を頂くのだから、其用意をして下さい』
梅公『ハイ畏まりました、嘸皆の者が喜ぶことでせう』
といそいそとして納戸の方に姿を隠した。紫姫は青彦と共に此場に現はれ、叮嚀に手をつかへ、
紫姫『これはこれは高姫様で御座いますか、貴い御身をもつて能くも遠方の所入来られました。私は都の者、元伊勢様へ二人の下僕を連れて参拝致します折、黒姫さまの熱心なる御信仰の状態を目撃しまして、それから俄に有難うなり、三五教の信仰を止め、お世話になつて居ます。何うぞ今後は御見捨てなく宜敷く御指導をお願ひ致します』
青彦『私は御存じの青彦で御座います、誠に不調法許り致しまして、大恩ある貴女のお言葉を忘れ、三五教に眈溺致し、大神様へ重々の罪を重ね、何となく神界が恐ろしくなりましたので、再び黒姫様にお詫を申し、帰参を叶へさして頂きました、何うぞ宜敷くお願ひ致します』
高姫『ヤア紫姫さまに青彦さま、皆因縁づくぢやから、もう此上は精神をかへては不可ませぬぞえ、貴女は黒姫さまに聞けば、立派な淑女ぢやと仰有いましたが、如何にも聞きしに勝る立派な人格、日の出神の生宮も、全く感服致しました』
紫姫『さうお褒め下さいましては不束かな妾、お恥かしうて穴でもあれば這入り度くなりますワ』
高姫『滅相な、何を仰有います、貴女は身魂がよいから、もう此上御修業なさるには及びますまい、貴女は此支社に置いておくのは勿体ない、私と一緒に北山村の本山へ来て貰つて、本山の牛耳を執つて貰はねばなりませぬ。これこれ青彦、お前も確りして今度は私について来なさい、此処に長らく置いておくと剣呑だ、大江山の悪霊が何時憑依して又もや身魂を濁らすかも知れないから、今度は或一つの目的が成就したら、高姫と一緒にフサの国の本山に行くのだよ』
青彦『アヽそれは何より有難う御座います、私の変心したのをお咎めもなく、本山迄連れて帰つてやらうとは、何とした御仁慈のお言葉、もう此上は貴女の御高恩に報ゆるため、粉骨砕身犬馬の労を厭ひませぬ』
高姫『アヽ人間はさうなくては叶はぬ、空に輝く日月でさへも、時あつて黒雲に包まれる事がある。つまり貴方の心の月に三五教の変性女子の黒雲が懸つて居たのだ。迷ひの雲が晴るれば真如の日月が出るのぢや、アヽ目出度い目出度い、これと云ふのも黒姫さまのお骨折り』
と高姫は一生懸命に褒めそやして居る。かかる処へ、
梅公『モシモシ、準備が出来ました。皆の者が待つて居ます、何うぞ皆さま奥の広間へお越し下さいませ』
黒姫『ヤア、それは御苦労であつた。サア高姫さま、紫姫さま、高山さま、青彦さま参りませう』
と先に立つ。高姫は鷹の羽ばたきしたやうな恰好しながら、いそいそと奥に入る。一同は高姫導師の下に神殿に向ひ天津祝詞を奏上し、続いて日の出神の筆先の朗読を終り弥々直会の宴に移つた、高姫は歌を謡つた。
『フサの御国の空高く  鳥の磐樟船に乗り
 雲井の空を轟かせ  一瀉千里の勢ひで
 西より東へ電の  閃めく如くかけ来り
 世人の胸を冷しつつ  高山、低山乗り越えて
 天の真名井も打ち渡り  安の河原を下に見て
 瞬くひまに皇神の  日の出の守護の著く
 由良の港に着陸し  鶴亀二人を伴ひて
 千秋万歳ウラナイの  教の基礎を固めむと
 東に輝く明星を  求めて此処に来て見れば
 神の経綸の奥深く  凡夫の眼には弥仙山
 山の彼方に現はれし  玉照姫の厳霊
 弥々此処に出現し  三千年の御経綸
 開く常磐の松の代を  待つ甲斐あつて高姫が
 日頃の思ひも晴れ渡る  時は漸く近づきぬ
 アヽ惟神々々  御霊幸倍坐し在して
 誠の道にさやり来る  頑固一つの瑞霊
 変性女子が改心を  する世とこそはなりにけり
 月は盈つとも虧くるとも  旭は照るとも曇るとも
 仮令大地は沈むとも  ウラナイ教の神の道
 唯一厘の秘密をば  グツと握つた高姫が
 仕組の奥の蓋あけて  腹に呑んだる如意宝珠
 玉の光を鮮かに  三千世界に輝かし
 鬼や大蛇や曲津神  三五教も立直し
 金勝要の大神や  木花姫の生宮を
 徹底、改心さして置き  グツと弱つた、しほどきに
 此高姫が乗り込んで  サアサア何うぢや、サアどうぢや
 奥をつかんだ太柱  弥改悟をすればよし
 未だ分らねば帳切らうか  変性男子の御血統
 神の柱となりながら  こんな事では、どうなるか
 誠の事が分らねば  早く陣引きするがよい
 後は高姫、乗り込んで  唯一厘の御仕組
 天晴成就させて見せう  斯うして女子を懲らすまで
 一つ無くてはならぬもの  弥仙の山に現はれた
 玉照姫を手に入れて  是をば種に攻寄れば
 如何に頑固な緯役の  変性女子も往生して
 兜を脱ぐに違ひない  一分一厘、毛筋程
 間違ひ無いのが神の道  三五教やウラナイ教
 神の教と表面は  二つに分れて居るけれど
 元を糺せば一株ぢや  雨や霰や雪氷
 形変れど徹底の  落ち行く先は同じ水
 同じ谷をば流れ往く  変性女子の御霊さへ
 グヅと往生させたなら  後は金勝要の神
 木花咲耶姫の神  彦火々出見の神霊
 帰順なさるは易い事  邪魔になるのは緯役の
 此世の乱れた守護神  此奴ばかりが気にかかる
 アヽさりながらさりながら  時は来にけり、来りけり
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 唯何事も人の世は  直日に見直し、宣り直す
 三五教やウラナイの  神の教の神勅
 高天原に高姫が  天晴れ表に現はれて
 誠の道を説き明かし  ミロクの神の末長う
 経のお役と立直し  緯の守護を亡ぼして
 常世の姫の生魂や  世界の秘密を探り出し
 日の出神や竜宮の  乙姫さまの神力
 堅磐常磐の松の世を  建つる時こそ来りけり
 アヽ惟神々々  御霊幸倍坐ませよ』
 黒姫も稍、微酔機嫌になつて低太い声を張り上げて謡ひ始めたり。
『遠き海山河野越え  遥々此処に帰ります
 ウラナイ教の根本の  要、掴んだ高姫さま
 よくもお出まし下されて  昔の昔のさる昔
 国治立の大神の  仕組み給ひし大謨を
 一日も早く成就させ  世に落ちたまふ神々を
 残らず此世に、あげまして  三千世界の民草を
 上下運否の無いやうに  桝かけひいて相ならし
 神政成就の大業を  いよいよ進めたまはむと
 出ます今日の尊さよ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令、天地を探しても
 こんな結構なお肉体  日の出神の生宮が
 又と世界にあるものか  また竜宮の乙姫が
 憑りたまひて艮の  金神様のお経綸で
 骨身、惜まぬお手伝い  こんな誠の神様が
 又と世界にあるものか  アヽ惟神々々
 今迄、種々態々に  神のお道を彼是と
 要らぬ心配して見たが  時節参りて煎豆に
 花咲き実る嬉しさよ』
と謡ふ折しも表の岩戸の方に当つて、消魂しい物音聞え来たる。
 嗚呼鼻の高姫さまよ、お色の黒い黒姫さまの長たらしい腰曲り歌や、青彦の舌鼓、紫姫の淑やかな声、馬公、鹿公、梅、浅、幾、丑、寅、辰、鳶、鶴、亀その他沢山の酒に酔うた場面を霊眼に見せられて、余り霊肉両眼を虐使した天罰、俄に眠くなつて来た。一寸これで切つて置きます。
(大正一一・四・二八 旧四・二 加藤明子録)
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