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文献名1霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻
文献名2第1篇 森林の都よみ(新仮名遣い)しんりんのみやこ
文献名3第5章 琉球の光〔896〕よみ(新仮名遣い)りゅうきゅうのひかり
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-04-28 16:45:33
あらすじカーリンスも滑稽な歌の中にも兎と鰐を安堵する内容を込めて舞い踊った。鷹依姫一行が兎の都に迎えられてから一年ほど経った夜、四方の丘から怒号の声が聞こえてきた。兎の王は鷹依姫の前に走り来たって、猛獣の軍隊が攻め寄せたことを注進した。そして、鰐たちが防戦しつつあるが、大軍のために宣伝使たちにも神力による助力を懇願した。鷹依姫は直ちに拍手して天津祝詞を奏上し、天地に向かって言霊歌を宣り上げた。すると屏風山脈の最高地点の帽子ケ岳から、二つの火光がサーチライトのように輝いた。兎の都の四方を囲んでいた猛獣の魔軍は光に打たれてその場に震えおののいた。竜国別は火光に向かって拍手し、琉球の霊光の援軍に感謝の宣伝歌を歌った。そして兎の王に、霊光の威徳が現れたことに安堵するよう伝えた。鰐の頭も天佑の顕現に勇み立ち、兎の王に防戦の成功を請け合った。一同は帽子ケ岳の霊光に感謝し、歓声を上げてこの天佑を祝し、その夜を無事に明かすことになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月22日(旧06月30日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年10月15日 愛善世界社版51頁 八幡書店版第6輯 168頁 修補版 校定版54頁 普及版20頁 初版 ページ備考
OBC rm3205
本文のヒット件数全 2 件/神力=2
本文の文字数3152
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本文  カーリンスは三人の宣伝使の歌を聞き、吾も亦歌をうたひ、兎、鰐の一族に対し、巾を利かさねばなるまいと思つたか、直に立上り、妙な手附をして踊りながら、歌ひ始むる。
『此処は名に負ふハルの国  アマゾン河に沿ひて樹てる
 大森林の時雨の森と人も言ふ  モールバンドやエルバンド
 其外百の獣たち  堅城鉄壁千代の棲処と
 天日に怖ぢず地に憚らず  月の光に恐れず
 自由自在に  咆哮怒号の魔窟ケ原
 優勝劣敗  弱肉強食の修羅の巷を
 数百万年の昔より  世界の秘密国として
 汝が一族に  与へられたる此森よ
 森の主は兎の王と  誇りし夢も何時しか消えて
 今は悪魔の  棲処と成り果てぬ
 変れば変る現世の  例に洩れぬ兎の身の上
 鰐一族の淋しき生活  広袤千里の森林に
 十里四方の地点を選び  要害堅固の鉄城と
 頼みて暮す霊場も  今は危くなりにけり
 八岐の大蛇醜狐  曲鬼共の霊の裔
 激浪猛る奔流の  深き河瀬に身を潜め
 汝が一族悉く  命の綱の餌食にし
 根絶せむと附け狙ふ  モールバンドやエルバンド
 斯かる仇敵のある中に  虎狼や獅子に熊
 大蛇禿鷲猿の群  汝が一族狙ひつつ
 眼を配る時もあれ  国治立大神の
 守り給へる三五の神の司  鷹依姫を始めとし
 竜国別の宣伝使  テーリスタンやカーリンス
 四人の貴の神の子が  救ひの神と現はれて
 此処まで降り来りしは  枯木に花の咲きしが如く
 大旱に雨を得たるが如くなるべし  勇み喜べ兎よ鰐よ
 吾等は是よりハルの国  アマゾン河の森林を
 神の御水火に言向け和し  尚も進んで珍の国
 旭のテルやヒルの国  カルの国まで天降り
 八岐大蛇の一族を  言向け和し神の世の
 畏き清き政事  布き施すは目のあたり
 仮令悪神アマゾンの  河底深く潜むとも
 猛き獣の徒に  汝が群をば攻むるとも
 吾等が此処に来りし限り  ビクともさせぬ神力
 固く信じて朝夕に  喜び勇み神の前
 瑞の御霊と現れませる  月の御神の御前は
 云ふも更なり国魂の  神と現れます竜世の姫を
 厚く祀れよ敬へよ  吾も神の子亦汝も
 同じく神の御子なれば  何の隔てのあるべきや
 神は万物一切に  平等愛を垂れ給ふ
 あゝ惟神々々  兎の都に現はれて
 心も固き鰐の群  集まり守る聖場に
 三五教の神の国  堅磐常磐に限りなく
 基を建つる頼もしさ  あゝ惟神々々
 神の恵を嬉しみて  兎や鰐の群等よ
 喜び勇め神の前  森の谺の響くまで
 歌へよ祈れ神の恩  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』
 是より鷹依姫外三人は数多の兎を使嗾し、兎の都の王となつて、殆ど一年の日子を此別世界に楽しく面白く送りたり。
 或夜、月皎々と光りを湖面に投ぐる折しも、四方の丘の上より、一斉に『ウーウー』と咆哮怒号突喊の声、耳も引裂くるばかり聞え来りぬ。兎の王は驚きて鷹依姫の前に走り来り、
『鷹依姫様に申上げます。只今四方の山々を取囲み、虎、狼、獅子、大蛇、熊王、数多の一族を呼び集め、雲霞のごとく此霊地を占領し、吾等が部下を捉へむと勢猛く攻め寄せました。鰐の頭は数多の眷族を呼びあつめ、死力を尽して闘つて居るでは御座いませうが、何を云つても目に余る大軍、容易に撃退することは不可能なれば、何とか御神力を以て彼等寄せ来る魔軍を言向け和し給はむ事を、偏に一族に代り御願ひ申上げます』
と慌ただしく息を喘ませ頼み入る。鷹依姫はウツラウツラ眠りつつありしが、忽ち身を起し、月の大神を祀りたる最も高き地点に登り、四辺をキツと見詰むれば、四方を包みし青垣山の彼方此方に炬火の光煌々と輝き、咆哮怒号の声、万雷の一時に聞ゆる如く、物凄さ刻々に激烈となり来る。
 鷹依姫は直に拍手しながら天津祝詞を奏上し、天地に向つて言霊を宣り上げたり。
『天津神等八百万  国津神等八百万
 国魂神を始めとし  取分け此世を造らしし
 国治立大御神  豊国姫大御神
 天照らします大御神  神素盞嗚大神の
 貴の御前に三五の  神の司と任けられし
 鷹依姫が真心を  こめて祈りを捧げます
 あゝ大神よ大神よ  高砂島のハルの国
 アマゾン河の両岸に  幾万年の星霜を
 重ねて樹てる大森林  中に尊き此霊地
 千代の棲処と定めつつ  身魂も清く美はしき
 兎の群や鰐の群  いや永久に棲居して
 神の恵を喜びつ  天伝ひます月の神
 朝な夕なに伏し拝み  天地の恵を感謝する
 尊き心を憐みて  寄せ来る魔神を大神の
 稜威の御水火に吹き払ひ  安全地帯となし給へ
 あゝ惟神々々  神の恵に包まれし
 兎の都の此聖地  千代も八千代も永久に
 曲津の神の一指だも  触るる事なく恙なく
 常世の春のいつまでも  喜び勇みの花咲かせ
 これの聖地を元として  時雨の森に棲ひたる
 猛き獣や大蛇まで  神の恵に漏るるなく
 救はせ給へ惟神  神の御前に願ぎ奉る
 旭は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 敵の勢猛くとも  神より受けし言霊の
 吾等四人が御稜威をば  天津御空の日の如く
 照らさせ給ひて功績を  千代に八千代に永久に
 建てさせ給へよ惟神  神の御前にひれ伏して
 言霊称へ奉る』
 斯く歌ふ折しも、西南の隅に当つて、屏風山脈の最高地点、帽子ケ岳の方面より、二つの火光、サーチライトの如く輝き来り、四方を囲みし魔軍は光りに打たれて声を秘め、爪を隠し、牙を縮め、眼を塞ぎ、大地にカツパとひれ伏して、震ひ戦き居たりける。
 竜国別は立上り、火光に向つて再拝し、拍手しながら歌ふ。
『青垣山を繞らせる  これの聖地に永久に
 棲ひなれたる兎の子等が  魔神の災遁れむと
 朝な夕なに月の神  斎きまつりて誠心の
 限りを尽し仕へ居る  其誠心に同情し
 八尋の鰐は湖の辺に  集まり来りて夜昼の
 区別も知らず聖場を  守り居るこそ畏けれ
 時しもあれや三五の  道を伝ふる神司
 自転倒島を後にして  現はれ来る吾々が
 一行四人は恙なく  神の仕組の経糸に
 引かれて此処に来て見れば  兎の都は永久に
 八尋の鰐に守られて  天国浄土を目のあたり
 見るが如くに栄えけり  あゝ惟神々々
 神の恵と嬉しみて  吾等はここに大神の
 禽獣虫魚の端までも  恵み給へる御心を
 信仰ひまつりて王となり  兎や鰐の一族に
 神の恵を間配りつ  守る折しも青垣の
 山を踏み越え攻め来る  虎狼や獅子熊や
 大蛇の霊諸共に  これの霊地を蹂躙し
 兎や鰐の一族を  滅亡させむと迫り来る
 其災害を遁れむと  朝な夕なに言霊の
 稜威の祝詞を奏上し  漸く無事に来りけり
 然るに又もや四方の山  峰の尾の上に曲津神
 雲霞の如く攻め来り  此聖場を奪はむと
 息まき来る物凄さ  吾等四人は村肝の
 心の限りを尽しつつ  暗祈黙祷やや暫し
 勤むる折しも西北の  空を隔てし屏風山
 帽子ケ岳の頂上より  琉と球との霊光は
 電火の如く輝きて  魔神の咆哮一時に
 跡形もなく止みにけり  あゝ惟神々々
 如何なる神の御救ひか  如何なる人の救援か
 げに有難き今日の宵  竜国別は謹みて
 皇大神の御前に  心を清め身を浄め
 遥に感謝し奉る  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』
 斯く感謝の言霊を宣り上げ、再び月の大神の神前に向つて拍手を終り、兎の王に一先づ安堵すべき事を宣示した。兎の王は喜び勇んで此旨を部下に伝達せり。
 鰐の頭此処に現はれ来り、大に勇みて、
『斯く天祐の現はれ来る限りは、吾等は湖辺に陣を取り、虎、狼、獅子、熊、大蛇の群、仮令幾百万襲ひ来るとも、これの湖水は一歩も渡らせじ、御安心あれ兎の王よ』
と勇み立ち、帽子ケ岳より輝き来る霊光に向つて感謝し、一同は歓声を挙げて天祐を祝し、其夜は無事に明かす事とはなりぬ。
(大正一一・八・二二 旧六・三〇 松村真澄録)
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