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文献名1霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻
文献名2第1篇 奇縁万情よみ(新仮名遣い)きえんばんじょう
文献名3第1章 心転〔1409〕よみ(新仮名遣い)しんてん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ鬼春別と久米彦は、女を争って競争の真っ最中に三五教の宣伝使・治国別一行に踏み込まれ、驚いて降参し、捕えていた四人の男女を背負って玉木村のテームス館まで謝罪を兼ねて送り届けることになった。鬼春別は士官を呼んで、自分たちが前非を悔いて三五教に帰順し、普通の信者となって神のため世のために働く決意を固めたことを伝えた。この旨は軍隊全般に伝達され、兵士たちは各々本国に帰り、正道に付くよう勧告された。兵士たちはこの通達に一様に驚いたが、元より上官の言いなりの集団であり、大黒主のために三五教に対してもう一戦しようという気概のある者は一人もいなかった。治国別は数多の軍人たちが解散の命を受けて素直に帰ってゆくのを見て、三五教の大神、バラモン神、盤古神王の守護を感謝した。治国別一行は、鬼春別ら元将軍・副官四人と、囚われていたスミエル、スガール姉妹、シーナ、道晴別を加えて、玉木村への道を降って行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年02月26日(旧01月11日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月30日 愛善世界社版9頁 八幡書店版第10輯 37頁 修補版 校定版9頁 普及版3頁 初版 ページ備考
OBC rm5501
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本文の文字数3566
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本文  仰げば高し久方の  高天原に現れませる
 天地の造主とます  大国常立大御神
 瑞の御霊を分け玉ひ  霊国にては月の神
 天国にては日の神と  現はれまして天地の
 百の霊を悉く  荘厳無比の天界に
 助けむものと御心を  配らせ玉ひ三五の
 教を天地に拡充し  百の神々選り出して
 三千世界の宣伝使  代表神となし玉ふ
 百の司を統一し  黄金山や四尾山
 コーカス山やウブスナの  斎苑の館に神柱
 堅磐に常磐に立て玉ひ  世人を導き玉ひつつ
 天国浄土を地の上に  築かせ玉ふ尊さよ
 三千世界の梅の花  一度に開く常磐木の
 松の緑もスクスクと  天に向つて伸びて行く
 厳の御霊や瑞御霊  三五の月は大空に
 丸き姿を現はして  下界を覗き玉ふ夜半
 猪倉山の渓谷を  右へ飛び越え左へ渡り
 バラモン教の曲軍  三千余騎の屯せる
 岩窟さして登り行く  ああ惟神々々
 神の力を身に受けて  醜の雲霧悉く
 治国別の一行が  昼尚暗き松林
 心も清き松彦や  聖地を後に竜彦の
 司と共にスタスタと  辿りて登る夜の道
 万公司は肩肱を  張つて先頭に立ち乍ら
 尾の上を渡る風の如  谷の流れの速き如
 習ひ覚えし宣伝歌  四辺の山彦威喝して
 勢込んで登り行く  鬼春別や久米彦の
 軍の君に捉はれて  岩窟の中の陥穽
 聞くも悲惨な境遇に  おかれし四人の肉体を
 救ひ出すは此時と  岩の根木の根踏みさくみ
 漸く岩窟に辿り着き  治国別と諸共に
 神の力に守られて  軍の君を言向けつ
 四人を救ひスタスタと  猪倉山を駆け下り
 玉木の村のテームスが  館を指して帰り行く
 五十五巻の物語  天津日の神中空に
 輝き玉へど風寒き  竜宮館に横たはり
 十一日の四つ時に  四角な火鉢を横におき
 焜爐のゴトゴト沸る音  いと面白く聞き乍ら
 四角の炬燵に潜りこみ  四角な座布団積み重ね
 枕となして述べて行く  吾言霊の発射をば
 万年筆を手に握り  四角な机に寄りかかり
 只一言も洩らさじと  手具脛ひいて松村氏
 心真澄の空清く  いとスクスクと記し行く
 五六七の神の物語  いよいよ茲につけとむる
 ああ惟神々々  御霊の恩頼を賜へかし
 花咲き鳥は君ケ代の  栄えを唄ふ春過ぎて
 青葉もそよぐ初夏の風  川の流れも泡立ちて
 ライオン河に上る鮎  小鮒や鰻鯰まで
 ピンピンシヤンと溌ね乍ら  一瀉千里に遡る
 瑞の御霊の物語  今より三十五万年
 三五教の神人の  舎身苦行の有様を
 述べゆく今日こそ楽しけれ  旭は照る共曇る共
 月は盈つ共虧くる共  仮令大地は沈む共
 吾言霊の寿は  幾万年の末までも
 堅磐常磐に失せざらむ  此世を救ふ生神の
 貴の言霊滔々と  千代に八千代に流れゆく
 其水上の一滴  万年筆の切先に
 滴る露の御恵  渇き果てたる霊をば
 霑ひ活かす物語  守らせ玉へ惟神
 御稜威も高き大八洲彦  神の命の御前に
 畏み畏み願ぎまつる。
 敗軍の大将、退却の名人、色情狂に等しき鬼春別、久米彦両将軍は、今度こそは如何なる敵の襲来も恐るる事なき金城鉄壁と、心を許し、猪倉山の岩窟に、玉木の村の豪農テームスの娘、スミエル、スガールの二女を誘拐し、権威に任せ、獣欲劣情を発揮せむと軍務を打忘れ、両将軍は互に恋を争ひつつ、心を悩ませ、競争の真最中、三五教の宣伝使道晴別に踏み込まれ、周章狼狽の結果奇計を以て四人の男女を深き陥穽に投込み、又もや何れかの婦女を誘拐し、恋の欲望を達せむと、心を悩ます折もあれ、治国別一行に、夜中踏み込まれ、二度ビツクリの結果、いよいよ前非を悔い丸腰となつて、治国別に謝罪をなし、卑怯未練にも山寨を捨てて、四人の男女を負ひ、玉木村のテームスが館に、恐る恐る謝罪を兼て行く事となつた。
 治国別は鬼春別久米彦両将軍に向ひ、
治国『ゼネラルの御威勢、御芳名は予て承はつて居りましたが、親しくお目にかかるのは今日が初めてで厶います。先づ先づ御両所共、御壮健にてお目出度う厶います。斯くなる上は四海同胞、元より拙者とゼネラルとの間に於て、何の怨恨もなければ面倒なる経緯もありませぬ。同じ天地の間に生を享けたる神の御子、どうか、今後は宜しく互に御懇親を願ひたう厶います。敵なきに軍隊を動かし、或は小さき欲望の為、一人の暴虐者の為に従僕となつて、豺狼に等しき戦に従ふは、人間として之以上の悲惨事はありますまい。人生僅か三百年、此短き生命の間に、不老不死なる第二の霊界に於ける生涯の為に、遺憾なき準備をしておかねば、人間として現世に生れ来りし本分を永遠に保持する事は出来ますまい。人は遷善改過の神性を惟神的に、神より賦与されて居りますから、今此時に於て懺悔の生活に入り、神の御子たる本分を発揮されむ事を希望致します』
鬼春『ハイ有難う厶います。今日となつて吾々も始めて天地開明の気分になりました。尊き有難き神の慈光に照らされて、今迄為し来りし暴虐無道の行動が、俄に恐ろしくなり、広い天地に身の置き所なき苦みに悶えて居ります。一日も早く悔い改め、誠の道に立帰りたう厶ります。何分宜しく御指導を御願致します』
久米『治国別の神司様を始め、御一同様に謹んで、鬼春別将軍同様に、吾身を御指導下さらむ事を懇願致します。実に只今の拙者の心は闇を離れて旭に向つた様な気分になりました。そして神様の神力に打たれて、身の置き所もなき程恥しく苦しくなつてきました。何卒三五の尊き教を御指導あらむ事を、謹んでお願致します』
万公『モシ先生、眉毛に唾をつけてお聞きなさいませや、第二の高姫かも知れませぬぞや。……怖さ苦しさの改心は何にもならぬぞよ。心から発根の改心でなければ、すぐに後へ戻るから、何程うまい事を申しても、メツタに乗るではないぞよ……とお筆先に出て居りますぞや。万公が一寸御注意を致します』
竜公『コリヤ万公、お前の分る事ぢやない。黙つて控えて居なさい』
万公『ヘン、偉相に仰有いますなア。夢の内に第一天国を探険したと思うて、さう威張るものぢやありませぬぞや』
治国『ゼネラル様、然らば之より四人の男女が少し許り負傷して居りますれば、兎も角玉木村のテームス館迄送らねばなりますまい、貴方も一緒に参りませう』
鬼春『ハイ、是非お供をさして頂きませう。付いては四人を負傷さしましたのも、全く吾々で厶いますから、此山阪を背に負ひ申して送らして貰ひませう』
治国『左様な事をなさらいでも、貴方の家来も沢山あるでせう』
鬼春『イエイエ何程家来があつても、家来の知つた事ではありませぬ。又今日只今改心を致しました上は、一人の家来も持ちませぬ。何卒罪亡ぼしに、道晴別様の馬となつて背に乗せ、送り届けさして貰ひませう。之がせめてもの拙者の罪亡ぼし、枉げてお許しを願ひます』
治国『然らばお望みに任しませう』
久米『拙者はシーナさまを背に負ひ、お供を致しませう』
万公『拙者はスガールさまを背に負うてお送り致しませう』
久米『ヤ、滅相な、スガールさまはエミシに負はせませう』
鬼春『オイ、スパール、お前も責任がないとは言へぬ。何卒スミエルさまを背に負うてお送り申すやうにしてくれ』
万公『モシ先生、何程改心したと云つても、こんな半獣的豪傑に女を渡すのは剣呑です。一人は背に負ひ、一人は拙者が手を曳いて、送りますから、婦人部は此万公に御委任を願ひます。油断のならぬ男許りですからなア』
治国『アハハハ、万公なら、尚剣呑だ。兎も角鬼春別様の御意見に任す事にする』
万公『ヘーエ、さうですかなア、……コレ松彦さま、貴方何う考へますか、どうもマ一つ此万公は油断がならないやうな気がしますがなア』
松彦『さうだ、万公位油断のならぬ男はないだらう、アハハハ』
 鬼春別はシヤム、マルタのカーネルを招んで自分が愈前非を後悔し、三五教に帰順し、普通の信者となつて、神の為世の為に相当の働きをなし、世に隠るる事を告げ、軍隊一般に向つて其由を伝達せしめ、且つ何れも本国に帰つて、正道につき各其家業を励むべき事を伝達せしめた。三千の軍隊は案に相違の命令に呆れ果て、喜んで帰るものもあり、又ブツブツ小言を云つて自由自在に本国へは帰らず、思ひ思ひの事業を考へ、身の振方を定むるもあり、種々雑多の方向に向つて別れ行く事となつた。されど素より烏合の衆のみなれば残党を集めて、今一戦を起し、バラモンの教主大黒主の為に一肌脱がむとする勇者も出なかつたのは、天下の為に幸である。
 治国別は先づ第一に岩窟を出で、数多の軍人が各解散の命を受けて、一言も呟かず抵抗もせず素直に帰り行くを見て、全く大神の御神力と、大地に静座し、三五教を守り玉ふ大神を始め、バラモン神及盤古神王の厚き守護を感謝し、愈猪倉山を一行十二人降り行く。
(大正一二・二・二六 旧一・一一 於竜宮館 松村真澄録)
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