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文献名1霊界物語 第29巻 海洋万 辰の巻
文献名2第2篇 石心放告よみ(新仮名遣い)せきしんほうこく
文献名3第9章 俄狂言〔831〕よみ(新仮名遣い)にわかきょうげん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-12-26 22:27:16
あらすじ国玉依別は、高姫が人事不省に陥ったので、人を呼んで懸橋御殿に運び、玉竜姫と共に何くれと介抱をなした。高姫はようやく正気に復した。常彦と春彦は高姫に、鏡の池の神様に楯突いて人事不省になったのを、懸橋御殿の奉仕者たちが助けてくれたのだと説明し、神様に反抗しないようにと、また国玉依別と玉竜姫にお礼を言うようにと諭した。しかし高姫は自分を助けてくれた人たちの前で、理屈をこねて自分が窮地に陥ったことを否定し、いかに日の出神の生き宮が偉大であるかを吹聴した。常彦と春彦はあきれてしまい、国玉依別らに、高姫はのぼせているから気にしないようにと説明した。高姫は国玉依別に玉を渡すように居丈高に要求した。一同は呆れてしまい、ただ高姫の顔を打ち眺めている。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月12日(旧06月20日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年9月3日 愛善世界社版134頁 八幡書店版第5輯 514頁 修補版 校定版135頁 普及版62頁 初版 ページ備考
OBC rm2909
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本文  神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 唯何事も人の世は  直日に見直し聞直し
 過ちあれば宣り直す  三五教の神の道
 神の恵の大八洲  彦命の又の御名
 月照彦の神霊は  随時随所に現はれて
 三五教の神司  信徒等は云ふも更
 四方の民草悉く  恵の露にうるほひつ
 心の雲を吹き払ひ  晴れ渡りたる大空に
 天の御柱つき固め  掃き浄めたる村肝の
 心の土に惟神  国の御柱つき固め
 千代に八千代に神人の  身魂を永遠に助けむと
 現はれますぞ尊けれ。  皇大神の御恵みも
 アリナの滝の上流に  誠を映す鏡池
 堅磐常磐の岩窟に  神の御言を蒙りて
 夜なきヒルの神の国  テーナのの酋長の
 誠アールやアルナ姫  桃上彦の昔より
 三五教の御教を  今に伝へて奉じたる
 尊き血筋の酋長は  家の宝と大切に
 親の代より守り居る  黄金の玉を取出し
 鏡の池に納めむと  数多の人引率し
 遠き山坂打渉り  心も清き白旗に
 玉献上と書き記し  珍の御輿を新造し
 黄金の玉を納めつつ  縦笛横笛吹き鳴らし
 天然自然の石の鉦  磬盤法螺貝鳴らし立て
 谷を飛び越え川渡り  山鳥の尾のしだり尾の
 長々しくもヒルの国  テルの国をば跋渉し
 漸く此処に安着し  鷹依姫や竜国別の
 神の司の目の前に  恭しくも捧げつつ
 誠か嘘か知らね共  鷹依姫の神懸り
 仰せの儘を畏みて  正直一途の酋長は
 国玉依別、玉竜姫の  神の命と夫婦連
 御名を賜はり千丈の  滝の麓に御禊して
 一日一夜を明かしつつ  アリナの滝を後にして
 鏡の池に往て見れば  豈図らむや鷹依姫の
 神の命を始めとし  三人の司は雲と消え
 行方も白木の玉筥に  種々様々神の旨
 書きしるしたる嬉しさに  アール、アルナの両人は
 草の庵を永久の  住家と定め池の辺に
 朝な夕なに神言を  声高らかに宣りつつも
 四方の国より詣で来る  善男善女を三五の
 誠の道に導きつ  神の御稜威も日に月に
 輝き渡り身を容るる  所なき迄諸人の
 姿埋まる谷の底  是非なく茲に信徒は
 大峡小峡の木を伐りて  山と山とに架け渡し
 八尋の殿を築きあげ  黄金の玉を奉斎し
 国玉依別、玉竜姫の  神の司は勇み立ち
 懸橋御殿に現はれて  教を開く折柄に
 玉に心を奪られたる  三五教の高姫が
 自転倒嶋を後にして  太平洋を打渡り
 テルの湊に安着し  常彦、春彦伴ひて
 金剛不壊の如意宝珠  其他の玉の所在をば
 アリナの滝を目当とし  現はれ来り村肝の
 心の善悪映すてふ  鏡の池の前に立ち
 相も変らぬ減らず口  傍若無人に罵れば
 数千年の沈黙を  破つて鳴りだす池の面
 ブクブクブクと泡だして  ウンウンウンと唸り声
 月照彦の神霊と  名乗らせ玉ひて五十韻
 珍の言霊並べつつ  高姫一同を訓戒し
 身魂を救ひ助けむと  計り玉ひし尊さよ
 自負心強き高姫は  持つて生れた能弁に
 負ず劣らず五十韻  アオウエイよりワヲウヱヰ
 只一言も洩らさずに  一々神に口答へ
 月照彦とは詐りぞ  ドン亀、鼈、蟹神と
 頭ごなしにけなしつつ  言葉の鉾を常彦や
 春彦の上に相転じ  生宮気取りで諄々と
 脱線だらけの託宣を  まくし立つれば池中の
 声は益々高くなり  大地の震動恐ろしく
 流石頑固の高姫も  色青ざめて慴伏し
 歯をかみしめて黒血をば  吐きつつ爰に平伏し
 次第々々に息の根は  細りて遂に玉の緒の
 生命の糸も細り行く。  あゝ惟神々々
 善悪邪正を明かに  心に映す鏡池
 底ひも知れぬ神界の  深き心ぞ尊とけれ
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ。
 懸橋御殿の神前に朝な夕なに奉仕する三五教の神司、テーナのの酋長アール、アルナの夫婦は、月照彦神より、国玉依別命、玉竜姫命と名を賜ひ、朝な夕なに真心を籠めて、教を伝へつつありしが、茲に三五教の高姫が鏡の池に現はれて、堆く供へ奉れる諸々の玉を持帰らむとするを、鏡の池及び狭依彦の宮に仕へたる国と玉との神主は驚いて、懸橋御殿に急報し、教主夫婦と諸共に此場に現はれ、高姫一行に向ひ、来意を尋ぬる折しも、傲慢不遜の高姫は、鏡の池の神霊が威力に打たれて打倒れ、殆ど人事不省となりければ、国、玉、竜、別などの神司と共に、常彦、春彦を伴ひ、懸橋御殿に担ぎ入れ、水よ薬よと介抱をなし、天津祝詞を奏上し、一二三四五六七八九十の神示の反魂歌を奏上し、漸くにして高姫は正気に復り、稍安心の胸を撫で下ろしたり。

因に云ふ。アール、アルナの夫婦は其実、鷹依姫、竜国別の故意を以て、月照彦の神示と偽り、国玉依別、玉竜姫の名を与へたれ共、やはり惟神の摂理に依つて神より斯の如く行はしめられたるものにして、決して鷹依姫、竜国別の悪戯にあらず、全く神意に依りて、両人は夫婦に神命を与へた事と、神界より見れば確かになつて居るのである。

 高姫はキヨロキヨロと四辺を見まはし、木の香かをれる新しき殿内に吾身のある事を訝かり、首を切りに振り乍ら、元来の負惜み強き性質とて……ここは何処ぞ……と問ひ尋ぬる事を恥の様に思ひ、荐りに考へ込んで居る。常彦、春彦は高姫の左右に寄り添ひ、
『モシ高姫さま、お気が付きましたか。余り貴女は自我を立通しなさるものだから、とうとう池の神様に戒められ、人事不省に陥り、殆ど息の根も絶えむとする所、御親切にも、此御殿の主人、国玉依別様、玉竜姫様の御介抱と御祈念に依り、生命を助けてお貰ひなされたのですから、サア早く神様と、お二人に御礼を申しなさいませ』
高姫『妾がいつ……人事不省などと、汚らはしい、死にかけました。そんな屁泥い高姫ぢや御座いませぬぞえ。お前は神界の事が分らぬから、日の出神の生宮が、池の底の神の正体を審神する為、肉の宮を一寸立出で、幽界探険に往て居つたのですよ。それだから、心の盲と云ふのですよ。ヘン……阿呆らしい。神の生宮は万劫末代生き通し、アタ汚らはしい、人事不省に陥つたなどと、お前等と同じように人間扱ひをして貰ふと、チツと困りますぞえ。コレコレお前は国依別、玉治別、竜国別と云つたぢやないか。何時の間にやらこんな所へ魁してやつて来て、世間をごまかさうと思つて、国と玉とが一つになつて国玉依別だとか、玉竜姫だのと、そんなカラクリをしたつて駄目です。キツとそんな名前がついてる以上は、此館に国、玉、竜の宣伝使が潜んでるに違ない。又言依別も隠れて居るだらう。モウ斯うなつたら百年目だ。サア女の一心岩でも通す。金剛不壊の如意宝珠其他の神宝を撿めて、自転倒嶋の聖地へ持つて帰らねばおきませぬぞえ。コレコレ国玉依別とやら、お前は国や玉や竜の、蔭から糸を引く操り人形だらう。そんなこたア、チヤンと、此高姫の黒い眼で睨んだら一分一厘間違ひはありませぬぞや。ここに三五教の神館を、お前さま等が寄つて集つて建てたやうに思つて居るが、国治立命の御指図で、日の出神が片腕となり、竜宮さまの御手伝ひで出来上つたのですよ。日の出神の生宮だからチヤンと分つてる。ここの神司はそれが分つて居ますかな』
常彦『ナント徹底的にどしぶとい婆だなア、これ丈お世話になつておき乍らヨーモ ヨーモ、こんな憎たれ口が叩けたものだ。喃春彦、穴でもあつたらモグリ込みたいやうな気がするぢやないか』
春彦『開いた口がすぼまりませぬワイ』
と云つた限り、余りの事に呆れ果ててポカンとしてゐる。
常彦『イヤもうし、国玉依別御夫婦様、かくの通りの没分暁漢で御座いますから、自転倒嶋の聖地に於ても、皆の者が腫物にさはるやうに取扱つて居るので御座います。吾々だつてこんな腫物に従いて来たい事は御座いませぬが、気違を一人おつ放しておきますと、どんな事を致すやら分りませぬ。虎を野に放つやうな危険で御座いますから、吾々両人は世界の為に犠牲となつて、精神病者看護人の積りで、はるばるとやつて参りました。何れ癲狂院代物ですから、必ず必ず御心にさえて下さいますな。何卒神直日大直日に見直し聞直し下さいまして、高姫の無礼をお赦し下さいませ』
と気の毒さうに述べ立てる。国玉依別は、
『実にお気の毒ですなア。決して決して気にはかけて居りませぬ。あなた方こそ、本当に御苦労お察し申します』
高姫『コレ常、天教山より現れませる日の出神の生宮を、天教山代物とは何だい。余り無礼ぢやないか。宣り直しなさい』
常彦『癲狂院に現れませる、鼻高姫命か、天教山に現はれませる木の花姫神のお使、日の出神の生宮様か、但は二世か三代か、男か女か、凡夫の吾々にはテンと判断が付きませぬワイ。アハヽヽヽ』
高姫『アヽさうだらうさうだらう。テンと判断がつかぬと云ふのは道理ぢや。偽らざるお前の告白だ。此日の出神の正体が、お前達に分るやうな事なら、此高姫も万の波を越えて、こんな所迄来は致しませぬわいな。お前のやうな没分暁漢が世界にウヨウヨして居るから、実地の行ひを見せて改心させる為に神の御用で来て居るのだぞえ。サアこれから肝腎要の言依別の盗み出した宝玉を受取つて帰りませう。お前もここ迄従いて来たのだから、玉のお供位はさしてあげるぞえ。有難く思ひなさい。……コレコレ茲の宮番夫婦、早く玉を渡す手続を一刻も早くしなされや。グヅグヅしてゐなさると、神界の規則に照し、根の国底の国の制敗に会はさねばなりませぬぞえ』
 国玉依別は藪から棒の高姫の言葉に何が何やら合点行かず、
『ヘー』
と云つたきり、穴のあく程、高姫の顔を打守つて居る。国、玉、竜、別、依の幹部を始め、常彦、春彦迄が高姫の顔をジツと打眺め舌を巻き居たりける。
(大正一一・八・一二 旧六・二〇 松村真澄録)
(昭和一〇・六・八 王仁校正)
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