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文献名1霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
文献名2第7篇 黄金の玉よみ(新仮名遣い)おうごんのたま
文献名3第40章 琴平橋〔290〕よみ(新仮名遣い)ことひらばし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-04-02 03:12:31
あらすじ人馬の音騒がしく、ついにウラル彦が青雲山に現れた。そして四恩郷に入ると、酋長を呼びつけた。ウラル彦の部下・猛将の鬼掴は居丈高となり、期日になっても四恩河に橋が架けられていないことを酋長に詰問した。酋長は畏れにぶるぶると震えていたが、そこへどこからともなく人夫の戊が現れて、滑稽な歌を歌うと、鬼掴をはじめウラル軍は笑い出し、一緒に踊り出した。戊が一同を案内すると、不思議にも四恩河には立派な広い橋がちゃんと架けられていた。ウラル彦は機嫌を直して橋を渡り始めたが、一隊が全部橋の上に乗ったと見ると、突然橋は音を立てて崩れ落ち、皆河の中に落ちて流されてしまった。不思議にも、ウラル彦一隊が流されてしまうと、また元の立派な橋が河に架かった。青雲山からは、黄金の玉を黄金山に遷座するために、吾妻彦らの一隊が下ってきて、この橋を無事に渡った。ふと後を振り返ると、橋は跡形もなく、巨大な亀が幾百となく甲を並べて浮かんでいた。これはまさしく琴平別神の化身であり、黄金の玉を守護する活動であったのである。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月23日(旧12月26日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月10日 愛善世界社版243頁 八幡書店版第1輯 713頁 修補版 校定版243頁 普及版102頁 初版 ページ備考
OBC rm0640
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本文  人馬の物音騒がしく、旗指物を押立てて、馬にまたがり数多の戦士引率れ乍ら、四恩河の袂に押し寄せきたる者あり。是は外でも無くアーメニヤの神都に勢望高きウラル彦を初め、鬼掴その他の猛将勇卒なりける。
 たちまち橋梁の無きに驚き、大音声に架橋に従事する人夫に向つて、
『酋長を呼べ』
と厳命したるに、一同は驚き平伏したりしが、その中の一人は立上り、
『ハイハイ、只今酋長を呼ンで参ります』
と言つて、小走りに森林の中に姿を隠しける。
 ウラル彦の一行は、ここに武装を解き、携へ来れる酒や兵糧を出して呑み喰ひ、つひには、
『呑めよ騒げよ一寸先は暗よ』
と唄ひ始めたるが、そこへ酋長の寅若が二三の部下を伴れ、揉手し乍ら出で来たり、ウラル彦の前に恐るおそる現はれ、
『何御用でございますか』
と跪いて、叮嚀に尋ぬる。
 この時鬼掴は、居丈高になり酔の廻つた銅羅声を上げながら、
『勿体なくもアーメニヤの神都に、御威勢は日月のごとく輝き渡り、名声は雷のごとく轟き給ふウラル彦様の御通過あるは、前以て知らせ置いた筈である。然るに其方どもは、何を愚図々々いたして居るか。このざまは何だ。今日中にこの橋を架け渡さばよし、渡さぬにおいては、汝を初め四恩郷の奴らは、残らず八裂に裂き千切つて、この河に流してやるぞ。返答はどうだ』
と眼を怒らして怒鳴りつける。
 酋長寅若は、猫の前の鼠のやうに縮み上りブルブルと慄うて一言も発し得ず、顔を蒼白にして俯向きゐる。
 この時戊は、忽然として現はれ、
『オツと待つた。怒るな、焦るな、目を剥くな鬼掴。細工は流々仕上げを見てから小言を云うたり云うたり。夫れより美味い酒を呑んで踊れよ踊れ、踊らな損ぢや。
 とかく浮世は色と酒  酒はこの世の生命ぢやぞ
 酒なくて何の己が桜かなだ  ウラルの彦の司とやら
 苦い顔して怒るよな  そんな酒なら止すがよい
 呑んで列べた瓢箪の  蒼い顔して沈むより
 四恩の河の水呑んで  沈んだ方が面白い
 浮けよ浮け浮け酒呑んで  四恩の河へ落されて
 浮けよ浮け浮けしまひにや沈め  沈んで死んだら土左衛門
 どんなお亀もひよつとこも  女が死んだら皆美人
 貴様が死んだら土左衛門  どつこいしよのどつこいしよ
 どつこい滑つて河底へ  ぶくぶく流れて青雲山の
 黄金の宮をば眺めて泣いて  玉は欲しいが生命も惜しい
 生命知らずのアーメニヤ  ウラルの神の浅猿しさ
 浅い知慧をば絞り出し  深い仕組を四恩の河の
 蒼い淵へと身を投げに  うかうか渡るな四恩橋
 どつこいしよの、どつこいしよ』
と唄ひ、かつ踊り狂ふ。
 鬼掴は初の間は、顔色烈火のごとく憤懣の色を表はし、鼻息荒く今にも掴み掛つて取り挫がむず勢であつたが、何うしたものか、俄に菎蒻か蛸のやうに軟らかくなつてしまひ、大口を開けて、
鬼掴『アハハハハハハ』
と笑ひ出し、へべれけに酔ひ潰れた数多の戦士は、参謀長の鬼掴の笑ふのを見て、何れも一斉にどつと声を上げて笑ひ狂ひ、前後も知らずに踊り出したり。
 不思議や、何時の間にか四恩の河には、立派な広き新しき長き橋が架つてゐたれば、一同はいよいよ茲に戎衣を着し、青雲山に向つて前進する事となりける。
 ウラル彦はたちまち機嫌を直し、酋長に向ひいろいろの褒美を与へ、隊伍を整へ堂々と橋を渡りはじめたり。先鋒隊が橋の先端に着いた頃は、その一隊は全部橋の上に乗りけるが、この時めきめきと怪しい音するよと見る間に、橋は落ち濁流漲る河中へ甲冑のまま、人馬共に一人も残らず落ちこんでしまひ、ウラル彦を初め一同は浮きつ沈みつ押し流されて行く。間もなく、又もや立派な橋が架けられたり。
 前方よりは高彦天使を先頭に、吾妻彦、玉守彦、雲別は、数多の戦士を随がへ黄金の御輿を守り、黄金の玉を納めて之を担がせながら、悠々として進みきたり難なくこの橋を渡り了へ、後振り返り見れば、今渡りし橋は跡形も無く、巨大なる亀幾百ともなく、甲を列べて浮びゐたりける。
 頓てその亀も水中に姿を隠しけるが、これぞ正しく琴平別神の化身にして、黄金の玉を守護するための活動なりしなり。
(大正一一・一・二三 旧大正一〇・一二・二六 外山豊二録)
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