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文献名1霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
文献名2第8篇 五伴緒神よみ(新仮名遣い)いつとものおのかみ
文献名3第47章 二王と観音〔297〕よみ(新仮名遣い)におうとかんのん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例章題は、御校正本・普及版・愛善世界社版では「二王と観音」と表記されているが、校定版・八幡書店版では「仁王と観音」と表記されている。霊界物語ネットでは2020/5/1より「二王と観音」に変更。 データ最終更新日2020-05-01 17:59:18
あらすじ広道別天使は、虎公に岩彦という名を与えて、宣伝歌を歌いながらローマの都の中心に進んでいった。今日はローマを治める元照別天使の誕生日祭で、家々に紅、白、青の旗を掲げて祝意を表していた。群集は祭の出で立ちで、ワッショワッショと鐘やブリキ缶のようなものをたたきながら、練り歩く。そうして、ウラル教の宣伝歌を歌っている。広道別は三五教の宣伝歌を歌いながら進んでいる。すると、群衆の中の祭頭らしき男が、広道別に拳固を固めて殴りかかった。岩彦はこの様子に地団駄を踏みつつ、三五教の教えを守り、歯を食いしばって仁王立ちになって我慢している。祭の群集は、岩彦の仁王立ちに行く手をふさがれて、遅れだした。広道別は、殴られながら小声に宣伝歌、天津祝詞を奏上する。すると殴りかかった男はたちまち、拳を振り上げたまま全身強直してしまった。ローマの十字街頭には、岩彦とこの殴りかかった男と、二人が仁王のように立ちふさがってしまった。そこへ美しい女宣伝使が宣伝歌を歌いながらやってきた。群衆はこの様に野次馬のように集まってきた。中には罵詈雑言を浴びせる群集もいたが、女宣伝使が手を左右左に振ると、そうした群集はたちまち強直してしまった。(霊縛をかけられた)そこへ、ローマの主・元照別の行列がやってきた。誕生祭にあわせて、地中海の一つ島へ参拝に出かけるのである。しかし二人の仁王が十字街頭をふさいで立っており、行列の先触れの男たちは恐々と立ち止まってしまった。行列の後ろからは、進め進め、と声がする。と、岩彦の仁王は、『通ること罷りならぬ』と怒鳴りつけた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月24日(旧12月27日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月10日 愛善世界社版283頁 八幡書店版第1輯 727頁 修補版 校定版284頁 普及版118頁 初版 ページ備考
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本文  広道別天使は、この大男に岩彦といふ名を与へ、例の宣伝歌を謡ひながら、ローマの都の中心に進んで行つた。今日は元照別天使の誕生祭とかで、家々に紅や、白や、青の旗を掲げ、祝意を表しゐたりける。
 而て数千の群集は、白捩鉢巻に紫の襷を十文字に綾取り、石や茶碗や、鉦や錻力鑵のやうなものを叩いて、ワツシヨワツシヨと列を作つて走つてくる。さうして一同はウラル彦の宣伝歌を謡ひながら、勢凄じく海嘯のやうに此方を目がけて突進しきたる。広道別天使は、
『神が表に現はれて 善と悪とを立別ける』
と謡ひながら進まむとするを、群集の中の頭らしき男は、この歌を謡つてゐる宣伝使の横面めがけて拳骨を固め、首も飛べよと言はぬばかりに擲りつけた。宣伝使は素知らぬ顔して、又もや歌を謡ひはじめたり。
男『こいつしぶとい奴。未だほざくか』
と蠑螺のやうな拳骨を固めて、処かまはず打ち伏せた。岩彦は仁王のやうな体躯を控へ、握り拳を固めて歯を食ひしばり、地団太を踏んだ。されど宣伝歌の「直日に見直せ、詔り直せ」といふ神言を思ひ出し、かつ宣伝使の命令が無いので大道に仁王立ちとなりしまま、歯を食ひしばるのみなりき。
 群集はこの男の姿を見て驚きしか、途中に立ち止りて一歩も進まず居る。後列の弥次馬は、
『ヤーヤイ。どうしてるのだ。進まぬか進まぬか』
と呶鳴りゐる。宣伝使は打ち据ゑられ叩かれながら、悠々として宣伝歌を小声で謡ひ、かつ天津祝詞を奏上した。たちまち大の男は拳を握り頭上に振り上げた刹那、全身強直して銅像のやうになつてしまひ、目ばかりギヨロギヨロと廻転させるのみであつた。こちらは岩彦の大男が、眼を怒らし、面をふくらし、口をへの字に結んで握り拳を固めて振り上げたまま、直立不動の態である。一方は拳骨を固め振り上げたまま、口を開けたまま強直して、たちまちローマの十字街頭には、阿吽の仁王様が現はれたる如くなりき。群集の中からは、
『仁王さまぢや仁王さまぢや』
と叫ぶものあり、それに続いて群集は又もや口を揃へて、
『仁王ぢや仁王ぢや、ようマア似合うた仁王さまぢや』
と無駄口を叩きはじめたり。
 このとき横合より美しい女の宣伝使が、又もや、
『この世を造りし神直日 御霊も広き大直日
 ただ何事も人の世は 直日に見直せ聞直せ』
と謡ひながら、この場に現はれたり。
 群集は口々に、
『オーイ、見よ見よ、立派な仁王さまができたと思ふたら、今度は三十三相揃うた大慈大悲の観世音菩薩だ。拝め拝め』
と異口同音に叫び出だしたり。
『ヨーヨー』
と数千の群集は、前後左右を取り巻き、さしもに広き都大路の十字街頭も、すし詰となつて、風の通る隙間も無いやうになつて来た。女宣伝使は、宣伝歌を謡ひ出したるに、群集の中には罵詈雑言を逞しうする弥次馬さえ、沢山現はれ来たりぬ。
 女宣伝使は、細き、白き手を上げて、左右左に振つた。悪口雑言をほざいた群集は、口を開いたなり、閉ぢることもできず強直して、アーアと言ひながら涎を垂らすもの、彼方此方に現はれたり。
 このとき前方より、行列厳めしく立派な乗物に乗り来るものあり。乗物の前後には、沢山の伴人が警護して人払ひしながら、おひおひと十字街頭に向つて進み来るあり。これはローマの城主元照別天使が、誕生の祝ひを兼ね、地中海の一つ島に参拝する途中の行列なりける。
 群集は四方八方に散つて了つた。仁王さまは、依然として十字街頭に二柱相並んで、阿吽の息を凝らして佇立してゐる。先払ひは仁王にむかひ、
『右へ右へ』
と声をかけた。仁王はウンとも、スンとも言はず、十字街頭に鯱虎張つてゐる。広道別天使は路傍の或家の軒先に立つて、この光景を眺めゐたり。
先払『この無礼者。右へと言つたら、なぜ右へ行かぬか。何と心得ゐるか。勿体なくもローマの城主元照別天使の御通行だ。速かに右へ寄れ』
といひつつ、あまり巨大なる男の握り拳を固めて立つて居るに、やや驚きしと見え慄ひ声で呶鳴りをる。
 輿は段々と進んでくる。仁王はどうしても微躯ともせぬ。先払ひの甲乙丙は、恐々前に寄つてこの大男を仰ぎ視た。見れば動いてゐるものは目ばかりなり。
甲『ハヽーこいつは造り物だな。ローマの人民は今日は御城主の御通りだと思つて、アーチの代りにこんな所に、仁王立ちを拵へて立てときよつたらしい。しかしもつと距離を開けとかぬと、これでは通れはせぬワイ。気の利かぬ奴だな』
乙『イヤ、此奴は人間だぞ。それ見い、目を剥いてらア。ど偉い目玉を剥きよつて俺等を嚇かさうといふ駄洒落だな。ヤイ、退かぬか。どかぬと目を突いてやるぞ』
丙『無茶するない、もし神さまが化けとるのぢやつたら、如何する、罰が当るぞ』
甲『神さまなら、一つ頼んで見ようかい。モシモシ渋紙さま』
乙『渋紙さまてあるものかい』
甲『それでも渋紙見たやうな色してるぢやないかい』
乙『渋紙さまなら貴様の事だい。食ひものに渋い、仕事に鈍い、そこで死に損なひの合せて六分を除つて、後の残りの渋紙の貧乏神つたら、貴様のことだ。この間も貴様のとこの嬶に貧乏神と、ぼやかられよつて、猿が渋柿喰つたやうな顔をさらして、渋々出て行きよつたぢやないか』
甲『しぶとい奴ぢや。こんな大道の真中で、他人の所の内の棚卸しまで止めて貰はふかい。そんなこと吐かすと仁王さまに取掴まるぞ。それそれあのお顔を見い、御機嫌斜なりだ。あの振り上げた鉄拳が、今貴様の頭上にくるぞ』
乙『馬鹿言へ、造り物だ、造り物だ』
 後の方よりは、
『進め、進め』
と号令がかかる。このとき一方の仁王は大手を拡げて、
『通ること罷りならぬ』
と怒鳴りゐる。
丙『オー化物が物を言うた。ヤイ貴様は昼の白昼に、こンな所へ出て化けたつてあかぬぞー。仁王の幽霊奴が』
 又もや後の方より、
『進め、進め』
の声が頻りに聞えきたる。
(大正一一・一・二四 旧大正一〇・一二・二七 外山豊二録)
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