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文献名1霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
文献名2第4篇 巴留の国よみ(新仮名遣い)はるのくに
文献名324章 盲目審神〔374〕よみ(新仮名遣い)めくらさにわ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-06-08 16:55:12
あらすじ一行は夕食を振舞われた後、祝詞を奏上した。闇山津見は改めて宣伝使一向に向かい、黄泉国に行かれたはずの伊弉冊命が、ロッキー山に現れたということを巴留の国の棟梁・鷹取別(大自在天の部下)から聞いて、その真偽を確かめたいのだ、と切り出した。淤縢山津見は竜宮から日の出神とともに伊弉冊命のお供をしてきた際、確かにロッキー山に行くということを聞いた、と話した。すると蚊々虎の身体はにわかに振動し始め、口を切り出した。神懸りした蚊々虎は淤縢山津見の報告を否定し、ロッキー山に現れたのは大自在天・常世神王の妻、大国姫が化けたものだ、と託宣した。淤縢山津見は審神にかかり、蚊々虎に懸った神を霊縛しようとしたが、一向に効果がない。淤縢山津見はこれは邪神であるして伊弉冊命はロッキー山にいらっしゃると請合うが、蚊々虎に憑いた神は言霊を使って淤縢山津見をしかりつけた。淤縢山津見はたまらず神に許しを請うが、どうしても伊弉冊命がロッキー山にいることは確かであると主張した。蚊々虎に懸った神は呆れて立ち去った。淤縢山津見は自身が見聞きしたこととして、伊弉冊命がロッキー山に鎮まりいますことを闇山津見に請合った。その世は一同は三五教の教えの話に世を明かした。伊弉冊命は火の神を生みました後、黄泉国にお出でになられたのは、黄泉国から荒び来る曲津神を封じるご神策であった。そのため黄泉国の曲津神たちは海底の竜宮に居所を変えて、再び葦原の瑞穂の国を狙っていた。そこで伊弉冊命は今度は竜宮にお出でになって曲津神たちを封じていた。乙米姫を身代わりとして曲津神たちを封じた伊弉冊命は、日の出神に迎えられてロッキー山に立て籠もると言い置き、その実は天教山にお帰りになって、伊弉諾大神と合流していたのである。この間のご経綸を知らない世の神人たちは、伊弉冊命がロッキー山に現れたと思っていたが、その実これは常世神王の妻・大国姫に悪霊が憑依して、伊弉冊命の名を騙っていたのであった。常世神王は自ら日の出神を偽称して、種々の作戦を立てていた。これが後に、黄泉比良坂の戦いにつながるのである。ゆえに、黄泉比良坂の故事に伊弉冊命とあるは、真の伊弉冊命ではなく、大国姫の化身なのである。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月08日(旧01月12日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年6月15日 愛善世界社版160頁 八幡書店版第2輯 208頁 修補版 校定版162頁 普及版71頁 初版 ページ備考
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本文  闇山津見の奥殿の広き一間は、夕食の用意調へられ、一応主客の慇懃なる挨拶も終りて各自晩餐の席に着きぬ。
 夕食も茲に相済み、淤縢山津見は二人と共に神床に向つて天津祝詞を奏上する。
 闇山津見は一行に向ひ慇懃にその労を謝し、且つ、
『折り入つて宣伝使にお訊ね申し度き事があります。何卒御教示を願ひます』
と云ふ。
『何事か知りませぬが、神様に伺つて見ませう』
『宇宙万有一切の事を説き明す宣伝使、大は宇宙より小は虱の腹の中まで』
『コラコラ蚊々虎、お黙りなさい』
『私は高天原に坐ましたる伊弉冊命が、黄泉の国へお出ましになつたと云ふ事を承はつて居ました。然るに此ごろ常世のロッキー山に伊弉冊命が現はれ給うたと云ふ事を巴留国の棟梁鷹取別より承はりました。二人の伊弉冊命がおありなさるとすれば、どちらが真実で御座いませうか。吾々はその去就に迷ひ、どうとかしてその真偽を究め度きたものと、日夜祈願をして居りました。然るに昨夜の夢に「明日は三五教の宣伝使がこの国へ来るから、五月姫を迎ひに遣はせ」とのお告げでありました。それ故今日は吾娘を町端れの国魂の森に群衆に紛れて入り込ませ、宣伝使のお出を待たせて居りましたところ、夢のお告げの通り、三五教の宣伝使に、お目に懸つたのも、全く御神示の動かぬところと深く信じます。この事について何卒御教示を願ひます』
『サア確かに吾々は竜宮城より伊弉冊命様のお供を致して参りましたが、途中で別れました。伊弉冊命様には日の出神と云ふ立派な生神と、面那芸司がお伴致して居る筈であります。ロッキー山に、これから行くと仰せになりましたから、それが真実の伊弉冊命様でありませう』
 蚊々虎の身体は俄に振動を始め、遂には口を切り、
『オヽヽ淤縢山津見、汝の申す事は違ふぞ違ふぞ。伊弉冊命様は、テヽヽ矢張り云はれぬ、云はれぬ。ロッキー山に現はれたのは、常世神王の妻大国姫の化け神だぞよ』
『汝は何れの曲津神ぞ、現に吾々は伊弉冊大神のお伴をして海上に別れたのだ。その時のお言葉に、これよりロッキー山に立籠ると仰せになつた。其方は吾を偽る邪神であらう』
 蚊々虎は手を振り揚げながら首を左右に振り、
『違ふ違ふ、サツパリ違ふ。ロッキー山の伊弉冊命は、大国姫だ。もつと確かり審神を致せ。此方を何れの神と思うて居るか。盲人の審神者、モーちつと霊眼を開いて、我が正体を見届けよ』
『如何に巧に述べ立つるとも、この審神者の眼を暗ます事は出来まい。外の事ならいざ知らず、伊弉冊大神の御事に就いては此方確に見届けてある。偽りを云ふな、退れ退れ』
『断じて退らぬ。汝の霊眼の開くるまで』
 淤縢山津見は一生懸命に両手を組み、霊縛を加へむとす。蚊々虎は大口開けて、
『ウワハヽヽー小癪な、やり居るワイ。ウワハヽヽー余り可笑うて腹の皮が捻れるワイ。ウワハヽヽー』
『闇山津見様、この神懸りは当にはなりませぬ。大変な大曲津が憑ついて居ます。あの通り笑ひ転けて、吾々を嘲弄いたす強太い悪神。コンナ奴の云ふ事は信じなくても宜しい。吾々は生た証拠人、伊弉冊大神は、この常世の国のロッキー山に確に居られます』
 蚊々虎は又もや大口開けて、
『アハヽヽ、あかぬ、あかぬ、淤縢山津見の盲の審神者イヽヽ如何に霊縛を加へても、ウヽヽ動かぬ動かぬ。煩いか倦厭したか。エエヽ偉さうに審神者面を提げて何の態、俺の正体が分らぬか。可笑しいぞ可笑しいぞ、ウワハヽヽ。カヽヽ可哀さうなものだ。キヽヽ気張つて気張つて汗泥になつて、両手を組んで、ウンウンと霊縛は何の態だ。クヽヽ苦労が足らぬぞ。コンナ審神者が苦しいやうな事で、どうして宣伝使がつとまるか。ケヽヽ怪しからぬ奴だ、見当は取れまい、権幕ばかりが強うても神には叶ふまいがな。コヽヽこれでもまだ我を張るか、困りはせぬか。サヽヽ審神者のなんのと、好くもほざいたものだ、サツパリ霊眼の利かぬ探り審神者だ、シヽヽ知らぬ事は知らぬと云へ、強太い奴だ。神の申す事を敵対うて、この神は邪神だの、当にならぬのとは、それや何の囈言だ。スヽヽ隅から隅まで気のつく審神者でないと、霊界の事は澄み切るやうには分らぬぞ。セヽヽ宣伝使面を提げて、盲審神者が俺を審神するなぞとは片腹痛い。ソヽヽそんな事で世界の人間が導かれるか』
『タヽヽ頼みます、もう分りました。怺へて下さい、併し貴神はお考へ違ひではありませぬか。現に私は伊弉冊大神様のお伴して御口づからロッキー山に行くと云ふ事を承はつたものですから、この事計りはどうしても真実に出来ませぬ』
『何ほど云うても訳の分らぬ宣伝使、神はこれからタヽヽ立ち去るぞよ』
 言葉終ると共に蚊々虎の肉体は、座敷に仰向様に打倒れたり。淤縢山津見は再び鎮魂を施し、神言を奏上し、而して淤縢山津見は、ロッキー山に伊弉冊神の隠れ居ます事を確に信じ闇山津見に固く、相違ない事を告げけり。闇山津見は厚く感謝してその夜は三五教の話に夜を明したり。
   附言
伊弉冊命の火の神を生みまして、黄泉国に至りましたるその御神慮は、黄泉国より葦原の瑞穂の国に向つて、荒び疎び来る曲津神達を黄泉国に封じて、地上に現はれ来らざるやう牽制的の御神策に出でさせられたるなり。それより黄泉神は海の竜宮に居所を変じ、再び葦原の瑞穂の国を攪乱せむとする形勢見えしより、又もや海の竜宮に伊弉冊大神は到らせたまひ、茲に牽制的経綸を行はせ給ひつつありける。乙米姫命を身代りとなして黄泉神を竜宮に封じ置き、自らは日の出神に迎へられて、ロッキー山に立籠るべく言挙げしたまひ、窃に日の出神、面那芸司とともに伊弉諾の大神の在ます天教山に帰りたまひぬ。されど世の神々も人々も、この水も漏らさぬ御経綸を夢にも知るものは無かりける。ロッキー山に現はれたる伊弉冊命はその実常世神王の妻大国姫に金狐の悪霊憑依して、神名を騙り、常世神王大国彦には八岐の大蛇の悪霊憑依し、表面は、日の出神と偽称しつつ、種々の作戦計画を進め、遂に黄泉比良坂の戦ひを起したるなり。故に黄泉比良坂に於て伊弉冊命の向ひ立たして事戸を渡したまうたる故事は、真の月界の守り神なる伊弉冊大神にあらず大国姫の化身なりしなり。
(大正一一・二・八 旧一・一二 加藤明子録)
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