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文献名1霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
文献名22篇 一陽来復よみ(新仮名遣い)いちようらいふく
文献名3第9章 鴛鴦の衾〔402よみ(新仮名遣い)おしのふすま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-06-23 22:01:08
あらすじ正鹿山津見(桃上彦)は五月姫との婚礼の式を終えた。そこへ、故郷に残してきた三人の娘が訪ねて来たとの報せが届いた。正鹿山津見と三人の娘は再会を果たし、親子はうれし涙に咽んでいた。珍山彦は慶事重なるめでたい日を祝して、皆で歌を披露しあおう、と提案した。そして、美しい声で先を切って祝歌を歌い始めた。続いて淤縢山津見司が歌った。珍山彦は続いて、五月姫に歌を促した。
主な人物 舞台ウヅの館 口述日1922(大正11)年02月13日(旧01月17日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月5日 愛善世界社版67頁 八幡書店版第2輯 299頁 修補版 校定版71頁 普及版28頁 初版 ページ備考
OBC rm0909
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本文  久方の天津御空も地土も  左右りと廻る世に
 邂逅うたる親と子の  心の空の五月暗
 晴れて嬉しき夏の日の  緑滴る黒髪を
 撫でさすりつつ入り来る  父の便りを松代姫
 心の竹のふしぶしに  積る思ひをいたいけの
 花の蕾の唇を  開く梅ケ香姫の御子
 三月三日にヱルサレム  館を抜けて三人連れ
 月雪花の照彦は  主従都を竜世姫
 いよいよ此処に月照彦の  神の御魂の鎮まれる
 珍の都の主宰神  桃上彦の掌る
 珍の館に着きにけり  五月の空の木下闇
 五日は晴れむ常磐木の  五月五日の今日の宵
 父子夫婦の廻り会ひ  くるくる廻る盃の
 つきの顔五月姫  松竹梅の千代八千代
 栄の基となり響く  宴会の声は此処彼処
 珍の都も国原も  揺ぐばかりの賑はしさ。
 正鹿山津見神は五月姫との結婚の式ををはり、淤縢山津見、駒山彦、珍山彦三柱とともに、宴会の最中、朝な夕なに心を痛めし故郷の、松、竹、梅の最愛の娘子の訪ね来りし事を聞き、歓喜の涙に咽ぶ折しも、国彦の案内につれて一行は此場に現はれぬ。三人の娘は嬉しさに胸逼り、父の顔を見るより早く三人一度に首を垂れ、傍に人なくば飛びつき抱きつき互ひに泣かむものと、思ひは同じ親心、桃上彦も暫し喜びの涙に咽びて、唯一言の言葉さへも出し得ず今まで賑はひし宴会の席も、何となく五月の雨の湿り気味とはなりぬ。珍山彦は、
『ヤア、これはこれは、目出度い事が重なれば重なるものだ。今日は五月五日、菖蒲の節句だ。黒白も分かぬ暗の世を、あかして通る宣伝使の、天女にも擬ふ五月姫、三月三日の桃の花にも比ぶべき桃上彦の命と、偕老同穴の契を結びし矢先、瑞霊の三人連、松のミロクの代を祝ふ御娘子の松代姫様、直な心の竹野姫様、三五教の教も六合一度に開く梅の花、綻びかけし梅ケ香姫様の親子の対面、何と目出度い事であらうか。それにまだまだ目出度きは月照彦の神の名を負ふ照彦さまの御供とは、何とした不思議な配合だらう。あゝこれで鶯宿梅の梅の喜び、桃林の花曇り、五月の暗もさつぱり晴れて、月日は御空に照り渡るミロクの神代が近づくであらう。三五の月の輝いたその夜に初めて会うた五月姫、父の名は闇山津見でも、もうかうなつた以上は照山津見だ。皆さま、今日の此の御慶事を祝ふために、親子夫婦の睦びあうた目出度さを歌ひませうか』
淤縢山津見は、
『それは実に結構で御座います。どうか発起人の貴方から歌つて下さいませ』
と願ふにぞ、珍山彦は、
『然らば私より露払ひを致しませうか』
と、今までの怪しき疳声に似ず、余韻嫋々たる麗しき声音を張り上げて歌ひ始めたり。
『朝日は照る照る月は盈つ  天地の神は勇み立つ
 誠の神が現はれて  三月三日の桃の花
 花は紅葉は緑  緑滴る松山の
 青葉に来啼く時鳥  八千八声の叫び声
 晴れて嬉しき五月空  喜び胸に三千年の
 花咲く春に桃上彦の  神の命の妹と背の
 千代の喜び垂乳根の  親子五人の廻り会ひ
 五月五日の今日の宵  遠き神代の昔より
 夕暮れ悪しと忌みし世も  かはりて今は夕暮れの
 天地に満つる喜びは  またとありなの滝の上
 鏡の池の限りなく  清水湧き出る如くなり
 神代を祝ぐ松代姫  一度に開く梅ケ香姫の
 貴の命のすくすくと  生ひ立ち早き竹野姫
 貴の都を後にして  珍の都に月照の
 空高砂の珍の国  珍山彦の木の花は
 弥高々と高照姫の  神の命に通ふなり
 大蛇の船に乗せられて  ここに四人の神人は
 主従親子の顔合せ  心合せて何時までも
 厳霊を経となし  瑞霊を緯となし
 三五の月の御教を  天地四方に輝かせ
 天地四方に輝かせ』
と歌ひ終れば、淤縢山津見神は、またもや口を開いて祝歌を歌ふ。
『三月三日の桃の花  三千年の昔より
 培ひ育てし園の桃  君に捧ぐる桃実の
 心も春のこの宴会  五月五日の花菖蒲
 香り床しき五月姫  御空も晴れて高砂の
 尾の上の松の下蔭に  尉と姥との末長く
 清く此世を渡りませ  頭は深雪の友白髪
 松、竹、梅の愛娘  世は烏羽玉の暗くとも
 月日は空に照彦の  光眩ゆき佳人と佳人
 鶴は千歳と舞ひ納め  亀は万代舞ひ歌ふ
 秋津島根の珍の国  五男三女と五月姫
 千代に治まる国彦の  栄をまつぞ目出度けれ
 栄をまつぞ目出度けれ』
 珍山彦は、
『ヤア目出度い目出度い、コレコレ五月姫さま、貴女は此家のこれからは立派な奥様、今三人の御娘子は貴女の真の御子ぢや、腹も痛めずに、こんな立派な月とも雪とも花とも知れぬ天女神を子に持つて、さぞ嬉しからう。縁と云ふものは不思議なもので、佳人が醜夫に娶られたり、愚人が美女と結婚するのは世の中の配合だ。然るに貴女は正鹿山津見神様のやうな智仁勇兼備、何一つ穴のない、あななひ教の宣伝使を夫に持ち、佳人と美女の鴛鴦の契の夢暖かく、夫婦親子が花の如く月の如く雪の如く、清き生活を送らるると云ふ事は、またと世界にこれに越した幸福はあるまい。恋には正邪美醜賢愚の隔てがないと云ふ事だが、貴女の恋は完全ですよ。桃と菖蒲の花も実もある千代の喜び、幾千代までもと契る言葉も口籠る。鴛鴦の衾の新枕、実に目出度い、お目出度い』
 五月姫は、
『有難う御座います』
と唯一言、顔赭らめて稍俯いて居る。珍山彦は、
『もしもし五月姫さま、貴女は今晩の花だ。一つ華やかに歌つて貰ひませうか』
 五月姫は耻かしげに立ち上り、長袖淑やかに歌ひ舞ひ始めたり。
(大正一一・二・一三 旧一・一七 加藤明子録)
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