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文献名1霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
文献名2第4篇 千山万水よみ(新仮名遣い)せんざんばんすい
文献名321章 志芸山祇〔414〕よみ(新仮名遣い)しぎやまづみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-06-23 22:49:51
あらすじ港についたアタル丸の船客たちに、虎公は自分の悪事を懺悔し、亀に救われたことを話した。また、亀の背で熊公に懸った神様から、志芸山津見命という名を賜り、カルの国で宣伝使となるように、と告げられたことを語った。船客たちは虎公の話を聞いて、おのおの神徳話にふけっている。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月15日(旧01月19日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月5日 愛善世界社版167頁 八幡書店版第2輯 334頁 修補版 校定版173頁 普及版69頁 初版 ページ備考
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本文  七日七夜の月日を浴びて、折からの南風は真帆にアタルの港に着き見れば、正に月照十三夜、海中に身を投げたる熊公、虎公の二人は埠頭に立ち、松代姫の一行を嬉しげに迎へて居る。船客は二人の顔を見て、
『ヤアヤア、ヨウヨウ』
と驚きの声を放つにぞ、虎公は船客一同に向ひ、
『皆さま、私は罪の深い、この高砂島に鬼の虎公と綽名を取つた悪人でございます。天網恢々疎にして漏らさず、三笠丸の船中において今此処にまします三人の娘の下人を佯り沢山の金を騙り取つて逃げ去りました。この広い高砂の島は人も多く、再びこの方に会はうとは思ひませぬでしたのに、怖ろしや誑した人と同じアタル丸に乗り合せ、暗夜とて些しも心づかず、吾顔の見えぬを幸ひ、酒の微酔機嫌で知らず知らずに毒を吐かされました。時しも、麗しき松代姫様の御声として誡めの宣伝歌を聞かされた時は、穴にでも這入りたいやうな心地が致しました。十三夜のお月様は、雲間を分けて私の顔をお照し遊ばしたその時の怖ろしさ。忽ちわが友の熊公に大蛇彦とやらが神懸りし給ひ、皆様の知らるる通り、私の旧悪をすつかり摘発かれ、立つても居ても居られなくなつて、今まで犯せし罪の恐ろしさに、心密かに月の大神様に向つて懺悔を致し、堪り兼ねて千尋の海の藻屑となり、罪を贖はむと覚悟を決めて渦まく浪に飛び込みました。この時何処ともなく巨大な亀が現はれて、罪重き私を救うて呉れました。又もやざんぶと身投げの音、何人なるかと月の光にすかして見れば、豈図らむや、親しき友の熊公で、又もやこの亀に救はれたのです。さうして熊公は又もや神懸となり、亀の背にて日に夜に尊き教訓を与えて呉れました。吾々のやうな利己主義の人間が、どうして神の御心に叶ひませう。却つてこの世の汚れとなるから、どうぞ死なして下さいと、又もや海中に身を躍らして飛び込まむとする時、熊公は神懸のままに、私の首筋を掴んで亀の背中に捻伏せ「こら虎公、汝はすでに救はれた、汝の刹那の祈りは真剣だつた。天地神明に感応した。今の汝は今までの悪逆無道の虎公でない、この世を清むる明礬の様なものだ。百石の濁り水も、一握りの明礬を投ずれば清水となる。神の栄光に浴した汝は、これより悪魔の猛り狂ふ泥水の世を、塩となり明礬となつて清めよ、澄ませよ、すべての物に味を与へよ」と厳しく教訓されました末、忝なくも「汝はこれより志芸山津見命と名を賜ふ。カルの国に到つて宣伝使となれ」と、思ひがけなき有難きお言葉を頂き、夢かとばかり吾心で吾身を疑はざるを得なかつたのです。さうして何時の間にか、亀の背中に救はれた吾々二人は、アタル丸に先立つて、無事にこの港に到着して居ました。されど身体は石の如く、首より下はこの通り強直して、身体の自由を失つて居ります。どうか三人の宣伝使様、照彦様、この私の深き罪を許して下さいませ。また船の諸人たちよ、私の改心を鑑として真心に立ち帰り、心から神に祈りを捧げて下さい、幸ひ宣伝使がおいでなされば、神言を教はつて、朝な夕なに神を讃美し、誠の心に立ち帰つて祈願をなされませ』
と諄々として自分の来歴を述べ、かつ改心の尊き事を告げ終るや否や、虎公の身体は霊縛を解かれて再び自由の身となりぬ。数多の船客はこの話の終ると共に先を争うて上陸し、行くゆく神徳話に耽り居たり。
(大正一一・二・一五 旧一・一九 加藤明子録)
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