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文献名1霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
文献名2第1篇 千軍万馬よみ(新仮名遣い)せんぐんばんば
文献名322章 混々怪々〔452よみ(新仮名遣い)こんこんかいかい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-07-16 00:46:11
あらすじ黄泉島の形勢は、ロッキー山に伝えられた。大雷は、味方の全敗を大国彦、大国姫に注進した。そして松・竹・梅の三個の桃の実に化けていたはずの国玉姫、杵築姫、田糸姫らもロッキー山に帰城した。そして、負け戦にも関わらず、大笑いをして大国姫を驚かせた。敗軍を報せに来た大雷は実は、本物の日の出神の使い・鬼武彦の化身であった。そして国玉姫、杵築姫、田糸姫、火雷ら魔軍の中心的な諸将も、鬼武彦の眷属が化けた姿であったことが明かされた。
主な人物 舞台ロッキー山城 口述日1922(大正11)年02月25日(旧01月29日) 口述場所 筆録者藤津久子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年8月20日 愛善世界社版166頁 八幡書店版第2輯 451頁 修補版 校定版173頁 普及版77頁 初版 ページ備考
OBC rm1022
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本文  醜の魔風の吹き荒ぶ、ロッキー山の山颪、大国姫神は黄泉島なる戦ひに、味方の勝を美山別、国玉姫の訪れを、今や遅しと待ち居たる。時しもあれや大空を、轟き渡る天の磐船、此処彼処、円を描いて下り来る。鳴音高き大雷、火雷の二柱、ロッキー山の城門に現はれ、門外より門番に命じ、鉄門を左右に開かしめ、息もせきせき奥殿目がけて進み入る。
 ロッキー山の重臣武虎別は進み出で、大雷、火雷の二将を見るより、
『オー、思ひがけなき二神の帰城、黄泉島の戦ひ、味方の勝敗如何に、速かに話されよ』
大雷『吾々中途にて急ぎ帰りしは、余の儀にあらず。黄泉島の戦闘は殆ど味方の全敗、このまま打捨て置かば、敵の大将日の出神は数多の神軍を引連れ、黄泉島は未だ愚、常世の国に攻め渡り、ロッキー山を占領し、吾々をして根底の国に追ひ落さむは目睫の間にあり。貴下は速かに此由大神に奏上されよ』
火雷『時後れては一大事、瞬くひまも猶予ならず。早く早く』
と急き立てる。
 武虎別は何の答もなく、そのまま隔ての襖を押し開きて慌しく奥殿目がけて進み入りぬ。後に二人は呆然としてもどかしげに、大国姫の出場を首をのばして今や遅しと待ち居たるが、此時、門前に何となく騒がしき音聞え来る。二人は耳を澄まして其物音に聞き入れば、国玉姫、杵築姫、田糸姫の三柱の美人は悠々として数多の女神を引連れ、此の場に入り来るなりき。大雷は思はず声をかけ、
『ヤア貴下ら三人は戦ひの真最中にも拘はらず、危急存亡の場合、戦陣を捨て、女々しくも帰り来れるか。之には深き様子のある事ならむ、具に物語られよ』
国玉姫『アツハヽヽ、オホヽヽヽ』
杵築姫『ウフヽヽヽ、エヘヽヽヽ』
田糸姫『イヒヽヽヽ、ホヽヽヽ』
 三人一同にいやらしき声を張りあげ、敗軍も心に留めざるが如き気楽さうな笑ひ声に、大国姫命、武虎別は慌しく出で来り、
大国姫『アイヤ、汝は大雷、火雷にはあらざるか。天下分目の此戦ひ、敵も味方も死力を尽し、鎬をけづる真最中に帰り来るは其意を得ず、いぶかしさの限りなり。また国玉姫ら三人のその笑ひ声は何事ぞ』
とやや顔色を赭らめて問ひかくれば、大雷は大口開いて、
『オホヽヽヽ、恐れ入つたる御挨拶、鬼も、大蛇も、狼も、掴んで喰ふ大雷、オメオメ帰り来る理由があらうか。大勢の軍卒を引連れながら腰を屈め、尾を巻いておぢおぢと帰り来る理由はない。恐れながら此大雷は、日の出神の御使鬼武彦の化神なるぞ。己れの正体は判るまい。狼狽へきつた其面付のをかしさ。大国姫命も、畏れ多くも、伊邪那美神をさし措き伊邪那美大神と偽り、この世を誑る大曲津の張本、この侭にしてはオヽ置くものか。ヤイ、もうそんな馬鹿な芸当はおけおけ。をこがましくも、ロッキー山の魔神のお里にあり。押しも押されもせぬ日の出神に敵対ふとは、分に過ぎたる汝の企み、今後は三五教の教を守り、ソンナ恐ろしい計画を致すでないぞ。何だツ、お多福面をしよつて、おつに構へて大国姫の贋神が、伊邪那美命なぞとは尻が呆れるワイ。根の国底の国に落ちて怖ろしい責苦に遇へば、如何にお転婆の其方も、多寡が女の弱腰、鬼の鉄棒や斧を以て追ひまくられては、お前の逃げ場所もあるまい。オメオメと根底の国で恥を掻くより、今の中に心を改め、面白くない計画を止めて祖神様に従へ。さう致せばお前の罪は追ひ追ひと赦されるであらう。大雷と見えたるは大きな間違ひ、鬼武彦が千変万化の活動だ。アハヽヽヽ』
火雷『ホヽヽヽ、呆けた面してホロホロと、涙をこぼして其態は何だ、今迄の悪いたくみをホホ、ホウキで掃いた様に、さつぱりと放して終へ。伊邪那美神と甘く化けおほせ、これで大丈夫だとほくそ笑をして居た其方、何ほど自分の力に呆けて誇つて居ても、ごうたくを吐いても、貴様の欲しい黄泉島は中々以て手に入らぬぞ、細引の褌だ。あつちに外れ、こつちに外れ致してボタ餅は棚から落ちて来ないぞ、発根から改心致さばよし、大きな布袋つ腹を拘へて、何を企んでもホコトンばかりだ、時鳥だ。八千八声の血を吐いて、苦しみ藻掻き、誉処か法螺の抜け殻、穴でも掘つて、すつ込まねばならぬやうな恥かしいことが出来て、ホロホロと涙をこぼし、天地の神には放棄され、取返しのならぬ事が出来いたすぞ。改心いたすなら今ぢや。ホヽヽヽ火雷とは真赤な偽り、われは火産霊神だ。よつくわが面を見て置けよ。アツハヽヽハー』
国玉姫『オホヽヽヽ、淤縢山津見がやつて来て、ロッキー城を撹き乱し、固虎彦が仇の間者となつて、汝が計画を根本よりひつくり覆す其謀計に気の付かざる馬鹿神ども、アハヽヽヽハー、呆れ蛙の面の水だ。阿呆阿呆と朝から晩まで、峰の烏が鳴き渡る。アフンとするは目のあたり』
田糸姫『ウフヽヽ、ウラル教に欺されて動きの取れぬ黄泉島の戦ひ、エヘヽヽ、エンマが罪人の戸籍を調べるやうな得体の知れぬえぐい面付き。エヘヽヽヽ』
杵築姫『イツヒヽヽヽ、伊邪那美命などと、いい加減な法螺を吹いて、威張り散らした大国姫、一寸先は真暗がり、今に化の皮が現はれるぞ。大雷、火雷も、国玉姫も、田糸姫も、杵築姫も、残らずお化と大馬鹿者と一つになつた此の芝居、黄泉比良坂の桃の実も、今はさつぱり虫が喰うて気の毒な次第なりだ。本当の国玉、杵築、田糸の三人は、比良坂に於て、日の出神の神軍の言霊に悩まされ、肝腎の国玉姫はキツキ目に遇はされて頭を割られ、腕をくじかれ、イタイ、イタイと半死半生、見るも哀れな次第であるぞよ。イヒヽヽヽ、命あつての物種だ。一時も早く魂を入れ換へ致すがよからう。コンコンコンコンカイカイカイ』
 忽ち五人の男女は牛の如く大なる白狐となり、大国姫、武虎別目がけて飛び付かむとする。この時またもや門前騒がしく、日の出神の御来場と先導者の声、城の内外に響き来る。
(大正一一・二・二五 旧一・二九 藤津久子録)
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