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文献名1大本七十年史 下巻
文献名2第7編 >第2章 >3 宗教提携のうごきよみ(新仮名遣い)
文献名3国際宗教懇談会の開催よみ(新仮名遣い)
著者大本七十年史編纂会・編集
概要
備考
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ページ780 目次メモ
OBC B195402c7232
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本文  一九四六(昭和二一)年一〇月一二日、京都西本願寺鴻の間で国際宗教懇談会が開催された。主催者は国際問題綜合研究所(所長藤沢親雄、理事長荘野忠徳)で、「内外の宗教家が一堂に相会し、正義に立脚せる平和と真理にもとづく人類文化の発展に関して懇談し、且つその実現の方策を考究したい」との趣旨によるものであった。
 司会者の荘野忠徳は開会の辞において「敬虔なる宗教心に徹したとき、はじめてすべての民族は一つの宇宙生命から芽ばえた同胞であることの自覚に達し、ここに愛と誠の楽園がきづかれる」と宗教の本質的使命と価値を強調し、主催者側よりつぎの五項目の話題が提供された。「一 日本復興に対する宗教家の責任、二 東洋における宗教家の協力と提携、三 世界平和と人類文化にたいする宗教家の寄与、四 前各項実現の具体的方策について、五 その他宗教に関する一般問題」。
 出席者は神・仏・基などの各教代表者をはじめ宗教学者、外国の宗教家をくわえてつぎの四〇余人であった。

日本側─(西本願寺)大谷光照、藤音得忍、田丸道忍、土岐慶静、小林唯乗。(東本願寺)末広愛邦。(知恩院)大河内貫静。(真言宗)岡田戒玉。(日蓮宗)足立日城。(天台宗)渋谷茲鎧。(臨済宗)緒方宗博。(日本キリスト教団)安田忠吉、吉田隆吉。(天主公教会)古屋義之。(聖公会)佐々木二郎。(天理教)岩田長三郎。(金光教)金光鑑太郎。(黒住教)福島元助。(八坂神社)高原美忠。(豊国神社)吉田貞治。(金刀比羅宮)久世章業。(白峰神宮)石井鹿之助。(愛善苑)出口伊佐男。(世界神智学会)三浦関造。(世界紅卍字会)土屋化同。(平和の園)古屋登世。(京都大学)久松真一、西谷啓治、松村克己。(同志社大学)牧野虎次、有賀鉄太郎。(竜谷大学)森川智徳。(大谷大学)鈴木弘。(宗教研究家)三浦一郎ほか三人。

外国側─(キリスト教)米国・ボーベンカーク、ヴァンダーグリフト、スモック。(クリスチァン・サイエンス)同・ゴーハム。(ルーテル教会)ドイツ・ヘンニヒ。(カトリック)イタリア・パガニニ。

来賓─(終戦連絡京都事務局長)吉岡範武。(前ローマ法王庁駐在公使)原田健ほか内外人七人。

 各代表者は、五つの話題についてそれぞれ発言したが、その共通するところは、宗教家は反省し、ざんげし、脱皮
して、宗教本来の使命にむかって新発足しようという決意、すべての宗教は共通の使命にむかって提携協力すべきだ
との認識、すべての文化と人類生活にたいし、宗教こそはその最も根底をなすものとの宗教の価値にたいする再認識
の三点をあげることができる。席上、愛善苑を代表して出口委員長は、つぎのように発言した(「愛善苑」昭和21・12)。

一 日本復興にたいする宗教家の責任 (1)、宗教家自身の厳粛なる反省と自覚を根本要件とす。─日本の宗教家はみずからの無自覚と怠慢ならびに宗団の封建主義により、また極端な国家主義に禍されて宗教本来の面目を失った。この点について厳粛な反省をし、かつ人類平等愛の上に立って宗教の真使命を遂行する自覚と決意をもって新発足すべきである。(2)、万教同根の大義に徹し、各宗教互いに協力提携すること。─真理は一である。何れの宗教も真理と愛に根ざし、時代と民族に応じ発生発展して来たもので、形式こそ異なれ万教は同根であると信ずる。この際宗教本来の共同目的である地上天国の実現に向って、互いに協力提携することが肝要である。(3)、宗教と生活の一体化を図ること。─宗教が現実生活と遊離していた点に過去の重大な欠陥がある。よろしく個人生活をはじめとし、政治、経済、教育、芸術など文化全般に亘る社会生活の上に宗教を滲透せしめ、宗教と生活の一体化を図らねばならぬ。

二 東洋に於ける宗教家の協力と提携─日本宗教の過去清算と新発足について、まず中外に宣言を発し、その後に於てこの項目を採り上ぐべきである。日本の宗教は従来軍国主義的桎梏の下に置かれ、その本来の使命を発揮し得なかった遺憾な立場を明かにし、而して後日本宗教家の本来の使命に生きようとする今日の切実な念願を表明し、改めて東洋宗教家の協力提携を提案すべきである。

三 世界平和と人類文化にたいする宗教の寄与 (1)、世界各宗教の大同団結により国際間の障壁を撤廃し、世界
一家の理想実現を図ること。(2)、宗教家と科学者との協力提携による高度文化の建設。

四 前各項実現の具体的方策 (1)、前各項実施を目的とする日本宗教聯合の機関を設置すること。(2)、東洋宗教聯合の機関を設置すること。(3)、世界宗教聯合の機関を設置すること。(4)、各宗教団体は国際補助語として「エスペラント」を採用すること。

五 其他宗教に関する一般問題 (1)、新憲法の戦争放棄ならびに信教自由に関する主旨を国民に徹底せしめるため、各宗教団体は最善を尽すべきこと。(2)、宗教本来の普遍性に基き海外布教の自由を確立すること。(3)、宗教団体の海外文通ならびにその用語として「エスペラント」の使用を認められるよう努めること。

提示された五項目について、各項目にそくした具体的な提案がすくなく、全項目にわたる総括的・抽象的な所見がめだっていたなかで、委員長の発言は、参加者一同にとくに注目された。この趣旨の会合を継続するため、出口委員長より指名推薦して一〇人の委員が決定された。
 この懇談会を企画し開会までにはこんだのは荘野忠徳である。荘野は一九四二(昭和一七)年秋以来、中矢田農園にしばしば聖師をたずねて感銘するところがあった。一九四六(昭和二一)年六月には天恩郷を訪問し、敗戦後の物資その他諸事もっとも困難な事情にかかわらず、建設工事がことごとく信徒の宗教的情熱と無私の奉仕により、意外にはやく進捗しつつあるありさまをながめて感動し、日本の立直しと世界平和は、宗教的感化と精神的糧の供与にまたねばならぬことを痛感し、国際宗教懇談会開催の決意をしたという。荘野はのちに「私が国際宗教懇談会を催す構想も、翁(出口聖師)の薫陶が影響していた。私は此の会議の青写真をつくり翁に相談した。翁は画期的壮挙であると賛成され、精神的後援者の一人であった」と回想しているが、そのような関係もあって、愛善苑は、このもよおしにたいしておおりに賛意を表し、全面的に協力したのである。

〔写真〕
○宗教の協力提携を積極的に推進した 国際宗教懇談会での出口委員長の発言 p783
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