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文献名1霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
文献名2第1篇 水波洋妖よみ(新仮名遣い)すいはようよう
文献名3第3章 厳の欵乃〔1812〕よみ(新仮名遣い)いずのふなうた
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ照国別一行は常磐丸に乗り込み、各人これまでの経緯と今後の目的を歌にうたいながらハルの海を航行していた。突然、暴風雨に巻き込まれたが、照国別は、高砂丸が遭難しているのを見ると、わが身の危険も顧みず救いに駆けつけた。
主な人物 舞台 口述日1926(大正15)年06月29日(旧05月20日) 口述場所天之橋立なかや別館 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1929(昭和4)年4月3日 愛善世界社版25頁 八幡書店版第12輯 616頁 修補版 校定版30頁 普及版10頁 初版 ページ備考
OBC rm7203
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本文  豊栄昇る旭影  厳の光も照国別の
 司の一行朝まだき  眼を醒し凪ぎ渡る
 清けきハルの湖の岸  入江の港を舟出して
 珍の教も照公や  一度に開く梅公別
 玄真坊と諸共に  名さへ芽出度き常磐丸
 松の教の一行は  艪櫂を操り悠々と
 ハルの港を辷り行く  魚鱗の波を湛へたる
 ハルの海原影清く  彼方此方にアンボイナ
 信天翁や鴎鳥  飛び交ふ様の美はしさ
 照国別は立ち上り  天津日影を伏し拝み
 声朗かに太祝詞  唱ふる声は海若を
 驚かしつつ船端に  波の皷を打ちそへて
 神国来を叫びつつ  進み行くこそ勇ましき。
照国別『神代の昔天教の  山に現れます元津神
 木花姫の神勅もて  厳の御霊や瑞御霊
 教を四方に開かむと  数多のエンゼル任け玉ひ
 白雲棚引く其極み  青雲堕居向伏せる
 極みも知らず皇神の  尊き教を伝へ行く
 その御諭に従ひて  斎苑の館に現れませる
 瑞の御霊の神柱  神素盞嗚の大神は
 千座の置戸を負ひ乍ら  雨に体はそぼち濡れ
 御髪は風に梳り  手足は霜にやけただれ
 食物着物乏しくて  身をきる寒き夕の夜も
 やけるが如き夏の日も  撓まず屈せず道のため
 世人の悩みを救はむと  いそしみ玉ふぞ尊けれ
 ウブスナ山の聖場に  斎苑の館を建て玉ひ
 曲の霊魂に犯されし  人の心を清めつつ
 真人と生れ代らしめ  罪科深き吾々に
 名さへ目出度き宣伝使  称号さへも賜りて
 浮瀬に落ちて苦める  世の諸人を救ふべく
 ハルナの都に蟠まる  曲津の神を言向けて
 神の御国を永久に  建てむと図り玉ひつつ
 四方に遣はす神司  青雲高し久方の
 高天原より降ります  天人天女の精霊を
 吾等の身魂に下しまし  守らせ玉ふぞ有難き
 あゝ惟神々々  神の任さしのメツセージ
 仕遂げおほせし暁は  再び斎苑の神館
 ウブスナ山の聖場に  復命なして大神の
 いと美しき尊顔を  拝し奉りて玉の声
 かからせ玉ふ暁を  待つも嬉しき神の道
 踏みて行く身ぞ楽しけれ  吾行く道は皇神の
 御守り厚く坐せば  如何なる枉の襲うとも
 如何で恐れむ敷島の  神国魂の丈夫は
 たとへ天地は覆るとも  月落ち星は沈むとも
 如何で撓まむ真心の  心揺がぬ梓弓
 ハルの海原渡り行く  吾一行に幸あれや
 あゝ惟神々々  神の恵ぞ畏けれ
 神の恵ぞ畏けれ』
照公『照国別の師の君の  御名の一字を賜りて
 神の御稜威も照公別  名を負ふ吾ぞ尊けれ
 ウブスナ山を立ちしより  吾師の君と諸共に
 あらゆる悩みを凌ぎつつ  彼方此方の曲神を
 言向和し諸人の  艱難を救ひ恙なく
 此処迄来りし宣伝の  旅の空こそ楽しけれ
 此処は名に負ふハルの湖  波こまやかに風清く
 真帆を孕ませ進み行く  常磐の丸は神の船
 あまねく世人を天国に  導き渡す神の船
 あらゆる罪や穢をば  乗せて千里の海原に
 彷徨ひ失ふ神の船  あゝ勇ましや勇ましや
 波よ立て立て風も吹け  一瀉千里の勢で
 吾乗る舟は逸早く  スガの港へ走れかし
 あゝ惟神々々  神の教の旅立ちは
 世の人々の夢にだに  知らぬ楽しき節ぞある
 伏しては地に幸祈り  天を仰いで国々の
 民安かれと祈りつつ  草の褥に石枕
 木々の梢を屋根として  月照る空を眺めつつ
 幾夜の野辺の仮枕  実にも楽しき旅出かな
 あゝ惟神々々  御霊幸ひ坐せよ』
梅公『吾師の君に従ひて  神素盞嗚の大神の
 任さしのまにまに斎苑館  後に眺めて出でて行く
 吾一行は恙なく  河鹿の難所を乗り越えて
 祠の森や小北山  浮木の森には目も呉れず
 テームス峠を打渡り  葵の沼に辿り着き
 月の光も黄金の  姫の命の宣伝使
 沼に輝く清照の  姫の命と袂をば
 右と左に別ちつつ  トルマン国の危急をば
 神の恵みに救ひつつ  吾師の君に再会し
 漸く此処に来りけり  あゝ惟神々々
 神の恵ぞ畏けれ  神の恵ぞ畏けれ』
 玄真坊は歌ふ。
『オーラの山に立籠り  悪逆無道の企みをば
 敢行したる吾こそは  八岐大蛇の片腕か
 たとへ方なき人非人  ヨリコの姫を唆かし
 オーラの山を根拠とし  泥棒頭のシーゴーを
 謀主と仰ぎオーラ山  高く聳ゆる大杉の
 梢に仕掛けた星下し  良家の婦女を拐かし
 善男善女を迷はして  金穀物品奪ひとり
 七千余国の月の国  横領せむと企める
 時しもあれや三五の  教の道の神司
 梅公別に踏み込まれ  吾計画も画餅となり
 よるべなくなく三百の  不良分子を選抜し
 ハルの湖原打渡り  タラハン城に忍び込み
 様子を聞けば左守なる  智勇兼備のシヤカンナは
 十年の昔追放され  山林深く姿をば
 隠して再挙を図るてふ  噂を聞いて雀躍し
 天帝の化身と化け込んで  夢寐にも忘れぬダリヤをば
 吾が夜の伽にせむものと  色と欲との二道を
 かけて踏み込む山の奥  タニグク山の岩窟に
 小盗人共に導かれ  一夜を明かす折もあれ
 命と頼むダリヤ姫  吾が酔ふ隙を窺ひて
 忽ち水沫と消えしより  シヤカンナも糞もあるものか
 二百の手下を借り受けて  ダリヤの行衛を探しつつ
 神谷村の村長の  家に潜むをつきとめし
 その暁の嬉しさは  天にも上る心地しぬ
 天に叢雲花に風  吹く世の中は是非もなし
 掴むに由なき水の月  心残して渋々に
 暗路を辿り進み行く  上れば高きタラハンの
 峠の岩に腰かけて  前方遥かに見渡せば
 野中に建てる城廓は  吾の住居に適へりと
 雄猛びし乍ら小泥棒  二人と共に進み行く
 道の行く手もいろいろに  恋路の雲に包まれつ
 果し終せぬ果無さに  心を苛ちてタラハンの
 城下に忍び待つ程に  タラハン城下の大火災
 天の時こそ到れりと  タラハン城に乗り込んで
 宝の倉に忍び入り  軍用金をせしめむと
 逸る折しも捕へられ  一度獄に繋がれて
 少時憂目は見たれども  泥棒頭のシヤカンナが
 左守の司となりすまし  国政を握ると聞くよりも
 悪口憎言並べ立て  遂には左守に腹切らせ
 黄金数万貢がせて  踏みも習はぬ谷川に
 沿へる細路走る折  追手に追はれ是非もなく
 運命を天に任しつつ  ザンブとばかり谷川に
 身を躍らして飛び込めば  人事不省となり果てて
 忽ち幽界の旅枕  百の責苦に遇ひ乍ら
 人の情に救けられ  再び悪を企みつ
 入江の浜屋に泊り込み  ホロ酔ひ機嫌の折もあれ
 花に嘘つく絶世の  美人千草の高姫が
 色香に迷ひ涎くり  巾着迄も締められて
 所持金スツカリ奪ひ取られ  命危くなりし折
 照国別の師の君に  ヤツト救はれ今此処に
 法の友船常磐丸  松の心に立直し
 心に匂ふ梅公別  日も麗かに照公の
 神の司と諸共に  涼しき風を浴び乍ら
 縮緬皺の漂へる  大湖原を進み行く
 吾身の幸ぞ楽しけれ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令天地は覆るとも
 神に誓ひし真心は  幾千代かけても違ふまじ
 松のミロクの末迄も  守らせ玉へ惟神
 神の御前に謹みて  吾身の行末祈ぎ奉る』
照国別『梓弓ハルの湖原乗り行けば
  百鳥千鳥大空に飛ぶ。

 天国の春にも擬ふハルの湖
  乗り行く吾の幸多きかな』

照公別『大空に日は麗かに照公の
  湖路静に進む楽しさ。

 風清く波穏かに吾乗れる
  船端波の皷打ち行く』

梅公別『御教の一度に開く梅の花
  三千世界に匂ふなるらむ。

 梅薫る春の景色に酔ひ乍ら
  ハルの湖渡り行くかな』

玄真坊『吾為せし昔の枉を思ひ出でて
  神の御船もいとど苦しき。

 今よりは誠の神の大道に
  進み行かなむ仮令死すとも』

 斯く各自に歌を詠み乍ら波静かなるハルの湖面を進み行く。時しもあれや、一天俄に掻き曇り、暴風吹き荒び、激浪怒濤は山岳の如く押し寄せ来り、常磐丸は木の葉の風に散る如く実に危き光景となつた。彼方の海面を遠く見渡せばハルの湖面にて名も高き高砂丸の船体は木端微塵に打砕け、乗客の一同は激浪怒濤に翻弄され、命限りに救ひを叫ぶ声、恰も叫喚地獄の状態を現出したるが如くであつた。照国別は吾身の危難を忘れ高砂丸の遭難を救はむと船頭を励まし八梃艪を漕ぎ乍ら、高砂丸の難船場目蒐けて力限りに漕ぎつける。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一五・六・二九 旧五・二〇 於天之橋立なかや別館 北村隆光録)
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