文献名1故山の夢
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3毛布よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-10-30 20:57:00
ページ146
目次メモ
OBC B119300c034
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本文
二十三四歳の頃
物ごころさとりはじめて夜遊びに赤毛布肩にかけて出でたり
毛布裏に小砂利や木の葉の附着せるを翌朝見出でて顔赤めつつ
夜遊びに毛布かかへて出る奴は男惣嫁よとわらふ友がき
二人座す夜辻に人の気配しておどろき毛布捨ててて逃げたり
小夜更けて毛布拾はんと潜みゆけば跡方も無く梟の鳴く
梟の鳴く音も吾をあざけるごと耳にさはりて腹の立つ夜半
梟の鳴く音憎しとたたずめば木下蔭より細い手が出る
怪物が出たかとこはごは近よれば毛布要らぬかと女の苦笑ひ
箸豆なあなたの心なほるまで毛布あづかりおくと女の声
種種と言ひ訳すれどあざ笑ひ首を左右にふりつつすすり泣く
この毛布わたしが上げた真心と泣きつつ怒れる是非もなき夜半
赤毛布しきの田舎の青年の恋にも涙のある世なりけり
○
秋されば村人交交稲の番を夜な夜な辻の藁小屋になす
秋の夜の長き徒然に畔の豆根こそぎにしてあぶりては食ふ
藁の火にあぶりし秋の畔豆ははぢけたるまま焼けて残れる
藁灰の中の焦豆選り出して食ふくちびるの真黒になりたる
灰混り焼けたる豆を口にして黒き唾液をプツプと吐き出す
稲盗む奴は居ぬかと木を拍つて野路をめぐる秋の夜寒し
稲盗む人かげ見付け大声に呼べば稲の荷捨てて逃げたリ
稲盗む奴は百姓何人としらべ見れども手がかりさへなし