文献名1青嵐
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3吉崎仙人よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ凡例
データ最終更新日2024-10-31 04:40:00
ページ283
目次メモ
OBC B120200c32
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本文
弥仙山麓の於与岐の山里に吉崎といふ不思議な人あり
吉崎はみづから九十九仙人と称して山に身魂練りをり
吉崎は白髪異様の神人に七才の時出逢ひしといふ
神人に種種の神秘をつたへられ言行俄然一変せし人
木片や竹の端にて仮名釘流の筆先数多書きあらはせり
天の宮の一の馬場の神の命受けて諸神にさとすと彼いふ
あめつちのすべての神に神勅を伝達するを天職といふ
家族親族村人よりは発狂者とみなされ相手にするものはなし
凡夫にはわが筆先はわからない真の神人きてとけといふ
人間の分際として筆先がわかる道理があるかとかたる
上林の山中ふかくしのび入り樵片手に筆先を書く
今までの世界は邪神の自由自在跳梁したる世界と彼いふ
天の時めぐり来りて元津神の地に降ります時と彼宣る
これからは綾の高天へ世を流しお返し申すと筆先にあり
邪魔物
修業場の心にかかれば穴太より弟幸吉連れて帰りぬ
綾部には立寄らずして上谷の修業場案じ直行をなす
帰りみれば上谷幽斎修行場はやや落ちつきて見えたりにけり
四方春蔵村上房之助二人そろそろ筆先書きはじめをり
村上はわからぬ天狗文字を書き四方は教祖の筆先の真似す
修行者はこの筆先に盲従し吾を邪魔ものあつかひにせり
幸吉が鎮魂すれば両人は筆先書けずといみきらひをり
穴太よりわれ帰りしと聞き知りて出口澄子は急ぎ来れり
福島が塩見せい子や黒田きよ子三人世のもとと威張るとの報告
彼の男女三人世の元結構と朝から晩まで呼ばはり続ける
一刻も早く帰りて三人の狂態しづめてたまはれといふ
上田をば綾部に帰すことならぬと三人一度に呼ばはりをるとふ
曲神は吾の帰綾を畏れつつ予防線をば張りてをるなり
出口澄の報告聞くより弟をともなひ綾部にいそぎ帰りぬ
審神者
帰り見れば二女は白衣に緋の袴つけて教会にしやべり散らせり
上田殿よくも帰りし神様にお詑いたせと鷹揚にいふ
黒田『福島さんはまことの艮金神よお前は偽よとつとと帰れ』
福島は大手を振りつつそり返り口に提灯くはへて出で来る
この方は艮金神様ぢやぞよ審神者違ひをするなと呼ばはる
鎮魂をすれば三人飛び上り蜘蛛の子散らす如く逃げだす
福島は素裸になり大手ふりいざや来れと二女を連れ出す
父上といひつつ二人の神がかり大橋わたり東にむかふ
道を行く人いぶかしみ三人の状にあきれてささやき合へり
三人の行動案じてわれもまた後追つかけつ上谷に入る
上谷の四方の家にあぐらかきとりとめもなきことを囀る
大神様よくこそ入来と春蔵が裃つけて頭さげ居り
馬鹿なことするなと呶鳴り扇子もて四人の男女の頭打ちみし
四人とも審神者の力に辟易し改心しますと言ひつつ鎮まる
上林の山道
吉崎の霊は四方春蔵にうつりて折釘流の文字かく
読みゆけば上田先生初めとして足立と春蔵来てくれとあり
霊学の参考にもと両人をともなひ仙人を訪ふこととなす
仙人は口上林村の山奥に小さき庵を建てて住まへる
折もあれ四方勇佑走り来りタタ大変とあわただしく言ふ
勇『足立氏と四方春蔵がしめし合はせ師を出しぬいて仙人にあふ計画』
勇『一切の秘術をおぼえて両人は上田をアフンとさすと言ひ居り』
勇『充分の神力なければ上田をば放り出せぬとて秘密会議す』
勇『上田には知らしてならぬと言ひおいて二人はあわてて出てゆきました』
よく見れば足立四方のかげもなし吾にかくれて出でゆきしあと
勇佑は私がお伴いたします近道たどりて足立より先に
勇『足立奴が上田先生を放り出して後に直らうとたくんで居ります』
兎も角も調べてみんと勇佑をともなひ分けゆく上林の山
勇佑にあんないされて上林仙人住める山奥に入る
杉山のふもとにわれを送りおきて地理を教へて勇佑帰れり
雑草の生ひ繁りたる羊腸の山路を一人われのぼりゆく
草深き峻坂地図を力にて吾はとぼとぼたどりゆくなり
仙人の案内
山道のかたへの林に矮小な陋屋ありて人声きこゆる
あばら屋の軒にたたずみ人声を静かに聞けば足立と春蔵
老人の声高高ととがりつつ二人にまことの道を説きをり
茅屋の主は六十才ばかり二人にむかひて叱咜して居り
老『一銭や二銭の金が惜しいのか衆生済度といふは口だけ』
老『その方は神鰹節に金をとる商売根性の偽教師なる』
老『お前等に金を貰ふはけがらはしとつととこの家を退去してくれ』
足『おい爺さん劫託つくな山道の何処を修繕しておいたのか』
春『道草を一本刈つた形跡も無いくせ修繕費をぼるといふのか』
足『今の先道の芒で足をきり石につまづき生爪おこした』
足『これだけに人の足まで怪我さして修繕費出せとは物凄い親爺よ』
足『金持つた狂人ならばいざ知らずいかさま親爺に一文もやるかい』
足『淵川へ捨てるお金はあるとてもこんな親爺にやれるものかい』
足『人間を馬鹿にするにも程があるよい年をして改心せぬかい』
こりや親爺乞食の様な真似をして何のことだとからかふ両人
矮屋のおもてに妻子も親類もない孤独者と札のかかれる
『私は六十七才奥山へ通ふ人のために道なほしする
往来の便利を計るこの爺にただ一銭の同情ねがふ』
この札を見てさきからの争論の理由推定する事を得たり
茅屋に入りて老爺に十銭の銀貨一枚御苦労と出す
老人は感謝もなさずその方はまことの人間山道を通れ
無愛想な老爺なるかと黙し居れば九十九仙人の霊憑依せり
両人はわが来りしに驚きて急ぎこの家を立ち出でてゆく
われもまた後を追はんとおもふ折老人袖を引きて止むる
老人は煙管煙草を吸ひながら私が案内をすると言ひけり
老人にあんないされて杉山のふもとの谷川べりに着きたり
この川を渡ればすぐに仙人のかくれ場所よと老爺は語る
左様ならと挨拶そこそこ老人は木立の茂みにかくれたりけり
神秘
足すべる谷川わたり只一人仙人の庵をさしていそぎぬ
五六町山道のぼれば仙人は道の真中に立ちて待ちをり
山道をよくも訪ねて下されし待ちゐたりとて庵に案内す
ずず黒い土瓶の白湯を椀に盛りわれに進むる仙人の寸志
一夜をこのかくれ家に仙人と神界の秘事かたり明せり
何故か足立四方の影も見えずいかがなりしと案じ居たりき
両人は深山の奥にまよひしかとわれたづぬれば仙人笑ふ
吉『大変な野心をおこしお前さんを出しぬいたので迷うてゐますよ』
吉『名物の濃霧のために方向をあやまり谷に落ちて傷せり』
両人は迷ひまよひて争ひて老人の小屋に着きをるといふ
吉『明日の朝は必ずここに来るであらう今の間に神秘を伝へん』
吉『天の宮の一の馬場のお父さんに仕へる私は僕と言ひけり』
迷ひたる足立四方は老人に目がむけるまで呶鳴られしといふ
ぶるぶるとふるひて無礼を陳謝しつ赦され翌朝仙人許着く
慢心をしたので遅れたのではない神界の秘密とまけをしみいふ
両人のおもてつくづく眺むれば何か不安の色ただよへり
嶺を吹く嵐にさつと深霧の幕は尾上に散りゆきにけり
百鳥の啼く音すがしく谷川の流れに和して清き山の家
潺潺と流るる谷の水さえて赤き蜻蛉の川の面に舞ふ
正信は声ふるはせて仙人に神秘を宣れとひたに頼みをり
神界の神秘は残らず上田氏に伝へてあればついて聞けと云ふ
両人は案に相違のおもひして不安の気色面にただよふ
仙人は足立に向ひ改心をせざればその身の破滅と宣りをり
吉『春蔵は盤古の霊が感じてる水の月捉るやうなことすな』
吉『その野心改めざれば神界のいましめによりその身滅びん』
両人は誠の道をまつぶさに吉崎仙人に聞かされて居り
吉『神界の御用に立たうと思うたら今の心を改めてかかれ』
汝等の顔に殺気があらはれてゐるよと仙人厳かに言ふ
蒼白な顔して二人は一言も答へず体をふるはせてゐる
仙人にたしなめられて両人は只はいはいと合掌して居り
吉『わが役目最早すみたり明日よりはわれ人界にくだり働かん』
吉『神界の経綸は汝に渡したれば吾人界に余生をおくらん』
この後はふたたび訪ね来ますなと大鋸肩に山深く入る
仙人に別れて三人は山下り谷川渡りて帰途につきたり
鵜の目鷹の目
上谷に帰りし四方春蔵は失望落胆のおももちして居り
仙人のこはさに改心をよそほひし足立四方は又いきり出す
吾こそは盤古大神世の元のまことの神と春蔵いたける
うしとらの金神などは足の靴盤古は神の冠なりといふ
悪霊に憑依されたる春蔵はわれの排斥に心をそそぐ
春蔵は数多の信徒をろうらくし綾部の経綸をとらんといきまく
金神は靴にしたとて福島がまた春蔵にくつてかかれり
艮の金神よりも偉いのは盤古と四方は頑張りて居り
盤古大神は支那を開いた神なれば日本に寄せぬと福島が呶鳴る
御神徳さへ下されば盤古でもかまひませぬと村上が言ふ
今迄の世を握りたるは盤古なり以後は艮の世なりと寅いふ
坤金神なんかいらないと又悪口を言ひ出す福島
勿体ないことを言ふなと勇佑は兀頭なで泣きじやくり居り
黒田きよ子神憑となり馳せ来り上田の偽神いなせと呼ばはる
平蔵がこんな偽者連れて来て大本みだすとぬかす福島
出口直は今迄の御用これからは俺の御用と威張る福島
この方は金光大神の生神よお直さがれと福島の暴言
出口澄は我が強いからこの神がいましめ致すと雄猛ぶ福島
昔からまだなき大きな事をするわれ大神と寅が威猛る
今までに威張りてをりた人民の頭下げさすとえらい権幕
おちぶれた者をこれからこの方が助けてやると野天狗が言ふ
心無き人の譏りも何かあらん神に任せし吾身なりせば
穴太よりふたたび老母危篤てふ急電来り進退きはまる
片時も見放しならぬ修行者に心かかりつ故郷をしのぶ
欠点を鵜の目鷹の目でねらひをる彼野心家に気ゆるしならず
機会だにあらば放逐せんものとうかがひ待てる曲人いまはし
帰郷後の曲の荒びを如何にせんと神示を乞へば帰れとありけり
汝が祖母は重病なれど生命に別状なしと神は宣らせり
家族親族村人たちにも道立たずと心をあとに故郷に帰りぬ
修行者を四方藤太郎に托しおきて幸吉引きつれ帰途を急げり
われ帰るまでは何人来るとも修行者綾部へやるなと言ひおけり
二三日経れば出口の開祖より春蔵塩見黒田に帰三の命来る
帰綾せし一男二女に妖魅かかり乱痴気さわぎを引きおこしたり
本宮の金明会は狂乱者の巣窟のごとく成り果てにけり
○余白に
教御祖二十七年の長き日を天地の神にさとし給ひぬ
世に出でてときめき給ふ神はみなこの世の来るをさとり給はず