文献名1青嵐
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3祖母よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ凡例
データ最終更新日2024-10-31 04:40:00
ページ316
目次メモ
OBC B120200c33
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本文
十余里の山道野道帰りみればわが家の軒の何か淋しも
玉の緒の命は未だおはすかと祖母の身の上案じつつ入る
わが胸ははりさく如き心地して祖母のおもてを見つつ淋しも
御齢八十六になりませる祖母のおもての瘠せこけたるも
庭先の松をみながら母上は祖母の看護にやつれ給ひぬ
喜三郎かへりましたと耳もとにわが母上はささやきいます
耳遠き祖母は頭をもたげつつわがおもてをみてほほゑみ給ふ
八才の妹きみは学校ゆかへりて母にねだりゐたりき
わが祖母はおそろしき夢をみたりとてわれに祖先の物語なし給ふ
神様の明るき道を世の中へあらはし御国に尽せと宣給ふ
如何ならん悪魔のさまたげ来るとも道に尽すとわれは誓ひぬ
老祖母はわれにかまはず道のため早く帰れとうながし給ふ
さやうなら帰りますよと夕暮の二つの吾が目涙にくもる
膝づめ談判
門口を出でんとする時治郎松はおまさを連れて急ぎ入り来る
しまつたと思へどもはや是非もなし母と治郎松おまさに止めらる
不在中の世話を二人に感謝しつ帰りもならず座につきにけり
老人や親兄弟をふり捨ててとぼけてゐるかと治郎松がいふ
百姓や商売嫌ひルンペンになつてお前はどうするといふ
月月に二十円の金を送らねば上田の家は立ちゆかぬといふ
一年も先祖の家を留守にして不孝者よとおまさが目をむく
道のため世のためいそしむわれにして金を送らん余裕のあるべき
極道の逃口上は許さぬと治郎松おまさの膝づめ談判
自己愛の他は知らざるわが母も金を送れと迫りてやまず
金儲けするやうなわれは柄でなし世のためルンペンせむと応へり
はたらかず金を儲けぬ極道は早くかへれと松がうながす
追ひ出されわが意を得たりと内心にほほ笑みながら家を立ち出づ
お前には老母と母と兄弟があるを忘れなとおまさが呶鳴る
二三年待たせ給へといひながら母に告ぐるも涙声なる
治郎松がしばらく待てといひながらわが袖をひきてうるさきこと言ふ
ルンペンの身なりと言へど十円や二十円ぐらゐあるだらうといふ
一円の金さへなしと答ふれば治郎松ふふんと鼻で笑へり
治『食ふだけのことなら犬猫さへもする家を忘るる罰あたり奴が』
治『二十八年も飼うて貰うた親の家を忘れるお前は畜生に劣る』
治『先祖から仏信者のこの家に勝手に神をまつる馬鹿者』
治『神なんかに呆けてゐるから村中が交際もろくにしてくれんぞよ』
治『家の名を悪くするよなぼろ神をまつつて孝行と思つてをるのか』
治『村中が上田の家をのけものにするのもお前が神まつるからだ』
治『株内の俺の家まで飛沫で困つてゐるのを貴様は知らぬか』
治『生れたる家の雪隠で糞たれぬやうな伜にろくな奴なし』
大勢の子にかへられぬ一人のお前が居らねば淋しいといふ母
日日が心配になり夜もろくに寝られないとて母の涙声
治郎松とおまさは病祖母の枕頭で火のつく如くわれを罵る
ともかくも綾部に早く帰るべしと祖母は雄雄しく言ひ放ち給ふ
老祖母の言葉に母も治郎松もおまさも黙して睨みゐたりき
ごてごてと穴太に三日とめられて漸く帰途につくことを得たり
極道が何してゐるか見てこいと弟幸吉に命ずる治郎松
治『親類の好誼でお前にいうておくが狐狸をつかはぬよにせよ』
治郎松は眉毛に唾をつけながら長い舌出し頤しやくりをり
○余白に
神も人も皇大神の御教を聞く耳もたず世は迫りたり
教御祖を大狂人とののしりし人のおどろく世は迫りたり
今になりてさわぎ狂ふもせんなけん神の教をきかざりし身の
曲神は山の尾上や川の瀬にいより集ひて逃げ迷ふなり