文献名1浪の音
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3宣伝の旅よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-10-31 06:24:00
ページ70
目次メモ
OBC B120900c14
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本文
惟神道の大道にいそしみて春忘れたる吾なりにけり
世の人は梅よ桜とさわぎをりわれは世のため時わすれをりぬ
大神の神示によりて桜散りし晩春をわれ宣伝にたつ
正信をしたがへ綾部をあとにして長宮峠の峻坂をよづ
みぎひだり若葉のもゆる山並に匂ふつつじの色赤きかも
鶯の呆けたる声左右の渓の隈よりもれ来る春の旅なり
長宮の峠にたちてふりかへる綾部の町は眼下によこたふ
いただきゆ裾までみゆる弥仙山は聖地にみるより高かりにけり
弥仙山いただき白雲つつみつつ青葉の山に春は深めり
かむながら教の旅にたたむ今日の青葉にはゆる山のすがしさ
莵原の晩春
長宮の峠を下りやうやくに莵原の里に真昼つきけり
莵原にはかねて開祖に救はれし高見といへる老信者あり
高見家を訪ひみれば家の主正信をみて逃げかくれたり
御開祖に生命を救ひたすけられし高見も足立にあいそつかしをり
この村に大本支部を開かんとわれは高見をたづねたるなり
いたづらに若葉かをれどつつじ咲けど何の詮なき莵原の晩春
遠方の里
やむを得ず足立をともなひ多紀郡の遠方村をさして急げり
遠方のふるき信者の家に入り一夜とまりて講演をなす
この家の主常助は大本のふるき信者にて村長なりけり
正信が傲慢不遜の説教に主人はあいそをつかしそめたり
金的命中
常助の館に大弓の射場ありて村人あつまり弓射てあそべり
われもまた主人常助に奨められ初めて弓を手に握りたり
尺の的八寸のまと金的とつぎつぎ弓射る術おもしろき
大神のみ前に向ひわが願ひ成らば金的射させよといのる
一心をこめて射放す弓の矢はあつぱれ金的射あてたりけり
この日よりわれ弓術の趣味を知り斯道を楽しむこととなりたり
支部設立
常助と相談のうへ遠方に金明会支部設立をなす
遠方の支部には戸川要六を留守番としてつかはしにけり
要六は米の相場に手を出して財産ことごとすりし者なり
要六は留守居の資格みたねども人物なければやむをえざりけり
ややありて支部長常助は要六の人格下劣を訴へきたる
宣伝更迭
やむを得ず四方熊造派遣して戸川要六と交代なさしむ
熊造は世事に通ぜぬ田舎者とまた常助がおひかへしたる
一ケ所の支部さへ守る人のなき金明会は淋しかりけり
福知山街道テクリて園部村の信者を教ふと急ぎ出でゆく
罵倒嘲笑
ここもまた足立の説教当を得ず馬詈嘲笑に迎へられたり
野心ある足立の心はどことなく人を教ふる力なかりき
正信は金光教の教師なれば世におくれたる話のみする
わが教聞きたる黒田の人人は足立の言葉を尻にきかせり
金光教の山中と同じ話なればもう聞きあきしと人人のいふ
綾部に帰る
やむを得ず足立ともなひ遙ばると綾部をさしてたち帰りたり
われひとり布教に出づればよかりしと悔ゆるも詮なし六日の菖蒲よ
正信は顔あをざめて御開祖に虚実とりまぜ報告してをり
改心がまだ出来てゐぬと御開祖に足立正信いましめられをり
海潮が若過ぎるので開けぬといたらぬ自分をかくす正信
正信は遠州浜松在住の久保氏のやかたを指して出でゆく
正信は久保氏に心性を看破され追ひ出されて逃げ帰りたり
どこまでも私は綾部にゐすわると足立は因果腰をさだむる
正信が綾部にあればどこまでも道開けぬと開祖はのらせり
お礼詣り
京都よりはるばる南部孫三郎全快御礼に詣で来れり
汽車の便なき山奥の綾部まで俥をとばせ詣で来し南部
教会の教師を長くつとめたる南部はなかなか才子なりけり
この南部二ケ月間の修行して大本宣使となりて帰れり
大本の宣使となりし南部今綾部の初夏を魚釣り遊べり
魚釣りて遊ぶ間あればお筆先拝読せよと教祖に叱らる
叱られて南部は頭掻きながらむづかし神よとつぶやけりけり