文献名1惟神の道
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3霊の本の力よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考「神聖」昭和一〇年七月号所収「『神聖運動』とは何か」の「皇道外交の確立」の抜萃・再編
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本文
霊界とは想念の世界であつて時間空間を超越した絶対界である。現実世界は総て神霊世界の移写でありまた縮図である。霊界即ち(判り易くいへば)精神界の真象を写し出したのが現界即ち自然界である。故に現界を称してウツシ世と言ふのである。
例へば一万三千尺の富士山の姿を小さな写真にうつし出した時、その写真がいはゆる現界即ちウツシ世であるのである。故にわづか一間四方くらゐの神社の内陣でも、神霊界においては、ほとんど現界人の標度で見たならば十里四方も二十里四方もある広大なるものである。また一尺足らずの小さい祭壇でも、八百万の神々や祖先の神霊が狭隘を感じ給はずして鎮まり給ふのは、すべて霊界は情動想念の世界であつて自由自在に想念の延長をなし得るからである。
我が国を日の本と称するのは霊の本の意なのである。霊の字は産霊神、直霊魂の如く和訓ではヒと云ふのである。それに対して外国のことはこれをカラの国といひ、カラとは殻であり空であり体である。
この消息がハツキリと解つたならば日本と世界の関係も自ら明かとなるべきものである。日本の国土は全世界に比較したならば小さい、その人口も少ない。物質的に現界的に見るならば世界のうちの一存在に過ぎない。しかしこれを神霊界から見る時は全世界に拡大する偉大性を持つてゐるのである。ことに満洲事変の勃発と共に我が国民が日本精神に覚醒するや、国威の伸張はまことに素晴しいものがある。国が小さいからと云つてまた人口が少ないからと云つて吾々は少しも臆することはない。国民が無限の延長性を有する日本魂に生き切る時に、全世界は皇国の大御稜威に順ふやうになつて来るものである。
今日までに我が国は東西古今の一切の文明を吸収して来た。その為に幾多の犠牲を払つたことは史実の明示する所である。しかしそれはあだかも心臓が汚れたる血液を浄化して再び全身に送り出して四肢五体を養つてゐるやうに、不撓不屈の苦闘は日本天賦の使命なのである。
今日の我が国内は、あまりにも汚れた血液を浄化しようとする、心臓の活動さながらの状態であつて、これが立派な血液に仕上げられた暁には、また強圧なる力を以て毛細管にまで送り出されねばならぬのである。それには一方ならぬ努力と奮闘を必要とすることは勿論である。しかし日本人が霊の本の精神力に生きて、これを全世界に拡大延長する気力を得たならば、この漂ヘるカラの国々を救ふことは決して難かしい問題ではないのである。