文献名1幼ながたり
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3まえがきよみ(新仮名遣い)
著者出口澄子
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OBC B124900c01
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幼い頃の思い出、
そこには、垂乳根の母がおられます。
父が、幼いきょうだいが、瞼の中に生き生きと去来してきます。
それは、遠く過ぎ去ったものであろうと、誰にとっても懐しい大切なものであります。
私の生まれましたのは、明治の十六年、
後に大本教祖となった母の、末女である私は、母とともに、大本創世の歴史を歩んできたのであります。
──世の多くの人々の生涯と比べても、それはどえらい道でありました。
それは今の人びとの耳には、
明治のはじめの、それも、日本の、とある片田舎におこったこととして、はるかな遠いところに起こったものの音としか聴きとれないかも知れませんが。
それほど、今ごろの若い人には見当のとれないこともたくさん入り混っていましょう。
私の母が生きた道、母とともに私が歩んできた道というものは、それが、どんな時代であったにしましても、人間の生きてきた姿として、今日の人々にも、またこれからの人々にとっても意味のあるものがこもっているのではないかと思うのであります。
そういう意味で、私の身のまわりにおこったことを書き述べるだけのことが、他の方々にとっても意味あるものとなれば、私の幸いとするところであります。
要荘こころおちつく八日間 幼なき時の思ひ出かたりぬ
つぎつぎに思ひひろがり幼などき 山に柴刈る姿うかびて
(昭和二十四年冬 偶居 要荘にて)