文献名1出口王仁三郎著作集 第1巻 神と人間
文献名2大本略義よみ(新仮名遣い)
文献名3進左退右よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2016-11-28 01:16:07
ページ216
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進左退右
宇宙の二大原質の関係は「霊主体従」であるが、其活用から云えば霊は左で、進む性質を有し、体は右で、退く性質を有する。乃で「霊主体従」と云う事を、運動の上からは、「進左退右」と言う言葉で現わしたのである。
宇宙全体の運動という運動は、この「進左退右」を以て根本原則とし、之に協うものは順、之に背くものは逆と云う事になる。言霊学の上から、左は「火足」の義で、火の系統、霊の系統たる事を示し、右は「水極」の義で、水の系統、体の系統たる事を示して居るのである。
例によりて、宇宙全体は、人間の理智想像で推定するには、余りに偉大に過ぎ、とても其運動の法則が、斯の通り「進左退右」に成って居ると証明する事は出来ないから、小宇宙たる人間その他二、三の卑近な実例を挙げて説明する。
先ず人間の肉体に就て述べんに、有意識の運動にしろ、無意識の運動にしろ、運動と云う運動は、悉く左が進み、右が退くように出来ている。三歳の小児が拍手する場合に於ても、常に先方に出るのは左手で、後方に退くのは右の手である。之に反する所の逆運動を行うものは無い。下女が摺鉢で味噌を摺る時、百姓が碾臼で籾を碾く時、其他類似の無数の場合に於て、何人と雖も進左退右の運動に違反するものはない。かかる場合に強いて之に違反せんとすれば、為し得ない事もないが、妙に勝手が悪く、骨が折れる事夥しい。柱時計などには、普通時計用の螺釘と時報用の螺釘と、双方別々に取付けてあり、そして其の捲方が、左巻、右巻の二種に作製してある。右巻の方は巻くのに容易であるが、左巻の方は夥しく力を要する。宇宙の運動の原則に従うと否との難易は、かかる場合に、最もよく判る。吾人が祭式に際して、左足から先ず踏み出し、後退に際して右足から踏み出すも、矢張り自然の天則である。日本の都会で、通行を規定するに当り「左へ左へ」などは、自然に天則を励行するものである。確かにこの方が勝手が宜い。
次ぎに、植物の蔓の巻き方を見ても、この運動の原則は大部分に於てよく守られて居る。朝顔でも、豆類でも、山芋でも、藤でも、其蔓の巻き方は、皆進左退右式である。人間が戯れに朝顔の蔓などを逆に巻いて、縛って置いて見ると、矢張り蔓は承知せずに、先端の方は宇宙の運動法則を実行する。無論人間の中に左利の人があると同様、植物にも原則違反者がある。或は植物の方が、其数が一層多いようだ。尚此の外、旋風にしろ、渦巻きにしろ、天体の運行にしろ、数えて立てれば際限がない。かかる現象の蒐聚は、専門の士が、各々己が向き向きに試みて、飽まで研究材料を豊富ならしむるよう努力さるる事を希望する。