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文献名1出口王仁三郎著作集 第3巻 愛と美といのち
文献名2愛 >恋愛と家庭よみ(新仮名遣い)
文献名3貞操論よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2016-11-28 01:51:36
ページ55 目次メモ
OBC B195303c142
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本文  父のシャカンナが意味ありげな言葉を聞いて、スパール姫はなんとはなしに前途有望のような感じがむらむらと湧きいで、うつむきながら、顔を紅に染め、恥ずかしげに言う。
「お父さま、遠慮会釈なく思っていることを言えとおっしゃいましたから、今日は妾の一生の一大事、なにもかも思っていることを申しあげます。どうか叱らないようにしてください」「なに、叱るものか。どんなことでも思ったことを父の前で言ってみるがよい」
「そんなら申しあげます。もうこうなってはお隠し申すもおよびませぬから、太子さまがお帰りの時、妾の手をかたく握り『スパール姫よ、しばらく待っていよ。きっと迎えにきてやる』とおっしゃいました。自惚れかはしりませぬが、太子さまは……あの妾にラプしていらっしゃるでしょう。そして妾も……」
「あっはははは、そうだろう、そうだろう、やっぱり父の睨んだとおりだ。そして太子さまが迎えにきてくださったら、お前は喜んでゆくだろうな」
「はい、それは参らぬこともございませぬが、なんといってもラプは神聖なものでございまずから、よほど考えさしていただかねばなりませぬ」
「うん、それもそうだな。なんといっても一国の主権者におなりあそばすお方、至尊至貴にして犯すベからざる王太子さまの妃になるのは、お前も女としては無上の出世だ。お前のためにこの父も枯れ木に花の咲く時節がくるのだから、どうか太子さまの思召しが、お前をどこまでも妃にするという考えがきまったならば、父のためにもなることだから喜んでいってくれるだろうな」
「父のためには孝養をつくすをもって子たるものの務めといたします。父のためと恋愛のためとは道が違うじゃありませぬか。もし妾の恋愛が完全に成就したのならば、副産物としてお父さまも幸運にむかわれるでしょう。お父さまの幸運はつまりこの恋愛が成就するからでしょう。妾はお父さまにたいしては孝養を主とし、夫にたいしては恋愛を主とするものです。それが至当の道理と考えています」
「あっはははは、いつのまに、そんな理屈を覚えたのだ。夫が主で父が従とはちっとひどいじゃないか。それでは倫理学上由々しき大問題だ」
「そんならお父さまの孝養を主として恋愛を一生葬りましょう。そのかわり、この山奥に一生朽ちはてる覚悟でございまずから」
「そんな、ならぬことを言うものじゃない。親の言い条について太子さまのお妃になれば、孝養も恋愛も完全に成就するじゃないか」
「孝養と恋愛とが両方円満に成功すれば、こんなけっこうな喜びはございませぬ。しかしながら世の中には、そうあつらえむきにゆかないことがたくさんあるでしょう。すべて恋愛なるものは愛情からくるものです。愛情はどこどこまでも拡大すべきもの、また流動性を帯びているものですから、倫理や道徳や知識をもって制縛しうるものではありませぬ。もし恋愛に理智がくわわれば、恋愛そのものは、千里の遠方に逃げだしているじゃありませぬか。智性と意性すなわち理智と愛情とは、とうてい両立しないものでしょう」
「いつのまにか、だれも教えないのに、こましゃくれたものだな。ほんに『油断のならぬは娘だ』というが、この父もお前の話を聞いて荒肝を挫がれてしまったよ」
「お父さまは昔気質でお頭がすこし古くできていますから、恋愛問題などに容喙なさる資格はありますまいよ。どうかこの問題は妾の意志にまかしてくださいませ。古い倫理や道徳説にとらわれて、あたら女の一生を霊的に抹殺されることはたえられませぬ。神聖な霊魂を男子に翻弄されることは、女一人としてたえられない悲哀ですから、たとえ太子さまが妾を寵愛してくださるにしたところで、妾が太子ざま以上に愛する男子があらわれたとすれば、そのときはお父さまはどう思いますか」
「これはけしからぬ。『女は三界に家なし』といって、夫の家に嫁いだ時は、いかなる不幸も不満もこらえしのばねばならぬ。そして舅姑によく仕え、親や夫の無理を平気で甘受せねばならぬものだ。ぞれが女としてもっとも尊い務めだ。その考えがなくちゃとうてい女としてたつことはできないぞ。それが女の貞操だからのう」
「ほほほほ、それだからお父さまは頭が古いというのですよ。男女は同権じゃありませぬか。男子が一個の人格者ならば、女だってやっぱり一個の人格者でしょう。人格と人格との結合によって、はじめて完全な恋愛が行なわれ、結婚が成立するのでしょう。恋愛は恋愛として、どこまでも自由でなければ、結婚という関門を通過した女は、ほとんど奴隷的牢獄に投ぜられたようなものです。男子は好きすっぽうに己が愛する女を幾人も翻弄し、女一人に貞操を守れというのは、不道理至極なやり方じゃありませぬか。たとえば太子ざまが妾をラブし、妾が太子さまをこよなくラブしてる間は、たがいに貞操も保たれ、完全な結婚の目的も達するでしょう。もし太子さまにおいて妾以上に愛する女ができた時は、太子の恋愛はすでにすでに妾を去って他の女に移ってるじゃありませぬか。それでも妾は恋の犠牲者として、霊的死者の位置に甘んぜねばなりませぬか。そんな不合理なことが、どこにございましょうぞ。これに反する場合、すなわち妾が太子さま以上に恋愛する男子があらわれた時は、またその男子に恋愛を移すのは恋愛そのものにとり自然のなりゆきでしょう」「おい、娘、なんという馬鹿なことを言うか。だれにそんな悪智慧をつけられたのだ」
「はい、妾の良心が、そう囁いています。あのトンクだって、妾にしじゅうそんな話を聞かしてくれましたよ」
「えー、トンクの野郎、碌でもないことを魂の据わらない愛娘に吹きこみやがるものだから、娘の心に白蟻がついて瑕物にしてしまいやがった。表面からは天成の美人も、腹のなかからは悪魔がすでに棲ぐっている。こんなものを畏れおおくも太子の妻にたてまつることはできない。えー、困ったやつだな」
と腕を組み、太き吐息をつく。
「ほほほほ、お父さま、なんでもない問題じゃありませぬか。よく考えてごらんなさい。女子ばかりに貞操を強要して、男子に貞操を強要せないのは家庭紊乱の基となり、ひいては国家の破滅をきたす源泉となるものですよ。女子に貞操が必要なれば、男子にも貞操が必要でしょう。もし夫たるもの、その妻の他に妻に勝って愛する女子ができ、ひそかに恋愛を味わわんとする場合、その妻は、その夫にたいして叱言を言ったり、悋気をしてはいけませぬ。真に夫を愛するのならば、夫の意志にまかすのが妻たるものの雅量じゃありませぬか。女房の恋を夫が強圧的におさえ、『自分を無理に愛せよ』と迫り打擲したりして『自分を絶対的に愛せよ』というのは、けっして理解ある男子とはいえませぬ。それくらいの雅量がなくては、どこに男子の価値がありますか。また、妻も妻で、自分の愛する夫が、その妻よりも愛する女ができた時、夫の愛する恋愛を遂げざしてこそ、真に夫を愛するということになるのでしょう。夫は女の目より隠れしのんでわずかに恋愛を味わい、妻は妻でまた、ひやひやびくびくしながら他の男と恋愛を味わうようなことで、どうして家庭が円満にゆきましょう」
「馬鹿いうな、そりゃ畜生のすることだ。爺は勝手に女房以外の女をもち、女は夫以外の男をもち、そんなふしだらなことをして家庭が円満に保たれるか。家庭円満が聞いてあきれるじゃないか」
「ほほほほ、お父さまの没分暁漢には困ってしまうわ。夫が妻の恋愛を嫉妬したり妨害したり、妻が夫の恋愛を嫉妬したり妨害するなどは、じつに卑怯未練というべきものです。人格を備えたもののなすべきことじゃありませぬ。このタラハン国は国が小さいから、人間の心までが小さい。それで恋愛の冷却した女でさえ、自分の方に恋愛がのこっておれば無理におさえつけ、一方の恋愛を犠牲にしようとするようでは、家庭が円満にゆきませぬよ。また恋愛は倫理や道徳の範囲で律することはできませぬ。お父ざまは倫理や道徳を加味した恋愛論ですから、いわば偽の恋愛論です。社会の秩序だとか、家庭の円満だとかいって、煩悶し焦慮し、かえってせまくるしい道徳をふりまわして、ますます家庭を紊乱し、社会の秩序を乱すようになるのですよ。男子も女子も社会一般の人が雅量と理解とをもたねば、国家も家庭も円満に治まるものじゃありませぬわ。妻が夫にたいする貞操は、妻以外の夫の恋愛者にたいし少しの妨害もせず嫉妬もせず、むしろ好意をもって夫の恋愛を遂げさするのは、つまり夫にたいする妻の貞操ですよ。またこれに反する場合も同様で、夫が妻にたいする貞操は妻の恋愛を遂げさせ、夫が妻に同情を寄せるのが、真に妻を愛することになるのです。一夫一婦の制度をもって国家存立の大本となす政体もあり、一妻多夫、多夫一妻をもって国本となす政体も世界にあるじゃありませぬか。男女が平均に生まれる国では一夫一婦の制もけっこうでしょうが、女が男より多く生まれる国、または男が女より多く生まれる国では、とうてい一夫一婦の制は守れますまい。それこそかえって不道徳になるのではありませぬか。女の多い国では女の恋愛抹殺者ができ、男の多い国では男の恋愛抹殺者ができるでしょう。こんな悲惨なことがどこにあるでしょう」
「理屈はどうでもつくものだ。しかしながらタラハン国は一夫一婦が制度だ。これを破るものは道徳の破壊者だ。恋愛など末の末だ」
「今日の世の中に大人物のあらわれないのは一夫一婦の制度が行なわれている弊害からくるのですよ。昔の神代の神ざまをごらんなさい。大国主の神さまはうちみる島の先々垣見る磯のさきおちず賢女奇女を娶り、国魂の神を生み、大人物をたくさんおつくりなさったじゃありませぬか。スダルマン太子のような賢明な君子的人格者は、妾のような賢女奇女を、たくさん娶いあそばし、そして大人物を四方に配りあそばしたら、きっと世の中はよくなるでしょう。あんな大人物こそたくさんな女があっても、生殖の方から見て国家の宝を産みだすことになるでしょう。これに反して愚夫愚婦といえどやはり一夫一婦とすれば、がらくた人間ばかり世にひろまり、ますます世は堕落するのみでしょう。要するに社会道徳の上から考えて、立派な人間は天の星の数ほどたくさんな怜俐子を産み、野卑下劣な半獣的人間は、なるべく子を産まないようにするのが、国家存立の上にも個人経済の上にも有利でしょう。お父ざま、これでも不道理と聞こえますかな」
「はははは、まるで太子さまを種馬とまちがえているじゃないか。不都合千万なことをいうやつじゃ」
「その種馬におなりあそばすのが国の君たる方の御天職でしょう。太子さまのみならず、国の立派な人はみな種馬として社会に子をたくさん産み落とさなくては、社会の根本的改造はどうしてもだめです」
「そうするとお前は、太子ざまがたくさんな女をおもちになった時はどうするつもりだ。理論と実際とは大いに違うものだから、その時になって悋気の角を生やしたり、嫉妬の焔をもやしたり、その時につらい目を味わってみねばわかるまい。今こそ理論では立派なこと言ってるが、実地になれば、そうはゆかないよ。きっと悋気するにきまっているわ」
「おほほほほ、そんな雅量のないスパールじゃございませぬ。妾にだって太子さま以上に愛する男子ができた時、太子ざまが故障を言われるようなことがあった時は、妾の方からごめんをこうむるだけのことですわ。一方の恋を圧迫し、どうして円満にゆけますか。夫婦は家庭の重要品です。家庭と恋愛は別物ですよ。家庭は家庭として円満にゆき、恋愛は恋愛として自由に行なうべきものです。太子さまの上つ方から、こんな手本を出してもらわなくては、悋気とか姦通とか不道徳とかの、忌まわし問題が絶滅せないのです。一夫多婦のモルモン宗をごらんなさい。けっしてたくさんの妻のなかに、悋気や嫉妬や怨嗟などの声はありませぬよ。とにかく、旧来の陋習を打破せなくては、家庭も国家も治まりませぬ。妾はスダルマン太子さまこそは恋愛にたいしても理解をもち、また社会道徳にたいしても、完全に改良する資質をもった方とうかがいました。それで恋愛はともかく、国家社会のため必要のためと欣慕のあまりついに恋愛に転嫁したのですわ、ほほほほ」と十五歳の娘にもにあわず、おいおいと心の生地をあらわし、父のシャカンナをけむりにまいてしまった。
(『霊界物語』六十八巻 大正14年1月5日)
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