文献名1大本七十年史 上巻
文献名2第2編 >第1章 >5 大正維新の主張よみ(新仮名遣い)
文献名3大正維新論よみ(新仮名遣い)
著者大本七十年史編纂会・編集
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それなら、ミロクの神世を成就する皇道の実行方策は、いかなるものであったか。その一つは国教の樹立であり、他の一つは金銀為本経済の撤廃であり、さらにもう一つは世界の大家族制の実施であって、これが大正維新・神政復古の方針である。それらの主張を裏づけた論文としては、「大正維新について」(「神霊界」大正6・2)および「世界経綸」(「同」大正7・10~11)などが主なものである。「皇道大本の根本大目的は、世界大家族制度の実施実行である。畏くも天下統治の天職を惟神に具有し給ふ天津日嗣天皇の御稜威に依り奉るのである。先ず我国にその国家家族制度を実施し、以て其好成積を世界万国に示して其範を垂れ、治国安民の経綸を普及して地球を統一し、万世一系の国体の精華と皇基を発揚し、世界各国みな其徳を一にするが皇道大本の根本目的であって、大正維新、神政復古の方針である」。
したがって、天皇は「先天的に世界の大元首に坐しまして、世界の国土及び財産の所有権を有し給ひ、国土財産の行使権及び人類の統治権を絶対に享有し給ふ」と主張する。
「古今国家経綸の根本義の不明瞭なりしために、国家存立の基礎を確固ならしめむとして、其財力の強大ならむを目的と為し、富国強兵以て財政経済界に角逐するを以て、国家経綸の本能と為して居るのは全くの一大誤謬」である。国家が「金銀為本」の政策をとっているため、人生の根本義が失われ「富貴功名のみ」が人生の理想となり、「猛獣の如く生存競争」のみに熱中する。そして金銀の多少による「貴賎の人為的区別が生じて来た」といい、「之を要するに金銀為本の国家経済が、国家の存立的競争と、人生の不安不平を醸成する禍因となり居る事は、動かすべからざるものである」として、「大正維新の要点は租税制度の廃絶」であるとものべる。「租税徴収は実に弱肉強食野蛮制度の遺風」であって、この「汚らはしい租税徴収の悪制を根本より廃絶する事が、神聖なる大日本天皇の御天職に在します所の済世安民の経綸を始めさせ給ふ第一歩たるべきものである」と論じるのである。
国家家族制度を実施するためには「その動産と不動産とを問はず、一切之を至尊に奉還すること、明治初年に諸大名の競うて藩籍領地を奉還せし時と同様」にせねばならぬ。「元来総ての財産は、上御一人の御物」で「一個人の私有するを許されない事は、これ祖先の御遺訓と、開祖帰神の神諭に換々として垂示し給ふ所である」と。
さらに、国民男女の職業に関する制定をなし、産業は「国民共同的に従事する事」、産業収入はすべて国庫収入とすること、貿易は国営となし、また、全国交通機関は必要に応じ無料で使用させることなどが、かなり具体的に論述されている。そしてこうした主張は、「国常立大神の神諭に基づき、一言半句も私見を挿まない真正なる皇典古事記の精神を了解して」国体の精華を発揚すべき根本をのべたものであるにすぎないと結論づけている。
王仁三郎の所論にみられる、大正維新の第一の前提ともいうべき経済的国家家族制度の論は、昭和期における皇道経済論(稜威為本の経済)にひきつがれて、世人に注目を与えたものである。
だがこういう経綸を、皇道大本がすべて実行するとといたのではない。それは天皇の天職であり、使命であって、大本はその根本理念を解説し、宣伝する使命をもっているところとした。さらに「祭政一致」論を発表して、宗教・教育の問題にも論及している。そして現在する宗教については、「世界の宗教は人智未開なる」時代の「姑息なる慰安的産物」であって、「有害無益」で「亡国的宗教」であるといい、真の宗教は惟神の大道によっている大本教以外にはないとし、皇道による国教樹立と教育制度の根本的改革を主張する。
なお、王仁三郎の「神政復古の本義」によれば「明治天皇が王政復古と同時に神政復古の御聖慮に坐ませし事は、明治三年正月、祭政一致の制を明らかにし大教宣布の詔を下し給ふたのを拝承すれば頗る明瞭なる事実」であるとし、「祭とは真釣の意義であります。天地の経綸神法の権威を遵奉して地上の政道を悉く天道に真釣合はすべきを申すのであります。故に天国の政治には人為の則も無く、真の皇道は祭を離るべき事は毫も之れ無いのであります。祭政一致は日本神国の政道であります」と説く。ついで「王政復古に次いで神政復古のあるべきは、日本神典の吾人に明示する所であるのみならず、大本開祖変性男子の垂示に因りて、確固たる事実を証明されてあります。神政に復古して創めて地の上に天国荘厳の理想政治を看ることが出来るのであります」とし、「神政とは神代に於ける政治の意義であります。故に義は進んで神代の解釈に移らねばならぬのであります。日本神典及び大本開祖の示し給ふ所によれば、神代とは万有万神が各自の大本源を知悉し、各自の大本源に基く各自の天職を完全に成し遂ぐるの世なる事を示させ給ふのであります」とも記述する。したがって、教育については「日本神国の教育は正に祭政一致の意義を教ふるのが本領であります」という主張ともなる。
「神政復古の唱道者を、地球の中心(地質学上)日本神国の中心なる下津磐根の丹波国綾部本宮の里に出せしは、実に太古よりの神誓神約の在し玉ひし事と恐察し奉るのであります。草薙の神剣(艮の稜威)は今や万教を裁断せむが為に、この霊地に降りましたのであります。治乱興廃、得失存亡、動止進退、安危閑争は神剣の御本質であります」。
すなわち「神政の魁として神剣の威力を万教の上に施す」ところに、大本の神の出現と使命があると論じた。これらの諸論文は、後述する緊迫した国内外の諸情勢のなかで不安と動揺をおぼえ、危機意識をいだいていた当時の人々に、異常な興味と同感をよびおこしていった。
〔写真〕
○普選運動は全国民的な大衆運動へとひろがっていった p369