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文献名1大本史料集成 2 >第2部 昭和期の運動
文献名2第2章 昭和神聖運動 >第2節 昭和青年誌(抄)よみ(新仮名遣い)
文献名3亜細亜問題の解決を語るよみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
ページ693 目次メモ
OBC B195502c2202157
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本文の文字数2033
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本文 亜細亜問題の解決を語る
      総裁 出口王仁三郎
 近時亜細亜問題を真面目に討議研究するやうになつた事は、時の力とは言へ寔に結構なことである。世界不安の問題解決にも、又皇国日本の道義的東亜の平和擁護の遂行にも亜細亜と云ふものを基礎に置いて考へなかつたならば到底出来ない根本問題だ。それだから大正十三年、自分は敢然として蒙古入りを企てたのだ。当時は欧米心酔の人達や、無経綸の者達からは、実に突拍子も無い暴挙とも見えたかも知れないが、其目的は満蒙を根拠として、支那、印度、シヤム等の精神的亜細亜大連盟を画策し、亜細亜に住める各民族を一致図結せしめ、以て世界不安の根本的問題に触れ、皇国の天賦的使命を遂行せんが為めであつて、何等の野心も私心もなかつた。だから勿論欧米を敵として戦ふと云ふ様な考へもなかつた、誠心誠意地上天国の建設にあつたのだ。即ち亜細亜は亜細亜として、他民族の支配下より離れて独立独行し、他民族とは有無相通じて、しかも亜細亜たる天的使命を遂行せしめるの謂であつた。其当時は、斯うした大問題には誰も考へず、又行はふとするものは無かつた。又口で云ふ者があつても実行するものは皆無だつた。故に自ら率先して実現の第一歩を踏んだのである。しかし時いまだ至らずして遂に帰国するの已むなきに立ち至つたが、其結果は精神的に心あるものに、又亜細亜の各民族に、欧米各国人に与へた効果は大きいものがあつた。物質的に見た時は或は失敗かも知れぬが、精神的に見た時には、其後に起り来つた凡ゆる問題と、亜細亜と言ふ叫びのあがつて来たことを見ても自分の投じた一石が世界的に波紋を画がき、各方面に影響を齎して居る事が明かに観取出来る。世界紅卍字会との精神的連繋の出来たのも其顕著なる一つである如く、新精神運動の勃興に光明を与へたものである。
 マホメツトの如く左にコーラン右に剣を翳して進むと云ふことは避け、即ち剣のことは剣の方面の人にまかせて、自分はコーランに比すべき人類愛善の大義に拠つて立つたのである。若し斯うした運動が遅れて居たならば、欧米の民族の為めに、亜細亜民族は愈々蹂躙され、遂には滅亡の行程を辿らねばならぬ状態にあつたからである。
 由来亜細亜連盟と云ふ事は幾多の人々が提唱したが、今日迄は遅々として進まないのである。其原因は結局日本人に在る。一体日本人は余りにも猜疑心が深い。人の成功を妬み、是を援助する所か、正しい事、国家的のことでも、却つて突き落すと云ふ様なことが多い。譬ヘば、甲が五万円の金を持つて居り、乙が二十万円儲けたとすると、乙を嫉妬して自分より以下に叩き落さうとする。人が二十万円になつたなら、それ以上にならうと発憤努力すると云ふことが無い。だから、天理人道に叶ひ、国家的、民族的の問題でも、さうした調子で叩き破られる。左様なことでは亜細亜連盟の如き大きい問題は絶対に出来ない。猜疑と嫉妬は禁物だ。併し乍ら時代の機運は大分真面目に考へさせる様になつたから、今後は出来るかも知れない。けれ共、此処一年や一年半では難かしいと思ふ。
 自分は亜細亜に関する種々の方策も経綸も既に持つて居る。けれ共今日の場合、それを発表することは、各方面に影響することが多いし、現在の自分としては一言一行、悉くが内外の注目の的となつて居る関係上、発表を見合せる。だが一言云つて置き度い事は、『来るべきものは必ず来り、渡るベき橋は避くベからずして、渡らなくてはならぬ』と云ふ事である。そして『亜細亜が精神的に統一出来得れば、世界的精神統一と平和とが招来される』と云ふ事である。勿論、之れには只精神のみの運動ではいけぬ。矢張り力と云ふものが添はなくてはならぬ事は云ふ迄も無い。
 現在の宗教家の中にも、宗教的に連盟、統一を計らんとするものが無いでも無いが、大体現在の宗教家には、国家と云ふ観念が無い、真に国家と云ふものを想はないで、多くは自己愛である。理想はなかなか高く、且つ主張するけれ共、扨て実行となると全然なつて居ない。要するに之れは魂の問題であつて、自己愛のものが亜細亜に叫びかけても、それは空想だ。
 亜細亜を真に精神的に連繋し統一するものは皇道でなくてはならぬ。之れが天の意志だ。だが現在皇道を唱道して居る大部分の皇道論者は、まだ皇道の真髄に触れて居ない。一夜づけのものが多いと思ふ。それでは皇道精神に依つた亜細亜連盟運動と云ふのも云ふだけのもので実際が伴はない。要は先づ日本人が真に皇道の真髄を悟り皇道精神に生きて、亜細亜の代表民族として辱からぬ人格を堅持し、正々堂々、公明に道義に進まなくてはならぬ。尤も民間が如何に皇道を叫んだ所で、なかなか徹底するものでは無い。日本の上層階級から皇道の真髄に覚醒して、先づ日本が皇道国家となり、然る上に亜細亜に及ぼさなくてはならぬ。此処に亜細亜問題の重大な解決要諦があると共に、国家的天的使命遂行の根元があることを断言して置く。
(文責在記者)
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