文献名1東京読売新聞
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3昭和10年12月8日 号外よみ(新仮名遣い)
著者
概要
備考
タグ
データ凡例
データ最終更新日----
ページ
目次メモ
OBC NPTYc19351208G2
本文のヒット件数全 0 件
本文の文字数3335
これ以外の情報は霊界物語ネットの「インフォメーション」欄を見て下さい
霊界物語ネット
本文
右翼団体と結んで国体変革の思想宣伝
別働隊昭和神聖会活躍
大本教は大正十年の大弾圧後教主王仁三郎が恩赦に浴してより再び勢力を挽回、着々と盲信者を小商人、財界に獲得して組織をひろげ東京に於ては文書宣伝、活動機関として大正十四年六月四谷区愛住町七六に先づ人類愛善会を創立、機関紙愛善新聞を発行し忽ちにして全国に多数の信者を獲得し中央舞台進出への足場をつくるに成功、続ゐて東京進出に全力をあげ昭和八年杉並区方南町三一二に昭和青年会(青年活動)及び昭和坤生会(婦人活動)を創立、同時に大本教の市内に於けるこれらの活動統帥機関として杉並区方南町に昭和八年一月廿六日皇道大本教紫雲郷別院を置き、別院総長に出口日出麿(京都検挙)次長に米倉嘉平が就任して教義の宣伝組織活動の采配を振ふにゐたつた、この結果東京に於けるこれら諸機関の支部百卅ケ所、信者約一万人に達しここに愈よ王仁三郎は大本教義に基く国家主義を表面に掲げて政治的活動を開始、これが政治活動の機関として昭和九年十月人類愛善会本部と同じ愛住町に昭和神聖会を設立した、そして王仁三郎自ら統監に就任、三男宇知麿を副統監に、政治的宣伝機関として東京毎夕新聞経営の実権を掌握した、以来政治活動に益す活発な進出をこころみ最近では右翼友誼団体と提携して国体明徴の実践運動にまで進むにゐたつたが、一面飽くまで市内の組織活動に力を注ぎ最近では「世の建てかへ建てなほしの秋到来せり」と暗に国体変革の時期になつたことを表明、宣伝してゐた
鈴木府知事談
大本教内部の不敬言動につゐてはこれを放置するにおゐては治安上憂慮すべきものあるを認めたので八日京都府警察部と京都地方検事局と打合せのうへ警視庁並に島根県警察部と協力関係箇所の家宅捜査をなすと同時に出口王仁三郎以下約卅名の関係者を検挙したものである
苦心内偵一ケ年
杭迫特高課長を派遣して極秘裡に確証を掴む
教主出口王仁三郎以下同教幹部らの最近の言動及び刊行物には不敬にわたるもの少からず識者をして眉をひそめさせてゐた、彼らはさきに大正十年五月京都におゐて不敬罪に問はれ第一世教祖王仁三郎は禁錮五年、浅野和三郎ほか一名もそれぞれ処刑されたが大正天皇崩御の大赦に浴して間もなく釈放された、彼らはこれを無罪と称し王仁三郎の妻女澄子を第二世教祖としてその後ますます跋扈、誇大な宣伝につとめ信徒の獲得と同教の拡大強化につとめ彼らはまるで王者の如き生活、振舞ひをしてゐたものであるが、最近に至つてまたも不敬な言動を繰返し夥しい出版物を刊行、我国体に反する非国民的所業にふけつてゐたことが発覚したので内務省警保局が中心となつて極秘裡に内偵を進め昨年十一月警視庁杭迫監察官を京都府特高課長に転ぜしめ大本教の内面調査にあたらせた結果、漸く不敬の事実あることをつきとめたので去る三月大阪控訴院吉益検事長、京都地方検事局徳永検事正が上京、内務省、警視庁との検挙の打合せを行ひ内務省唐沢警保局長、相川保安課長はじめ永野事務官、古賀属が専任準備にあたり決行前の漏洩を虞れて去る十月初旬からは世田谷区奥沢一ノ四六九の永野事務官の自宅を秘密本部にあてて京都、松江その他各地方検事局と連絡をとつてゐたものである、かくて五日に至り全く準備が整つたので八日未明を期し一斉検挙を断行することになり六日午後永野事務官は児玉属を同伴してひそかに京都に向ひ大検挙を見るにゐたつたものである
横浜の狼狽
【横浜電話】横浜市中区滝ノ上町の大本教関東別院では出口教主以下首脳部の大検挙の報に接し大狼狽し信徒代表二百名が参集対策を協議中であるが目下同別院には変りなく山手署で警戒中である
愕く北陸の信者
【金沢電話】北陸の大本教信者は約一千五百名に上り殊に石川県では侮り難い勢力を持ち能美郡御幸村地内大本北陸別院を有し農場を経営してゐるほか金沢市には北国夕刊新聞を発行、同教の宣伝に努めてゐる、分院は県下に二ケ所ある外金沢市に四ケ所小松大聖寺にはそれぞれ分所があり、相当根強く働きかけてゐただけに今回の一斉検挙は信者に非常なるシヨツクを与へてゐる、なほ北国夕刊副社長土居三郎氏ら幹部は八日朝急遽上洛した
教義の根本義への二点に亘る疑惑
不敬罪と出版法違反
今回の大本教幹部の総検挙の動機はかねて同教の布教の最高方針を決定するために所謂お筆先を中心に出口王仁三郎はじめ両副統監、大宣伝使ら少数幹部を以て組織する神庭会議なるものがあり同会議の決定事項につき注意をして約一年前から内偵を進めてゐた京都地方検事局では右会議決定事項内容が秘密パンフレツトを配つて全国各布教所首脳部に配布されてゐる事実、及び同パンフレツトの内容が社会機構を変革するが如き思想を包蔵し延ゐては改正出版法第廿六条の皇室の尊厳を冒涜するが如き内容を包蔵するものと認められることと右パンフレツトの内容に基く教義宣伝の方法手段が刑法第七十四条の不敬罪に相当することの確信を得たのによるもので従つて今回検挙の根本趣旨は前回の検挙とは違つて大本教の根本義に対する被疑内容をもつてゐるものだけに同教の運命を左右するものとして重大なる意義をもつものである、被疑適用条文は左の二点である
不敬罪 刑法第七十四条
天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス神宮又ハ皇陵ニ対シ不敬ノ行為アリタル者亦同ジ
出版法 第二十六条
皇室ノ尊厳ヲ冒涜シ政体ヲ変壊シ又ハ国憲ヲ紊乱セムトスル文書図画ヲ出版シタルトキハ著作者、発行者、印刷者ヲ二月以上二年以下ノ軽禁錮ニ処シ廿円以上二百円以下ノ罰金ヲ附加ス
メス下る・前橋の『人の道』
妖しい!「陰陽の道」
信徒男女に忌はしい噂
【前橋電話】群馬県警察部の弾圧を受けた前橋市堀川の「人の道教団」は大阪にある本部の教理に従つて毎日早朝五時布教所に信徒を集めて陰陽の道を説き男女の混合を勧め、信徒には教祖の肖像を『おふりかへ』と称して頒布するほか時々礼拝の際朝食などを共にし、その際信徒の間にはその教旨に依り陰陽の道を説く関係上男女にいかがはしい風紀問題が起り、若い中等男女学生の信徒間にこれが甚だしいので県学務部当局もこの点を憂慮して秘かに対策を講じてゐたところであつた
『人の道』本部をも監視
大阪の大本教取締
【大阪電話】八日朝内務省警保局長よりの急電に接した大阪府警察部では大本教大阪別院天王寺区東高津北ノ町三三を中心に大阪方面の信徒約六千の動静を監視特に綾部、亀岡方面へ赴かんとする信徒を極力阻止してゐる、大阪府警察部特高課岡田思想犯第二係長は大本教本部の状況を視察のため京都に急行した、「人の道」その他大阪方面の類似宗教団は今のところさして動揺はなく府警察部としてもその成行を監視の程度である
信徒中には多数の若い男女教員
風紀上の噂に内容調査
群馬県学務部長語る
【前橋電話】群馬県学部長水谷秀雄氏は語る
前橋ひとのみち教団に中小学校教員が幹部として加つてをり信徒中には若い男女教員や男女中等学校生徒がをつて風紀上いかがはしい噂をまゐてゐるといふことを聞ゐてゐたので視学に命じて内容を調査せしめてゐたものである事実さういふことがあるとすれば何等かの処置を講じなければならない
変な説教
若い信徒の話
前橋市「人の道教団」の信徒である同市田町村田弥三九(25)君は語る
僕が「人の道教団」へ入つたのは今年の春からで学校の先生が多く朝五時に集まるのが例になつていました、説教は男と女の関係を説ゐてゐるものが多かつたが若い私達には変に思はれるところが多かつた、人間の病気は教祖がみんな引受け或は男女混合で病気が治るなどといふことを聞ゐてから僕は行くのをやめました
堂々たる前橋布教所
撤退を厳達された「人の道教団」前橋布教所は市内堀川町二〇の一割を占め門構へで黒板塀をめぐらした六百余坪の敷地に二階建本屋六棟の建物がある堂々たる邸宅で付近には久留万、城南両小学校及び桑原、神田、駒形の三病院その他があり布教所設置の規定に違反するので当局から許可されなかつたにも拘らず布教所を設け布教してゐた、現在の信徒中の最高幹部は前橋市田中町の松山得介氏で中小学校教員は准幹部となつてゐる