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文献名1三鏡
文献名2月鏡よみ(新仮名遣い)
文献名3人に化けた狸よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
神の国掲載号1930(昭和5)年08月号 八幡書店版305頁 愛善世界社版 著作集 第五版250頁 第三版250頁 全集612頁 初版212頁
OBC kg433
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本文の文字数887
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本文  福知山にての出来事であるが、開祖様が十七八歳の頃一人の背の高い大坊主が住んで托鉢をやつて居た。五六年も其土地に居たので誰もが人間だと思つて居た。然るに或日の事某侍が彼と話しをして居る中、耳が頻りに動くので其故を問うと、風が吹くからだと云ふ、風が吹いて耳が動くとは怪しい、狸の類が化て居るのに相違ないとていきなり抜手も見せず斬りつけて殺して仕舞つた、そして屍を川原に曝しておいた、夜が明けると人間の姿であつた大坊主はダンダンと変つてたうたう狸の姿になつて仕舞つた、開祖様も実地に見に行かれたさうで、時々其事を話してをられた。
 之と反対に本当の人間を狸と間違へた例もある。園部に珍妙さんと云ふ尼さんが住んで居た。小さな小供のやうな背をしておまけにビツコでヒヨクリヒヨクリと歩いて居た、言葉つきなども小供のやうで明瞭を欠いて居た、其後園部を後に畑中と云ふ所の尼寺に移り住んで居たが、或夜の事お仏前にお燈明を捧げようと思ふと生憎油が切れて居たので、徳利をさげて買ひに出掛けた。話変つて其頃新しく其村に赴任してきた駐在巡査が夜警に出ると、向ふから、小供とも大人とも分らぬやうな尼が油徳利をさげてやつて来る、怪しいと思つて誰何すると、畑中の尼や、油を買ひに行くのやと呂律の廻らぬ小供のやうな言葉で答へたので、何、畑中から油を買ひに行くと、人を馬鹿にするない、化狸めがと、サーベルの鞘で擲りつけると、キヤツと叫んで倒れて仕舞つた、巡査は狸だと信じ切つて居たので翌日其話を隣人にすると、いやそれは全くの人間だとの事、ビツクリして其後の様子を聞いて見ると、尼さんは病床でウンウンと唸り続けて居るとの話、吃驚敗亡……其後間もなく其巡査は転任になつたとの噂を聞いた事がある。
 狸が人間に化けて居るか、どうかと云ふ事を見るためには、傍でマツチを擦つて見るとよい。狸なら毛がやけるから恐れて逃げる。又体を逆さまに撫でて見ても毛がモジヤモジヤと生て居るから分るものである。
(以上は過日某新聞紙上に狸を夫と思うて同棲した女といふ記事が出て居たのでかかる事もあるものにやとお伺ひした時のお話であります。)
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